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BLの丘
ただそこにいて 16
2011-09-09-Fri  CATEGORY: ただそこにいて
勤務終了後、本当はいけないのだが、食堂でプラスチックのパックに幾つかの食品を入れてもらって部屋に持ち帰った。
食堂での煙草とアルコールは禁止されていたから、仕事上がりの一杯をやりたい人間にとっては寛げる場所ではない。
それが自分の部屋で食事が取れれば一番良いことで。だからといって自炊しようとする人間が何人いることか…。
結局は暗黙の了解である慣わし。こうして”持ち帰り弁当”に変えてもらう。外のコンビニに買いに行くよりずっと安上がりで手間がない。

俊輔は一度部屋に戻り、シャワーを浴びただけで部屋着用のジャージに着替えて吉賀の部屋に向かった。
もう何年着ているのかも分からない年代物のジャージの裾のゴムは伸びきっている。人前に出られるような格好ではないのに、何でも受け入れてくれる吉賀の性格のおかけですっかり馴染んでしまっている。見た目のどうこうを吉賀は口にしない。
吉賀の部屋は同じ階にあったから移動は楽だった。

極端に物が少ない俊輔の部屋とは違って、リクライニング式の座椅子やパソコンデスクがある。部屋の中央を占領するテーブルも、俊輔が持つ物より一回り以上大きい。
おかげで…というか、狭さを感じるのは否めないが、逆に自分の部屋よりも物が詰まっている分、広い間取りのような錯覚に陥る。
すでにテーブルに広げられた食品はパックそのままで、俊輔をベッドの前に座らせて斜向かいの座椅子に吉賀が腰を下ろした。
部屋に備え付けられた小さな2ドアの冷蔵庫から出された缶ビールを手渡されて、揃ってプルタブを開ける。軽くカンと合わせてから喉を潤した。
「早く具合良くなってよかったよな。もうさ、無理しないで変だなって思ったら言えよ」
吉賀が笑顔で話しだし、数日前の出来事を改めて振り返られる。
あともう少しで終わる…とふらふらしながら勤務していた日のことを思い出した。
これまでも意地になって多少の無茶をしたことはあったが、あんなふうに倒れたのは初めてのことだった。
「うん…、ごめんね。吉賀にも迷惑かけちゃったし…」
「俺は迷惑だなんて思ってないから」
俯きかけた俊輔の、まだ湿り気のある髪を大きな掌がくしゃくしゃとかき回す。
同い年なのに、幼い子にされるような仕草で思わず頬が膨れそうになった。こうやって気安く触られる人肌が気持ちいいのを誤魔化すかのように。。
だけど見上げた先、穏やかに見つめられる視線に気付いてスッと反らしてしまう。
それら全てを気にしていないというように、何も変わらない吉賀の言葉は続く。
「俊輔が元気で働いてくれれば、俺はそれでいいし。…何でも言えっていうのはおこがましいかもしれないけど、俊輔のこと、マジで知っていたいんだ。俊輔とはこの先もずっと仲良くやっていきたいと思っているし…」
いつになくはっきりと言葉を述べてくる吉賀に驚かされる。
それはただの同僚、あわよくば『友情』という意味で告げられているのだとは百も承知していながら、俊輔は心を占めていく期待を抑えられなくなっていた。
まともに正面から顔が見られなくなる。こんなふうに気遣われたら、嫌われそうな弱音だって平然と口にしてしまいそうで怖くもあった。
昨日の夜は、津和野だったから慣れた様子で受け止めてくれたのだと思っている。
人からグチグチと言われたら、どんな内容だって気分が良くなるはずなんかないだろう。
吉賀を心配させたり必要以上に気遣わせたり、ましてや『こんな奴だったのか…』と思われるような行動はとりたくない。
仲が良いはずなのに、少し開いている二人の距離。

「ん…」
感激と感謝を胸に抱きながら、軽く答える俊輔の返事を吉賀はどう受け止めたのだろう。
束の間無言の時間ができて、気を損ねたかと不安になった。

「昨日の…」
沈黙を破るように唐突に話を始めた吉賀に、話題を変えられたことを安堵したのも僅か。
「倉岳さんのことだけど…」
言いづらそうに言葉を濁そうとする吉賀がいて、俊輔は咄嗟に慌てふためいた。『俊輔と吉賀』という組み合わせが脳裏を巡っていったからだ。
「あっ、あー、…ごめんっ、吉賀のことまで言われちゃってっ!俺がもっとちゃんとしていれば…っ」
「なんでそんな話になるんだよっ!」
話の始まりは俊輔が体調不良で倒れたからだった。自分さえしっかりしていれば休むこともなかったし、吉賀や津和野の手を煩わせることもなかった。
早とちりだ、といいたげな吉賀が幾分口調を荒げる。
だけど一呼吸置いた後、飲みかけの缶の縁を親指でさすりながら、吉賀は気分を落ち着けて話を戻した。
「たぶん、倉岳さん、津和野先生のこと、好きなんだと思う…」
「ふーん…、……えっ?……、えぇっ?!」
一度は右から左へと流れていった言葉が脳裏に戻ってきて、意味を理解すると、俊輔の目はこれでもかと見開かれた。
いや…、いまだもって、はっきりとした意味は把握できていない。

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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2011-09-09-Fri 12:24 [編集]
吉賀さんすごいことスルっと言っちゃいましたね
俊輔にしたら、通り過ぎてからアレっと思うようなびっくり発言
ああこれが彼にとっての未知への扉の入口になるんでしょうか
鬼が出るか蛇が出るか
とりあえず開けてみます?
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-09-09-Fri 13:54 [編集]
甲斐様
こんにちは。
さらーーっと言ってくれた吉賀です。

> 吉賀さんすごいことスルっと言っちゃいましたね
> 俊輔にしたら、通り過ぎてからアレっと思うようなびっくり発言
> ああこれが彼にとっての未知への扉の入口になるんでしょうか
> 鬼が出るか蛇が出るか
> とりあえず開けてみます?

こういった事情には疎い俊輔ですね~。
吉賀の言うこと、どこまで把握できているんでしょうかね。
未知への扉…。そうなるんでしょうか。
とりあえずあけてみないと中に何がいるか分からないしねヽ(゚∀゚)ノ←
きっと何が出ても守ってくれる人がそこに…あっちに… ←誰?!
コメントありがとうございました。
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