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BLの丘
あやつるものよ 6
2011-11-17-Thu  CATEGORY: あやつるものよ
どのタイミングで寝ようか…と、うかがうからなのか。かなりの量の酒を摂取していた。
一緒に寝るということをあえて意識しないようにしているつもりもあった。だからグラスを傾ける勢いは頻繁になってしまったのだろう。
とはいえ、酒量を岡崎と競うことこそがすでに間違った話だ。
酔い潰れて岡崎に促されるまま向かった寝室。酔いの気分も手伝ってくれて緊張感も吹っ飛んでいた。
岡崎に寄せる信頼の高さもある。
ずっと悩み緊張していた日々から解放されたというものもあったのだと思う。
同じ屋根の下にいる…。
安心感は千種を安らかな眠りの世界にいざなっていった。

「まったく…。嬉しいけれど拷問だな…」
ぽつりと呟かれた岡崎の言葉さえ、夢の中の出来事に近い。
体を支えられて辿り着いた先。柔らかなリネンに包まれると、千種の意識はあっという間に飛んだ。
なにより、裏切られなかったという思いが強く働いたらしい。
岡崎がそばにいることで、つかえていた胸の内が解れていったのだ。
会社を辞めてからの絶望。岡崎に誘われてからの動揺。再会するまでの葛藤。
いつもどこかで脅えていたことから、ようやく解放された安堵感が目の前に広がっていた。

すぐそばで何かが動く気配で目覚めた。
丸まるようにして眠っていた背後から、温かさが去っていく。
冬が訪れてきた朝、冷えた空気はこれまでの生活空間でも感じたが、今千種に与えられていたものは普通の生活では得られないものだった。自分のものではない温かさ。
余計に寒さを感じるものとなる。
「…?…ん、…あ…」
「悪い、起こしたか?」
千種がみじろいだことで目覚めたことに気付いたらしい。体を起こしかけた岡崎の動きが止まった。
壁に向かっていた顔を捩らせ、振り返ると覗きこんでくる岡崎の視線と絡む。
身近にあった温もりは岡崎のもののようだった。一瞬動揺したが、間をとった岡崎に千種から構えた力が抜ける。
昨夜の出来事が曖昧な記憶となっていた。
どうやってここに辿り着いたのか、思い出せないことにゆうべの酒が過ぎたのだと改めて知らされた。
「…んー…」
ぼんやりとする千種に岡崎も現状を悟ったようだ。
「二日酔いか?」
まだ寝ていろ、と言うように布団を掛け直された。そして岡崎はスッとベッドを降りていく。
岡崎が起きているのに自分が寝ているのはどんなものかと思う。
二日酔いというほどではないが、だるさは残っていて起き上がる気力が湧かない。
しばらくすると岡崎がペットボトルの水を持って戻ってきた。
「これでも飲んどけ。ちょっとコンビニに行ってくる」
「あー…、すみません…」
ペットボトルを渡されて、頭をくしゃくしゃと撫でられた。
体のだるさはすべてを投げやりな気分にしてくれる。おかげで岡崎への気遣いもおろそかになる。加えてこの場所から出ていってくれる、一人になれる時間が千種を余計に奔放にした。
衣類を掴んで部屋を出ていった後、幾つかの物音がしてから玄関が閉まった。
全く知らない町だ。できることなら岡崎と行動を共にして覚えたいことは多々あるのに、最初からつまずいた形だった。
とりあえず、明日から仕事が始まる岡崎の立場もある。今日の時間を有効に活用するためにも、早い体力回復を望んだ。
もうひと眠りすれば体調が戻るだろうということは、自身の経験からも分かる。
乾いた喉を潤し、再び瞼を下ろして、気付けば陽も高く昇った昼前になっていた。


岡崎のミニバンに乗り込み、向かった先のショッピングモールの大きさに、千種は絶句していた。
「デカイ…つうか、広いっつうか…」
田畑が広がる中に現れたいくつもの店舗。それぞれの建物を持ち、看板を掲げている。その一帯すべてが商業施設だった。
食品を売るスーパーからホームセンター、書店に映画館、電気屋、衣料品店、雑貨店となんでもござれの世界である。
青空の下、一面に広がる駐車場を移動するだけでも一苦労だ。いや、ここは徒歩で移動するものではないのだろう。
道路を境界線に次々と店舗が連なっている。
「だろう?」
「つか、ほとんどの建物が一階建てって…」
それが余計に広さを感じさせるものであった。
建物は上に伸びるのが当たり前だと思っていたが、ここでは横に広がっていくらしい。
岡崎がニヤリと笑いながら呆然とする千種に、自慢げに確認をとってくる。
確かに全て見て回るには一日では足りなさそうだ。
「どっから行く?家具屋?」
「あー、ですね。ベッド買わなくちゃだし。衣類ケースも…」
こうまで広いと幾つもの店を跨いで見るのは面倒な気がしてきた。売っているものは似たようなもので、一か所で済むならそちらのほうが効率が良い。
「別に俺は毎晩一緒に寝てもいいぞ」
「安眠を妨害すると思うので遠慮させていただきます」
こんなふうにからかわれるのはいつものことだった。
暗く沈んでいた日々が嘘のように、昔の、気持ちに余裕を持っていた頃に戻った気がした。
そんな雰囲気に持っていけるのも岡崎の魅力なのだと思う。
昨日の駅での話以降、岡崎は職場の話を一切持ちこまなかった。今でも同じ会社に勤める岡崎には後ろめたさがあるようだった。
千種は岡崎と再会したことで沈み切っていた生活から浮上できた。新しい土地に呼んでくれたことに感謝もある。
岡崎の気遣いを感じるからこそ、今までと同じように振舞える自分に早く戻りたいという意識が生まれた。

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