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BLの丘
ただそこにいて 17
2011-09-10-Sat  CATEGORY: ただそこにいて
恋愛ごとはこれまでわざと避けられてきた話題と言って良かった。
俊輔自身、吉賀を意識してしまうから、自分から振りまくこともないし、周りの人間が何を言っても相槌を打つくらいで済ませてきた。
他の人がいれば尚更…。
深入りすることで、吉賀への思いがばれてしまう恐れがあった俊輔は、いつも控え目に視線を伏せ続けていた。
倉岳に言われたことは衝撃でありながら嬉しさも混じらせるできごとだった。吉賀と繋げてもらえた、特別に扱われたような湧き上がるものが俊輔の中にあったが明かすことはできない。
吉賀にとっては限りなく迷惑にしかならない中傷だろうから…。
…が…。今はここに2人しかいなくて…。逃げ道が何もない。
その中で告げられる、人の慕情…。
正直、どうでもよくはあったのだが…。単に驚いただけで…。

「センセ…って…?」
半ば呆然と聞き返す俊輔に、明らかな苛立ちを含めた吉賀の姿が見えた。
こういった話題に自分が無知すぎて不適切だとは分かっていたけれど、今は話題の反らし方も知らない。
問い返したことが必要外の苛立ちを誘ったのだとは鈍感な俊輔ですら気付いたくらいだ。
吉賀は剣呑な雰囲気を隠すことなく身に纏わせている。
「よし…か…」
「俊輔も?先生がいいわけ?」
棘を含んだ質問が投げかけられる。
吉賀に言われることは、ただの質問でありながら、奥に潜む憎悪のようなものを感じた。
いつも誰にでも優しい吉賀。それが前面に表れているのに、密かに漂う押し潰されそうな強硬な立ち振舞い。
語られる端々に含まれる棘は倉岳が発したものに似ていた。
どう答えたらいいのだろうか。一瞬の戸惑いに、更に吉賀の不機嫌が募ったような気すらしてくる。
「べつに、先生がいいとかなんて…」
考えてもいなかった…。と最後まで言葉が続かない。
津和野の人の良さは充分なほど感じているが、それが恋愛感情に発展するかと問われたらまた別の話だった。
吉賀が聞きたいのはそんな内容なのだろうとはさすがに気付いてくる。ただ、自分に向けられる質問の意味までは辿り着けないが…。
津和野を慕う人間は幾人もいる。
特別な意味があるのかと問われたら間違いなくNOで、今自分が思う相手は目の前の…。
「でも俊輔、先生には何でも話すし、体まで…」
思ってもいなかった言葉は俊輔を抉っていく。
『体』という言葉は倉岳が発した蔑みに被さって俊輔を貶めた。
そういう意味ではないのだろうとは知っていても、心に突き刺さってくるものがある。

「な、…なに、いってんの…?」
思わず声が掠れた事は動揺を表したのか…。
更なる吉賀の不機嫌を煽ったのだろうか…。堂々と答えられなかったことは戸惑いと受け止められたのか…。
何かにつけて津和野を頼ったことは覆せない事実だった。
今更、誤解だと訴えたくても、成す術がみつからない。
多少のことは吉賀だって本気と嘘の違いくらい気付いているのだろう。
俊輔と津和野の間で何が起こったのかはすでに津和野が明かしてしまっているようなもので、それこそ子供が悪戯をしかけてそのネタばらしをしてしまった後に近い。
今更ほじくりかえされたら、どんなふうに答えていいのか分からないのは俊輔のほうだった。
そこは吉賀が判断して、理解してくれているものだと信じていた。
俊輔の戸惑いに苦虫を潰したような悔しさをにじませるものの、吉賀は自嘲するように溜め息で間を区切る。

「ごめ…ん、…俺、いらついているわ…」
またもや珍しい吉賀の台詞。こんな吉賀を見るのも初めてで、俊輔はどうしたらいいのかと戸惑った。責められていたはずなのに吉賀が自身を責めている。
状況を理解できないでいるのは自分だけなんだろうか…。
吉賀は手にした缶ビールをグイグイと煽っている。
「なぁ、俊…」
俊輔の肩がピクリと揺れた。
いつも呼ばれるのは『俊輔』。意味を込めて『俊』と呼ばれるのは本当に時々で…。その度に俊輔は吉賀が他の人間に向ける親切心とは違う、『特別』な存在になった気にさせられた。
『俊』…。その名は唯一津和野が呼んでいたくらいだ。
特に思い入れがあるわけではないけれど、呼ぶ人間が変わると受け止め方もこんなに変わってしまうものなのだろうか。
吉賀から呼ばれる声が鼓膜に優しく馴染む。

勝手に勘違いする『特別』が嬉しくて頬が染まる。
俯いたまま「ん?」と返事をする。
正面から吉賀の顔を見るなんて、怖くてできない…。
分かっているはずなのに、要求されることは…。
「俊輔。俺を見ろよ…」
力強く引き寄せられる声に瞼が揺れる。視界の影で動く大きな体の動きが感じられる。
「俊…」
顔を上げない俊輔に寄ってくる体躯。濡れた髪をかき回したはずの掌が俊輔の頬を撫でて指の腹が唇の上を掠めた。
気付かないうち、驚くくらいすぐそばに、吉賀の表情が視界に目一杯入りこんできた。

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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2011-09-10-Sat 11:18 [編集]
これでもかーというくらいにぶちんな俊輔くんに
ちゃんと現状把握させないとね
誰が誰を好きでどうしたいとか
そんで、あんなことやこんなことまでしちゃいたいとか…
ぁ、そこまではまだ言ってませんでした
けど、そうですよねー
きっと
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-09-10-Sat 21:02 [編集]
甲斐様
こんばんは。

> これでもかーというくらいにぶちんな俊輔くんに
> ちゃんと現状把握させないとね
> 誰が誰を好きでどうしたいとか
> そんで、あんなことやこんなことまでしちゃいたいとか…
> ぁ、そこまではまだ言ってませんでした
> けど、そうですよねー
> きっと

にぶちん…。にぶちん俊輔~。
どうやったら分からせられるんでしょうね。
周りのことはまだわかっていないけど。
吉賀もいろいろとやりたいことはあると思いますけど。
この先どんなことをしちゃうんでしょう。
コメントありがとうございました。
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