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BLの丘
色男の憂鬱 5 (策略SS)
2009-09-03-Thu  CATEGORY: 策略はどこまでも
結局、俺も高柳さんも美人さんには返す言葉を一つだって見つけられなかった。
『間違われた』と発言したのは俺だし、その言葉に隠された意味は誰が聞いたってアヤシイ方向にしか進まない。
言い訳なんて今更できるはずもなく、部長たちにまであの晩に何があったのかといらない想像をさせる羽目になった。
何をどう『間違えた』のか『間違われた』のか説明する気にだってなれなくて…。
元はと言えば俺の無責任な言葉で隠すべき事実が明らかにされてしまったことに焦りを感じていたのだが、俺を気遣ったのか、美人さんはそれ以上何も言ってはこなかった。
それにさすがにここで痴話喧嘩を繰り広げる気はなかったようだ。
驚いたのは美人さんが溜め息一つでこの話を終わりにしたことだった。これ以上高柳さんを問い詰める雰囲気すらなくて…。
もちろん、この後高柳さんがただで済むとは思わなかったが…。

そのことに驚いたかのように倉林部長が感心した声を上げた。
「また随分と寛大だな。水の一杯でも引っ掛けてやればいいのに」
「ぶちょ…」
冗談ともつかない言葉が倉林部長から漏れれば青筋を立てる高柳さんがいる。
「本当だ。こんな美人を捕まえておきながら他にちょっかいを出すようなヤツ。一言言ってくれれば制裁くらいいつだって加えてやるぞ」
黒川部長まで悪乗りを始める始末で、暗澹たる雰囲気があっという間に穏やかなものに変わってしまった。

…二人の部長からの制裁って…。うちの職場には作れば過酷な労働は山ほどあるだけに様々なことが想像されてしまう。
もちろん、実行されることはないとは思うけどさ…。

「だから何もないって…」
情けない声を上げた高柳さんの顔が歪む。この期に及んでまだ言い訳をしようとする高柳さんが可哀想というか滑稽というか…。
こんなにいい男でも弱点てあるんだな…。

かばってあげたい気持ちはあっても、自分の発言が二次災害を招きかねないと踏めば黙っているのが一番だと思った。
高柳さんの隣で美人さんはクスッと笑みを漏らした。
「ええ、ぜひお願いします。『危険物』シールでも貼ってどこかに送っちゃってください」
「危険物ってなんだよ…」
「『危険物』かぁ。うまいこと言うな。少なくとも『生もの』や『取扱注意』じゃないよな」
倉林部長が豪快に笑った。
俺たちは色々な荷物を見ているから荷札シールにどんな種類のものがあるのかすぐに思いつくが、それらに例えた美人さんも大したものだ。

度量の大きさに感心する俺たちの前で、美人さんの携帯が突然鳴った。
鳴ったと言ってもバイブレーターになっていてスーツの内ポケットで震えていたのだが…。
携帯電話を取りだし、液晶画面を見て美人さんの眉が一瞬寄った。
「すみません、ちょっと…」
一言詫びを入れてからスッと立ち上がる。

仕事柄色々な人と交流があるらしいので、高柳さんも特に気にしている様子はなかったが、席を離れると同時に会話を始めた美人さんから呟かれた言葉は、俺たちの耳にも届いた。

「あ、安住さん。まだここに…」
店の外に出ていく美人さんの声は小さいながらもはっきりと聞こえた。
高柳さんの情けなかった顔が鋭いものに変わったのは言うまでもない。

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