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BLの丘
ただそこにいて 27
2011-09-20-Tue  CATEGORY: ただそこにいて
生気を吸い取られたような表情で俊輔は一日を過ごした。
後孔に痛みはあるがヨロヨロと動けるようにはなった。一番辛かったのはトイレ事情だ。
伊佐は「排便しやすくなる薬」というのを飲ませてくれたけど、痛みが走ってその度に息むのを止めてしまう。
その痛みの辛さにさえ、どうして自分だけがこんな目に…?と思う原因になっていった。
別に吉賀を恨んでいるわけではない。
ただ、借金のことがなければ素直に吉賀を受け入れられたと思う現実があり、やるせなさが募っていくのだ…。

無気力になった俊輔は寝室から出ることはなかった。それでも広い部屋で不自由することはない。
伊佐は働いている間、できるだけテレビをつけさせた。人の声を聞かせることで一人にならないようにさせたかったからだ。そして気を反らせたかったのだと思う。
ニュースでも何でもいい。伝えられる情報は考え込もうとする思考を一時的にでも止めてくれる。
時間があくたびに伊佐は顔を出しに来る。
そのこまめさは津和野とは違っていた。
過ごしている状況も違うのだろう。津和野には離れられない職場がある。医務室で診たり相談を受ける人も多い。
何故津和野が俊輔を寮から追い出し伊佐のもとに預けたのか、漠然と知れてきた。
ここでなら少なくとも、俊輔を最優先にできる環境が整っていた。
何より伊佐の人の良さ。津和野の人間性を知るだけに、彼が信頼する人がどんな人であるのかも伝わってくる。
投げやりになった俊輔は、その優しさが嬉しくて、だけど怖かった…。
自分自身を見失いそうになるのを感じる。まだ心のどこかで、しっかりと判断がつく自制心がかろうじて押し留めてくれていた。
伊佐は、一時的な相手なのだと…。

2日、俊輔は同じような時間を過ごした。いつの間に用意されたのか、新しい服は俊輔の体のサイズにあっていた。ただ、着なれた安物とは違う肌触りであることは身につけるだけに良く分かる。
体を苛んでいた傷は、簡単なくらいに早く治ってしまった気がする。スルリと出ていく便がそれを物語っていた。
伊佐は実に良く話しかけてくれた。俊輔の私生活にはおよばない世間話程度のことだ。
時には津和野の昔話を聞かせてくれたり、その失敗談に(患者には失礼だが)笑わせられたり。
日常の些細なことを口にされて思い浮かべて、俊輔はフッと口端をあげた。
そのたびに伊佐もきつそうな印象を持たせる目尻を下げる。

昨日から俊輔は2階のダイニングで伊佐と一緒に夕食を摂っている。
椅子の上には当たり前のようにドーナツクッションが置いてあって、それがあるだけで何を晒しているわけではないのに恥ずかしい気持ちが湧いた。
どんな場所までも見られているというのに…。

自宅部分には雇いの家政婦の手が入っていた。忙しい身の伊佐は人を雇うことで自分の時間を作りたがっているらしい。
部屋は掃除され、温めるだけになった食事が二人分、鍋や皿の上に用意されている。
作るのは面倒でもそこそこの家事はするといった様子の伊佐が、鍋の中に入った味噌汁を温め、炊飯器からご飯をよそってくる。
俊輔のために伊佐が頼んでいることなのか、それとも長年勤めているという家政婦の勘と言う心遣いなのか…。
茶碗に盛られたごぼうと油揚げの炊き込みご飯は水加減の多い柔らかめだった。

「俊くん、そろそろ外に出たいでしょう?」
真正面に伊佐が腰をおろし、二人して箸を持った直後、突然ふられた話に何事かと思う。
体の痛みはもうないものと言って良かったし、働くことで常々体を動かしていた俊輔にとっては閉じ込められているような生活は、確かに窮屈だった。
こんなに広い部屋にいながら…。
「仕事に、戻っていいんですか…?」
「それはダメ」
見つめ返した先に尋ねた質問は速攻で却下された。
この部屋の『外』という意味が真っ先に職場に結びつく俊輔に、本人には聞かせられないほど小さな溜め息が伊佐から漏れていた。
「明日休診日だからどっかに行こう」
「え?!」
これもまた俊輔には想像しえない台詞である。
伊佐と共にどこかに行くという構図がなにも浮かばなかった。
それ以前に、誰かとどこかへ…、まともに出掛けたこともない俊輔だったのだ。
「あ、…いや…、でも、おれ…」
いつでも気になっていたのは、先々で使ってしまいそうになるお金のことだった。
見れば食べたくなる、欲しくなる…。そんなものがこの世にはゴロゴロとしている。視界に入れることで誘惑に負けそうな自分が怖くて、ほとんどの誘いは断ってきた。
俊輔の躊躇いを逆手に取るように、伊佐はダメ押しを告げてくる。
「俺とは嫌?」
「そんなことはないですけど…。でもやっぱり…」
あからさまに金の心配をしたくない、とは言いたくない。
伊佐の感覚で連れ歩かれたらあっという間に自分が破綻するのが見えてくる。
「それともここで二人きりでいたい?なんだったら傷つかせない”正しいセックスの方法”をレクチャーするけど」
それこそ突然湧いた話だ。意味が飲みこめなくて俊輔が瞠目した時間はどれほど長かったのだろう。
伊佐の台詞が冗談としても受け止められなかったのは、完全に俊輔が余裕をなくしていた証拠だ。
こちらのほうこそ、一瞬で伊佐に組み敷かれる自分が思い浮かべられた。
それもそのはず、というべきか。
ふたりはこの2日、同じベッドで一緒に寝ていた。

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コメント | | 2011-09-20-Tue 08:03 [編集]
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Re: 津和野?
コメントたつみきえ | URL | 2011-09-20-Tue 08:55 [編集]
S様
おはようございます。
ご指摘感謝ですm(__)m
No title
コメント甲斐 | URL | 2011-09-21-Wed 00:32 [編集]
伊佐先生ったら何考えてるんでしょう
傷つかない正しいなんですって~
冗談ですよね…
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-09-21-Wed 07:02 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> 伊佐先生ったら何考えてるんでしょう
> 傷つかない正しいなんですって~
> 冗談ですよね…

何を考えているんでしょう?!ヽ(゚∀゚)ノ
実践しそうな先生が怖いです(笑)
ま、無理強いするような人ではないですからね、津和野も。
ウブな俊くんが可愛いってことで、つんつんしているんじゃないでしょうか。
困ったオヤジたちです(笑)
コメントありがとうございました。
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