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BLの丘
新しい家族 4
2012-01-10-Tue  CATEGORY: 新しい家族
日生は白の大きなセダン車に乗せられた。
こんなに大きな車は見たこともなかったし、乗ったこともなかったからキョロキョロとしてしまう。
流れていく景色の早さ、夕焼けと夜景の綺麗さにも驚いて伸びあがろうとして、「こらこら。ちゃんと座っていなさい」と咎められた。
伸びてきた手に一瞬ビクッとなったが、大人しく座っているようにと頭を撫でただけで去って行った。
…この人は、怒らないのだろうか…。
ふとした疑問が日生の脳裏を掠める。
これまでは父親の思い通りにならなかったり、機嫌が悪かっただけですぐにぶたれた。
だから日生はできるだけ部屋の隅で、目に付かないように生きてきた。

やがて着いたところは大きなマンションだった。
二階建ての小さなアパートで暮らしていた日生にしてみたら、そこが家だということが信じられなかった。
地下の駐車場に車を停め、降りると日生は再び抱っこをされた。
エレベーターに乗り、一番上のボタンが押される。
「日生。おじちゃんと一緒に住むか?」
突然尋ねられて、意味が分からない日生は首を傾げる。
「施設でみんなとワイワイ暮らすのでもいいが…。…日生、八歳って言ったな。学校はどうした?」
三隅は質問しながら一番の疑問に辿り着く。あのたどたどしい返事とこのスローな反応は集団生活を送っていたものではない。
「がっこ?」
案の定、その言葉さえ通じないようだった。
一体どんな暮らしをしていたのかと三隅は内心で怒りを覚えた。
こんな子が施設に入ったところで上手くなんかやっていけないのは目に見えている。精神的に追い詰められていくだけだ。
この時すでに三隅の心は決まっていた。

エレベーターを降り、長い廊下を突き進んでいく。
シーンと静まり返った場所はなんだか不気味な所へ連れて行かれるようで不安が増した。カツカツと三隅の歩く音だけが響く。
奥へと辿り着くと大きくて重そうな玄関扉を開けた。
ここが家なのだろうか…。
入ってすぐの空間は広々としていたがテーブルも何も見当たらない。部屋じゃないのか…?
全てが初体験で、何も理解できない日生は三隅にされるがままになっていた。
一度そこで日生は下ろされた。
「さぁ、靴を脱いで。今日からここが日生の家だよ」
三隅に微笑まれて、とりあえず、うん、と頷く。
大人に逆らってはいけない…。日生の中に一番強くある感情だった。

このマンションの最上階は5LDKの間取りの家が三戸あるだけだった。全て三隅が所有している。
エレベーターを降りて一番手前の部屋は、五十歳になる家政婦の油谷清音(あぶらや きよね)が住んでいた。
三隅の妻と同じく施設で育ち、油谷のほうが二つ年上だったが姉妹のように育ってきた。三隅と結婚してからも親しい付き合いは続いていたが、妻にとっては突然訪れた、施設育ちから資産家へ嫁いだ環境の変化に耐えられなかったのだと思う。そんな妻をずっと支えてくれていた。
葬儀の時も真っ先に駆けつけてくれて、三隅は妹を殺してしまったような罪悪感に囚われた。
その当時、三隅には小学校に上がったばかりの息子和紀(わき)が一人いた。
まだ人肌恋しい年頃である。油谷とはいつも顔を合わせていたし、和紀も懐いていた。
ちょうど職を失っていた彼女に、住み込みで家政婦にならないかと話を持ちかけたのはその時だ。
何もこんな高級なマンションでなくても、給料がもらえれば安アパートから通う、という油谷を、「近くにいてくれた方が安心だから」と説き伏せた。
事実、三隅も仕事が多忙を極めていた時期であった。
「もし良い人ができれば、ここに住んでもいいし、出ていくのでも構わない。ただ、できるだけ仕事は続けてほしい」
家と職を与えること。…せめてもの償いだったのかもしれない…。
彼女は今でも独身でいる。

玄関からは日生は手を引かれて歩いた。短い廊下のあと、左右に分かれる廊下がある。
三隅は真正面にある格子の枠に擦りガラスが嵌めこまれた観音開きのドアを開けた。中は白を基調とした明るい部屋で、広々としたリビングには黒のソファがL字形に配置されている。続いているダイニングとキッチンは目隠しの意味も兼ねて、少し奥へと引っ込んでいた。
六畳間にちゃぶ台一つしかなかった日生のアパートに比べたら、まさに夢の空間だった。
声の一つも出せないでいる日生をソファに座らせていると、また扉が開いて、若い男が入ってきた。
二十歳くらいか。派手に着飾ることもないが、人目を惹く顔立ちをしている。三隅の面影をどことなく映していた。

「あれ、親父、今日飲んでくるって…、…って、なに、その子」
すぐに日生の前に来た背の高い男は三隅に並んで立った。
不思議そうに日生と三隅を見比べる。
「うちで一緒に住むことにした。日生だ。日生、こっちは今日からお兄ちゃんになる和紀だよ」
「はぁ?!ちょっ、ちょっと待てよっ。なんだよ、いきなりっ」
何の前置きもなく結論だけを告げられて思いっきり狼狽する和紀は三隅に詰め寄った。しかし三隅はすでに聞く耳を持っていない。
「奈義のところにいたんだ。あのままにしておけないだろう」
奈義という人物がどういった人間なのかは承知している。できることなら付き合いをやめてほしかったが、親の友人づきあいに口を出すのも変な話かと黙っている。
今のところ面倒事に巻き込まれていないから…という甘えもあった。巻き込まないだろうとどこかで奈義の気持ちを信じているのかもしれない。奈義には奈義なりに思うものがあること…。
「だからって…。…施設は?」
「たぶん、無理だ」
断言されて和紀は黙ってしまった。父親が確信することはほぼ間違いなく外れない。その理由は一緒にいれば分かるといったものか…。
和紀はソファにちょこんと座って俯いてしまった日生を見下ろした。
色の白い小さな子供だな…という印象が第一。脅えたように小さくなる姿が庇護欲を誘った。
一人っ子であったため、弟か妹が欲しいと願ったことは多々あるが…。
自分を産んでから余計に病弱になっていった母に願えるはずもなく。そして父に再婚も持ちかけられず。
まさか二十歳になってからその夢が叶うとは…。…という問題でもない。こんなに簡単に物事を決めてしまっていいのだろうか…。
犬猫を拾ってくるのとはわけが違う。

三隅は財布を取り出すと数枚の札を和紀に渡した。
「和紀、生活に必要になりそうなものをとりあえず揃えて来い。清音さんに時間外手当出すからって頼んでもいいし」
「清音さん、友達と会う約束があるからって早上がりしていったよ」
「じゃあおまえが行くんだな」
「…って、えっ?!親父、どーすんの?」
「弁護士に会ってくる」
それが日生に関することなのだとは和紀も気付いて黙って見送った。

日生は見知らぬ男と二人きりにされてしまって、今度は何をされるのかと、また不安だらけになった。

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コメント | | 2012-01-10-Tue 01:39 [編集]
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Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-01-10-Tue 07:29 [編集]
K様 おはようございます。
そろそろレス書いていきます。

> 三隅が、カッコイイ~(〃▽〃)b
> こうも凛々しくテキパキと行動してる姿を見せられると、完全に 私は堕ちました!

三隅パパ、良く動きますね~。
やることが早い!!(そうでないと進まないのだが…汗)
40代半ば、か後半のダンディなパパ(〃▽〃)
ヤクザも恐れない(つーか、お友達)しっかり者です。
子供は可愛いけれどデレデレもしないんでしょうね。
続き、頑張って書きま~す。
コメントありがとうございました。

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コメント | | 2012-01-10-Tue 18:48 [編集]
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Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-01-11-Wed 06:56 [編集]
J様 おはようございます。
初コメありがとうございます。

> 初めてのコメントです。
> いつも楽しく読ませて頂いています。
> 特にちびっこ編が大好きです。
> 今回のお話も小さな子が出て来て興味深々です。
> ダンディーなパパと優しいお兄さんに大切に
> 育てられるのでしょうか…そうであって欲しい!(^^)!
> 一時、ブログの閉鎖も…なんてあって
> 大変悲しく思っていました。
> 出来る事ならこのまま、無理をしない程度に
> 続けて頂けたらと、切に願っています。

ちびっこ、全然BLっぽくないのにね(苦笑)
楽しんでくださっているようで嬉しいです。
現在のちびっこ(日生)はやがて大人になっちゃうんですけど、
まだしばらく飼育日誌が続きます。
パパとお兄ちゃんに囲まれて…どうなるんでしょうね(゚∀゚)

ブログ閉鎖について、勢いで書いてしまってご迷惑をおかけしました。
衝動的にならず、もうちょっとよーく考えてから発言するようにします。
感情のままに突っ走るのは良くないですよね~(ーー゛)
コメントありがとうございました。
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