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BLの丘
見下ろせる場所 46
2011-08-20-Sat  CATEGORY: 見下ろせる場所
家にいくら入れたらいいのか…と悩む屋敷内の部屋に、掃除、洗濯、食事付き…。
仕事が忙しくなった割りに、生活面では余裕が生まれていた。最初こそ抵抗があったものの、仕事の忙しさにすっかり甘えてしまってからはありがたく受けることにした。そうすることで家族間にも親しみが湧く。
一応…。まさに『一応』慎弥とは別々の部屋である。
中続きの扉があり隣の慎弥の部屋と繋がっていた。廊下に出る必要はない設計だ。
以前岩槻が使用していたという20畳以上ある部屋は綺麗に片付けられており、皆野が持ちこんだ荷物を全て置いても有り余るスペースができる。
屋敷の中央にある玄関から、左右にリビングダイニングと客間に分かれる。リビングを奥に進むと、夫妻のプライベートルームがある。
2階部分が皆野と慎弥に与えられた空間…と言うべきか…。岩槻は書斎として別室も持っていたが、今の皆野では利用することもないような部屋といっていい。自室ですら持て余しているのだ。
それなのに、使用するかしないかは皆野の意思に任せられた。
岩槻の深夜帰宅が多かったことを物語るように、2階の一番奥に、小さいながらも増設されたバスルームまであった。
1階のバスルームは夫妻の寝室に近い場所だったから、岩槻なりの気遣いだったのだと思われる。
今となってはそれがありがたい存在になっていたりするが…。
つまり、2階部分は完全に皆野と慎弥の空間なのである…。
寛大すぎるだろうと口をぽっかりと開きそうになったくらいだ。
紹介された岩槻の家族は、皆野が驚くほど温かく迎えてくれた。
岩槻の信頼があるのと、慎弥がべったりと寄り添っているのを目撃しているからだろう。
他人の家に上がり込むのはどんなものかと緊張していた皆野だったが、もう長いこと付き合いがあるような雰囲気を醸し出す人たちに、自然と溶け込んでいくことができた。

帰宅をすると、物音に気付いた母親が迎えてくれる。夜は皆野の前でも平気ですっぴんになり、パジャマ姿で登場する。
一人住人が増えたからと言って、これまでのライフスタイルを変えることなく過ごしてもらえるのは皆野にとっても気の休まるものだった。
その後ろから「皆野~」と廊下を走って飛びついてくる慎弥がいる。
誰かが待っている家に、もう何年も帰ったことのなかった皆野には、最初驚きの連続でもあった。
さらに、無邪気な明るい笑顔を振りまく慎弥を見たことも…。
家の中ではこんなにも元気なのだろうか。それとも”偽り”なのだろうか、と一瞬脳裏を過った。
家族を不安にさせないように、という気遣いなのかと心配したところもあったが、無理した気配が見られないのは、いかにこの家族の中で慎弥が大事にされて育てられてきたのかと教えられるものでもあった。
慎弥が多少の我が儘を言ったところで怒るわけでもない。しかし躾けるべきところはきちんと言う。
家族として当たり前の空間がここにはある。慎弥は『岩槻家』の子なのである。

「皆野さん、ごはん、まだでしょう?」
「えぇ。先に着替えてきますね」
「今、温め直すわ」
夕食がいらない時は早目に連絡を入れる。何もなければ家で食べるのが当然で、母親が聞いてくるのはあくまでも確認だ。
いつものように自室に先に行こうとする後姿を見送ってくれて、やはりいつものように、その間に準備を整えようとしてくれる。
皆野が驚くくらい、この母親も機転のきく人だった。
「おかーさーん、俺のご飯も――」
「分かってるわよ」
「慎弥、まだ食べてなかったのか?」
「待ってるって聞かなかったのよ」
廊下で別れようとするそれぞれの間で短い会話が繰り広げられる。
クスクスと笑いながら母親はダイニングの方へと向かい、皆野の後を慎弥がペロッと舌を出しながら付いてくる。
「慎弥が一緒に食べてやらないとお義母さんが淋しがるだろう…」
皆野としては嬉しさを隠した強がりでもあった。
廊下を歩きながらそっと耳元で囁けば、「今日はお義父さんがいたからいいの~」と返ってきた。
慎弥が気を使ったのがなんとなく知れる。皆野は口実にされただけかもしれない。たまには夫婦水入らずでの食事風景もいい。
とはいえ、自分を待っていてくれた存在はあまりにも愛おしすぎる。
部屋に入っては、チュッと額にくちづけを落とした。
建物の中に人の気配があるというのにこんなことをするのも、皆野にとっては少しスリリングな感じがしていたが、慎弥にいたってはすでに手慣れたものだ。
屋敷内での”スキンシップ”は、慎弥にとって当たり前の出来事なのである。

ダイニングに夕食を用意し、他愛もない会話を一言二言と交わしただけで、母親はさり気なく姿を消してくれる。
今日は慎弥がいたから尚更だ。付かず離れずの距離の取り方は、さすがに岩槻を育てただけあるな…と妙に感心してしまった。
食べ終わった食器を洗い、片付けた。
朝食と夕食を用意してもらえるだけで充分なほどありがたい。家事のやり方については何か言いたいこともあるのかもしれないが、それには一切触れないでくれているのも、母親の優しさで皆野にとって安心できることであった。
この母親も岩槻同様、細かく何かを言ってくる性格でもなく、寛容に受け止めてくれる。
もっとも、家族と同じ空間を共有するのは、このスペースだけと言えた。
家政婦も混じる。だからこそ、細かいことを気にされずにいられるのかもしれない。

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そろそろ終わりの気配が…。
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