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BLの丘
ふたり 3
2012-04-11-Wed  CATEGORY: ふたり
何故伊吹と彼が別れたのか、その理由まで聞くのは失礼だろう。
今更蒸し返したくない内容であるのは、彼の元から逃げ出した伊吹の態度で知れてくる。
誤魔化してしまっても良かったことなのに、それでも旭に話してくれたのは、旭が興味を持ったことを感じてしまったからだ。
いつまでも探られるくらいなら、最初からさっさと打ち明けてしまった方がいいと判断したのだろう。
あとは、それを聞いて旭がどう思うか…。
確かなことは、ふたりは別れてしまっているということだけ。

伊吹は彼について悪く言うことは一つもなかった。それだけ責任を感じているのだろうか。
伊吹には新しい恋人ができたが、今でも伊吹に対して想いを残しているのは彼のほうで、だからこそ心変わりしてしまったから後ろめたさがある。それ故に真正面から出会うことができない。
話を終えて伊吹は苦笑を浮かべた。
複雑な気持ちで聞いていた旭は、その態度にどう反応したらいいのかと戸惑ってしまう。
伊吹の苦笑には、現状を変えていけないもどかしさが含まれているようだった。
こんな話を聞いてしまっては、伊吹に彼への紹介を頼むのは無理なものである。

時間もそろそろ、ということで喫茶店を後にする。
途中まで一緒に歩くふたりの雰囲気はいつもと変わらないくらいまで戻っている。互いに避けている話題があり、あとは感情を隠すことのできる営業魂だろうか。
「何かあったらいつでも言ってくださいね。また新しい物件、紹介しますから」
「そんなに引っ越しばっかりやってられないよ~。それより保険の見直しは?」
「そうしょっちゅう見直しなんてしてられませんっ」
冗談半分本気半分、小突きながら歩き進む姿は、七つの歳の差を全く感じさせない。
すれ違う人間に注目されるのもすでに慣れたもの。
一人でいても視線が注がれることは多いが、ふたり揃うと倍増する。さりげなく営業スマイルでかわしていたりもする。
その最中、ふいに背後から「伊吹」と声がかかった。
嫌でも会話は途絶え、足も止まる。
ふたり揃ってクルッと振り返ると、先程まで話題の的だった人物がふわりとした笑みをたたえて立っていた。
旭は咄嗟に伊吹の顔色を伺ってしまう。
一瞬驚きはしたものの、慣れたように伊吹も笑みを浮かべた。
「こんにちは。信楽さん、仕事?」
「うん。ちょっと打ち合わせがあったからね。…そちらは同僚の方?」
カフェで見かけたときは二人連れだったが、今は一人でいるとは、仕事の話が終わったと意味するのだろうか。
あの場で旭たちに近付いてこなかったのは、連れがいたからだと思われる。
旭に視線を向けられて、あらためて近くで見る姿にドキンと胸が鳴った。
おかげで自己紹介をすることを忘れた旭だ。
「違うよ。お客さん…かな」
伊吹に小突かれて、ようやく旭は名刺を取り出した慌てぶりだった。
「あっ、あっ、高島ですっ。賃貸物件を扱っていまして…」
「不動産会社…。……あぁ…」
旭から名刺を受取った信楽が、少しの間逡巡する仕草を見せ、それから納得したように頷いていた。
マズッた…と思ったのはその直後だ。
言うなれば、伊吹が信楽の元から立ち去るための協力をしたようなもので…。と、旭は不安を覚えたが、信楽は嫌な顔ひとつ見せなかった。
「伊吹、引っ越したって言ってたものね…」
伊吹と信楽の会話が見えない旭の脳裏にはクエスチョンマークが咲きほこっていた。
信楽の家から今のマンションに越したとばかり思っていたが違うようだ。
それに話もしていない仲かと思っていたが、その後の交流はあったのか…。

あまりにも良いタイミングで伊吹の携帯が鳴った。これ幸いとばかりに伊吹は断りを入れて旭たちに背を向け、数歩進む。
残された旭は、この間をどうしようかと思わず背の高い男を見上げてしまった。
信楽の視線は伊吹の背中を追っていたが、旭に気付いたのか見下ろしてくる。
「え、と、…あの…。…あっ、フリーライターをされているとか?」
いくら咄嗟とはいえ、また先に口が開いてしまう性格を恨めしく思う。
僅かに瞬きをされたが、またふわりと笑ってくれた。その態度に旭にあった緊張が少し抜けた。
「伊吹に聞いたのかな。…そうだ、名刺をもらいっぱなしだね」
信楽はまだ手にしていた旭の名刺をしまいながら、新しく取り出しては旭に手渡してきた。
『浅井信楽(あさい しいら)』。
視線を落としてはマジマジと眺めてしまう。こんな簡単に(?)相手の情報が手に入れられるとは考えてもいなかった。
「フリーライターなんていっても、ほとんど出版社と契約をとってあるから。あまりフリーとは言えないな」
「へぇ…。さっきもそれで?」
「そう。たまにこうして出てくるくらい」
「動きまくっている多賀さんと正反対ですね」
旭の台詞に信楽の眉がピクリと動いた。
一瞬の間があってから、「君はどこまで聞いているのかな」と逆に質問が投げかけられる。
これもまた、この時になって旭は、伊吹と信楽を関連付けた発言をしたのだと気付いた。
「あ…」
旭が焦りを隠さず黙ってしまうと、信楽から溜め息がひとつ零れた。
「まぁ、いいけどね…。伊吹が外回りで家にいない分、家の中のことはほとんど俺がやっていたけれど…。…今の生活、大丈夫なのかな」
最後は完全な信楽の独り言だった。
『家の中のことは』…と聞いて、すかさず旭が反応する。
「えっ?それって、掃除とか洗濯とかってことですかっ?」
旭の態度の何がおもしろかったのか、信楽は苦笑した。
「そうだね。料理も作って食べさせていたし」
「うらやましぃぃぃっ。えーっ、多賀さんってば何考えてるんだろーっ」
もちろんそれは別れたことを表していたのだが…。
信楽がふっとため息にも似た諦めの吐息を漏らした。
「『何を』…か…」
そしてまたしても旭は、素直に気持ちを表してしまう自分を呪うはめになった。

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コメント

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旭くん
コメントちー | URL | 2012-04-11-Wed 03:58 [編集]
信楽さん、やっぱり好き~。
安住さんみたいな匂いがする(笑)

優しくて、自分を抑えちゃうような人は
旭みたいにストレートにうっかり言っちゃう人が良いよ。ゴーゴー、旭!

伊吹と旭。二人、並んだとこ見たいなあ。
可愛い男の子二人(一人は男の人か)
しばらく幸せだろうな(笑)

Re: 旭くん
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-11-Wed 07:02 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 信楽さん、やっぱり好き~。
> 安住さんみたいな匂いがする(笑)
>
> 優しくて、自分を抑えちゃうような人は
> 旭みたいにストレートにうっかり言っちゃう人が良いよ。ゴーゴー、旭!

見守るタイプでは安住に似ていますね。
ただ信楽のほうが黙ってしまうタイプでしょう。
安住、黙っていたら弁護士なんてできないし(笑)
旭も若いせいか、元気いっぱいな子です。
営業なんですけど、本音をごまかせないというか、正直者というか…。
伊吹と似ていても、そこが違う点ですね。

> 伊吹と旭。二人、並んだとこ見たいなあ。
> 可愛い男の子二人(一人は男の人か)
> しばらく幸せだろうな(笑)

目の保養でしょうね。
写メ撮っちゃいましょう♪
コメントありがとうございました。

No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-11-Wed 07:06 [編集]
s様
おはようございます。

>この2人にくっついて欲しいなあ

旭はもう惚れ始めていますからね~。
どんな展開を踏むんでしょう。
お待ちくださいね。
コメントありがとうございました。

No title
コメントけいったん | URL | 2012-04-11-Wed 11:39 [編集]
まぁ~何てストレートな旭!(´・∀・`;)アラマァ
考えるより先に お口が動いちゃう人なの?
可愛い見た目は 伊吹と甲乙つけ難いけど、思ってる事を口にしない伊吹とは真逆か~!

信楽も あまり感情を表立てる人では無いから いい組み合わせかも♪
ただね・・・
信楽が今でも 伊吹の事を引き摺ってるからね。
これが 一番厄介な問題ですよ!d(・0・)
人の心は そう易々と切り替え出来ないし・・・
あっ伊吹は 変わり身が早かったけどね♪

変心・・・(/ ̄△ ̄)/ヘーン\( ̄_ ̄\)シン!\( ̄△ ̄)/トォー!!...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-11-Wed 16:56 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> まぁ~何てストレートな旭!(´・∀・`;)アラマァ
> 考えるより先に お口が動いちゃう人なの?
> 可愛い見た目は 伊吹と甲乙つけ難いけど、思ってる事を口にしない伊吹とは真逆か~!

真逆です(`・ω・´)ノ
似たようなふたりなんですけど、根本的な作りは全く違っているという…。
お付き合いが良かったのはお互いが"営業職"っていう職業だからなんでしょうかねぇぇぇ。
旭の行動的ともいえる態度は吉と出るか凶と出るか…。

> 信楽も あまり感情を表立てる人では無いから いい組み合わせかも♪
> ただね・・・
> 信楽が今でも 伊吹の事を引き摺ってるからね。
> これが 一番厄介な問題ですよ!d(・0・)
> 人の心は そう易々と切り替え出来ないし・・・
> あっ伊吹は 変わり身が早かったけどね♪
>
> 変心・・・(/ ̄△ ̄)/ヘーン\( ̄_ ̄\)シン!\( ̄△ ̄)/トォー!!...byebye☆

信楽の思いが…。・゚・(ノД`)・゚・。
旭のこの調子でグイグイ引っ張っていってくれれば、どこかで心の変化が?!
そう、伊吹の時のように…。
(確かに伊吹は変身が早すぎでしたが…。まぁ、もともと気持ちが離れていたしなぁ…)
伊吹が体で奪われたなら、信楽は何で堕ちるんでしょうかねぇぇ。
コメントありがとうございました。

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