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BLの丘
新しい家族 12
2012-01-16-Mon  CATEGORY: 新しい家族
が―んΣ( ̄□ ̄;)
記事、上げときます…。
履歴残ったし…。





和紀と三隅が買ってくれた知育玩具は、日生にとって宝物だった。今では段ボール箱に収められて物置の中だが、捨てられることはない。
五十音順に並んだひらがなとカタカナのパズルや掛け算九九のパズルは使いすぎて文字が読めなくなっている。
新しく覚えることは和紀と三隅を喜ばせることで、日生は夢中になった。二人を満足させれば、この生活を続けられると思った。
日生の願った通り、日生はアパートに戻されることもなく、和紀と三隅のもとで暮らしはじめた。
ここで暮らすのだと、覚えこまされる。
二度と戻らなくていい世界は、日生の心に安堵を伝えた。
幸せな生活だった。脅えることが何一つない。

地球儀から発される各国の挨拶文はほとんど暗記で覚えた。日生は自然と数ヶ国語の言葉を覚えたのだ。
三隅家に引きとられてから五年。
中学に上がる年でも日生は学校に行くことはなかった。
育った環境が『ネグレクト』と呼ばれるものだとは、最近知った話だ。
幼いころの記憶は三隅親子によって、少しずつ薄れていった。新しくやってくるすべてが日生の心を浄化させていく。

日生の生活は三隅家に来てから一変した。
和紀は余るほどのおもちゃと本を日生に与えた。
本はともかく、おもちゃに関しては清音から渋る声をもらっていたくらいだ。
八歳とはいえ、知能の遅れた日生に対して、「一度は通過点」と和紀は聞く耳を持たず、興味を向けたものを知れば日生に買い与えた。
「そういったところはお父様譲りですね」と、言い出したら聞かない点を咎められていたが…。
何でも日生に体験させること。和紀は日生の為にと動く。時々叱られたりする場面もあったが、全ては日生を思っているからこそと判断がつくようになって、今まで以上に大人しく聞くようになった。決して和紀も三隅も日生に手をあげてくることはない、安心感が日生の恐怖心を弛める。
背中に負った傷も、三隅が探してくれた形成外科の手によって、目立たないところまで治療されていた。
思い出したくない時代は少しずつ消えていく。

中学に入る頃の歳には、ようやく追いついたくらいに世間一般的な学習能力を身につけていた日生だった。
まだ学生だった頃の和紀は、暇さえ見つけては、本を読み聞かせたり文字の書き取りをさせたりとマメに日生を構った。
清音もできるだけ日生に付き合ってくれた。
乾いた大地が水を吸い込んでいくように、日生は色々な事を吸収していった。
心の底には、ここまでしてくれた和紀と三隅、清音の負担になりたくないという強い思いがあったからだ。
その和紀も二年の時を過ごして就職してしまう。日生、十歳の時だった。
就職した、とはいえ、三隅の会社であったため、三隅はよく「苦労を知らない」とぼやいていた。
和紀の奔放な性格は思うところもあるのだろうか。
いつか、いずれ…、きちんとした形で日生を就職させたいという思惑も見えた。それは三隅や和紀のもとで仕えるというもの。もちろん望めば違う道も用意してくれるのだろうが、日生には他の道など思い浮かびもしない。だから余計に日生は努力を積み重ねた。
後ろ指を指されないように。何より、三隅親子の恥とならないように…。

日生は毎日をマンションの部屋の中で過ごす。昼間やってくる清音の手伝いをし、午後には三隅がつけてくれた家庭教師が一時から五時まで勉強を見てくれた。
世の中には体が不自由だったり心の病を抱えて学校に通えない人がいるのだと聞かされたのはいつ頃だっただろう。
だから学校に通わないことに対して気後れすることはないと教えられた。無理して通うことはないと、三隅も和紀も日生にはとても甘い。

まだ小さい時、近所の公園に清音と出掛けて、ブランコで遊んでいた時に、後から現れた小学生の集団に囲まれて、ブランコから引きずりおろされたことがあった。
ある程度大きくなれば子供にいちいちついて回る親でもなく、彼らがどこの子なのかも分かりはしない。
しかしその一件から、外に出るのを酷く脅えるようになった日生だった。
和紀は話を聞いて憤ったものの、三隅は「子供同士の喧嘩だ」とあえて取り合おうとしなかった。
その時は和紀同様「冷たい」と悲しくなったものだが、後から考えれば、自分で解決策を見つけ出させようとする愛情だったのだと思うことができる。
三隅は全てを与えるより、日生に選択させてばかりだった。そうやって思考力などを鍛えてもらったのだと思う。

その選択の結果、日生は学校に通うことを拒絶した。

和紀は就職してから日生に構わなくなった。
仕事が忙しいのだとは分かりはするのだが、淋しさは今まで以上に感じるものがある。
『家族』という存在を知らされて、何かと話をしてきた生活が一転したようだった。
逆に交流が増えたのは周防の方だった。
将来のことや、やりたいことなどを真剣に聞いてくる。とにかく今は自分にできること。学ぶことが多いと告げれば周防は微笑んでくれるだけだ。
清音は三隅の家族のことには触れてこない。夕方の早い時間には部屋を去って行った。
日生が一人でも夕食の準備を整えられるようになってからは、やるべきことを与えてくれるように、関わってくることを避けた。
あくまでも『三隅家』であって、深入りしてこない態度は清音ならではの気遣いだ。
三隅親子が帰ってくる頃を見計らって、日生は鍋を温めたりお風呂の用意をしたりする。
周防は一連の作業を褒めてくれたが、和紀はどこかよそよそしくなった。

十五歳になる頃、和紀とはほとんど会話がなくなっていた。

昼過ぎ、いつものようにやってきた家庭教師に、昨日の宿題のノートを見せる。
日生は和紀の隣の部屋を個室として与えられていた。
一人で寝起きするようになったのはこの家に来てから半年ほどたってからのことである。
最初の頃は心配した和紀が寝るまでそばにいてくれた。安心して眠っては、夜中に目が覚めて一人にされた怖さに泣き喚いて和紀を困らせた。
いつからか、近くに居てくれるのだという安心感に包まれて、一人でも眠れるようになった。
個室は落ち着く場所でありながら、淋しい場所でもあった。
たとえ短い間でも、『家族』というものを教えられた日生にとって、会話が少なくなるのは耐え難かった。
特に和紀に対しては…。

「へぇ。全問正解じゃない。優秀だね」
中学生の課題に変わって、また高校生が学ぶことと進むことに連れて家庭教師も変わった。かつて臨時職員も勤めたことがあるという二十代の半ばになる男は、家庭教師という閉鎖的な職場だからなのか、畏まった格好もしていない。
今日もジーパンに前ボタンのシャツを軽く引っかけました、程度の服装だった。
一方日生は、三隅親子にならってか、家の中でも着崩すということは滅多にない。世間を知らないのだから尚更…。
椅子を並べて隣に座った男が、「勉強、教える気、なくなるな」とぽつりと呟いた。
今更どうしたのかと慌てて見やれば、いつもと違うねっとりとした視線が絡みついてくるのが分かった。
「あの…、でも俺…」
学ばなければならないことはいっぱいあるはずだった。
いつか、三隅や和紀の足手まといにならないように、雑用でも何でもできる人間になることが、今の日生の目標だった。
少しでも恩返しがしたいから…。

「一日くらい、『違うお勉強』しても良くない?」
なんのことだと思う。
机の上に置いたはずの手に男の手が重なった。汗をかいているのかじっとりとしていて気持ちが悪い。
すぐに引っ込めるが、より密着したのは体の方だった。
「初めて君を見た時から、可愛いなぁって思っていたんだ。こんなふうに私室に入れるって、誘ってるんだろう?しかも勉強なんて教える必要ないくらい、完璧にこなしてくれるし。時間つぶし?」
意味が分からない言葉ばかりが飛び出してくる。
椅子と机…、妙な抵抗をしたせいで変に挟まれる状態になってしまった。
「や…っ、な、に…っ?!」
「純情ぶらなくていいよ。今まで何人、こうやって誑かしたの?」
耳元に寄ってくる湿った吐息に全身に鳥肌が立った。
抱きすくめてくれた和紀とは全く違う欲望だけが滾る姿に、久し振りに人肌は恐怖だけを植え付けた。
引っ張り出されたシャツの裾から、じっとりとした男の掌が入り込んでくる。
「気持ち良くさせてあげるよ」
ニヤリと笑った顔には恐怖しか浮かばない。
無我夢中で逃げることだけを考えた。勢い余って椅子ごと床に倒れこむ。男も一緒になって崩れてきた。
「やめて―――――っっっ!!!」
ガタンっという激しく倒れる音と、日生の壮絶な叫び声は、当たり前だが部屋の外に響いていった。
バタバタと廊下を駆けてくる足音。コンコンコンと立て続けにノックされる音に混じって「日生さん?」と気遣う清音の声が聞こえた。
「クソっ」
何に悪態をついたのか分からないが、二人が倒れ込んだ状態のままで、扉は開かれた。
こういった時、清音は『待った』をかけない。

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日生、成長したヽ(゚∀゚)ノ
つか、にぃちゃん…。子供は成長するのです。
盗られるからね―――。
まぁ思うところは色々。
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コメント

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あらま
コメントちー | URL | 2012-01-17-Tue 04:07 [編集]
ひなちゃん、可愛いんですねえ。
まあ、そうなると思ってたんですが。

学校、行かないんですね。
仕方ないか。いろいろ心配だし。
カテキョ、無事に済めば良いけど。
済まないだろうなあ(笑)
Re: あらま
コメントたつみきえ | URL | 2012-01-17-Tue 07:41 [編集]
ちー様
おはようございます。

> ひなちゃん、可愛いんですねえ。
> まあ、そうなると思ってたんですが。

(〃▽〃)そうなると分かっていらっしゃったのですね。
はい、可愛いです。
構いたくなる存在なんでしょう。

> 学校、行かないんですね。
> 仕方ないか。いろいろ心配だし。
> カテキョ、無事に済めば良いけど。
> 済まないだろうなあ(笑)

日生はお家で過ごす子供になります。
いろいろあって、外に出るのが怖いようですね~。
この後、家庭教師さんとどうなるんでしょうね。
そしてお兄ちゃんとも…。
コメントありがとうございました。
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