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BLの丘
見下ろせる場所 14
2011-07-11-Mon  CATEGORY: 見下ろせる場所
コーヒーをすすりながら、皆野は遠まわしに慎弥から聞いたことを口にした。
「慎弥くんは、この後、ご自宅に戻ろうかと悩んでおりましたが…」
問いかけに岩槻は微かに首を傾げ、そんなことも聞いたのか…といった表情で頷いた。
「えぇ。帰らせようと思っていましたが。今日は一日ここにいても無駄な時間を過ごすだけになりますからね。私も夜まで接待やら何かと予定がありまして…」
想像したように、岩槻は慎弥にかまってやれる時間は取れないらしい。そのことは慎弥も最初から承知済みなのだとは昨夜の会話から知れることだった。
手持無沙汰になるくらいなら、住み慣れた場所に戻してやりたいと思うのも兄心なのだろうか。

「あの…。昨日に続いてまたで申し訳ないのですが…、本日の午後から慎弥くんとこの周辺を回ってきてもよろしいでしょうか?」
突然の提案はさすがに岩槻も予想していなかったようで目の開きを大きくする。
昨日の出来事ですら意外性があり過ぎたことだったのに、2日続けてとはさすがに躊躇するものがあるのだろう。
「ですが、そのようなことは…」
岩槻は困惑を滲ませた。だが同時に喜びも感じられたような気がした。
慎弥の私生活の中で、どれほど気を許せる人間がいるのか知りはしないが、兄に向かうのと同じような我が儘を口にできる相手は多くないのだと思う。
皆野には最初から自分勝手ともとれる姿を見られているために、今更隠し立てする必要もない。
昨日の一件も絡んでいる上に、朝の挨拶がてら、話をした内容でも岩槻の信頼が深まっているのが、一瞬見せた『喜び』に含まれているように取れた。
「いえ、私は構いませんので。ちょうど時間も空きますし。というより、私が見ていたいというほうでしょうか」
隠すことなく正直に告げれば、岩槻も納得してくれた。
岩槻としても、突き放した感じを慎弥に持たせたまま一人にさせてしまうのは不安であったようだ。
更に皆野が、単に『心配』で慎弥についていたいだけではない、それ以上の感情を読み取られる。

「偶然とは時々怖いものを感じますね…」
岩槻はふっと吐息を漏らした。
皆野と慎弥の行動について何かを言ってくるようなことはなかった。短時間で親しくなってしまった自分たち。偶然の出会いの凄さ。
慎弥も同意の上と承知している部分もある。
皆野に信頼を置いてくれているのだろうが、あっさりとしすぎる態度には、逆に慎弥に何一つ手出しをできない脅しのようなものさえ感じる。
清廉潔白な関係を要求されているようだ。
だが実際に起こってしまったことについては受け入れる度量の大きさがあるのもすでに知ったこと…。
大事に育ててきたからこその心配は皆野でも理解できることであり、また同じように皆野も慎弥を守ってあげたいと再び思えることだった。
やがてやってくる時間に胸を躍らせた皆野は、素直に感謝の意を述べる。
反対されないことは何より「良し」と受け入れるべきだろう。

コーヒーを飲み干し、そろそろ、と立ち上がった皆野に、見送りに来てくれた岩槻が突然頭を下げてきた。
「慎弥を…、お願いします」
あまりのことに皆野は固まってしまった。
特に深い意味はないのかもしれないが、意識を新たに持った今の皆野には受け止め方が変わってくる。
「え…と…」
いや、岩槻もすでに皆野の気持ちに気付いているのだろうから、言葉どおりに受け止めて問題はないはずだ。
皆野は改めて中途半端にする気はない意思を見せた。
あとは慎弥の反応である。
「こちらこそ…」
皆野もお辞儀をして部屋を出た。
もう一度このスィートルームに入れることはあるのだろうか…。そんなことを思いながら。

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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2011-07-11-Mon 10:30 [編集]
「慎弥を…、お願いします」
ですって
まるでふつつかな娘ですが末永くよろしく…と言っているようん聞こえるんですけど

でも皆野さんは本当のところどう思っているんでしょうね、慎弥くんのこと
無防備な姿をほかの人に見せたくないと思ったり
守ってあげたいと思ったり
今の状況を何とかしてあげたいと心を痛めたり
ただのお客に対する感情じゃないよね~
さあ懐かれた子猫をどうするのか今後が見ものです
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-07-12-Tue 08:54 [編集]
甲斐様
こんにちは~。

> 「慎弥を…、お願いします」
> ですって
> まるでふつつかな娘ですが末永くよろしく…と言っているようん聞こえるんですけど

ね―――。お兄ちゃん、とうとう嫁に出す気になったんでしょうか。
お兄ちゃんのメガネにもかなったようだし。

> でも皆野さんは本当のところどう思っているんでしょうね、慎弥くんのこと
> 無防備な姿をほかの人に見せたくないと思ったり
> 守ってあげたいと思ったり
> 今の状況を何とかしてあげたいと心を痛めたり
> ただのお客に対する感情じゃないよね~
> さあ懐かれた子猫をどうするのか今後が見ものです

気になったお客さんの子守りを引き受けた…とはちょっと違いますよね。
地でぶつかっていく慎弥だったからこそ、無垢さは皆野を直撃してくれたのかもしれませんが…。
運命の出会いになってくれるのかなぁ。
どう飼いならしていくんでしょうね。
コメントありがとうございました。
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