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BLの丘
策略はどこまでも 6
2009-07-01-Wed  CATEGORY: 策略はどこまでも
自分から喫茶店のことを聞いておきながら、この場になって(しかも昼食代まで支払われて)逃げ出すことも出来ずに、大人しく上背のある男を追いかけた。
先ほどの定食屋から200メートルほど進んだすぐ近く、どう見ても一軒の住宅としか見えない家に彼は足を入れた。
道路に面した数段の階段を上がると門扉が見える。それを開けると正面に黒い玄関ドアがあった。
「え、ちょっと、ここっ」
「はい、私の家です」
「はいぃぃぃ???」
聞いたのは喫茶店であって彼の家ではない。大きな目をさらに見開いて訳がわからないと目で訴えれば、クスクスと笑う男が、まあまあと那智をなだめた。
「これでもバリスタの試験を受けているんですよ。その辺のコーヒーショップ以上の味は出せますから。…さあ、どうぞ」
玄関ドアを開けられ、入ることを促された那智は、どうしたものかと一瞬悩む。悩んだが、初めて出会ったこの男の強引さと奥深さに惹かれて、足を踏み出した。
「お邪魔します」
中に入ると、民家とは違う作りに驚いた。段差がなく、靴をはいたままで奥まで行ける造りはどこかの店と変わらない。
20畳ほどだろうか。決して広いとは言えないが、リビングを模した造りは外国映画に出てきそうな雰囲気だった。
部屋の中央には黒い革張りのソファが置かれ、奥にはスクリーンと見紛うほどの大きなテレビが掛けられている。
床には大理石を思わせる床材が敷かれていて、歩くたびにコツコツと音がした。
「適当に座っててください。今コーヒーをお持ちしますから」
部屋の隅にあるキッチンに入った彼は、フフ~ン♪と鼻歌を響かせながら豆のブレンドをしているようだ。おずおずとソファに腰を下ろした那智にも、その香りは漂ってくる。
那智はくるりと室内を見渡した。壁に張られた市松模様の柄やシックな間接照明など、店舗としてやっていけそうな雰囲気がある。
玄関ドア一枚をくぐった先にこんな異空間があるとは思わなかったな…。
ほどなくしてコーヒーの香ばしいかおりが部屋全体を覆った。センスの良さを思わせる陶器のコーヒーカップに注がれ、トレーに乗せられて那智の座る前まで運ばれる。
那智と会い向かいに座った男が、「どうぞ」とカップを進めた。
今まで感じたことない豊潤さがそこにあった。コーヒーなんて飲めればインスタントだってかまわないと思うのに、この男にはこだわりがあるのだろう。
そっと口をつけてみれば、苦さの中にもまろやかな味わいを感じられる。コーヒーがこんなに美味しいものだったなんて知らなかった…。
「いかがですか?お口に合いました?」
穏やかな笑みを浮かべられて、思わず那智の頬も緩む。
「はい。とっても美味しいです」
「それは良かった。時々、友人らを招いてパーティなどを催すんですけどね。どうも私の友人はコーヒーよりもアルコール好きでね」
味わってくれるような輩は少ないのだと言う。
こんなに美味しいコーヒーならお店でも開けそうなのに…と那智は即座に思った。バリスタの試験まで取っているなら尚更だ。
コーヒーに対しての知識が何もない自分にはあまり偉そうなことは言えないが、豆やカップにこだわりをもつ人は居ると思う。
そういえば…。
「あの、ここはお店なんですか?」
明らかに分かる、一般家庭とは違う造り。玄関の外からみた光景は一軒家と何も変わらないのに、一歩踏み入れた世界は明らかに違って見えた。
今どき、家庭のリビングを改装して『隠れ家』を打ち出す人がいるのは良く目にしていたし、ここが美味しいコーヒーを出す店だと言われても何ら不思議はない。
那智が素朴な疑問を口にすると、目の前に座った男はコーヒーカップをソーサーに戻しながら、「違いますよ」と首を振った。
「これはあくまでも趣味の一つです。そう言えば、お名前も伺っていませんでしたね」
そう言いながら、スーツに忍ばせた手の先から、スッと一枚の名刺を出して那智の前に滑らせた。
「本業は弁護士なんです」
テーブルの上を滑ってきた名刺に気を取られた。
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