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BLの丘
過ぎてみれば 11
2012-02-28-Tue  CATEGORY: あやつるものよ
西春はクスクスと笑みを浮かべる。完全に固まった千種は呆然と目の前の人を見つめるしかなかった。
「安城君の意外な姿、第二弾ってとこかな」
「な、…に…」
「宴会の席でも驚かされたけどさ。なんだか自然な姿が見られたって感じだったよ」
片っ端から見せた『本性』らしい…。
宴会でズバズバ物申し、吉良の前で酔った勢いで縋り、甘え…。
とてもではないが見られて嬉しいものではない。
吉良も千種の動きを止めてくれるとか、さっさと引き去ってくれるとかしてくれればいいのに~と、また自分の行動を棚に上げた考えが浮かぶ。
改めて告げられて羞恥にますます顔が火照った。
そんな千種を気遣うように、西春のからかわない笑みは続く。
「まだまだ緊張するところはあると思うけどさ。自分の殻を作っちゃうのは後々大変になっちゃうよ。少しずつでも出して見せていけるのがいいんじゃないかな」
プライベートまで晒せとは言わないけどね、と続けられる。
確かに入社したばかりで片肘張ったところがある。
瀬戸の後を継ぐということもあって期待されていることも感じているし、自分も何とかしたいと気負いはついてまわる。
切羽詰まった状況で瀬戸以外の社員となかなか触れあえなかった環境も、知らずとストレスになっていたのだろうか…。
そんな中、そっと諭してくれた西春だ。

「うちの会社、そんなに堅苦しくないから。…えと…、前のとこ、やっぱり、…大変だったんだろ?」
さりげなく過去を聞かれて、どう答えたらいいのだろう。
名前は良く聞かれる大手企業だった。その名もすでに社員の中には広がっている。
それもある意味、プレッシャーになっていたのかもしれない。
「別に…。そんな、大したこと、してなかったし…」
「そうなのか…。なんか、…俺の勝手な思い込みかな。…とりあえずさ、この前のような安城君でいてほしいなって、ちょっと思ってね」
なにげなく気を使ってくれていたのが感じられる。
傍目から見る千種とはどんなふうに映っていたのか…。こうやって真正面から言ってもらえるのもいい。
こんなところもこの地の人の良さなのか。
思えば、知りあった葉栗や天白も気兼ねなく付き合ってくれる人だった。会った時から平気で口に出してくる。
一応、…一応、会社という環境があったから、ここまで大人しく見守ってくれたのかもしれないと、人の温かさに触れた気分だった。
「えぇ…。頑張ってみますけど…」
「頑張る?だから~、そんなに堅苦しく構えないでって」
「はは…」
にこやかに笑われて、だけど返せる笑みは引き攣ったものにしかならない。

手の止まっていた定食に箸が向かうのをながめて、千種も食事を再開した。
「そういえば、相手の人、なんだか貫禄あったね」
話が吉良のことに戻されてむせ返りそうになる。
あまり話題にされたくない内容なのだが、全てを知られた今は、反らすこともできなくなっていた。
「え、あぁ、吉良…ですか…」
『貫禄』という言葉もそれとなく似合うな…などと脳の隅っこで思っていたが。
何せ、あの歳にして役職だ。テキパキと物事を進める能力は、一緒に働いていた時代も、一緒に住む今も感じることは多い。
「だからって『老けてる』とか言わないでよ」
「そんなこと、言いませんよ~」
吉良と会社の人間との間に気まずさが残るような発言ができるはずがない。
少しだけ気の抜けた千種が即座に反論すると、「あぁ、その調子~」といった風に会話を続けていく。
「なんだか安城君が頼ってこちらまで来たのも頷ける気がした。まぁちょっと悔しい気持ちも混じったけどね」
千種は少しの誤解があることに気付く。
西春の中では、吉良はもともとこの地にいた人間になっているようだ。
後々の問題点を避けるためにも、物事の誤解はといておいたほうがいい、と何故だか判断された。
「つか…。吉良、異動だったんですよ。今、こっちの支社になって…」
西春との会話に一瞬の間があく。
西春に浮かんでいたはずのにこやかな笑みが消えた。箸の動きも止まった。
千種はどうしたものかと首を傾げた。
「ん?」
「…ってことは、なに…。もしかして”あの会社”の人なの…?……え、じゃあ、安城君はそれを追ってきたってこと…?」
言わなくてもいいことを口走ったと気付いたのは、直後だったけど。
またもや事実ではない想像をさせたが、『恋人』にした今となっては反論の余地はない。
ここに入社した頃、過去の失敗が噂で流れないかと心配した千種に、平然と『辞めたことは追いかけてきたことにすればいい』と言い放ってくれた吉良の言葉が浮かぶ。
自分の失態とはいえ、何もかもが吉良の計画通りに進んでいくような気がして、千種は頭を抱えたくなった。
過去の会社を何故退社したのかは、全ての人間にとって最大の疑問点だったのだが、まさかその言い訳が事実となって社員に知られるなど…。
「そりゃ…、敵わないはずだ…」
西春が呟いた言葉の意味さえ、今の千種には聞こえなかった。

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コメント

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ふふふ
コメントちー | URL | 2012-02-28-Tue 19:47 [編集]
千種、また違った意味で抜けてて可愛い。まだまだ、旦那さんは転がせられないよねー(笑)

千種から目が離せません!
Re: ふふふ
コメントたつみきえ | URL | 2012-02-29-Wed 10:28 [編集]
ちー様
こんにちは。

> 千種、また違った意味で抜けてて可愛い。まだまだ、旦那さんは転がせられないよねー(笑)
>
> 千種から目が離せません!

しっかりしてそうなのにね~。
どっか抜けているんですよ。
吉良に敵う日は来るんですかね~。
コメントありがとうございました。

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