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BLの丘
あやつるものよ 18
2011-11-29-Tue  CATEGORY: あやつるものよ
「ホテルに戻る前にちょっとした買い出しと思って立ち寄った場所で、まさかの出会いがあったものだ…」と、しばし懐かしさに会話を続けていたが、何せ勤務中である。
近くにいた弥富が動きだしたことで、千種も現実に戻った。
「ここ、何時までなの?俺、今夜こっちにいるから、久し振りに付き合えよ」
一宮の誘いに、千種は少し首を傾けた。咄嗟に岡崎の存在が頭を過ったからだ。とはいえ、一宮を知る岡崎が、再会の場に水をさしてくるようなこともないだろう。
昔持った雰囲気に戻れて千種の心も浮上する。
なんとなく一宮に何を聞かれるかが想像できるところが怖いが。
「分かった。じゃ、またあとで」
約束を交わして一宮と別れた。

一度離れた弥富が戻ってくる。先程の話を聞かれていたのではないかと、少々の気まずさが千種に湧いた。
どうであれ、過去に退社に追い込まれるほどの大きな失敗を起こした事実は、今の職にも影響するような気がした。
だが近くに寄ってきた弥富は普段と変わらない態度で、「この辺の片付けと、あと駐車場にあるカート類、戻したら上がっちゃっていいよ」と指示を出してくる。
「あ、…うん…」
戸惑いを持ったのは千種だけのようで、こちらから話しかけなければ不用意なことは聞いてこない。
尋ねたいことはもちろんあるのだろうが、千種の過去を詮索するような雰囲気を向けてこないことに少し安堵する。
少々もたついた行動を取る千種に、笑顔で「夕飯の準備、間に合わなくなるんじゃないの?」とからかってくるのはいつものこと。
「うーん、俺、出掛けることになっちゃったから…。お惣菜買って誤魔化そうかな…」
千種がこれからの時間に外に出ることなど、まずないと知る弥富だからこそ、不思議な言葉を聞いたと首を傾げられる。
「千種くんが?相手の人じゃなくて?」
交友関係の少なさはすでに知られた話である。
小さな頷きを返すと、一宮に話しかけられていた光景を目撃していた弥富は、「もしかしてさっきの人?」と控え目に聞いてきた。
興味を持たれるのは、まぁ…分かっていたことなんだけど…。口は重い。
「…ん…。ちょっと…向こうで一緒に働いていた人で…偶然…」
話の内容は耳にされているのだろうが、あえて突っ込んでこないところは、弥富らしい優しさに思えた。
「もうちょっと長く話しててもいいのに、って思ってたんだ。でもそういうことならね」
そういうこと…とは、この後出掛ける約束を取り付けたことを言っているのだろう。
勤務中の態度がそれでいいのかと訝しさを浮かべれば、クスクスと笑われる。
「俺と千種くんが話してた時間の五分の一にも満たない短さだったよ」
それは、いかに千種が弥富の仕事中に押しかけて話をしていたかを教えてくれるものであった。
「あ…」
知り合いのいなかった千種は、顔を合わせるたびに何かと声をかけていた過去を思い出して途端に恥ずかしくなった。
その姿を見て余計に弥富が柔らかく笑う。
「そんなの日常茶飯事のことなんだって。それより千種くんの真面目な働きぶりのほうに、こっちのほうが頭が下がるよ」
先程も一宮に仕事での評価をもらったばかりで、また似たような内容が弥富からも口にされれば、そんなことはないと咄嗟に否定する。
どう言われても、一つのミスで全てを失う時が来る恐怖感は千種の中にある。だが心は正直に温かくなる。

「はいはい。早くしないと余計に遅くなっちゃうよ。じゃあ頼んだからね」
仕事を促した弥富は自分のやるべき場所に向かっていく。その後姿を追い掛けながら、弥富だったらもし話を聞いても口外などしないだろうと思えた。
もし一宮との会話の内容を理解したとしても、このスーパーで働く千種が、弥富の中の千種なのである。

仕事を終えるとロッカーの中に入れてあった携帯電話に、すでに岡崎からメールが届いていた。
社員は仕事上持ち歩くことが許されているが、原則パートアルバイトは禁止である。
『店 連絡』
意味不明でありながらあまりにも簡潔明瞭な一文だ。笑いと溜め息が同時に漏れる。
すでに一宮から岡崎に連絡が入っているのだろう。千種と一宮が出会ったことが分かり、出掛ける約束をしたのも聞き、そのことを反対するわけでもない。
ただ行き先は知らせろとのこと。
岡崎の性格を思えばやってくることもない。二人には現在でも仕事の関係が付きまとっている。

一宮と待ち合わせをしたのは繁華街の居酒屋だった。ホテルから徒歩で来られるというのもいい。
ただ、バスの時間が合わなかった千種を、一宮がその日借りていたレンタカーで迎えに来てくれる結果になった。
自家用車での移動がどれだけ制限がないものかをいつも知らされている千種である。
『安城が来るまで40分も待ってられるか~。迎えに行ったほうがはぇぇぇ~』
連絡を入れた時の一宮の返事だ。スーパーまで来られたのだ。マンションまでは車にして僅かな距離。ちなみに繁華街近くの駅まで徒歩一時間、車であれば…。
さすがに天白の伯父の店は使えなく、襖で仕切れる座敷のある大型チェーン店となった。顔を合わせれば後で何を聞かれるか分かったものではない。それに、あそこの店は話が全て筒抜けになる造りだった。

再会を祝う乾杯と他愛のない話の流れ。
「こっちの住み心地はどうだ?」「スーパーはバイト?いつから?もう慣れた?」など、日常の話ばかりが続く。
過去の話をされないのはありがたいことであったが、仕事を離れた今、こうまでも話題が見つからないものか…と思うくらい、妙な間が開いた。
千種が「こっちにはどんな件で来たの?」と問いかけても、「あー、まぁ、いろいろと…」と誤魔化され、「本社の人たち、元気?」と尋ねれば、「うん、元気だよ。だから心配するな」と話を切りあげられる。
一宮は営業なりに話題をふってきてくれるが、その間の取り方の悪さを本人も感じているようだった。
夕方店内で話した時のかつての姿が見られない。
昔を知っている仲である。さすがにもう耐えられなくて、「なんかあったの?」と詰めれば、しばし口を閉じた後、観念したように言葉を発した。
千種の譲らない性格は一宮も充分理解している。
「これさー。…もう部長にバレたらバレたでしょうがないけど…」
言い淀む台詞の中に岡崎の名前が入れば、千種も関係していることを悟った。
盛大な溜め息に飲みこまれないよう、黙って続きを促す。

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No title
コメントけいったん | URL | 2011-11-29-Tue 10:53 [編集]
自ら異動を願い出て 千種を手許に引き寄せる”賭け”をした岡崎部長
まだ 何かあるの... Σ(゚ω゚)b...?

岡崎ダンナは、若くして部長までなった御方ですもん!
策士に違いないわよね~♪

で、なに~なに~、どんな話しなの!?
盗み聞き (ーーэ│壁 ...byebye☆


Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-11-29-Tue 13:07 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 自ら異動を願い出て 千種を手許に引き寄せる”賭け”をした岡崎部長
> まだ 何かあるの... Σ(゚ω゚)b...?

いや…(・・;) たいしたことは何も…。
ちょっとだけネタバラシ程度のものです。
そんなに期待されるほどのものではありませ~ん。

> 岡崎ダンナは、若くして部長までなった御方ですもん!
> 策士に違いないわよね~♪
>
> で、なに~なに~、どんな話しなの!?
> 盗み聞き (ーーэ│壁 ...byebye☆

策士は策士なりに色々と手まわしをするようですね。
ぬかりなくやり遂げないとね~。部長の肩書が泣いちゃいます。
あっΣ( ̄□ ̄;) 障子に目が…。壁には…。
コメントありがとうございました。


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