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BLの丘
過ぎてみれば 12
2012-02-29-Wed  CATEGORY: あやつるものよ
仕事を辞めてまでついてくるほど吉良に入れこんでいるのか…、という誤解を西春に与えてしまったが、今更言い訳する気も起きなかった。
もちろんそれを口にすれば、退社の理由を更に突っ込まれて聞かれると思ったからもある。
過去の職場の話は避けたいことなのだが、吉良が関わる限り、切ることのできない話題になる。
過去の失敗はある程度吹っ切れた今だから、以前ほど落ち込むことはないにしても…。
西春は唸り声をあげている。
「うーん。俺たち、比べられるなぁ」
「なにが?」
「今までの経験だけでなく、あの会社にいる人がそばにいるわけでしょ。デキの違いがさ」
「そんなことないですよ。別に思うほどすごい会社じゃないし…」
「いやいやいや。そこ、違ってるから~」
激しく否定されて千種は黙るしかない。
入社試験の難しさは自分も経験してしまったものだ。
だからといって、会社の大小で人間たちまで比較したくない。
「まぁ、吉良のデキの良さは俺も認めてますけど…」
「何、惚気?」
会社の話題から逃れたい千種を感じ取ったのか、西春はさりげなく反らしてくれた。
茶化されて、恥ずかしいことをまた口走ったと後悔した。
仕事については慎重になるが会話となると調子が狂ってしまう。それとも砕けた会話が続いた午前中を過ごして、気が抜けているからか…。
「もう…っ。仕事ができるっていうことで、ですよっ。あれで”部長”まで伸し上っているんですから」
「えぇぇっっ!!!」
静かに話をしていたはずなのに、西春の絶叫で注目をあびた。
ただでさえ、新入社員の千種は関心を示されることが多かった。噂はあちこちで広がっている。
中途入社ということに加えて、瀬戸の後を継ぐという意味で、だ。それだけ瀬戸の存在は大きい。
「ちょっ…っ」
そんなに驚かれることだっただろうか…。いや、顔を見られている以上、驚かれて当然かもしれないと、千種はまた後悔する。
「な、な、…っ、えぇぇっ?!」
半信半疑であるのは態度を見れば理解できた。思えば、詳しい年齢は聞いていないが、西春と吉良はそう歳も違わないだろう。
勝手に30代の半ばと見ていたが、吉良も40歳にはまだ遠い。
その年で役職ともなれば驚かれるものだ…、と知ったのは、やはり発言の後で、である。
自分は過去の職場のこともあるし、今の生活もあってすっかり慣れきっていたけれど…。というか、忘れていたけれど。
「西春さん…」
「あ、ごめん…」
周りの状況にも気付いたのか、西春が一旦声をひそめてくる。
西春だって注目の的は避けたいだろう。
それから盛大な溜め息を一つ零してしばし黙りこんでしまった。なんと声に出したらいいのか分からない…といった感じだった。

千種も見守りながら、味噌汁の椀を持ち口に含む。
「はぁぁ~…。でかい会社の中で、更に優秀な人でしたか…。…あー、もう、絶対に、確実に比べられるなぁ…」
再度繰り返され、すっかり気落ちした雰囲気に、「そんなことありませんってばぁ」と口にするしかなかった。
そこまで知られては、午後にやってくる話題が目に見えるようだった。
プライベートのあれこれをわざわざ話のネタにするほど人が悪い環境ではないだろうが、これから長く付き合っていく中で、徐々に明かされていくことは多い。
それがいつの時期になるか、というだけで。
仕事の合間の世間話には、日常の色々なことが含まれており、もちろんプライベートな内容も平気で話をしていたりする。
それだけ気を許した職場の環境が良いものなのだと判断できたが。
「もう、すっぱり諦められるわ」
「何を?」
「安城君を、だよ。前から言ってるじゃん。スーパーで見かけた時から可愛いなって思ってたって」
「はぁっ?!」
その話は先日の飲み会の席で…だったのか…。
以前から…、と言われても…と、全く記憶にない千種だった。
ただ、今言えることは、早々に知れた千種の私生活で、頭の切り変わりが早かった西春がいた、ということで…。
この人の性格が後腐れないものだということ。
サバサバとした性格は千種も嫌いではないが、吉良に聞かれたらまた一悶着ありそうだ。
…あ…、と千種はふと休日の出来事を思い出す。
酔っ払って帰宅した次の日、やけに吉良が親切で気前が良かった。
西春に前の晩会った時、彼の感情を吉良は感じ取ってしまっていたからなのか…。恐るべし、吉良…。
対抗心バリバリだなぁとあきれるやら…。
もちろん嬉しさでもあるけれど。
内心で、ホント何でもできる人だな…、と感心していたことは、誰にも内緒の千種なのだった。

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-02-29-Wed 13:37 [編集]
吉良さん家の奥さん千種は、どうも人の恋愛感情に疎いようで(笑)
こりゃぁ ダンナさんも大変だわ~ヤレ┐((-ω-。;)(;。-ω-))┌ヤレ

今回は『吉良ダンナ様がぁ~ライバルをぉ~一人ぃ~蹴落としぃ~♪』で 見事に勝利を勝ち取ったようですね!
おめでとうヾ(@^∇^@)ノ

εε=====≡゙ヽ(#`Д´)っ┌┛))ウラァァァォリャ⌒バタッ ○┼< ~ドテッ...byebye☆

やっぱり
コメントちー | URL | 2012-02-29-Wed 18:34 [編集]
狙われてた!千種(笑)

可愛いんだ、千種ちゃん。
いや、可愛いから旦那さんが付いてきなって言ったんですよね。

西春さんも、良い男みたいなのに。
なんで、良い男は・・・

う、ここはそういうとこでした。
でもさあ、ズルイよなあ。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-03-01-Thu 10:20 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 吉良さん家の奥さん千種は、どうも人の恋愛感情に疎いようで(笑)
> こりゃぁ ダンナさんも大変だわ~ヤレ┐((-ω-。;)(;。-ω-))┌ヤレ

どこで狙われているか自分で気付けないなんてね~。
旦那様は大変です。
今回すんなり引いてくれたのは、すでに吉良からの牽制を西春が理解していたからでしょうが。
あちこちに有刺鉄線張り巡らせないと~。

> 今回は『吉良ダンナ様がぁ~ライバルをぉ~一人ぃ~蹴落としぃ~♪』で 見事に勝利を勝ち取ったようですね!
> おめでとうヾ(@^∇^@)ノ
>
> εε=====≡゙ヽ(#`Д´)っ┌┛))ウラァァァォリャ⌒バタッ ○┼< ~ドテッ...byebye☆

見事勝ち取りましたね。
何事もなく良かったです。
コメントありがとうございました。

Re: やっぱり
コメントたつみきえ | URL | 2012-03-01-Thu 10:24 [編集]
ちー様
こんにちは。

> 狙われてた!千種(笑)
>
> 可愛いんだ、千種ちゃん。
> いや、可愛いから旦那さんが付いてきなって言ったんですよね。

可愛いから旦那も狙っていたんでしょう(笑)
付いてこないか…は一種の賭けでしたけどね。
手に入れたもん勝ちですね。

> 西春さんも、良い男みたいなのに。
> なんで、良い男は・・・
>
> う、ここはそういうとこでした。
> でもさあ、ズルイよなあ。

西春さんにもねぇ。誰かいい人を紹介(?)してあげたいです。
今回、吉良を動かすための火付け役みたいになっていますから。
良い男揃い(o´艸`o)
コメントありがとうございました。

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