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BLの丘
淋しい夜に泣く声 17
2009-09-17-Thu  CATEGORY: 淋しい夜
ホテルの部屋の中まで榛名は着いてきた。
車の中で、一度だけ英人の手に収められた名刺にチラリと視線を送ってきたが、何も言われはしなかった。

「一か月以内に作品を出せ。出来次第、神戸には連絡を入れる。間に合わなければ自分の身の破滅だと思え。もっとも、おまえにはその生き方の方が合っているのか?」
部屋に入ると冷たい表情で榛名は言葉を口にした。口角を上げ、見下したかのように笑われる姿に、英人は自分の身分が貶められていることを感じた。
もちろん、そんな生活など送りたくもない。一人の人間に愛され癒され心身共に満たされた暮らしをしたいと常々夢見てきた。母親のように、蔑まれて終わる人生など望んではいない。
だが、これまでの体を売るような生活をこの男は知っていた。先程触れた元樹との間柄も金銭のやりとりがあると誤解されているのだろうか。
美術家としての成功がなくても、生活に不便は生じないだろう?と言葉の裏に売春行為がちらつかせられれば文句の返しようもなく、唇を噛みしめた英人の目の前に榛名の大きな身体が近づいた。
「必要ならおまえの体ごと買ってやる。好きなだけ絵を描いて将来の自分の蓄えにしろ」
俯く顎を捕らえられ、榛名の指先で強引に上向かせられると、初めて榛名の薄い唇が英人の唇を覆った。

英人は驚きで目を見開いていた。
すぐ目の前にある精悍な顔つき。英人を捕らえて離そうとしない力強い腕。
英人の体を手に入れるなど、これまでその気も全く見せなかった榛名が自分を抱きしめていると感じれば戸惑いだって生まれた。
それも滅多に触れさせることのない唇に落とされては簡単に心が揺らめいている。
「んっ…」
僅かな隙間をぬって侵入してくる舌先に、痺れるような疼きが芽生える。
卑しくも感じ始めた身体は抗いようもなく、榛名の手に溺れる自分を感じたが、その瞬間に瞼の裏に浮かんだのは久し振りに会った元樹の姿だった。

「…っふっぅ…」
じんわりと蹂躙される口腔内を嬲られ、下半身は伸びた手先に柔らかく包まれた。
ビクリと反応する身体から、すんなりと榛名は身を離した。
「欲しかったらそう言えと言ったはずだ」

英人は何一つ言葉を発することができなかった。
内心で求めていたのは元樹であり、昔のあの優しさを思い浮かべていた。
榛名に抱かれた夜は強引な虐めにも近い行為だった。
それでも『抱かれる』という行為は英人に興奮を与え、いまでもその時の快楽は身を焦がした。
優しさを束の間だけ見せた榛名の愛撫は嫌でも思い起こされる。肌を震わせるほどの興奮をこの男も与えたくれたことは覆しようのない事実だった。

「社長…」
「夜はそう呼ぶなと言っただろう」
「あ、…千城さん…」
キュッと掴まれた下半身に抗うこともできず、思わず訂正の言葉を発する。
英人の心の中で、元樹と榛名が重なるような錯覚があった。榛名を受け入れたいと思わなくても目の前にいるのは榛名であり、興奮をもたらしているのも榛名だった。
最後の快楽を味わってから数日の時が過ぎている。
直に触れる指先に抑えることのできない欲望の渦が体中を流れていった。

一度離れた榛名の胸元に自然と縋りついた。
「…んっ…」
欲しい、という言葉は出てこなかった。どんどんと卑しい身分に落とされるのが怖かったのもあるが、一番求めたのが榛名ではなかったことも理由だ。
たった一瞬ですら、心の中を占めた『過去』がふつふつと蘇り、その世界に英人を誘(いざな)っていた。

『今度英人が許してくれたら大事にする』

元樹の言葉が木霊のように脳裏を駆け巡っていた。
今だから思う。好きでなかったら身体だって許さなかったこと。あの時の自分は感情なんてないと思っていたけど、幾多の人間に抱かれながらも常に初めての時を思い出していたこと。どれだけの時が過ぎても初めての日が特別だったこと。
初めて抱かれた日から、英人は大事に扱われ続けて、そして悦びを覚えた。
欲望と想いは違う。今は誰が何を言おうが、また元樹に抱かれてみたい…。

「忘れさせてやる」
まるで英人の内心を知ったかのように、榛名から強気な言葉が飛び出した。

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