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BLの丘
ただそこにいて 9
2011-09-02-Fri  CATEGORY: ただそこにいて
食堂から、管理人さん経由で届けてもらった、おかゆや柔らかな煮物中心のメニューは、津和野が頼んだのだろう。
消化の良いものがトレーの上に幾つか。
食堂はバイキング形式で好きなものがチョイスできるシステムだったから、きっと俊輔の部屋に来る前に選んでおいたのだと思われる。
本来であれば食べに行かなければならないところを部屋まで運んでもらうなんて…。
…いたれりつくせりだな…。

「それくらいなら食べきれるでしょう。足りなかったらまた注文すればいいし」
決して多い量には見えなかったが、今の俊輔には充分足りている。
食べ物を無駄にすることは俊輔の中ではとても許し難いことであったから、少しずつを選んでくれた津和野には感謝すらした。
寝て過ごすだけの今だ。腹八分目以下でちょうどいいくらいである。
部屋の小さなテーブルの上にトレーが乗せられ、ベッドに背を預けるようにして俊輔は座った。
「なんだったら、食べさせてあげようか?」
「結構です!」
相変わらずニコニコと微笑む津和野を、早く職場に戻ってくれと追いたてる。
いつ、どんな人間がやってくるか分からない医務室だ。ましてや、この後の休憩時間にでもなれば、暇つぶしや相談をしにくる人もいる。
津和野は誰からも頼られる存在だった。

「食べ終わった食器は管理人さんに回収してもらうよう頼んであるから。明日の様子を診てからいつの職場復帰かを考えよう」
「でももう、今夜一晩休んでいれば…」
「無理は禁物。体力がちゃんと回復したらね」
ドクターストップがかかっていれば、出勤したところで班長に追い返されるのは目に見えている。
ここはもう、大人しく従うしかない。
俊輔が食べ始めたのを確認してから、津和野は部屋を出ていった。
正直あまり食欲があるというわけではなかったが、津和野が言うように体力をつけないと…とは俊輔も思うところがあった。
再び倒れても自分が困るだけだ。

食事を終え、だいぶ経ってから管理人さんが食器を下げに来てくれた。それから何をするわけでもなくテレビを見たりしながらゴロゴロと過ごす。
まだ体がだるいせいか、何かをしようという気力も湧かなかった。
誰かに何かをしてもらえる。その甘えも生まれているのかもしれない。
仕事で助け合いが感じられるのは当然のことだが、私生活についてはそれぞれ担うものがある。
そんな中で吉賀は本当に良く俊輔のことを見てくれていた方だった。彼の優しさにもっと触れたいと思っていたことは、こうして甘えられる環境に身を投げたかったからかもしれない。
長男として、ずっと、家族を支えていかなければ…という気合がほろりと崩れたような気もした。
だけどこんな風に甘えっぱなしではいけないのだ。あと4年…。せめて妹を高校くらい卒業させてやりたいから、今のこの環境で働くしかない。

勤務終了後、班長と吉賀が様子を見にやってきた。班長は津和野から容体を聞いていたので、あくまでも見舞いらしい。
栄養ドリンクを置いてすぐに帰ってしまった。
吉賀は親切心からなのだろう。何かをしたいようだった。
相変わらず俊輔は気持ちを勘違いしそうになって自分を戒める。
…同僚として気遣ってくれているだけだ…。

「俊輔、洗濯物は?着替えたやつとかどこいってんの?」
勝手にバスルームを覗きこんでいた吉賀が疑問の声をあげた。
今朝立ち寄ったときにあったはずのものがない、と吉賀は不思議がる。今の俊輔が、共同で使用できる洗濯機がある場所まで行けるはずがないと当然思ってのことだ。
吉賀の問いかけに、俊輔も初めて気がついた。
「えー…、っと、…あれ?」
「『あれ?』って、あのな~」
脱衣所から二手にバスルームとトイレに分かれた。トイレを使用していたくせに全く気付かなかった。
言われてみれば洗濯場所まで持っていっているランドリーバッグが消えていた。
昨夜着替えを入れた時は確かにあった。最後に着替えたのは…。
そこまで思いを巡らせて、「まさか…」とぽつんと漏れる。
最後に俊輔の着替えを手伝ったのは津和野だ。俊輔は食事を与えられるだけで立ち上がることもしなかった時間。
まさか、その隙に…???
「『まさか』?まさか何?」
「あー、…昼間先生が来てくれて…」
体を拭いてもらったとまでは口に出せなかった。
それなのに吉賀には過るものがあったらしい。眉間に皺が寄った。
良く見ればバスルームに干してあったはずの洗濯物もなくなっている。
昨夜着替えていながら、今日の、それも昼間に着替える理由…。しかもそのことを俊輔が言いもしないのに気付く津和野の行動…。
「俊輔っ!おまえ、まさか先生の前で脱いだりとかしてねーだろうなっ?!」
「え?!…あ、いゃ…」
真っ先に言い当てられて、しどろもどろになった俊輔の態度に、吉賀の中にあった疑惑は確信に変わった。

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