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BLの丘
契りをかわして 26
2012-04-01-Sun  CATEGORY: 契り
惚れた弱み…とでもいうのだろうか。
自分らしさを保てる空間が心地良い。反面で嫌われることを恐れる。
移り気な態度でいた過去の自分自身を知るから、いつか甲賀も…と不安になるのは仕方がないことなのかもしれない。
その甘えたがりは夜の時間に顕著に表れていた。
人のぬくもりを求めてくっついていく伊吹はいつものことであったが、わずかな時間さえ離すまいとする態度は幼児のようでもある。
その態度こそ嫌われないかと思ってしまうのだが、甲賀は甘えられることが嬉しいようでもあって伊吹は救われていた。
年上の自分が年下の相手に…などという考えは、すでに取り払われている。

ベッドの上、枕を重ねた甲賀が上体を起こして背をもたれかけさせた。
煙草を取り出し火をつける様を、寝転がった伊吹が見上げている。
甲賀に見惚れるのは最初の頃からの癖といってもいい。
それは甲賀も知るところであったから、今更不思議がられることもなく、かといって悦に浸るわけでもない。
甲賀の動きを追っていた伊吹に、「伊吹も吸う?」と質問が投げられる。
これもいつものこと。
この当たり前になっている空間が嬉しいのに不安を運んでくる材料だった。
「うん…」
頷けば煙草を挟んだ指が口元に寄せられる。
一服分を与えて、甲賀の指は彼の口元に戻っていった。
この香りも好き…。伊吹は内心で呟く。
やめたはずの煙草が、今では日常的なものへと戻っていく。ただ、自ら購入しようとしないのは、体への害を考えているからなのか、甲賀と同じものを味わいたいからなのか…。

『言いたいことを言い合って…』
信楽は手紙にそう書いてきたけれど…。自分たちの失敗をもう一度伊吹にさせないための教訓として教えてくれたけれど…。
いざとなった時、自分も躊躇ってしまう人間なのだと改めて感じてしまった。
甲賀が、もし他の誰かを好きになったと言ってきた時に、自分は信楽のように黙って見送れるだろうか…。
共に住み始めてから、そばにいる感覚が強くなった分、離れる恐怖も増してくる。
伊吹は寝転がったまま、甲賀の太腿に身を寄せた。
布団に包まれているとはいえ、二人とも身につけている衣類はない。
伊吹の憂いに気付くのか、甲賀の掌が伊吹の髪を撫で上げる。サラサラと流れてしまう髪は、幾度も甲賀の指の間をすり抜けた。
自分を包んでくれるこの大きな手が好きだ…。

「伊吹、最近、変じゃねぇ?」
甲賀は隠すことをしない。心の中に巣食う不安を見破られては、単刀直入に切りこんでくる。
ここで伊吹が抱える脅えを晒してしまってもいいのだろうか…。
重荷にならないだろうかと思案することも、初めての出来事だった。
甲賀の質問に応えることなく、太い腿を指先でなぞる。ピクッと動く筋肉は、再び伊吹に火を点けそうだった。
「伊吹?」
また問われて伊吹は視線を上げた。
甲賀の視線がまっすぐに注がれてくる。
「隠すなよ。言いたいこと、言えって。それこそ、俺、すっげー頼りない奴みたいじゃん」
年下…。そのことは甲賀のなかでも重く圧し掛かっている現実なのかもしれない。
伊吹が甘えることで甲賀が満足してくれるところがある。知りながら黙ってしまった伊吹だった。

「甲賀…」
視線をそらした伊吹は甲賀の腰に腕を回して抱きついた。
灰皿に煙草を押しつけ、揉み消している姿が視界の端に映る。
「伊吹?」
もう一度問われた体は甲賀の力によって引き上げられた。脇の下に両手を入れられて、甲賀の太腿を跨ぐように座らせられる。
真正面から見つめ合う姿勢に、戸惑いを宿したのは伊吹のほうで…。その躊躇いすら甲賀は見逃しはしなかった。
「伊吹ちゃ~ん」
「『ちゃん』言うなっ」
「その調子でいいんだけど。何、悩んでいるんだかな~」
甲賀は伊吹を引き寄せては、額や瞼にくちづけを贈ってくる。
「俺、今、幸せだよ。伊吹とこうやって一緒にいられてさ。これをずっと続けていきたいと思っているし、何より頼られる存在でいたいんだけど。まぁ、伊吹からみたらまだまだの小便小僧かもしれないけどさ」
「そんなこと…」
「変に考えられると俺のほうが不安になる。やっとこうして俺の元に来てくれたのに、今度はどんな奴、引っかけてくるのかって…」
明らかな浮気を示唆されて伊吹は瞠目した。
甲賀にとって伊吹のほうがすぐに鞍替えする尻軽に捉えられている。
「こ…っ」
「っていうのは、ま、冗談で。信じてるよ。俺は伊吹を信じてる。辛いこととか苦しいこととか、この先いっぱいあるかもしれないけれど、俺は伊吹を守っていきたいし、一緒に分かち合って生きていきたい。そういうのじゃダメ?だから溜めこまないで何でも言えよ。嫌なら嫌で俺も言うし、歩みよらなきゃ、先にも進めないだろ」
うまくはぐらかされた部分がありもするが、考え方は伊吹よりもしっかりしている気がした。
お互いが抱える不安や心配。
“対等”という言葉が、甲賀ほど似合う男もいないだろうと胸を駆け抜けるものがある。
だからこそ好きになった。はっきりとした物言いも、潔さも、包んでくれる逞しさも。なにもかも伊吹の好みだ。
「俺も幸せ…。甲賀がいてくれて良かったって思う。…逆に、いなくなる時のことが怖くてたまらない…」
「はぁ?!」
抱きついて胸元に額を寄せた伊吹の体を力ずくで引き剥がされる。
覗きこまれる顔に、ようやく”照れ”が舞い降りた。
「伊吹ちゃ~ん、それ、どういうことですか。俺が浮気するとか思ってる?」
「そ、そうじゃないけど…」
「俺が一途な性格だって知ってるだろうがっ」
自分で言い切れるあたり、素晴らしいと思ってしまうところもありはするが…。
曲がらないまっすぐな甲賀の性格は伊吹だって良く知る。
伊吹はもぞもぞと体を動かしては、また甲賀の胸元に収まった。
「だって…。こんなこと思ったこともないんだもん…。言葉が怖い…なんて今まで思ったこともなかった…」
何から伝えたらいいのかと考える。
素を晒した今、喧嘩も時にはあるだろうが、そこから綻びてしまうことを考えたら恐怖しかない。
一瞬、甲賀の動きが止まった。じっと見下ろしてくる視線を感じる。

「伊吹…。俺、今、すげぇ告白、聞いたような気がするんだけど…」
「え?」
あまりにも無意識で自分が何を発したのかも伊吹は分からなかった。
見上げた先に、キョトンと浮かべた後、万遍の笑みが広がる。
「伊吹、可愛いっ、超かわいいっ」
ぎゅっと抱きしめられた腕があまりにも強くて、背骨が折れるんじゃないか…などと思いながら、だけどやっぱりこの強さにうっとりとする。
言いたいこと…。漏れる言葉も伊吹の武器になりそうだ。

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四月です。新生活ですね~。
…って、私は何も変わりませんが…。
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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-04-01-Sun 14:37 [編集]
年上の伊吹が ウルウルお目目で頼りない姿を見せられたら 不安だと素直な言葉を吐かれたら~~
甲賀、堕ちたな!更に深みに!
これって 底なし沼?もう抜け出せないよね!(*`艸´)ウシシシ♪

きえ様、私が始めて読んだBL作品は、Rotue Mさまの「天木眞希」です。
結構な衝撃を受けたのを 今でも記憶に残ってますね。
きえ様、ちーさんは 何かな?
( ̄ー ̄ん?)...byebye☆
もう!
コメントちー | URL | 2012-04-01-Sun 16:31 [編集]
たくさん書いたのに。
やだやだ。くすん。

伊吹さん、失いたくないなら言葉の出し惜しみはダメよ。ちゃんと、言わなきゃ。甲賀は大丈夫だから。
伊吹さん、まずは自分の殻からでようね?


私が最初に読んだのは、三次元BLのカリスマ(と、ニコ動のコメでありました)と言われるカップルのFFです。
そこで仲良くなった方にいろいろ教わりました。けいったんさまの書いていらっしゃった方も読みましたよ。本は、タクミくんシリーズですね。あの行間が。何してるの~みたいな。生々しい描写はないけど(笑)
隠し場所は、クローゼットみたいですよ。洋服の合間に隠すのかしら?
私?私は、借りてるといってます。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-02-Mon 07:22 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> 年上の伊吹が ウルウルお目目で頼りない姿を見せられたら 不安だと素直な言葉を吐かれたら~~
> 甲賀、堕ちたな!更に深みに!
> これって 底なし沼?もう抜け出せないよね!(*`艸´)ウシシシ♪

ふたりしてお互いにハマリまくっている様子。
ラブラブですね~、こいつら。

> きえ様、私が始めて読んだBL作品は、Rotue Mさまの「天木眞希」です。
> 結構な衝撃を受けたのを 今でも記憶に残ってますね。
> きえ様、ちーさんは 何かな?
> ( ̄ー ̄ん?)...byebye☆

ネットでBL作品が読めると知った時は驚きでした。
更に自分で書くようになっちゃうなんて…\(゜ロ\)(/ロ゜)/
初めて読んだのはン年前、同人誌でしたね。
高校生でしたけど…18禁平気で読んでいました(^^ゞ
その頃から書いてもいましたが。
社会人になってブランクがあって、現在に至っております。
私もいろいろな方の作品、楽しませてもらってます。
コメントありがとうございました。

Re: もう!
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-02-Mon 07:35 [編集]
ちー様
おはようございます。

> たくさん書いたのに。
> やだやだ。くすん。

もしかして消えちゃいましたか。
残念です。

> 伊吹さん、失いたくないなら言葉の出し惜しみはダメよ。ちゃんと、言わなきゃ。甲賀は大丈夫だから。
> 伊吹さん、まずは自分の殻からでようね?

伊吹、こんなこと初めてで戸惑っているんですよね。
甲賀はその体と性格からして、どーんとぶつかっても大丈夫なはずです。
殻から出る…、いっそのこと割ってもらえヾ(  ̄▽)ゞ


> 私が最初に読んだのは、三次元BLのカリスマ(と、ニコ動のコメでありました)と言われるカップルのFFです。
> そこで仲良くなった方にいろいろ教わりました。けいったんさまの書いていらっしゃった方も読みましたよ。本は、タクミくんシリーズですね。あの行間が。何してるの~みたいな。生々しい描写はないけど(笑)
> 隠し場所は、クローゼットみたいですよ。洋服の合間に隠すのかしら?
> 私?私は、借りてるといってます。

みなさん、色々読まれたり見られたりしているのですね。
隠し場所も様々なご様子で。
堂々と置いている私ですが…。
一応箱の中に入れて押し入れの奥に入れたりもしていますが、すぐに取り出せないのが難点ですね。
今は何冊くらいの本があるのかなぁ…。
コメントありがとうございました。

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