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BLの丘
契りをかわして 17
2012-03-23-Fri  CATEGORY: 契り
自分らしくいられる空間…。
好きだった信楽に対しても、いつの頃からか気を使う部分のほうが大きくなった。
伊吹を一緒に住まわせているせいだろう。信楽が差し伸べてくれた手は感謝するところがありすぎる。
それが返って伊吹の気持ちを締め付けるものとなった。
信楽のために…と無理をしても笑顔をふりまき、できるかぎり要望には答えてやろうと…。
ありのままの姿を晒すことになった甲賀には、今更隠すこともないし、その腕に甘えられるという逞しさに心が落ち着く。
その部分を甲賀は感じ取り、寄ってくる伊吹に靡いたのだろう。

煙草をもらうと頷くと、指の間に煙草を挟んだ甲賀の手が伸びてきた。甲賀と逢っていた時、甲賀はこうやって一服させてくれた。
一本の煙草を分けて吸うなんて、昔は嫌だったのに、甲賀に対しては寄り添っていけるような思いにかられる。
最初の時から、キスの気持ち良さと見た目の良さに甘えたふうに振舞ったのは伊吹だった。
演じていた仮面があった頃…。
その甘え方は現実のものとなってしまったが…。
逢ってセックスを繰り返すだけの日々に、私生活を探るような会話はなかった。
改めて問われて、気持ちまで聞かれたら、本音が零れていくようだ。
甲賀の口からはっきりと信楽の存在を告げられて、バレてしまったと分かった今、隠し通そうとも思えなかった。

「うん…、一緒に住んでいる人はいる…」
「その人とはどうなの?俺はただの浮気相手か?」
「あ…、と…」
言葉に悩んでしまう伊吹から視線は一瞬も反らされない。煙草を咥えたまま、じっと見つめてくる瞳が痛いくらいだ。
伊吹は俯き、どこから話そうかを悩んだ。長い話になる。
「甲賀のことは…、…」
言葉が続かなかった。
甲賀が大きな溜め息を一つついてから口を開く。
「世の中には何人もの人間を同時に相手にしているヤツもいるだろうよ。だけど俺は、伊吹を俺一人のものにしたいって思っているからこうやって全部言ってんだろ。それが無理だって言うのなら、さっきも言ったように、諦めることにするよ。いつまでも待たされたり焦らされたりするのは好きじゃない。最初、伊吹に相手がいるかどうかの確認もしないでけしかけた俺も悪かったけどさ。合コンになんて参加してくるってことは、相手がいないっていう意味に取るだろ。しかも俺の誘いに伊吹はのってきたし。伊吹が複数の人間を相手にしたいっていうなら、それはそれで構わない。でも俺はもう二度と伊吹とは逢わない」

曲がったことが嫌いな甲賀らしい発言だった。
恋人は一人にするべきという考えなのだろう。まともな意見だ。まっすぐなこの性格も伊吹が好きなところである。
甲賀には最初に確認もされていた。
『誰とも真剣に付き合う気はないのか』…と。
甲賀は最初から”真剣”になれる相手を求めていたのだ。
一度や二度のナンパをしての遊びならいい。しかし、呼ばれるたびに逢い続けたのは伊吹で、それを”付き合っている”という意味に取られていてもおかしくなかった。
伊吹が甲賀を避け始めたのは、信楽に脅されてからになる。
温厚な信楽が本気で怒ったのを知って、信楽にも、また、甲賀に夢中になっていく自分にもおびえた。
それでも今日甲賀に触れられて、体中の血が高揚に駆け抜けたのも事実。
“二度と逢わない”…。その言葉は伊吹を動揺させるには充分だった。

「俺…、どうしたらいいんだろう…」
「何が?思っていること、全部言えよ。伊吹の生活が判れば、俺だって考えるから。今は知らなさすぎる。伊吹とこれから…って考え始めた矢先に、いきなり逃げられたんだ。伊吹の考えが全然分からネェ」
はっきりとした物言いに、涙が浮かびそうになる。この力強さで、どこまでも伊吹を守ってくれることだろう。
伊吹のことを本気で思ってくれている態度が見えて、嬉しさに胸の奥に溜まっていた感情が溢れだしてきた。
「今一緒に住んでいる人は、昔俺が仕事を失った時から支えてきてくれた人なんだ。俺、誰かに寄りかかりたいタイプの人間で、それは見た目のこともあるんだけど、つい身体の大きな人に向かっちゃって…」
「俺みたいな、ってこと?」
「うん…。その時もきっかけは体から…みたいな関係でさ。誰かと付き合っていたい…っていう気持ちもあるのかな。だからあまり男がいなかった、っていう時代もないんだけど…」
「伊吹の外見なら、嫌でも群がってくるだろ。とっかえひっかえっていうのも分かるけどな」
「優しかったし、見守ってくれる人で…。だけど相手を得るためには、肉体関係ってどうしても必要で…。正直、俺、好きじゃなかったんだよね。でも必要なことだ、って思ってて…。気持ちいいもの、ともあまり感じなかった。そんな頃に会社が倒産しちゃってさ。仕事は見つからないし、アパートも住んでいられなくなっちゃったし、で、その人の家に呼ばれたの。けどいつの間にか、住まわせてもらっているっていう意識の方が強くなってきちゃって…。重荷になったのかな。感情はどんどんと離れていくようになって、浮気っていうか、気になる人ができるとそっちに目がいくようになっちゃったの」
「俺の時もそれか…」
真剣に話を聞いてくれていたところで、甲賀がためいきをつきながら煙草を灰皿に押し付けた。
甲賀のためいきの理由は、出会いのことか、体のことか…。
伊吹は慌てて訂正の言葉を述べる。
「でも甲賀は違った。あんなふうにセックスにハマったのは初めてのことで…。…だから、…離れられなくなった…」
甲賀の眉が、ピクリと動いた。
つまり、他の連中は、伊吹が確認したいがために、一度二度の付き合いで別れたことを伝えている。
そして、信楽に対しての後ろめたさがあるから、早々に帰っていたことも…。

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