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BLの丘
ただそこにいて 60
2011-10-23-Sun  CATEGORY: ただそこにいて
吉賀の部屋で、缶ビールがカンと合わさって音を立てた。
久し振りのアルコールが体に染みていく。
伊佐の家にいるときは、あれこれと理由をつけられて、結局一滴も飲ませてもらえなかった。本人は優雅にグラスを傾けていたというのに…。
「はぁ~、美味し~」
それぞれの部屋で風呂を済ませた後から、水分を取っていなかったから余計に潤された気分だ。
テーブルの上にはいつもより奮発した品数が並んでいる。
こんなところにも吉賀の敵対心が表れているようで、失礼と思いながら笑みが浮かんでしまうのだが…。
俊輔とて、これといって贅沢三昧に暮らしてきたわけではない。
食事に関しては家政婦さんが作ってくれる家庭の味だったし、それらは食堂で食べているものとあまり変わらなかったはずだ。
「いっぱい食えよ。俺のおごりは食えないとか言われるの、やだし」
「もう…。そんなこと言うはずないじゃん。…つか、別におごってもらわなくてもいいのに…」
「いいのっ、今日は!俊輔に対してのお詫びもあるんだから~」
二人の間では引きずられてしまう出来事だったのは間違いなく、問題ないと思っているのは俊輔だけで、実際にはまだ触れていない吉賀が不安を抱えているのも一目瞭然のこと。
さすがに伊佐相手に大丈夫でした…などという発言ができるわけがない。

話の中、休み中の話題はあえて避けられていた。
伊佐の家の中での出来事も、だ。
この一週間ほど俊輔は伊佐の家から通いつつも、いままで通り働いたし、時間ができれば吉賀と話しもしてきた。
ただ唯一、伊佐と一緒に出掛けた日のことが話題に上った。吉賀が訪ねてきてくれたのに、俊輔が眠ってしまっていた日のこと。
「疲れて眠っちゃうくらい、はしゃぐ俊輔を見てみたい…」
要するにこれから先、吉賀とも色々な体験をしていきたいという願望が含まれているらしい。
そのことには俊輔も素直に頷いた。

伊佐には「浮いた利息分のお金は自分のために使いなさい」と言われていた。
しかも支払金額は更に減っていた。
そのことを取りたてて話をしなかったのは、伊佐の気持ちがなんとなく知れたからだった。
“同意の上”とはいえ、伊佐は俊輔を抱いたことを自分が得た時間と区分けしていた。
わざわざ言ってこなかったのは、まるで体を売ったような気分を俊輔に持たせたくなかったからだと思う。
俊輔はその気持ちをありがたく受け止めることにした。

吉賀と一緒にいられる至福の時間を過ごし、自然とアルコールも進んでいく。
久し振りの飲酒は、ほどよく俊輔を酔わせてくれた。
いつの間にかベッドに寄りかかるようにして、二人隣同士に並んでいた。
酔いと喜びから体から力が抜けて、くたりと吉賀の肩にもたれかかった。
人肌がそばにあることが安心感を運んでくる。
「俊、泊まっていく?」
耳元で囁かれる声が浸透してくる。優しく話されることに体の奥から疼き上がってくるものがあった。
体を熱くさせる肌と肌の重なり…。
思い出してしまう自分を厭らしいと思いながら、吉賀ときちんと繋がれていないのを悲しく感じていたりする。
もう大丈夫だ…というのを吉賀に、きちんとした形で教えたかったのかもしれない。
「…ん…」
返事ともとれないような声を上げながら、鼻先を肩口に押し付けて、吉賀の香りを嗅いだ。
一瞬ピクリとした吉賀が、ぎゅっと俊輔の腰を掴み直して抱く。
「そういうことされると、俺の忍耐力が、ね…」
やはり吉賀の中ではまだ燻っているものがあるのだろう。
同時にこんなふうに守りに入るだけではなく、もっと強く自分を引っ張ってほしい贅沢さに見舞われた。
吉賀に我慢をさせているような心苦しさも湧きあがる。
「吉賀…」
「俊輔、…妙な色気つけて、戻ってきたよな…」
ドキンと心臓が跳ねあがった。
伊佐との関係を悟られたような…、焦り…。
「先生に『慌てるな、焦るな、急ぐな』って散々言われてるんだけど…。煽られてるし…。俊輔の気持ちの表れなのかって思ったら嬉しいだけ…」
啄ばむようなくちづけをされ、首筋に顔を埋められる。
吉賀には純粋に俊輔が気持ちを素直に表現しているだけと捉えられているようだった。
正直に表されるものは相手を喜ばせる…。俊輔だって吉賀に、そうあってほしいと願う。
「吉賀…」
呼んで顔を上げさせて、正面から向き合って…。
俊輔から唇を押し付けたら、もう止まらなかった。

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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2011-10-23-Sun 23:39 [編集]
俊輔くん積極的ですね
いろいろ経験を積んだし
大好きな吉賀君に我慢ばっかりさせたくない気持ち
よーくわかりますとも

伊佐先生ったら手負いの小鳥さんを
手元において懐かせるんじゃなくて
治療して空に戻してくれたのですから
ちゃんと行くべきところに飛んで行けるといいですね
No title
コメントasami | URL | 2011-10-24-Mon 00:15 [編集]
お久しぶりですm(--)m
きえ様の書くお話ってどうしてこんなに
萌えるのでしょうか~!
吉賀くん可愛い~!
文才があるきえ様がすごく羨ましいです(笑)

そしてそして、こんな厚かましいこと言ってる
自分が恥ずかしいのですが(スルーして下さいね)

BLの丘原点のちーちゃん&ひーちゃんカプの
絡みも見れたらサイコーだなぁーと思いまして(笑)

どのカプも魅力的で興奮しますが
たま~には、英人&千城の熱々ぶりも見たいっっ!
と言うファンの人声でした~!
淋しいシリーズで、感極まって何度も泣いてますから(笑)
それだけ好きなんですよね。

これからも影ながら、応援させてくださいね^^
このサイトが大好きです。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-24-Mon 07:07 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> 俊輔くん積極的ですね
> いろいろ経験を積んだし
> 大好きな吉賀君に我慢ばっかりさせたくない気持ち
> よーくわかりますとも

今まで控え目に過ごしてきた生活が、少々はじけてきましたかね。
性格もオープン、本来の姿になってきているようです。
吉賀と本音の部分で触れあいたいのでしょう。

> 伊佐先生ったら手負いの小鳥さんを
> 手元において懐かせるんじゃなくて
> 治療して空に戻してくれたのですから
> ちゃんと行くべきところに飛んで行けるといいですね

伊佐も努力しました。
こちらはちょっといい思いをしたようでもありますけれど。
でも無事羽ばたいてくれたようなので一安心でしょう。
素晴らしいお医者様です。
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-24-Mon 07:17 [編集]
asami様
おはようございます。

> きえ様の書くお話ってどうしてこんなに
> 萌えるのでしょうか~!
> 吉賀くん可愛い~!
> 文才があるきえ様がすごく羨ましいです(笑)

お久し振りです~。
こんな駄文なのに萌えていただけているでしょうか。嬉しいです。
お互い素直になっていけたらいいです。

> BLの丘原点のちーちゃん&ひーちゃんカプの
> 絡みも見れたらサイコーだなぁーと思いまして(笑)
>
> 淋しいシリーズで、感極まって何度も泣いてますから(笑)
> それだけ好きなんですよね。
>
> これからも影ながら、応援させてくださいね^^
> このサイトが大好きです。

ちーちゃんひーちゃんですか~。
すっかり保育園の印象が強くなってしまって…(汗)
私も思い入れの強い作品ではあるんですがね~ぇ。
あぁ、そう、去年、人気投票までしたのに書かなかった覚えが…。
とんでもない作者ですね(^_^;)
応援感謝です。いつでも遊びにきてください。
コメントありがとうございました。
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