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BLの丘
新しい家族 39
2012-02-16-Thu  CATEGORY: 新しい家族
ベッドの中で泣きじゃくる日生がいる。
正面から抱き合い、幾度その背を撫でても唇で嗚咽を塞いでも、漏れる声は止まらなかった。
互いに着たパジャマはすでに日生の涙でぬれてしまったといってもいい。
横向きになってお互いの体温を感じるはずだったとき…。
優しく回した日生の首の下の腕、袖は、しっかりと湿ってしまった。
和紀は真実を伝えることを悩み続けた。
ゆるやかにやってくる未来なのだから、なにも慌てさせるようなことは言わなくてもいいのではないかと…。
いつか…。その『いつか』がいつになるのか、意識として捉えられることは、もしかしたら覚悟を決められていいのかもしれないと、重い口を開く。
誰しも、やがて味わう未来なのだと…。

「わ、き、く…、っ和紀くんっっ」
自分に生きる幸せを与えてくれた周防の存在は、日生の中であまりにも大きなものなのだろう。
父親という存在として、自然とそこにいた和紀とは受け止め方が違っているのかもしれない。
虐待されていた日々の中に突然現れた救いの神…。生きる喜びを教えた人物…。
いつまでもあるものではないと…、残酷な告知をするようだった。
それは、周防の病名を告げられた時の自分より、もしかして受け止め方は辛すぎるのではないか…。
ぎゅっと抱きつかれて、「大丈夫だよ」と気休めの言葉だけが漏れる。
あの、小さかった時から、この体は全て守りぬこうと決めた。
父親はやがていなくなるものだと覚悟ができていたから、精神的に余力のある自分が、今は泣いてしまう日生を勇気づけたい。
「なぁ、ひな。悲しむ顔より、笑顔を見せて、見送ってやろうよ…」
それが何年先の事かはわからないが、先が見えたと分かるように残された期間をほのめかす。通常なら「うざい」と避けてしまってもおかしくないはずだ。
先に母親を見送ってしまった経験もあるのだろうか…。
自分たちは、突然やってくるかもしれない、事故の死の人よりずっと恵まれているのだと、和紀は宥めた。
病院にいて、治療を続けて…、…周防の未来は少しでも分かってくることがある。
その間、笑顔を振りまくことができる。
「わ…っ、くん…っ…」
やはりまだ、日生には受け止められないものだったのだろうか…。
小さな体が震えるたびに、和紀は後悔もした。
だがその反面で、一緒に乗り越えていきたいという願望もある。
母親を失った時、和紀には父親と、清音がいてくれた。
同じように、いや、今度は生涯共に生きると誓った人と、痛みを分け合って糧にしていきたい…。
なにより、日生の一番そばにいるのは自分なのだと…。

「ひな…。俺はいる…。俺のそばに…、ひなも…。…ずっと昔からひなと俺が共にいられることを親父は望んだ。その希望を叶えてくれたひなに、親父は感謝しきれないだろうよ…」
「そんな…っ、僕こそ…っ」
喜びとは…。周防から感謝されるようなことがあったのかと、日生は一瞬脳裏を巡らせた。
養ってもらって、できるだけ、和紀と周防に近付きたかったこと…。
今は和紀の隣にいることを、当たり前のように受け止めてくれた人…。
最後には必ず笑顔で、経過を見守ってくれた…。
「親父は俺にひなを残してくれた…。俺は喜んでいるよ。だからひなも…。俺と一緒にいられるようになったこと、親父に感謝してくれ…」
悲しみよりも喜びを表すこと…。
いつかやってくる未来に、前向きに生きようとする気持ち。
お膳立てされたわけではないけれど、日生が和紀と出会うことができたのは周防のおかげである。
そこに愛情が芽生えたかはまた別の問題として…、仕事の面で支えられる人となってほしかったのは日生も感じていた。
和紀と二人でいることを見せては周防の気持ちも安らぐのだと教えられる。
『感謝』…。日生の人生を変えた、原点だった。
「わっ、く…、わっくん…っっ」
日生は泣きながらも何度も頷いた。
周防の前では泣き顔など見せないから…と。…ただ今だけは、いずれ来たる未来のことを思って、先に泣かせてほしいと甘えた。
本当に泣きたいのは和紀なのだろうに…。
すっぽりと日生を包んでしまう腕に、胸に、…日生は動じない強さを改めて感じたのかもしれない。
和紀はすっぽりと覆えてしまえる体を抱きしめながら、直前に気を許せる環境を整えてくれた父親と、奈義に、静かな感謝の気持ちを送った。
一時的にでもこもった気持ちを逃がしてくれる環境があったからこそ、いまこうして、落ち着いて日生を包みこめた。
素直に状況を伝えてくれた父親。自分も辛いのだろうに、何も言わずに抱えた心を抱き締めてくれた父の友人…。
どこかで吐き出したいと思うものは、誰しも持つものなのだろう。
今、生きる環境に、新たな感謝が生まれた時でもあった。
勇気づけられた。この先も、日生を抱き締め、彼の力と支えになっていけるはずだ…。
父から貰った…そして何より愛した、日生がいるからこそ…。

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次回最終話…(←なんか無理な気が…)
また間違えて記事が…。
ほんの一瞬にぽちりとしてくださったがいて…。
失敗した自分、悪いんだよ―――っ
諦めてアップする…
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コメント

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泣かないで
コメントちー | URL | 2012-02-16-Thu 03:26 [編集]
ひなちゃん、お兄ちゃん。
(お兄ちゃん、泣いてないけど、泣いてるから)

人間て生きるのを諦めなきゃお医者が言うよりかなり生きていられるよ。
うちの父も余命一ヶ月と言われて、半年生きました。六倍だもんね。

パパは、良いお医者さんに治療受ける環境があるんだから。
完治しなくてもうまく付き合っていけると思うよ。

お兄ちゃんの言う通り、事故で死ぬより良いんだから。
ひなちゃん、精一杯パパに尽くしてあげてね。後悔しないように。

お兄ちゃんがヤキモチ焼くくらいね。


Re: 泣かないで
コメントたつみきえ | URL | 2012-02-16-Thu 07:12 [編集]
ちー様
おはようございます。

> ひなちゃん、お兄ちゃん。
> (お兄ちゃん、泣いてないけど、泣いてるから)
>
> 人間て生きるのを諦めなきゃお医者が言うよりかなり生きていられるよ。
> うちの父も余命一ヶ月と言われて、半年生きました。六倍だもんね。

Σ (゚Д゚;)
そんなことがあったのですね…。
そうです。お医者さんだって驚くことは世の中いっぱいあるものです。

> パパは、良いお医者さんに治療受ける環境があるんだから。
> 完治しなくてもうまく付き合っていけると思うよ。
>
> お兄ちゃんの言う通り、事故で死ぬより良いんだから。
> ひなちゃん、精一杯パパに尽くしてあげてね。後悔しないように。
>
> お兄ちゃんがヤキモチ焼くくらいね。

お兄ちゃんがヤキモチ焼いてる姿もきっとパパには幸せな光景と映るでしょう。
余計にちょっかい出したりしてね。お友達と一緒に(o´艸`o)
みんなで楽しく過ごせそうです。
日生もその思い出を胸に刻めるね。
コメントありがとうございました。


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