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BLの丘
契りをかわして 16
2012-03-22-Thu  CATEGORY: 契り
借りた風呂。出てくれば香ばしい匂いが部屋の中にあった。
一日働いた胃袋を、嫌でも刺激してくれる。
料理を作ったらしい姿が、キッチンから居間へと動いていた。
信楽が料理をする姿はすでに見慣れていた。肉体労働をこなす甲賀までそのようなことができるとは想像もしていなかった。
というより、出迎えられた嬉しさが胸に湧いてしまう。
ただ、ヤるだけの関係だと思っていたのに…。

「メシ、まだだろ?あ、ビール飲む?作ったって言っても大したもん、なーんもないけどさ。つまみくらいにはなるだろ?」
そんなに長居をする気はないつもりだった。
この環境は信楽が用意してくれた部屋にも似ている。
いや、それ以上に期待する体と、気さくな雰囲気がはびこっていた。
ここにいたら危険だと、警鐘が鳴らされた。だけど、去れない…。
「あ…、俺…帰るし…」
「はぁ?!ふざけんじゃねーよ」
機嫌良く甲斐甲斐しく動いてくれる反面で、突然表された不機嫌な態度。
随分と長いこと、甲賀を放ったのは伊吹だったが…。
期待を持たされる言葉に動揺が走る。
本当の意味で出迎えられたら、伊吹は確実に、完全に、信楽を裏切る…。

「だ、だって…」
「伊吹。何しにここに来たわけ?俺を何だと思ってんの?」
「え…?」
「いいから座れよ。話、しよう」
伊吹の意見なんて聞いていない。
風呂上がり、甲賀の大きなシャツを着ただけの伊吹は、このままで外にも出られなかった。
それまで見越して、先にバスルームを使わせてくれたのかと脳裏を巡る。
強引なのはいつものことかもしれないけど…。その強さが嬉しくて悲しくなる。
どこにいればいいのか分からない伊吹に向かって、「座れ」と命令してくる年下の、逞しい男に、逆らえず座りこんでしまう。
小さなテーブルの上は適当に食材を合わせたと分かる、男らしい料理が数品あった。
信楽のような繊細さはない分、逆に『適当でいい』と落ちつけてしまう。
そして添えられたビールはグラスに開けられることもなく、缶のままで出される。
気遣いのなさが、こんなに心地良いものなのだろうか…。

「今日、逢えて良かった。伊吹、いくら連絡したって『忙しい』の一点張りだっただろう」
これまで過ごした無言の時を責められる。
信楽にされた、してもらった何もかもが無言の圧力をかけてきて、伊吹を『真っ当』にさせようとしていた。
恋人がいる人間が、他の男に頼るのはおかしな話だと…。
そして、それに倣った自分。
一番の羞恥を知られている今、信楽に逆らうことなどできない。
それを甲賀に伝えられるかはまた別問題だが、問われては言葉に詰まってしまう。
缶ビールを傾ける手のひら。煙草の煙をくゆらせる指。
全ての仕草が伊吹の視線を捕らえ、どうしようもない胸の高鳴りを生んだ。
「なぁ、伊吹。俺のこと、どう思ってんの?何、隠してること、あんの?伊吹が生きている世界の何もかもを教えろよ。俺だって話す。そのためにここに伊吹を呼んだ。いつも俺の腕の中で善がって、満足げに果てる姿を見るのに、気付けばいつも朝、いなくなってる。前にも聞いたよな?どこ帰ってんの?伊吹を縛っているものってなんだよ?俺はそれをどうにもできねぇの?」

まさかの言葉がボロボロと吐き出される。
ただの体の関係だけではないと告げてくる言葉たち…。
ついさっき、居心地が良い、と感じてしまった上で聞かされたら、かぶったはずの仮面が剥がされていくようだ。
気安く…、気軽に…、軽薄な関係を続けようと思っていた伊吹に正面から切り込んでくる羅列。
信楽と甲賀は全く異なる存在。
どちらに身を任せたらいいのかと悩んでいた先で告げられた言葉はあまりにも衝撃が大きい。

「こう…が…」
「俺、苦しめたか?この連絡の取れない間、何を思っていたと思う?伊吹を奪うことだよ。今、一緒にいる人がいるんだろ?だけど伊吹は俺のところに来た。その意味は?ただの遊びだったら今のこの瞬間に別れてやる。もう二度と伊吹に連絡はしない。仕事の話はまた別。伊吹の本音を聞かせろ」
年下なのに、力強い言葉ばかりが発される。
堂々とした態度も、はっきりと内情を告げてくる姿勢も、信楽とは違う。
ただ、守ってくれるだけの人…。奪うほどの力をつけた人…。
物足りなさを、伊吹はいつも感じていた。

「こ…」
「俺、伊吹より頼りないかもしれないし、稼ぎもないだろうよ。だけど伊吹の可愛さは、本当、好きだ。その歳を感じさせない元気なところも、ひとり抱え込んでしまいそうになる態度とか。何もかも、全部包んでやりたい。年下の俺が『守ってやる』っていう表現は変かもしれないけど、マジで。最初っから伊吹は可愛かった」

伊吹は声を出せなかった。
噛みしめるように幾度も甲賀の台詞を振り返った。
一番欲しかった言葉が、今聞こえた…。
だけど、どう反応して、どうこたえてやればいいのだろうか…。

甲賀は急いで返事を求めてこない。手にした缶ビールを煽り、煙草を飲む。
伊吹が心の整理をつけられる間を、待っていてくれるようだった。
伊吹も無言の間にビールを口にした。
何か分かるのか、甲賀が「煙草、吸う?」と尋ねてくる。
一呼吸おけ、そういうことなのだろうか。
隠れている自分。それを引き出されるかのようだった。
煙草を辞めた最大の原因は、嫌煙家だった信楽のためだった。

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コメント | | 2012-03-22-Thu 09:08 [編集]
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No title
コメントけいったん | URL | 2012-03-22-Thu 09:12 [編集]
斬り込み隊長剣山!(`・ω・´)ゞビシッ!!
気持ちの好いほどに ズバズバと斬りかかってくるね~甲賀殿は♪

伊吹、そんな脆い甲冑なんて あっという間に ボロ屑同然だね!

男だったら 褌をキリリと締めて覚悟しなされぇ~~
トリャァ!!(*`・д・)_/☆( ゚ω゚)ヒィッ!...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-03-23-Fri 08:53 [編集]
秘コメ様
こんにちは。

> 甲賀の引力強すぎて伊吹でなくても吸い寄せられてしまいそうです。

強引とも言えますけどね~(笑)
信楽が大人しいってか控え目というか、伊吹にしてみたら物足りなさもあるのかもしれませんね。

> あ、でももうちょっと言い訳。
> 伊勢神宮のそばにも多賀町って確かあるんですよぉ。

へぇ、そうなんですか~。
同じ町名って全国にありますものね。
お勉強になりました。

> あのコメントを書いたすぐあとに、琵琶湖の西側に一泊旅行に行ってきました。
> 近江八幡と彦根と。
> 途中、関ヶ原あたりでは伊吹山も車窓から見えました~
> 真っ白でしたよ、伊吹山だけ。
> 信楽と甲賀の間で人間的な幼さゆえに右往左往している息吹があんな風に落ち着いて、日差しの中で白く輝けるようになる(んですよね?w)過程を楽しみにしてます。

お~、旅行いいですね~。
伊吹も本能のままに生きている部分があるんですよね。
落ち着きがないというか。
輝けるようになるでしょうか。

> それにしても甲賀と伊吹と。
> 体の相性だけが良かったのではなくて、精神的にも相手に求めるものがぴったりだったんですね。

甲賀は可愛がって包んでやりたいタイプだし、伊吹はまず体で包んでくれるか、そして甘やかしてくれるかを求めますからね~。
そんなこんなを確かめていたこの半年だったんでしょう。
でもそこに信楽がからんじゃったからね…。
コメントありがとうございました。

Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-03-23-Fri 09:02 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 斬り込み隊長剣山!(`・ω・´)ゞビシッ!!
> 気持ちの好いほどに ズバズバと斬りかかってくるね~甲賀殿は♪

甲賀はやっぱり行動派なんですよ。
感情を正直に表すし。

> 伊吹、そんな脆い甲冑なんて あっという間に ボロ屑同然だね!
>
> 男だったら 褌をキリリと締めて覚悟しなされぇ~~
> トリャァ!!(*`・д・)_/☆( ゚ω゚)ヒィッ!...byebye☆

もう伊吹、ボロボロです。
営業で培った鎧も仮面も屑です(笑)
自分を誤魔化さないでね。
コメントありがとうございました。

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