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BLの丘
淋しい夜に泣く声 22
2009-09-21-Mon  CATEGORY: 淋しい夜
先日のコメ欄に追記的なことを書きこんでおきました。読みたい方はどうぞ。


こんな時間になど決して現れたことのない榛名の姿がそこにあった。
髪を整髪料で撫で上げた顔は表情の全てを晒している。神経質そうに整った眉。相手を威嚇する視線。
全てを把握していたかのように驚いた顔もせず、冷静な表情を浮かべた榛名は、英人がこれまで一度も見たことが無いほどの傲慢さと冷酷さを湛えていた。
「何をしている?」

まるでこの場にこのふたりがいたことを知っていたように、その声は『確認』していた。
あまりにも鋭い視線に英人を抱いていた元樹の腕が外れた。英人は眼だけで刺されるのではないかという恐怖で体が震えた。

「この部屋に男を連れ込むなどいい度胸だな。この前散々啼かせてやったのにまだ物足りなかったのか?どこまで淫乱な体なんだ?」
怒鳴るわけでもなく、落ち着き払った低い声はより一層の恐怖心を生む。ニヤリとした笑みさえ、今は浮かんでいなかった。

まさか元樹の前でこんなことを言われると思ってもいなかった英人は、一番元樹に聞かれたくないと俯きながら両手で顔を覆った。
分かってはいたけど…。自分の厭らしさは分かっていたつもりだったけど、こうもあからさまに元樹の前で発言されたくなかった。
どこまでも貶められる自分の顔を元樹に見られたくなかったのと同時に涙がこぼれそうだった。

「ただ…、英人の絵を見に寄らせてもらっただけです…」
榛名の視線に怯んだのか、元樹の声も少し上ずったようだ。しかし言い訳の言葉は火に油を注いだようなものだった。
「もっと悪い。誰がここの存在を明かしていいと言った?おまえは俺の仕事を踏みつぶす気か」
地の底を這うような低い声はビシビシと英人に伝わってくる。感情任せに怒鳴られた方が、怒りの度合いが図れてマシだと思うくらい、次に何が起こるのか予想もできなかった。
それは元樹も同じだったようで、榛名の視線から逃れるのと同時に英人の体からも離れた。

元樹が怯んでも榛名の鋭い眼光は元樹を捕らえたままだった。顎でドアを促す。
「出ていけ。ここはお前のようなものが出入りできる場所ではない」
権力も実力も財産も何をとったって比較の対象にならない元樹には逆らいようがなく退出を余儀なくされていた。
榛名が元樹に危害を加えるとは思えなかったが、榛名の威圧感に立ち向かえる者などこの世に何人いたと言うのだろう。
「ごめん…」
英人に詫びるような、小さな小さな声が聞こえた。
最後まで英人は元樹の顔を見ることができなかった。
何故元樹が謝るのだろう…。英人に逢いたいと言ったことが?絵を見たいとここに来てしまったことが?英人を助けたいと言ってみたものの結局何もできなかったことが…?
唯一分かることは、たぶん二度と元樹には逢えないだろうということだった。
英人は元樹をこの部屋まで案内してしまったことが申し訳なく、嫌というほど後悔した。

カチャリと閉じられた扉に、元樹がこの部屋を去ったのだと知った。
それと同時に榛名の近づく足音が聞こえた。
「英人」
冷たく言い放たれた名前に、言いようもないほどの恐怖を湛えながら顔を上げれば、ヒュッという榛名の手が空を切る音がした。
パシンっという音と、激しい痛みが頬を走る。
平手ではあったにしろ、榛名にぶたれたのは即座に分かった。

「立場をわきまえろ。画廊に出した作品の隣に、『男娼崩れ』とキャッチコピーでも飾る気か?」

いかにキツイ態度を取られながらも、手を上げられたことのなかった英人は、それだけ今回の件が榛名の逆鱗に触れていることを知った。
叩かれた頬に手を添え視線を合わせることもできずに俯いた。涙がポロリと落ちた。
元樹とはそんなつもりはなかったけど、榛名から見れば同じことだ。
「ご、…ごめんなさい…」
「男を連れ込んで遊ばせているほどの余裕などない。描きたくなければ出ていけ。もちろん、契約を破棄したんだ。これまでおまえにかけた金の全てを清算しろ。賠償金も合わせて支払え」
咄嗟に謝ってみたが、英人にたたみ掛けるように告げられた榛名の言葉は当然のことながら厳しかった。

ここにいた一泊の宿泊代だって、これまで男を誘い込んだ一晩の収入では払えないだろう。
無理矢理連れ込まれたとはいっても、一度は契約書を交わした立場で榛名の言うことは尤もだった。

そう…。すべては絶対に榛名から逃れられないようにと、そのための契約であったのだと、改めて英人は自覚することとなったのだった…。

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