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BLの丘
甘い人 5
2011-12-12-Mon  CATEGORY: 甘い人
佐貫に車に乗せられていた。
かろうじて服は着たものの、かなり乱れていて、上から毛布をかけられている。後部座席に横たわった体は、疼く熱に襲われていた。
江嶋がいつの間に入れたのか、酒に含まされた媚薬は着実に望の体を蝕んでいた。
ホテルの部屋に連れ込まれた時、「薬が効いているから」と言いながらも、叫ばれることと暴れられることを恐れて望を拘束した。
親切心と好奇心から話を聞こうとした自分に対して、あまりにも酷い仕打ちだと思ったが時はすでに遅い。

「譲原さんが、あんなにも尽力してくださったのは、俺のことを思って…だからでしょう?」
どこかで意味を取り違えた男は、ねっとりと望の体を撫でた。
仕事だからしたことであり、どんな相手にだって満足いくような結果を与えてやりたい。
それがどうして、『想いがあるから…』と捉えられたのか…。
この男の性癖を知ってはいたが、自分が対象になるなど、想像の域を越えていた。
ベッドの上で、逆らえない体をいいようにねぶられる。
脳裏を横切る、自分を大事にしてくれた人に、あまりにも申し訳ないと涙が零れた。
浮かんだのは、佳史だけしかない。いつまでも待ってくれた人…。何があろうともそばにいてくれた人…。

声の一つも出せない場所に響いたホテルの部屋の呼び出し音。
何だ?と訝しげに無視を決め込んだ江嶋だったが、執拗な音は行為を続けることを妨げるのに充分だった。
続いて聞こえてきた解錠の音に、自身を晒すような恐怖と救われるような安堵を味わう。
江嶋だけでなく自分も、世間に性癖を晒せるような度胸は持ち合わせていない。
だがその先に見えた姿に、瞠目しうろたえた。
…佐貫…っ!!

見られたくない人物であることに変わりはない。
かつて愛し、あっさりと捨ててくれた人であり、幾つもの傷を背負った人…。
そこに自分が加えられるのも嫌な話だ。佐貫はいくつ、こんな暴行現場を目撃するのだろう…。
もう彼を苦しめたくないと願ってしまう。

「望?!」
口を塞がれていた猿轡を外され、手首を拘束した紐も解かれた。
「だいじょ…」
心配をかけたくなくて、起き上がろうとした体がマットレスの上に崩れ落ちる。
思っていたよりもクスリの効き目は強いらしい。
そして人に触れられたことで余計に体が反応した。
…熱い…。
「…はぁ…っ!」
吐息に佐貫がすぐ怪訝な表情を浮かべた。
こんな事態は慣れた事なんだろうか…。
「何か、盛られたのか…?」
「…たぶ…ん…。酒に、何か混ぜられた、んだと思…う…」
「アイツ…っ!」
憤る佐貫をどうにか抑えた。
もともと飲みに行く話に乗ったのは自分であり、彼の感情に好奇心を抱いたのも自分だ。
心配されるのはありがたいことであったが、こうして誰にでも親切丁寧な腕を差し伸べてくる優しさにまたほだされそうになる。
「い…から…」
江嶋の身元など充分なほど知れている。弱みすらこちらの手にあった。
どこか切羽詰まった状況は、燻ってきた日々からの解放も関係したのだろうか…。などと考える自分は犯罪者に甘いのか…。
「事情聴取は後でいい。送ってやる。…佳史のところでいいだろう?」
一拍の後、告げられた言葉に頷き返す。
体の奥に籠る熱の正体を知っているし、自分で処理するような惨めさを味あわせたくないもの…。
幼馴染とはいえ、男の性、全てを知り尽くしたような相手に、羞恥心も吹っ飛びそうだった。

車中で気を紛らわそうとしてくれるのか、佐貫が声をかけてくる。
「ヌきたいならヌいていいぞ」
疼く体の存在を理解しているとはいえ、いくらなんでもこの場でその行為だけは避けたい。
「ばか…」
体を丸めた望に一応笑みは浮かべてくれたが、あくまでも表面上のもので、心底気遣われているのが肌ごしに伝わってきた。
仮にそんな態度に出たとしても、誰にも何も言うことなく闇に葬ってくれるのだろう。

車に運び込まれて向かった先。
到着と共に佳史が慌ただしく家から飛び出してきた。
「望っ?!」
連絡はすでに入れられていて、この時を今かと待ち侘びていたのが伺える。
先に下りた佐貫が佳史に大雑把な説明をした。
「怪我とかは無いから…。ただ、一服盛られている…」
佐貫の説明に佳史の瞳が見開いた。
言葉の裏に、「早く楽にしてやってくれ」という思いやりが見えた。
それが何を意味するのか…。この先に続く性行為を見られるようで羞恥心が湧くものの、望の体を佳史に預けてすんなりと消えてしまう寡黙な男に感謝も浮かぶ。
ガクンと崩れそうになる体を支えられて、でもこのまま抱かれたくはないと望は「先に風呂…」と願い出た。
「望…」
「頼む…。このままは嫌なんだ…」
未遂とはいえ、何があったのかなど、佳史も理解できることなのだろう。
「分かった…」と頷いて、望を自宅の中へと入れた。
温かな空気がここにはあった。
後ろめたい男同士の関係かもしれないが、誰よりも想い、何よりも大事にしたい環境がある。
江嶋はどうしてそれが分からなかったのだろう…。
教えてやりたかったが、それは自分の役目ではない。
今は…。燻るこの体を愛してほしかった…。
38年。生きてきて手に入れた全て…。
愛する、愛される、という意味を、あの男は取り違えた。

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2011-12-12-Mon 00:30 [編集]
江嶋にとって 自分の性癖を知ってもなお 態度を変えず 親身に相談に乗ってくれ、離婚問題もスムーズに決着つけてくれた美麗で優しい弁護士

そんな 真面目に仕事に取り組む望の態度が、勘違いさせたようですね。ε-(゚д゚`;)フゥ...

愛する佳史に癒され 嫌な事など 早く忘れさせて貰ってね♪

佐貫が、あそこに居て ほんと良かったですね
さすが、佐貫です!
カッコイイ~+゜*。:゜+(人*´∀`)ウットリ+゜:。*゜+byebye☆

Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-12-12-Mon 08:10 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> 江嶋にとって 自分の性癖を知ってもなお 態度を変えず 親身に相談に乗ってくれ、離婚問題もスムーズに決着つけてくれた美麗で優しい弁護士
>
> そんな 真面目に仕事に取り組む望の態度が、勘違いさせたようですね。ε-(゚д゚`;)フゥ...

とんでもない勘違い野郎ですね。
望はお仕事をしただけ。あと、ちょっと興味の対象だった模様ですが…。
飲みにも付き合っちゃって…。
そんな人に目をつけられちゃって、望も災難です。

> 愛する佳史に癒され 嫌な事など 早く忘れさせて貰ってね♪
>
> 佐貫が、あそこに居て ほんと良かったですね
> さすが、佐貫です!
> カッコイイ~+゜*。:゜+(人*´∀`)ウットリ+゜:。*゜+byebye☆

あとは佳史になんとかしてもらいましょう。
お医者様、傷を癒してあげてね。
佐貫、いいお仕事してます。
偶然て(←)すごいです。よく望を見つけてくれました(゚∀゚)
でも佐貫は取り調べできっとお家に帰れないでしょう(虐めてないもん)
コメントありがとうございました。

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