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BLの丘
策略はどこまでも 7
2009-07-02-Thu  CATEGORY: 策略はどこまでも
「安住享利(あずみ きょうり)」と名刺にはあった。
個人で事務所を開いているらしく、安住法律事務所と表記されていた。
差し出された名刺を受け取りながら、思い出したように、那智も名刺入れを出した。
「あ、私、こういうもので…」
会社から支給された営業用の名刺を相手に渡す。
まさかこんなところで名刺のやり取りをすることになろうとは…と思う。だが、意外と見知らぬ相手に名刺を配り歩いていることを振り返ればこの男に渡すのもためらいはなかった。

『金谷建機 機械販売部』と社名が記された名刺を見て、安住の眉が一瞬寄った気がした。
「桜庭さんですか。やっとお名前を知ることができましたね」
気のせいかと思うほど、サラリと表情を戻され、嬉しそうな顔を向けられれば悪気も起きない。
この人は時々子供みたいに無邪気な笑顔を向けるんだよな…。
日本人離れした彫りの深い顔に一瞬見とれながら、那智はふと高柳を思い描いていた。

大学に通っていた時から、身近に「色男」と称される高柳がそばにいたせいで、どうも自分の中では「かっこいい男」の基準が高くなった気がする。
もちろん外見だけの話で、女じゃあるまいし、自分が特別な位置に収まるわけではないのだから気にすることはないと思うのに、何故か高柳と比べる癖が抜けなかった。
今、目の前にいる男だって、充分に女の人を惹きつける魅力を持っていると思う。
那智自身が女顔で貧弱で体格も良くなくて…とコンプレックスだらけと感じているから、余計に傍に寄る男を観察する癖がついた。
出会った男の全てが高柳と比べられていると知れたら相手だって気分を悪くするだろうと思うのだが、男を見る那智の基準はなぜか高柳久志だった。

たかが、食事時に隣同士になっただけで、普段なら名前のやり取りなどすることもない。
改めて自分の名前を口に出して確認されるように言われれば、頬に朱が走る。
「まさか、こんな…、お邪魔した上にコーヒーまで頂けるなんて思ってもいなかったものですから…」
「そんなに肩肘を張らないで。ゆっくりされていただければいいんです」
名刺交換をしたせいか、先程までの緩んだ雰囲気が緊張感の漂うものに変わったのを安住も感じたようで、さりげなく手を振ってみせる。
「強引にここまで連れて来ちゃったのは僕ですし。食後の話し相手と思って過ごしてください。喫茶店で一人で過ごしてもつまらないでしょ?」
「え、でもお仕事は…?」
「自由業みたいなものです。忙しかったら貴方を連れ込んでいませんよ」
安住は柔らかな笑みを浮かべると、「お茶菓子でも」と再び席を立った。

部屋の造りが一般家庭のリビングとは違うからなのだろうか。どこかの店に入ったようで居心地の悪さを感じない。
事務所を持つと言われても、ここには仕事に関するものが何も見当たらなくて、彼の仕事場はどこなのかといらぬ考えを巡らせてしまう。
奥に通じるのか、ドアが見えて、もしかしたらその奥が事務所としてある部屋なのかもしれない。それとも別の場所に仕事場があるのだろうか…。
自分から見える位置で、缶の中からクッキーを取り出し皿に盛って戻ってきた安住は、那智の前に皿を置いた。
「お客さんからの頂き物なんです。実はあまりこういうのは得意ではなくてね…。もし良ければ召し上がっていってください」
困ったように笑う姿は、なかなか消費できないでいることを匂わせていた。
先ほど定食を平らげてきたばかりだというのに、この扱いは食後にパフェを進められている女の子のようだと、内心苦笑する。
香り高いコーヒーをすすりながら、那智は差し出された皿に指を滑らせた。
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