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BLの丘
ただそこにいて 44
2011-10-07-Fri  CATEGORY: ただそこにいて
伊佐の家で俊輔は眠りに落ちた。その後、出勤するために伊佐に揺すられるまで目が覚めない、爆睡っぷりだった。
深夜の大移動を気にするからなのか、今日休むかの問いを受け、俊輔は横に首を振った。今日から働きに出ると伝えたのは自分自身だ。
嫌な汗に濡れた体は拭われ、着慣れた…、着慣れてしまった衣類が身を包む。

寮で起きた騒ぎは特に問題にもなっていなかった。
夜中のことであったし、津和野と伊佐が素早く事を進めたのもある。
これまで休んでいた俊輔が外から出勤しても違和感も持たれない。
朝礼の後に顔を見た班長も「無理するなよ」と気遣ってくれる。その他の社員も同様。
ただ、吉賀だけが、まるで腫れものでもみる目つきだった。
原因を作ったのが自分だという思いもあるのだろうか。
話しかけたいタイミングすらとれないといった感じで、今までの人懐っこい姿がかけらもみられない。
こんな時、俊輔から話しかけてやるべきなのだろう、とは思う。
以前にも同じような時はあった。
倉岳に蔑まされて津和野に泣きついた翌日のことだ。一度は拒絶した吉賀に、何事もなかったように話しかけた日。
そのことを嬉しく受け止めてくれた吉賀の姿があった。
だけど現在の、ふたりの間に漂う、堅苦しい雰囲気は、近付くことを許さないものとしていた。
黙々と作業を続け、終業の時を待つ。
みんなで固まってとった昼食の席ですら、何の会話もなく、他の人からふられる世間話に適当な返答が漏れただけだった。

寮に帰るものだと思っていたらしい吉賀が、敷地外へと向かう俊輔を呼び止めた。
「俊輔っ!」
多くの人が流れる時間帯で、二人のやりとりを気にする人などいない。
ましてや違う班ともなれば、そこに起こったトラブルも何も耳にすることはなく、興味の対象外と言って良い、無関心な状況だった。
吉賀に呼ばれてピクリと全身が跳ねあがる。
「俊輔…、話がしたい…」
真剣な眼差しと掴まれる腕の強さ。その強さを感じられることは喜びでもあった。反対に不安もやってくる。
昨夜のことを思い返しても、本当に嫌われたのではないのかという脅えが俊輔の中に存在していたからだ。
一度はまだ思ってくれているのだと安心したけれど…。
ゆうべ、俊輔は吉賀の前で、伊佐に縋り寄っていた…。
そのことをどう思われているのか…。津和野は吉賀に何を話したのか…。

吉賀に連れられて寮へと足を向ける。
見慣れた部屋だ。何度も訪れて…最後には、彼の気持ちを受け止められずに拒絶した場所…。
いつもの席にぎこちなく腰を下ろした。こんなふうに緊張して座ったことなど、過去にあっただろうか…。

「俊輔…」
語りかけられた言葉にぴくりと肩が揺れる。見上げられない落ちたままの視線が、膝の上で握られた拳を見据えた。
そこに吉賀の掌が被さってくる。
「俊…」
視界に映りこむ、重なった手。温かなぬくもりに包まれて呼吸が止まる。
視線を上げた先に辛そうに顔を歪めた吉賀の表情があった。
「ごめん…、ごめんな…」
何よりも先に謝ってきた吉賀の姿に、これまでためてきた思いが自然と伝わってきた。
傷つけたことに対して謝りたくて…だけど、そこまで辿り着けなくて…。
吉賀自身どうしてよいのか分からなかった現実。
俊輔には伊佐という存在があった。だけど吉賀には…。
「俺が俊輔をこんなふうにしちまったんだな…。眠っている時に、発作みたいなのが起きる…って先生に言われた。昨日のもそれで…。まだ寮の一人暮らしはダメだって…。ごめん…。こんなことになるなんて思ってもいなくて…。俺、俊輔のこと…」
吉賀だけが悪いわけではないのに…。
そう言ってあげたいのに喉ははりついたまま開かない。
握られた手から離れた吉賀の腕が俊輔の体を胸へと抱き締めた。少し震えた体が伝わってくる。
吉賀の苦しそうに吐かれる呼吸が耳元でする。
「…あの人が、俊輔の身請け人になるって聞いた…。借金も全部片付いて…。だからもう、俺の出る幕はないって…。関わるな…って…」
「え…?」
突然告げられた曲がった話の行方に俊輔は瞠目する。
「俊輔…、こんないい服、着てるもんな…」
自分ではしてやれないといった諦めにも近い言葉が聞こえ、背を撫でられた。


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参考になりました。ありがとうございました。
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コメント | | 2011-10-07-Fri 07:38 [編集]
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Re: さすが津和野センセー
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-07-Fri 13:28 [編集]
Kさま
こんにちは。

> なるほど そう来ましたか。
> 俊輔くんも 吉賀に触れられて 恐怖心より先に 「えっ?」ってなったかな?

そうきましたよ!!
意識があるうちの、吉賀に触られて恐怖ってことはないとおもうんですけどね。
でも「え?!」は思わせないと…。

> 確かに 伊佐さんの傍は 安心出来るし、今の状況では そちらに逃げたくなるのもわかるけど……
>
> 吉賀派の私としては これを機に もっと大人になって 俊輔くんを支えてあげて欲しい と思ってしまいます。
> 俊輔くんだって まだまだ子どもなんだから 二人で成長すればいいんじゃないかな?

吉賀派一票頂きました~♪
吉賀が大人になる、俊輔は素直な子供になる(←いや、それ違う…)
でもいろいろな意味でお互い支え合っていってほしいです。
そう、二人で成長すればね~。
そこを温かい目で見守ってくれるのが、できた先生、津和野先生、がんばれ~ヽ(゚∀゚)ノ
コメントありがとうございました。

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