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BLの丘
新しい家族 35
2012-02-12-Sun  CATEGORY: 新しい家族
何の意味があってか、和紀と日生は母屋のキッチンにいた。
見えない…が、会話の聞こえるリビングには父親と奈義、それに付き人だと思われる数人が占領している。
父親の友好関係に文句をつける気はない…。過去の最低な何かがあったとしても、父親の力で封じ込められ今は何もなく守られている事実を感じて不満は押さえつけられ、これ以上の危害がないのだと一応の安堵はする。
うろついていた奈義の舎弟が、ご丁寧にもカニ雑炊なる、酔っ払い相手の朝食を用意してくれた。
日生が考えていたフレンチトーストに、ソーセージと温野菜にクリームソースをかけたナンタラ…の洋食メニューは完全に却下された形だった。
それでも日生の手をわずらわせていない点は良いことなのか…。
同じ舞台に立たせる気はなく、湯の入ったポットをもって和紀はダイニングテーブルに座る日生の元に寄った。
ダイニングテーブルに座り、隣同士に座って二人並んでお茶をすする時間…。
「おーい。何、そんなところに隠れているんだよ~」
「うるせーっ。さっさと帰りやがれっ」
リビングとダイニングは直接見える距離にない。
奈義が、日生が正面に来ない不満を漏らせば、周防からの蹴りが入っている。
奈義への危機感はあってもいままでとは違う冗談だとなんとなしに気付く。周防の気を引きたいからわざと口にしていることなのか…。
あからさまな危険は感じなくてもその名を口にされれば気を良くはしない。
一応、社会人として、また親の立場も考慮して、自ら何かを言うことは控える和紀だったが…。
雑炊を作らせている点で、早々帰る気はないのだろう。そして帰らせる気も…。

「和紀くん、これ、おいしいよ」
心配を全く意に介していない日生は、目の前に出された一人前の土鍋からひとすくいした雑炊を口に含んで万遍の笑みを浮かべた。
蓮華に掬った湯気の先に浮かぶ笑顔に何も言えなくなる。
満腹を表す笑みはまた別の意味で和紀を満足に導く。『たかがこれしき』…。幾度も思ってきたことだった。食に対しての不満を日生は持ったことがない。過去からのいわれがあるにしても…。
その程度で満足してくれる日生がどこまでも可愛かった。
奈義に対して危険はない…。それが分かるだけに、日生の手を煩わせることなく用意された”朝食”に文句もない。
そして同時に、リビングのテーブル先から、取り合う子供のような声が聞こえた。
こちらは大鍋に一つで用意されたらしい…。
「カニ食うなっ」
「組長のくせにケチくせぇこと言ってんなっ」
「社長のおまえが言うことかよっ」
リビングテーブルで胡坐をかいて食事をするなと教えたのは誰だったのだろうか…。
一つの鍋は仲良く取り分けて食べるものだと教えたのも誰だったのだろうか…。
今のこの瞬間、全て覆されている。
まるで子供の言い争いにしか見えないやりとりに、言葉を無くしたのは和紀だった。
人は歳を取ると共に童心に返る…とはいつ聞いた話なのか…。
それでも『素』を表す父親を感じるから何も言えないでいる。こんな時も、時には必要なのだと…。
危険を運びながら、その端で気を許す友たち…。なにより、守ってくれる存在を知る。奈義は周防に危険はもたらさない…。
カニ雑炊が運んでくる束の間の幸せを、満喫した。
過去の恨みが周防のおかげですぅっと消える。
父を交えて思うことと言えば…、こんな休日もいいだろうと…。
だが、これが毎週末とは、寝耳に水、晴天の霹靂…、なんでもいい、とにかく意外すぎて言葉を失ったくらいだ。
奈義との付き合いは暗黙の了解で認めていたが、こんなに頻繁になるのは不穏な動きさえ感じてしまう。
とはいえ、周防が見守る上で、自分たちに危険はないのだろう。甘い考えだと知りつつ、甘えていたのだ。
ある朝、奈義を帰し、日生に出掛ける準備を頼んだ隙に、周防は口を開いた。
「あとな…。日生のことだ。いつまでも『阿武』は問題だろう」
周防の元で、日生は『息子』だった。
和紀の下で、日生は『弟』だった。
勤め初めて新たなる書面は多方面で必要となる。それだけではない。真剣に全ての財産の行方を考えるからこそ…。
名刺ですら、『三隅』と名乗らせている現在だ。
「俺に話せと…?」
「俺が言えば押し付ける形になる。でも今の和紀なら違うだろう?」
移籍の話は日生にどううつるのだろうか。
過去、数年前にも和紀と周防の間で似たような話をしたことがあった。ただ、その時は日生の意向を尊重するからと、意味も分からないうちにはと避けられたことだった。
今は…どうなのだろう。
周防の元で息子になる、和紀の下に名を刻む。
共に『三隅』になるのに、意味は大きく異なる気がした。
それを分かっていたからこそ、周防はこの時を待ったのだろうか…。

日生が和紀と共にと選択したあと、何故か落ち着いたように、周防は会社の権利のほとんどを和紀に託してきた。
いつかは…と覚悟していたが、流れゆくあまりにも突然のことに気付かない和紀でもない。
何もかもが早すぎていた。
慌て過ぎる日々の中、深夜に及ぶやりとりで、隠しきれなかった不満が和紀から弾け飛ぶ。
「親父っ?!」
「会社ではそう呼ぶなと…」
何もかもに覇気がない。
夜おそくだから余計なのか…。
いや、そうではない。感じる親子の絆…。
周防は苦しそうに息を吐いた。デスクに両肘をついてうつぶせる。
胸の奥からズンズンと沸き起こる嫌な予感を和紀は感じる。過去にも味わったことがあった。
母親が、逝く直前…。
「親父…?」
肘をついたまま項垂れるように周防は息を吐いた。
「おまえには苦労をかけたな…。日生のことも…」
「何言ってんだっ?!」
近寄って肩をゆすぶったら、かつての筋肉がなかった…。

「和紀…。癌なんだ…。どうか受け止めてくれ…」

周防は「おまえに日生を残せて良かった…」と呟いた。
新たな命を授かれなかった中で、恵まれた最後の『家族』…。

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コメント

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エ―――――(;OдO)―――――!?
コメントけいったん | URL | 2012-02-12-Sun 02:01 [編集]
周防さん、そんなぁ~。。。
がん、ガン、癌だなんてーーガ━━━━(´゚Д゚。)━━━━ん!!!!!!
あなたのファンの私は この先どうすればいいのでしょうか( ̄▼ ̄||)

毎日曜日に 奈義が来てるのも 今の周防には いい安らぎになるんですね!
そういう事なのか~... Σ(゚ω゚)b

ショック過ぎて 今日のコメは、ここまで。
ウル(T-T*)ウル・・・エーン!!ヾ(ヾ(*T□T)ツ...byebye☆
嫌だぁ!
コメントちー | URL | 2012-02-12-Sun 04:54 [編集]
嫌だ嫌だ嫌だぁ。
今どき、癌でなんか死なないよ、パパ。
早期発見、早期治療だよー。
できないの?きえさん。

やっぱり、やだー。
Re: エ―――――(;OдO)―――――!?
コメントたつみきえ | URL | 2012-02-12-Sun 08:24 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> 周防さん、そんなぁ~。。。
> がん、ガン、癌だなんてーーガ━━━━(´゚Д゚。)━━━━ん!!!!!!
> あなたのファンの私は この先どうすればいいのでしょうか( ̄▼ ̄||)

> がん、ガン、癌だなんてーーガ━━━━(´゚Д゚。)━━━━ん!!!!!!
これ↑面白かった(*^_^*)
とかいっているときじゃない?!

> 毎日曜日に 奈義が来てるのも 今の周防には いい安らぎになるんですね!
> そういう事なのか~... Σ(゚ω゚)b

なんですよ~。奈義はいい役目を果たしております。
堂々と文句も言え、屈服もしない組長。
蹴りも入れられる、ストレス解消(←?違うが…)

> ショック過ぎて 今日のコメは、ここまで。
> ウル(T-T*)ウル・・・エーン!!ヾ(ヾ(*T□T)ツ...byebye☆

すみません…
ショック治療とかね(←
また遊びにきてね~ヽ(゚∀゚)ノ...byebye☆
コメントありがとうございました。


Re: 嫌だぁ!
コメントたつみきえ | URL | 2012-02-12-Sun 08:34 [編集]
ちー様
再びおはようございます。

> 嫌だ嫌だ嫌だぁ。
> 今どき、癌でなんか死なないよ、パパ。
> 早期発見、早期治療だよー。
> できないの?きえさん。
>
> やっぱり、やだー。

(゚∀゚)←
死ネタはホント―に私の精神に似合いません…。
この先どうしようかなぁぁ(←悩んでる
早期発見早期治療…、そうですよねぇ。
社長さん、きっと良い保険にも入っているでしょうし。
先進治療とか、あらゆるものがアレコレと…。
あとは年齢とか体力とかね…。
奈義と一緒に若い子拾って若返るか(←?!!!!)

コメントありがとうございました。

管理人のみ閲覧できます
コメント | | 2012-02-12-Sun 22:38 [編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Re: フェニックス!
コメントたつみきえ | URL | 2012-02-13-Mon 10:49 [編集]
レ様
こんにちは。

> 癌ですか・・・
> じゃあ社長職は和紀くんに譲り渡して、スッパリ切っちゃいましょう。
> 若いんだし体力あるし大丈夫!!!
> そして会長として戻ってくればいいのさっ。
> それでこそ周防さんだよ。
>
> ねっねっ???

ですよね~。
影ながら見守るオヤジになってもいいかと思います。
会社の事はもう、和紀と日生にお任せしましょう。
そして悠々自適な老後を送ればいいのではないでしょうか。(←作者がそれ、いうかなぁ…)
不死鳥、周防!!!
私もちょっとなんだかねぇ…。
人騒がせなことを書いておいて、今更ながらに悲しくなっております…。(ホントこういうネタは苦手だわ…)
どっしり構えた会長!!!
周防らしいです。
コメントありがとうございました。
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