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BLの丘
見下ろせる場所 4
2011-07-01-Fri  CATEGORY: 見下ろせる場所
翌日の宴会は夕方の5時から始まる。
とはいえ、そのまま宿泊する客もおり、そういった人たちは時間よりも前に訪れてはチェックインの手続きを済ませる。
そのため、チェックイン開始の時間からフロントは宿泊客の対応に追われていた。
パーティーを目的としてくる客人はフロントに立ち寄ることもなく、専属の案内係に誘導されていく。
もちろん途中入場、途中退場する客もいて、ロビーにはいつもより多くの人の姿が見受けられた。
さほど大きくないレセプションだとは聞いていたが、それでも100名は優に超える。
ロビーにも視線を配りながら、皆野は残した仕事に手をかける。
フロント業務に携わる人間は交代制の勤務であり、本日の上がり時間は7時だった。夕方から深夜に向けて勤務する従業員も出社している。それ以降は契約社員のようなアルバイトに引き継ぐこともある。
本日起きた件は、今後のトラブルにならないよう、順に伝えられて行ける手筈を整えておかなければならない。

残務処理に手をかけようとした頃、宴会が終了したのかわらわらと人が流れ出てくる。
感謝の意を込めて挨拶の声をかけ、人波が出つくしたあと、ロビーに響いてくる声が聞こえた。
たくさんの人の声があるのだから、それがなんだ?といったところだが、聞き覚えのある声音に集中すると話声が耳に届く。
昨夜見た時よりも華やかな印象を与えてくる岩槻の後を、やはりきちっとスーツを着こなした慎弥が追いかけているといった雰囲気だった。
私服でいた姿よりは随分と大人っぽく見えて皆野はまた驚かされた気分になった。
「なんでっ?!どうして今夜なの?!後にしてもらえばいいじゃないっ!!」
怒りを込めたように騒ぐ慎弥を宥める岩槻の語りかけは静かなようで、さすがにその会話までは聞きとることができない。
優しく見守る兄の表情で岩槻の掌が慎弥の頭上を撫でている。
「やだっ!!征司くんの嘘つきっ!!」
発された言葉に岩槻は困惑を滲ませていた。
昨日話していた『おもてなし』の件だろうか。
皆野の脳裏を横切るものがありはしたが、知らぬ存ぜぬでいるしかない。
視界の片隅に二人の姿を置きながら仕事を続けていたが、岩槻はその場に慎弥だけを残してホテルを出ていってしまった。
そのことに再び驚いて皆野は慎弥を見つめていた。
岩槻の背を見送る慎弥の目が悲しそうに揺れた気がした。
だが直後、悔しそうに爪を噛んで立ち尽くしている。何かを思案しているらしい。
視界に入ってくる異様な光景を咄嗟に見つけることなどすぐにできる洞察力を備えたフロントの従業員ばかりだ。あえて口にしない…というだけで…。

迷いはあったものの、一瞬だけ見せた愁いの顔つきが気になって、皆野は慎弥に近付く。
「いかがされました?」
突然声をかけられて、慎弥がびくんっと振り仰いでくる。
「あ…」
「何かお困り事でしょうか?」
「…昨日の…」
皆野の顔をマジマジと見返してきて、一呼吸遅れて誰なのか判断できたらしく、ホッと息が付かれた。
緊張感を抜いてもらえることは皆野にとってもありがたい話である。
さりげなく聞いてあげようかと図々しい感情が芽生えてはいるが、慎弥は「うん…」と言い淀んで俯いてしまった。
しばらく無言の時が漂うが、皆野は焦らせもせず、慎弥の気持ちのままに経過を見守る。

「あ、あのさ。この辺で夜遅くまでやってるレストランとかある?」
問いかけられた内容の意図が見えずに、微かに首を傾げた。
「レストランですか?それでしたら当ホテルにも…」
「そうじゃなくて、ホテルから出たいの。…あ、ごめんなさい、こんなこと言って…」
いかにもホテルのレストランは利用したくない的な発言を堂々とされては苦笑するしかない。
それでも口に合わない客もいるわけだし、近隣の情報くらいは押さえてある。
「いえ。何かお召し上がりになりたいものでも?何名様で行かれるのでしょうか」
レセプション会場でも料理は出してあったが、招いた側が口にできるはずもなかったのだろう。
必要があれば予約も取ると、慎弥の思いを汲み取ったつもりで問い返せば、いきなり首を振られた。
「俺一人で行く」
返答に皆野は瞠目した。
憂いはどこに消えたのか、勝気な目線に戻った慎弥に、皆野は胸騒ぎを覚える。
絶対に良からぬことを考えているのは一目瞭然だった。
目まぐるしく回転する脳が今ここで起こった一連の出来事を関連付け始めた。
兄を『嘘つき』呼ばわりしたのだから何かしら反抗する部分を含めている。更に『深夜までやっているレストラン』は、そこで時間を潰す為のものであり、そんなことをする必要があるのは、帰ってきた兄に自分がいないことで心配をかけたいのか…。
思わず溜め息がこぼれそうだった。
…なんという子供じみた感情…。

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トラブルメーカー再びヽ(゚∀゚)ノ
ホテル業務のことについては知識無しです。おかしい、と思っても流してくれるとありがたいです。

ずっと書き忘れてた~~~.....(;__)/|
実は6/29日で丸2周年を迎えておりました。
長いことお付き合い、本当に感謝です。
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コメント

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二周年おめでとうございます
コメント甲斐 | URL | 2011-07-01-Fri 17:08 [編集]
いうことは、丸2年の間
あんな話やこんな話を千話以上も読ませていただいて
笑ったりきゅんしたり
どきどきしたりで
萌の素を補給してくれたのですね
これからもどこまでもついていきますから
づーっと続けてくださいませね

なんかやらかしそうな
坊ちゃんに皆野サンひっかきまわされそう
子供っぽい感情とは思っても
何か放っておけないんじゃないのかな
さてどうする?
Re: 二周年おめでとうございます
コメントきえ | URL | 2011-07-02-Sat 08:02 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> いうことは、丸2年の間
> あんな話やこんな話を千話以上も読ませていただいて
> 笑ったりきゅんしたり
> どきどきしたりで
> 萌の素を補給してくれたのですね
> これからもどこまでもついていきますから
> づーっと続けてくださいませね

いつも応援ありがとうございます。
早いものでもう2年が経過しました。なーんにも知らずに今でも戸惑いっぱなしですけど。
いつのまにかお話も1000話を越えたし、お客様もたくさんの方が…。
期待を裏切らず、頑張っていけたらいいです。

> なんかやらかしそうな
> 坊ちゃんに皆野サンひっかきまわされそう
> 子供っぽい感情とは思っても
> 何か放っておけないんじゃないのかな
> さてどうする?

皆野、大丈夫かなぁ。我が儘なお坊ちゃん相手にどう出るんでしょう。
うん、放っておけないでしょうね。いろーんな意味で。
コメントありがとうございました。
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