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BLの丘
ふたり 34
2012-05-14-Mon  CATEGORY: ふたり
差し出した手紙を信楽は一度受け取った。
動きを止め、何の反応もないまま、しばらくの時が流れる。
だが、中を見ることもなく、信楽は破り捨ててしまった。
「え?」
その行動に旭は目を剥く。
書いた本人なのだから、見なくとも内容は分かるのだろう。
だけど改めて信楽自身に刻んでほしい言葉があった。
「ここに書いたことは自分でも良く分かっている。幾度も後悔したことだからね。そして旭が来た。…素直な旭には、俺も正直に答えて行こうと思っている。今みたいに不安がる旭は見たくないから…。もうこの件は忘れてほしい」
どんな過去があったのか、旭は話に聞いてすでに知っていたことだけれど。
信楽がまた何かを隠そうとするようなことはされたくなくて、伊吹との間のようにはなりたくなくて、抱えている不安を打ち明けた。
信楽が正直になった時…。
「信楽さん、ごめんなさい…。俺、読んじゃったんだ…」
「そうかな、と思った。だからこそ、慌てたんだろう。俺がまた伊吹に気を向けるんじゃないかって」
「うん…」
信楽の手が旭の頭上を撫でた。
詳しく語らなくても、旭の真意を的確に当ててくれる。
勝手に読んでしまって怒られるかと思ったが、ふわりと微笑まれて宥められる。
信楽が自分を責めている雰囲気のほうが強かった。
「もうないよ。伊吹とは何があっても元に戻ることはないから安心していいよ。こんなふうに焦って帰ってこなくても、俺はここにいるし、旭を待っているから」
「信楽さんっ、好きっ、好きっ、大好きっ!」
不安だった心が一気に急上昇した。
旭が信楽の腕に飛び込めば温かく包んでくれる。
信楽から発された言葉は、この上なく旭をホッとさせてくれるものだった。
はっきりと言ってくれたことは、信楽の本心なのだろう。
それを聞けただけでも嬉しい。

あやされて旭は一人ソファに座らされた。
キッチンへと向かった信楽が、ミネラルウォーターのボトルとグラスを手にして戻ってくる。
「はい、まずはひと息ついて」
注いでもらって手に握らされて…。
安堵感が広がったせいだろうか。想像以上に水分を欲している自分に気付いて、旭は一気に飲み干してしまった。
その姿を見ては信楽がくすくすと笑っている。
「本当にこの子は…」
そこに含まれるものは、感情のままに動く旭に対しての呆れなのだろうか…。嫌われてはいないのだろうが、少しの反省心も生まれる。

再び注いでくれて、ボトルをテーブルに置いて、またキッチンに戻ってしまった。
楽しそうに笑う信楽を見るのは気分がいい。
全力疾走をしたおかげで、かなり体力消耗をしていたけれど、信楽のそばにいたくて、旭はもう二杯の水を飲むとソファを立った。
「今日は何ができるの?」
「若い子にはお肉がいいかな、と思ってスペアリブをね。あと炊き込みご飯」
昨日は突然のことで手早いメニューだったと信楽は言うが…。
前もって準備されれば、豪華なものが用意されるのか。
自分ではどういう工程をたどれば口に入るものになるのかも分からない物体に、信楽の腕の高さを認める。
毎日こうやってそばについていれば、旭も信楽と同じ年になった時に、同じ技術を身につけているだろうか。
間違いなく『否』だろうと、心の中で呟いたが、信楽の負担を減らす為にも覚えたいことはある。

ふたりテーブルに着いて雑談をしながら食事をして…。
今までの旭の生活になかった光景に心はふわふわと浮いていた。
一番は旭を受け入れてくれた信楽の存在だろう。
引っ越しはいつでもしてくればいいと言うし、食事が終わったあと、部屋の様子を案内してくれた。
てっきり部屋一つを丸々空けてくれたのかと思えば、ベッドがなくなっただけで、信楽の仕事道具はそのまま残されている。
今日はまだできなかったということだろうか。
「どうしようか考えているんだ。旭が寝室で寝るというなら、このままこちらに置かせてもらおうかと思って…。旭の睡眠の邪魔はしたくないし…」
「うん、いいよ。俺、荷物置かせてもらえるだけでいいもん。信楽さんの仕事の邪魔はしないようにするから、時々は昨日みたいに同じ部屋にいてもいい?」
ワンルームの現在の住まいから考えれば、旭がいられる場所はたくさんある。
すでに家財道具が揃ったこの家に運んでくるものなど、微々たるものといっていい。
一人個室にこもる理由もない。
旭の返事に信楽は、「過ごしやすいようにいてくれればいいよ」と笑ってくれた。
新しい生活に喜びが湧いて、旭はまた信楽に抱きついていた。

「今日もこの後、仕事なの?」
「いや、今日はもう…。今日一件の送付が終わっているし。昨日あらかた片せたから今日は結構余裕があったんだ」
「そうなんだ。じゃあ、あとはお風呂に入って寝るだけ?」
「あぁ、そうなるね。…また一緒に入る?」
「あ、…と、…えと…」
一瞬戸惑った旭に、信楽は笑いながら「一人で入った方が疲れも取れるでしょ」と強要することはなかった。
まだ人と一緒に入浴するという行為に慣れていない旭の緊張なども考えてくれているのだろう。
「さぁ、じゃあ入っておいで」
信楽に促されて旭はバスルームへと足を向けた。
シャワーで済ませることが多かったから、思いっきり足を伸ばして入浴できる環境の良さにも感激した。
絶対に住み心地の良い家である。
だけど無毛の体を見渡せば、子供に返ったような羞恥心に見舞われた。

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コメント

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今更か(笑)
コメントちー | URL | 2012-05-14-Mon 00:53 [編集]
旭、可愛いねえ。
今更、恥ずかしがるとか。
やあ、毎日お手入れしてもらいなさいってば。

信楽さん、すっかり旭に馴染んだようで良かった良かった。
きっと、仲良く暮らしていけるよ。

喧嘩もたくさんして、仲直りもたくさんしてね。
Re: 今更か(笑)
コメントたつみきえ | URL | 2012-05-14-Mon 07:08 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 旭、可愛いねえ。
> 今更、恥ずかしがるとか。
> やあ、毎日お手入れしてもらいなさいってば。
>
> 信楽さん、すっかり旭に馴染んだようで良かった良かった。
> きっと、仲良く暮らしていけるよ。
>
> 喧嘩もたくさんして、仲直りもたくさんしてね。

今まで恥ずかしいこと、いっぱいやってきたのにね~。
信楽はこの先どうするでしょうか。
お互い寄りそって仲良くやっていくと思います。
甘えたがり旭と、可愛たがりの信楽ですから。
今度こそ幸せな生活を手に入れられる信楽ではないでしょうか。
コメントありがとうございました。

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