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BLの丘
ただそこにいて 28
2011-09-21-Wed  CATEGORY: ただそこにいて
もちろん、並んで寝ているだけで何をしているわけでもない。
ベッドは広かったし、悪夢に苦しむ俊輔をすぐに見られるという状況であったから、俊輔自身も認めていた。
真夜中、無意識に人の温度に縋ろうとしてしまう体と、時々襲ってくる痛みで甦る吉賀との行為。
体が覚えてしまった激痛はなかなか俊輔から消えていこうとはしなかった。
寝返りを打つごとに安眠を妨げられていたことも、伊佐に”固定”されることで深い睡眠を貪ることができた。
睡眠を充分に取れたのは、俊輔の回復を早めた要素であるのかもしれない。
その”抱き締められている”あとにくるもの…。
布越しとはいえ、伊佐の体温まで知っている俊輔にとっては刺激の強い台詞に間違いなかった。
おかげで容易に映画やドラマの中で繰り広げられるエッチなシーンが脳裏に浮かんでしまったのだ。

「な…、に、…」
咄嗟のことに返す言葉が浮かばない。
伊佐に言わせれば、俊輔と吉賀がとった行動は安全とは言えない危険行為だった。
指導はありがたいかもしれないが、そんなことは他人に教えてもらいたいことではない。確かに無知でいるよりはいいのかもしれないけれど…。
だいいち、吉賀は、まだ俊輔を思ってくれているのだろうか…。

伊佐がクスクスと笑い始めたことで、からかわれているのだとようやく気付いた。
本気で受け止めてしまった恥ずかしさも相まって、俯いてしまう俊輔に、「ごめん、ごめん」と全く悪びれていない詫びが入ってくる。
「いや、俊くん、マジで可愛いね。知名が釘を刺していった理由がわかるな」
伊佐と津和野が具体的にどんな話をしたのかまでは曖昧のままであるが、津和野が何かを言付けていったことは今の伊佐の台詞で知れてくる。
津和野のことだ。どうせろくでもない、余計なことを言い置いていったのだろう…。
からかわれて不貞腐れる気持ちと、陰で何やら話されている自分の知らない話題に、ますます俊輔の口は閉じてしまった。
目の前に並べられた料理に箸を入れられなくなり、動きが止まる。
「悪かったよ。外に出ないか?って聞いたのは気分転換をさせてあげたかったから。まぁいいや。とにかくまずは食べちゃおう。続きの話は上に行ってからにして……ね?」
少しの笑みは残しているけれど、真面目な口調で俊輔を促し、自分も盛られたご飯を満足げに口に運んでいる。
先程の冗談発言はすっかりとなりを潜め、相変わらずな日常の、ささやかな会話がダイニングテーブルの上で繰り広げられた。
こういった切り替えの良さも…、津和野に似ている…と、津和野と5年触れあってきた俊輔は思ってしまうのだ。

結局俊輔は、伊佐の強引さに負けて、次の日のお出かけに付き合った。
少しドライブをして、海沿いにある売店の店頭に並んでいるイカの焼き物などを目にする。
香ばしい匂いは胃袋を刺激してくれたし、迷いもなく伊佐は2つ購入すると、一つを俊輔に渡した。
「あ、…おかね…」
俊輔は着の身着のままで伊佐の元に届けられたらしく、貴重品の何一つ手にしていなかった。
戸惑い動揺する俊輔が、どうしたらいいのかとうろたえると、苦笑する伊佐の掌が頭上をポンポンと叩いた。
「あのね。俺のプライドを傷つけないでくれるかな。この状況で俊くんに支払わせる男ってどういう奴よ?頼むからそんな情けない奴にしないでくれる?」
伊佐はあくまでも自分が誘ったのだという姿勢を崩さない。
連れまわしているのは伊佐であって俊輔は付き合わされている立場なのだと。
伊佐の唇が耳元に寄った。
「かぼちゃの馬車に乗った時から君はお姫様なんだよ。今は魔法の時間。何の心配もしなくていいから。素直に楽しいとか嬉しいと感じたことを顔に出したり声にするんだ」

囁かれる言葉はとても甘くて…。優しい声音は今日も変わらずに鼓膜に響いてくる。
見た目とは違う柔らかな物腰。
誰かと恋人になったら、こんなふうに近くに寄り、ずっとこうやって甘い雰囲気に包まれるのだろうか…。
おぼろげながら想像していた”憧れ”がはっきりとした形で目の前に表れていた。

これを誰と共有したいのか…。
一瞬湧いた人の顔を、俊輔は手渡されたイカ焼きの香りで振り払った。
口に頬張ったものは新鮮で柔らかくて温かくて…。こんな味を俊輔は知らなかった。
涙が浮きそうになるのに笑顔が零れる。
「今はそれでいい」と、伊佐は俊輔を見下ろしてくる。

「さぁ、お姫様。お手をどうぞ」
悪戯に笑った顔がどこかに導くように掌を差し伸べてくる。
『今は魔法の時間』…。その言葉が俊輔の心を軽くしてくれた。
俊輔は迷いもなく、その手を握った。

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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2011-09-21-Wed 16:18 [編集]
伊佐さーん
甘いなぁ甘いっ
めちゃくちゃ傷ついた俊輔を優しく癒してくれる王子様みたいだね
ま、年齢的には王子じゃないかもだけど
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-09-22-Thu 10:18 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> 伊佐さーん
> 甘いなぁ甘いっ
> めちゃくちゃ傷ついた俊輔を優しく癒してくれる王子様みたいだね
> ま、年齢的には王子じゃないかもだけど

伊佐のセリフ書くと舌が浮く…(笑)
俊輔のことを可愛がってくれる人がここにもいてくれて良かったです。
傷を癒していただきましょう。
王子…っていう年じゃないですね…。
…世話係?!(←石が飛んできそう…)
コメントありがとうございました。
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