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BLの丘
見下ろせる場所 2
2011-06-29-Wed  CATEGORY: 見下ろせる場所
皆野と羽生の冷静な語りかけと、周りの状況を理解した男は、皆野たちに従うのが賢明だと判断したらしい。
そして誤解を与えているという態度を崩さないまま、自分がとったという部屋があるからそこへ…と誘われる。
男の雰囲気を見れば皆野たちの脳裏を過った内容での揉め事ではないようだ。
プライベートな話に自分たちが首を突っ込むのはどうかとも思われるが、青年は皆野に張り付いたまま離れようとしない。
とりあえず、ラウンジは出るべきだと、その場を後にした。

ルームナンバーを聞いて皆野は一瞬驚いた。
最上階から一つ下の階にある部屋はスィートルームである。
そういえば…、と昼間の出来事を振り返った。フロントで相手をした客の中にこの男がいた…と思い出す。
普段から客を見慣れているだけに記憶力はかなりいいほうだ。
「失礼いたしました。確か…、岩槻(いわつき)様でいらっしゃいましたよね?」
ラウンジ内でとってしまった対応について咄嗟に謝罪の言葉が吐き出される。
皆野が急に名を呼んだことを酷く驚かれる。皆野から離れない青年も同様だ。
スィートルームの客は3連泊の予定だったはず。しかも明日、レセプションホールを借りているのもその人間だった。
客の名前も自然と頭に残る。
直後、男の口角がフッと上がった。
「とても良い方に巡り合えたようだ」
同時に青年からも力が抜ける。
「なんでこうなっちゃうの~…」
ラウンジ内で繰り広げたことが、本当にただの茶番だったのだとみとめている態度だった。

羽生と春日とのプライベートな時間を、邪魔をしてしまったお詫びだと、3人揃って部屋に招待される。
騒ぎのほとぼりが冷めるまで部屋にいればいいということなのか。
「いえ、そのようなことは…」
一緒に出てきた羽生と春日が顔を見合わせ、「俺たちは帰るよ」とその場で退散しようとしていた。
「それでは私の面子がつぶれますね。せめて私の汚名を晴らす話くらい聞いていってください」
岩槻は何故こうなってしまったかを説明したいからと口実をつけて退路を塞ぐ。
このままでは若い男に手を出して断られた印象だけが残るとでも言いたいのか…。
こうなっては状況を理解できる羽生だ。肩を竦めて着いてくることとなった。

皆野と羽生は部屋の造りを理解していたが、春日は初めて訪れたらしいスィートルームの広さに絶句していた。
リビングルームを中央に、両脇にバスルームを備えたダブルベッドの寝室とツインルームがある。
大きな皮張りのソファに3人が並んで座り、正面に岩槻と慎弥が腰を下ろした。
岩槻がご丁寧にも名刺を出してきた。
皆野はそれとなく知ってはいたが、改めて本人から詳しい内容を聞くことになるとは思ってもいなかった。

岩槻征司(いわつき せいじ)。商社に勤める重役だ。祖父が起こした企業の中で立場を確立している。
そして慎弥とは兄弟だという。似ても似つかないのは全く血の繋がりがないからだそうだ。
あえて言う必要もないだろうということをわざわざ口にしてくるのは、端から見て『兄弟』に見えないのを本人たちが充分に承知しているからなのかもしれない。
あとは誤解を解くため…か。
「諸事情がありまして、父が慎弥を引きとったのです。もう物事の判断ができる年でしたから隠すこともしませんでしたが、私も父も甘やかしすぎたせいか、奔放なところがありまして…」
困った目で隣の慎弥を見つめながらさり気なく手を伸ばして頭を撫でるところなど、大事にしてきた弟を見守る姿に映った。
それが何故あんな騒動になってしまったのか…。
「明日のレセプションでおもてなしをする一役をかってほしいと願い出たら機嫌を悪くして…。部屋に連れて帰ろうとしたらあの有り様です」
「どっかのエロジジイの相手をしろって言うからじゃないかっ」
「話相手としての意味だということくらい理解しなさい。しかもその呼び方は何だ」
「顔を見るだけでも虫唾が走るのに、冗談じゃないってーのっ」
兄弟喧嘩のとばっちりをくらったっていうわけか…と、皆野は内心で溜め息をついた。

勝気な印象を持たせる慎弥はきっと、企業の中での社員としての立場はないのだろう。
働いていてよい年だが、岩槻の態度で他企業に勤めさせているとはとても思えない。
はぁ…と岩槻から溜め息がこぼれる。確かにこれではラウンジで言い争いになるのも分かる気がした。
「今までも同じようなことはしてきただろう。何が違うというんだ」
「前は挨拶をするだけだったじゃん。特定の相手を気にかけてもてなせなんてこと一度もなかったっ!!」
「今回は色々な事情が絡んでいるんだ。私が表立って動けば不信感を抱くものも現れる。その辺りの事情は慎弥も分かるだろう?」
企業同士のやりとりには色々な駆け引きがあるのは当然の話で…。
きっと明日のレセプションにも込み入った裏事情が含まれているのは安易に想像できた。
たぶん、好感度を得たい相手がいるのだろう。それも内密に。
慎弥はぶーっと膨れていた。そもそも自分は関係ない、社外の人間だと言いたげに。だけど、『家族』なのだ。

「草加さん。信頼できるスタッフを一人用意していただけませんか?」
岩槻の突然の申し出に皆野は瞠目した。
彼はこの先、何をしようというのだろうか…。

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コメント | | 2011-06-29-Wed 10:59 [編集]
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Re: お任せします
コメントきえ | URL | 2011-06-29-Wed 13:05 [編集]
秘コメ様
こんにちは。
記事UP後すぐにいらっしゃってくださったようで…。

> おやおやほんわか食べられるだけ食べよう旅から一転、大人の社会のトラブルに巻き込まれてwww
>
> 飲食とかサービス業って色々な人間模様や出来事を観察したり、関わったりできて楽しい事もある半面、時には大変な忍耐強いられる職場ですよね。
> 自分には絶対無理だと分っていたので、ホテルに就職した友達とか尊敬しました。

ほのぼのと食べるだけの旅からはまた離れましたね~。
なんのトラブルに巻き込まれちゃったんでしょう。
サービス業って従業員同士の連帯感を持って、また客の満足できるものを得られて充実するところも多いですけれど、クレームなど理不尽なものもたくさんありますよね~。
考え方が違うんだな~っていうのもすごく思わされます。
一辺倒ではすまされないところが…。

> 羽生さんと皆野さんの実力が垣間見れて♡

二人の実力…ってか、対人面に慣れた人間ってとこなんでしょうか。(何があっても動じない。さすがです)
春日も惚れなおすでしょう(←)
コメントありがとうございました。
No title
コメント甲斐 | URL | 2011-06-29-Wed 22:15 [編集]
拉致監禁か!?
あるいは
身体を使っての公にできない類の“接待”か?
と思わせるようなあやしい空気を漂わせつつ
結局は兄弟げんかか家族のもめごとみたいですね
面倒事に巻き込まれそうですけれど
そこはできるホテルマンの手腕の見せ所かな
Re: No title
コメントきえ | URL | 2011-06-30-Thu 09:46 [編集]
甲斐様
こんにちは。

> 拉致監禁か!?
> あるいは
> 身体を使っての公にできない類の“接待”か?
> と思わせるようなあやしい空気を漂わせつつ
> 結局は兄弟げんかか家族のもめごとみたいですね
> 面倒事に巻き込まれそうですけれど
> そこはできるホテルマンの手腕の見せ所かな

皆野も上客とは知らずにびっくり~。
さらに話を聞いてみればただの兄弟喧嘩。
大事な弟君に妙なことはさせないでしょう、おにいちゃんも。
そんなことに首を突っ込んじゃった皆野ですが、まぁうまくまとめてくれるでしょう。
コメントありがとうございました。
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