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BLの丘
新しい家族 26
2012-02-02-Thu  CATEGORY: 新しい家族
周防が奈義の元に乗りこんだという話は後々で聞いた話だった。
おおげさにも一人の人生を狂わせたと、周防はかなり憤ったらしい。
人前で日生に近寄ってしまったこと、いらぬ心配や周りに与えた誤解など、たとえ噂だったとしても日生が受けた衝撃は、一般人として浴びる必要のないものだったと。
全てのことから守られることを感じていながら、当たり前だと受け止めた自分がいる。
奈義とのことは自分の油断もあったことだったのだが…。
結果的に日生は休学という形をとることになった。
周防も悪い環境の中で通学をする必要はないと寛容な態度だ。そしてやはり、学生同士の噂などすぐに消えると鷹揚に構えている。
周防は日生の選ぶことにアドバイスを加える程度で反対するなどということはしなかった。

日生は周防に促されるまま働きにでることにした。
『働きにでる』などとはとても言えたものではないままごと程度のものだったが、新しく覚えていくことは日生に大きな刺激となった。
周防に連れられて事務所の中をウロウロする。ほとんどは社長室で周防と和紀の仕事ぶりを見学していると言うのが正しい。
着慣れないスーツに身を包むのも緊張感を運んできた。
会社というものがどうなりたっているのかなどを身近な人間から教えてもらえるのも飲み込みを早くした。
いずれ和紀と動かしていってほしいと周防が望んでいるのは、幼いころから感じてきたことでもあった。
それに応えようと思う気持ちも日生を動かすものとなる。
多くの人に出会うことで、対人面への恐怖感も薄れていった。
社長室には周防と和紀のデスクが並んでいて、中央にソファセットがある。更に奥に簡易的なキッチンがあり、二人は時間に関係なく飲み物を入れたり食べ物を出してきたりしていた。
時々秘書と名乗る人物や、社員が出入りするが、ほとんど静かな空間である。周防と和紀は時折会話を挟むが、それぞれ黙々と仕事をこなしているといった感じだった。
あと一時間ほどで昼休みになるかという頃、周防が顔を上げた。
「日生、コーヒー淹れてくれるか」
こんな雑用も日生の仕事になっている。
「あ、俺も飲む。つか、一休みしよ~」
ソファに座り、書類をファイルに挟んで整理をしていた日生に周防が声をかけると、和紀も両手を大きく上げて伸びをした。
「うん」
ふたりが交わす会話はまだまだ日生には難しくて分からないことだらけだったが、声を聞いていられるだけでも心地良いものだった。
普段は話しかけては悪いと思うが、こんな時は気も緩んで雑談に興じる。
この部屋の中はある種、無法地帯とも呼べた。休憩時間も何もかもが、仕事のキリの良さもあったが自由になっている。
日生が三人分のコーヒーを入れて戻ると、和紀はデスクからソファへと移動していた。先程まで日生が座っていた三人掛けのソファの端に、体を斜めにして座っている。
周防にカップを届けて自分と和紀の分をテーブルの上に置いて隣に座った。
最初の頃、あまり良い顔をしなかった和紀も、今では日生がこの部屋にいることに馴染んできたようだった。
日生は簡単に散らかっていた書類を片した。
「親父、今夜会食が入ったんだっけ?」
人前ではきちんとした言葉使いをする和紀だが、この部屋の中では崩れることのほうが多い。
そのことは余計に日生の気を緩めるものにもなっていた。
「あぁ。久し振りにこっちに来たって連絡をもらったからな」
「そっか。じゃあひな、俺たちもたまには何か食べて帰るか」
夕食のほとんどは家で食べることが多い。
日生が家にいた頃は、清音が用意してくれたものを、最終的にダイニングテーブルに並べるのは日生の役割だった。
その昔、清音と揃って周防たちを出迎えることはあったが、ある程度日生が一人でできるようになってからは、清音はさっさと上がり、『三隅家』の空間に入り込んでくることはなくなった。
こうして共に外に出るようになってもその行動は変わらず、帰宅と同時に日生は食事の準備に入る。
とはいえ、温め直す程度の作業しかないし、手間がかかるとは思ったこともなかった。
和紀の問いかけに一瞬考えるものの、和紀の好きにしたらいいと決定権を委ねる。
「清音さんに連絡を入れておくか」
「たまには清音さんも解放されて喜ぶかもな」
「土日以外、毎日来てもらってたもんな~」
和紀と周防は軽快な口調で話を繋ぐ。
自分たちが休みの時は清音も休日という制度を取っていたが、まぁ、呼べば応えてくれる距離にいたので特に決まってもいなかったのが現実だ。
清音が来ない日は三人で外食に出掛けたことも多々ある。
日生が大きくなるごとに、敷居も高くなっていったのを、なんとなく雰囲気や所作で感じ取ってきた。
そうやって少しずつ、どこに出しても恥ずかしくない人間に育てられていたのだと知ったのは最近のことでもある。
今夜和紀と一緒に行く先も、それ相応の場所なのだろうなとは想像がついた。和紀と二人で行動するようになっては、和紀の趣味も知れてくる。
目新しい場所は、日生を緊張させ、同時に好奇心も生みだす。
和紀は清音に連絡を入れた後、しばらく考えを巡らせている様子でいたが、コーヒーを飲み終えると一旦部屋を出ていった。
いつもと何も変わらない態度でいるので日生も特に気にすることはなかったが…。

夕方、先に周防を見送り、日生は和紀に連れられて社屋を後にする。
和紀の運転で向かった先は、外資系の有名なホテルだった。

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コメント

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あはっ、忘れてた!
コメントちー | URL | 2012-02-02-Thu 13:26 [編集]
前コメ、名前無かったですね?すみません。そして、前話もコメしたはずがしてなかった。ううん。


親子は甘過ぎですよ。アマアマだっ!
もう、ひなちゃんも素直だからなあ。
仕方ないの?
いっそ、社員から頑張れば?

ダメそう。うん。わかってます(笑)
No title
コメントけいったん | URL | 2012-02-02-Thu 16:14 [編集]
あぁ~やっぱり乗り込んだのね、周防パパ♪
奈義も事務所も ボコボコだぁ~┬|`pq´)ゥシシ。oO(ヤッタ♪)

三隅の会社で パパと兄が仕事する部屋での社会勉強・・・社会見学
まだ殻から半分しか抜け出てない ひなには、これくらいが十分でしょうね(笑)!

ちーさん、乳児園は、創設されないようですよ。残念ですね( ̄_ ̄||)
こうなったら ひなが大人になるまで待ちましょうぞっ!
先は、遠いけど...ヾ(´・▽・`。)ノ"彡~~~パタパタ♪...byebye☆
Re: あはっ、忘れてた!
コメントたつみきえ | URL | 2012-02-03-Fri 10:01 [編集]
ちー様
こんにちは。

> 前コメ、名前無かったですね?すみません。そして、前話もコメしたはずがしてなかった。ううん。

ちっちゃいことは気にしませんヽ(゚∀゚)ノ

> 親子は甘過ぎですよ。アマアマだっ!
> もう、ひなちゃんも素直だからなあ。
> 仕方ないの?
> いっそ、社員から頑張れば?
>
> ダメそう。うん。わかってます(笑)

社員から頑張る?! どこの部署でどんなふうに扱われるんでしょう。
そんなところにあの親子が放り投げるわけがない…。
絶対に失敗のないお仕事(?)だけをやらせていそうな親子です。
日生も、なんかトラブったら、またすぐに現実逃避して、お兄ちゃんの胸に飛び込みそうですしね。
社員。 厳しい響きの言葉です(笑)
コメントありがとうございました。

Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-02-03-Fri 10:05 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> あぁ~やっぱり乗り込んだのね、周防パパ♪
> 奈義も事務所も ボコボコだぁ~┬|`pq´)ゥシシ。oO(ヤッタ♪)

行きましたね~パパ♪
ここぞとばかりに暴れてきたんでしょう。
前回日生を連れ帰るのに必死で、不完全燃焼で終わっていることだし。

> 三隅の会社で パパと兄が仕事する部屋での社会勉強・・・社会見学
> まだ殻から半分しか抜け出てない ひなには、これくらいが十分でしょうね(笑)!
>
> ちーさん、乳児園は、創設されないようですよ。残念ですね( ̄_ ̄||)
> こうなったら ひなが大人になるまで待ちましょうぞっ!
> 先は、遠いけど...ヾ(´・▽・`。)ノ"彡~~~パタパタ♪...byebye☆

大人になるまで?!
まだ"ひな"ですからね。先は長いですよ~。
そんな日生も社会見学に出ました。
安全安心な『働き口』です。
今の日生には精一杯のところでしょうね。
四六時中一緒の親子になってしまいましたね。
コメントありがとうございました。

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