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BLの丘
新しい家族 8
2012-01-14-Sat  CATEGORY: 新しい家族
冷凍ご飯を解凍し、日生用のレトルトカレーをかけた。残っていたポテトサラダと煮物も出してくる。
和紀は清音が作り置いてくれた牛丼と味噌汁を用意した。
六名が座れるダイニングテーブルの真ん中に並べたのはいいが、椅子に座ったところで日生は顔しか飛び出さない。
なんとなくそれが可愛くて、だけど困ったな…と、和紀は自分の膝の上に座らせることにした。
膝立ちにさせて食べさせることにも抵抗が生まれた。
日生に見合ったスプーンもないのでコーヒースプーンを出す。
「いただきます」と声を上げたあとで、スプーンを手にした日生に和紀は絶句した。
日生のスプーンの握り方は幼児と変わらない、柄をグーで握るものだったからだ。
「ひなっ」
思わずかけてしまった言葉に、ビクッと日生の手からスプーンが落ちた。
和紀は強い言葉をかけてしまったことを後悔した。責めたかったんじゃない。注意したかった、直したかった…それだけなのに…。
それすらも教えてくれる人はいなかったのか…。もう悔しさでしかない。また脅えてしまった日生の背中を抱く。
「ひな、ごめんね。怒っているんじゃないよ。スプーンはね、そうやって持つものじゃないの。こうして…」
小さな掌を包むようにして持ち方を教えた。それからカレーをひとすくいして日生の口元まで運んだ。
再び脅えてしまったからなのか…。味が分かっているのか日生はこれといって反応も示さなかった。
ものすごく悪いことをした気分になる。こんなことなら楽しい気分のまま好きに食べさせてやれば良かった…。

テーブルの上に美味しそうな匂いが漂う。
あったかいお風呂に入った後は眠くなりもしたが、それ以上にご飯の匂いは強烈な勢いで日生を呼び覚ます。
「ひなの分だよ」と用意されたカレーライスを見た時は、嬉しさで口の中に涎が広がった。
テーブルにご飯が並ぶなんていつぶりだろう。日生が食べていたものなど、菓子パンやコンビニのおにぎり、温かいものでカップラーメンだった。
嬉しくて心が躍っていたのに、スプーンを手にした途端、ずっと優しい声ばかりをかけてくれていた和紀から突然きつい声が上がった。自分を呼ぶ声に、何事かと手が震えた。
日生は食べてはいけなかったのかとスッと手を引っ込める。
父親との生活の中でも怒られることが多かったのは食事の席でのことだった。
「こぼすな」とか「食うのがのろい」とか。食べていれば横から取り上げられたこともしばしばあった。
ブルッとひと震えしたら和紀が背中を包んで「ごめんね」と悲しい声を上げる。
日生はできない自分が悪いのだと思った。いつも自分がちゃんとできないから怒られる。和紀は殴ったりしない、でも今度こそ手を上げられるかと脅えた。
大きい手で日生の手にスプーンの持ち方を教えてくれた。そんなことは知らなかったが、これ以上和紀を怒らせないように、握った形を崩さないようにと黙々と手を動かした。
カレーライスは美味しかったけど、騒々しくしてはいけないと何となしに思って黙り続ける。
美味しい山盛りのご飯なのだ。ぶたれたり取り上げられないためにも…。

「ひな。ごはん食べたらプリン食べようね」
少しでも気を反らせようと和紀は黙ってしまった日生に囁いた。
プリンに惹かれたのか心持、日生の表情が緩んだ気がした。ホッとしたのは和紀も一緒だ…。
慣れるまでは…、日生に強い口調を使ってはいけないと肝に銘じた瞬間だった。

夕食を終えてテーブルの上を片付け、プリンを出したのはいいが、日生一人ではツルンと滑る物体をうまく口に運べず、またグー握りになる日生に、結局和紀が食べさせてやることにした。
持ち方に気を使っているのは分かるのだが、どうしても欲求には勝てない焦りが見える。
ダイニングテーブルの中央の席。日生の背中を預かった和紀が覗きこみながら少しずつ食べさせてやる。
口に含むたびにほっぺたが落ちそうな万遍の笑みを見せてくれるのが和紀の心も和ませる。和紀にしてみたらたかがプリンなのだが、日生にとっては最高級のデザートのようだ。
すぐに飲み込まず、口の中で転がしているのも可愛い仕草だった。

その最中に三隅が帰宅した。
見慣れない光景に一瞬黙りはするものの、肩を落としながら「孫ができた気分だ…」とポツリと呟いた。
「孫…ねぇ。まぁ、親父の歳ならそうも言えるか」
「息子のつもりだったのに…」
「はぁ?!何、ひなが?」
「だってそうだろ。八つの子じゃ」
和紀は三隅が吐いた台詞の一部を理解できなかった。『みっつ』の聞き間違いだろうか…と考え込んだくらいだ。
その三隅は冷蔵庫の中から缶ビールを取り出してきている。
プリンを運んで来てくれる手が止まったことで日生は後ろを振り返るように和紀を見上げた。
…ここでおあずけにされてしまうのだろうか…。物悲しさが心を過る。そうであっても文句も言えない…。
その視線に気付いて、「あぁごめんね」と和紀は複雑な脳内を一旦押しやった。

上着を隣の椅子に引っ掛け、ネクタイを人差し指で弛めた三隅が目の前に座った。微笑ましげに二人を見つめてきた。
「日生、お兄ちゃんと仲良くやれそうか?」
覗きこむような仕草に日生も素直に頷く。
これまでの生活がまるで嘘のように、ここは陽だまりだった。こんなふうにホッとしたことなどない。
いつもビクビクとしていた。そんなふうに思わなくていいと、何度も和紀は言ってくれた。
日生が上手にできなくても怒ることもない。叱られてもぶたれたり蹴られたり、痛いことはされないで済んでいる。
日生はできることならずっとここにいたいと心の底から思っていた。

三隅と和紀。お互い何かを言いたそうでありながら、避けられたのは間に日生がいたからだった。
出会ってからの短い間、和紀と日生の間に何があったのか、和紀が報告するように話すと、その度に「おいしかったか?」「楽しかったか?」と三隅は日生に聞いた。
コクコク頷く程度の反応であるのに、三隅も和紀もニコニコと相好を崩したままだ。
こんなふうに出来事を会話することもしたことがなかった。初めてのことばかりは日生を興奮させるのに充分だった。
三隅と和紀の会話が楽しそうで、日生もそこに混ざりたいと思ってしまう。でも迂闊に何か言ってはいけないような気がして…、それになんと答えていいのかも思いつかない。
そんな日生に気付くのか発言を求められて、おぼつかない言葉でも真剣に聞いてくれて、足りない部分は和紀が補ってくれた。
自分を中心に物事を進められたのも初めてで、余計にふわふわとしたものが全身を覆っていく。喜び…。

プリンを食べ終えれば、日生は睡魔に襲われた。あまりにも色々なことがあり過ぎた一日で、さらに包まれる温もりに気持ちがとろけていく。
今日の朝まで、何を食べていいのか、何をされるのかと脅えていたのに、今目の前にいる人たちは優しさをくれる。
温かな人の腕に囲まれて、安心してカクンと首が落ちれば和紀が抱え上げて自室へと運んだ。
ゲストルームもありはしたが、今夜は自分のそばに置いておきたい…。何より目覚めた時に不安がらないように…。
スースーと安らかな寝息を立てる日生をベッドの中に入れて、肝心な話をするべくまたリビングに戻った。

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コメント

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お帰りなさい
コメントちー | URL | 2012-01-14-Sat 07:29 [編集]
きえさま、お帰りなさい。
本当は、一つ一つにコメントしたいところですが(笑)迷惑でしょうから、止めました。

ひなちゃん、オジサンにいけないことされるのかと思ってましたが、違って良かったです。
お兄ちゃんの和紀くんとひなちゃんのお話なのでしょうか?

この先もスゴく楽しみに待っています。
健気で可愛いひなちゃんが、もう辛い目に遭わないようにと願っています。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-01-14-Sat 12:29 [編集]
周防の孫!(笑´∀`)ヶラヶラ
それは、ちょっと可哀想だなぁ~♪

育毛剤を使っているのか、周防は! 
それって・・・?
おぉ~これは、私の妄想の範疇になかったわ
ホォホォ~メモメモ、カキカキ"φ(・ェ・o*)~。o ○...byebye☆
Re: お帰りなさい
コメントたつみきえ | URL | 2012-01-14-Sat 12:34 [編集]
ちー様
こんにちは。
ご心配おかけいたしました。

> きえさま、お帰りなさい。
> 本当は、一つ一つにコメントしたいところですが(笑)迷惑でしょうから、止めました。
>
> ひなちゃん、オジサンにいけないことされるのかと思ってましたが、違って良かったです。
> お兄ちゃんの和紀くんとひなちゃんのお話なのでしょうか?
>
> この先もスゴく楽しみに待っています。
> 健気で可愛いひなちゃんが、もう辛い目に遭わないようにと願っています。

おじちゃんにイケナイことをされることはないかと…。
今となってはもうその辺はお兄ちゃんが全力で守ってくれるかと思います。
これ以上酷い目に…あうことはないかと…。
なかなか先に進まず、お待たせしているようですみません。
展開、作っていきたいです。
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-01-14-Sat 12:40 [編集]
けいったん様
こんにちは。
ご一緒した模様です。

> 周防の孫!(笑´∀`)ヶラヶラ
> それは、ちょっと可哀想だなぁ~♪

孫ネェ。まだ早いでしょうと思いながら、和紀と日生の二人の雰囲気に思うものはあったのでしょうか。

> 育毛剤を使っているのか、周防は! 
> それって・・・?
> おぉ~これは、私の妄想の範疇になかったわ
> ホォホォ~メモメモ、カキカキ"φ(・ェ・o*)~。o ○...byebye☆

育毛剤は…まぁともかく…。
はげてませんよ~。
身だしなみに気を使うパパです。
だからこそ若い!!
隠れたところで何やら…。
コメントありがとうございました。
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