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BLの丘
契りをかわして 3
2012-03-08-Thu  CATEGORY: 契り
問われたことに何と答えようか言葉を探した。会話をスムーズに繋げないなど久し振り過ぎる。伊吹は焦りすら感じた。
束の間の沈黙が流れ、先に声を発したのは甲賀だった。
「気合でも入れてたの?」
誰か狙いをつけた人物が見つかったのか、という意味を含ませた発言に、咄嗟に首を振る。
真逆の行動だ。
「まさかっ。相手なんか探してもいなかったしっ」
「え?」
次に動きを止めたのは当然甲賀のほうである。彼の目が見開かれる。
焦りとは、余計なことを、本音を口走らせてしまうものなのか…。
「ぁ…」と小さく呟きながら、伊吹はあからさまに視線を足元に落とした。
視界の隅で甲賀が煙草を揉み消す動きを取っているのが見える。それから大きく息を吐き出す…、溜め息が聞こえた。
「俺、多賀さんに悪いことしちゃったかな。本当は迷惑だったんじゃない?誘ったこと…。義理で返事してくれたんだ…」

言い当てられて返す言葉もない。普段であればもっとうまく立ち回れているはずなのに、今は何一つ、言葉が浮かびすらしない。
伊吹が黙るのは相手の言う内容を肯定していることになる。
気分を害しているのは確かなことだった。最初の段階で断ったところで甲賀が機嫌を悪くするような人物ではないとすでに知っている。
そうすればこんな気まずさを味わうこともなかった。
今までの砕けた、親しくしていた雰囲気が粉々になっていくのを肌で感じた。こんな失敗はここ最近したことがなかった。
「途中退場したって誰も気付かないから、もう帰る?相手を探していないっていうことは、すでに特定の誰かがいるってことなんだろ。こんなところにいたらマズイんじゃないの?」
何かを言わなければ…と必死に脳裏を巡らせていたときに耳に届いたのは冷たく言い放たれる声。そして間違った情報。
伊吹を気遣ってくれる台詞を吐きながらも、その口調は苛立ちを含んでいた。
性格もあるのだろうが、甲賀は不機嫌さを隠すようなことはしない。営業の伊吹と大きく異なる。
せめて間違った思いくらいは訂正したい焦燥にかられる。
「ちが…っ。お見合いだとは思わなかったから…っ。石部さんに合コンって聞いて、ホント軽い気持ちだったんだ。気楽におしゃべりするくらいのものかと思ってて…」
お見合いパーティーなどに行ったこともないからどんなものかも知らないが、見聞きする情報を寄せ集めるともっと堅苦しいものが浮かぶ。確かに今日のコレはそれらに比べたら”気軽”なものの部類に入るのだろう。
人によって捉え方はそれぞれだ。
甲賀も伊吹の言いたい”違い”に気付いたらしい。感情任せにならず察してくれることは嬉しい。
「そりゃ、俺の言い方が悪かったけどさぁ。誰とも真剣に付き合う気はないってこと?」
声に混じっていた鋭さが抜けたように聞こえる。
自分でもまた墓穴を掘っているのが分かった。遊び感覚で相手をコロコロと変えていく軽薄な人間に捉えられる。
「そんなことないよ。合う人がいれば…とは思うし…」
「じゃあ何で今…」
伊吹自身、口にしていることが矛盾だらけだと頭を抱えたくなる。
ここまで誤魔化しきれないのは珍しい。どうしてこうなってしまったのか…。

ふと甲賀の下ろされた指先に視線が向いた。
本音ついでに甲賀の仕草に気を取られるような人間なのだ…などと発言してしまったら、この先どうなってしまうのか…。
甲賀は勘が働くのだろうか。
口を閉ざしてしまった伊吹に臆することなく質問を続けてくる。
「人には言えない事情があるとか?」
あまりにも広範囲を示す発言に頷いたらどう捉えられるのだろう。伊吹は相変わらず返事に窮したままでいた。
「それって、たとえば、こういうこと?」
見下ろしていた先で、甲賀の足が伊吹に近づいてくるのが見えて、また、続いた問いかけに「え?」と顔を上げた。
真正面に立たれて、改めて甲賀の背の高さを認めた。170センチにも満たない伊吹に比べ、彼は190センチを越えているはずだ。
小柄な伊吹の顔に影ができる。
甲賀の動きは止まらず、瞬き一つできないでいる伊吹の体に触れることもないまま、唇同士を重ねてきた。
煙の味のする舌はすぐに伊吹の口腔内に入り込んできた。
舌上を舐め、歯列を探り、上顎をくすぐる。
伊吹の体を押さえないのは、逃げたかったら逃げろという意味だろう。
だけど絶妙に動き回る深いくちづけはあまりにも気持ち良くて、伊吹は甲賀をはね飛ばすことなどできなかった。
それどころか、不安定に揺れる体を支えてほしくて自ら手を伸ばし、甲賀の太い二の腕を掴む。
伊吹の行動を知った甲賀の口端が上がった気がして…。直後には逞しい胸板に密着し背中に腕が回された。
唇は離れない。
夢中で追いかけたのは伊吹だったのか…。
先程までとは違う荒々しいくちづけに酔いしれた。
…こんなキスは知らない…。キスが、こんなに気持ち良く興奮するものなのだと、35年間生きてきた人生で初めて経験した。

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コメント

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あらっ!
コメントちー | URL | 2012-03-08-Thu 08:46 [編集]
展開、早い。
キスはね、好きな人とするから気持ち良いんだよね。

それにしても、身長差!
いやん、素敵です。
萌え萌えですよー。

伊吹さん、いろいろされて(笑)
アタフタ((ヽ(;´Д`)ノ))アタフタ
コメントけいったん | URL | 2012-03-08-Thu 11:39 [編集]
新作品は、じっくり読んでからコメを書くのですが。

予想だにしなかった甲賀の言葉、態度、行動に...
ヱ━━Σ(゚ω゚*)━━ッ!?って!
で、急いで書いております。ヵキヵキ_〆(・ω・;)

伊吹の片思いじゃないのね~~~(*´-`*)ゞ ポリポリ...byebye☆
Re: あらっ!
コメントたつみきえ | URL | 2012-03-08-Thu 12:24 [編集]
ちー様
こんにちは。

> 展開、早い。
> キスはね、好きな人とするから気持ち良いんだよね。

展開、早いと思います。まだ3話目でキスまでいったもんね(〃▽〃)
今までとは違うキスを味わっちゃいました。
どう、動くんでしょうね、伊吹は。

> それにしても、身長差!
> いやん、素敵です。
> 萌え萌えですよー。
>
> 伊吹さん、いろいろされて(笑)

萌え萌え~~~♪ナカマ( ^^)人(^^ )ナカマ
身長差、いいですよね~。
もうね、なんかね、見上げている(見下ろしている)雰囲気がいい!!
私の萌えが伝わっているところがますますいいっ!!(笑)
さぁ、このおふたり~~~。
コメントありがとうございました。

Re: アタフタ((ヽ(;´Д`)ノ))アタフタ
コメントたつみきえ | URL | 2012-03-08-Thu 12:34 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 新作品は、じっくり読んでからコメを書くのですが。
>
> 予想だにしなかった甲賀の言葉、態度、行動に...
> ヱ━━Σ(゚ω゚*)━━ッ!?って!
> で、急いで書いております。ヵキヵキ_〆(・ω・;)
>
> 伊吹の片思いじゃないのね~~~(*´-`*)ゞ ポリポリ...byebye☆

大慌てなけいったん様のご様子が…。
皆様を驚かせられるのはちょっとした喜びです(←)
この先もいっぱいご想像(妄想)していてください。
今は何も語らないでおきます(o´艸`o)
コメントありがとうございました。

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