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木漏れ日 1
2013-08-07-Wed  CATEGORY: 木漏れ日
住宅街の中の二階建ての一軒家。
休日の朝、のんびりと起きた五城目鳥海(ごじょうめ うみ)は、部屋を出た。
生まれ育った家から近い大学に通うために、21歳になっても実家暮らしである。
朝に晩に…と、ご飯が用意されていて、家事は全部母親がやってくれる。…いつまでも成長しない。

鳥海の実家は電気工事を請け負う、地域に密着した自営業だった。
長男である5歳上の八竜(はおり)が跡を継いだために、鳥海は自由が与えられていると思っている。
家に囚われることはない。
それでも家系の血か、工学を学ぶ道に進んでいたのだけれど。

休みの朝は非常にのんびりしている。
階下に降りれば、町内会に出かけたという母親の手作り料理がダイニングテーブルに出しっぱなしだった。
くせっ毛の栗色の髪も整えず、とりあえず、空腹にそれらを流し込む。
二重のぱっちりとした目は母親譲りで、鼻から下は父に似ている、と良く言われた。
だけど全体的に細い体つきには、長男の八竜に全部持っていかれた、と恨めしく思う。
いつの頃からか、同じ歳を過ごしたのに、成長度は違っていたと気付かされた。
逞しく育った長兄と、強かに育った次男の構図が出来上がっている。
体格は負けても、意地は持ち合わせていた。

鳥海は朝食を平らげたあと、決まって冷凍庫に向かっていた。
食後の楽しみはデザート。
覗き込んだ冷凍庫に、忍ばせていたはずのアイスクリームが無い。
母親が無駄に冷凍保存する全てを取り払っても、目的のものが見当たらなかった。
こんなとき、疑いの目は必ず八竜に向けられる。
幾度となく繰り返されてきた過去が過っていった。
肝心の人間は、やはり呑気に朝のシャワーなんて浴びていた。

タイミング良く現れた、パンツ一丁にタオルで髪をゴシゴシと擦る八竜は、いたってのどかな雰囲気でいた。
「おー、メシ食った?おまえ最後だし、後片付けしておけよ」
食いっぱなし、散らかしっぱなし…の状態は後から箸を付けた人間に全てを押し付けている。
さっぱりとした様子でリビングに移ろうとする背後に鳥海の機嫌の悪さが飛ぶ。
「にぃっ、アイス、食った~~~っ!!」
「え?何?入ってたから母さんが買っておいて食っていいもんだと思った」
たとえ何時だろうが、食後にデザートを求める体は遺伝である。
悪びれた様子など微塵も見せず、フッと笑いながらシレッと答えられては地団太を踏む。
「俺の~っ!!」
叫んでも八竜にはどこ吹く風だ。
「名前、書いておかないおまえが悪いんだろ」
ルールを守らないと自己責任を押し付けられる。

どこの家庭だって当たり前だが、一台しかない冷蔵庫は家族のものである。
中身も当然、共有してあたりまえ…がモットーの五城目家。
幼い頃から、競争激化の中で暮らしてきたのだ。

いい歳して、いい加減一人暮らししろよっ、という悪態も飲み込まれるのは、家業を継いだ兄の苦労を見ているからだった。
親からの技術を教えられ、盗みみるのは間違ったことではない。
また、自分は親のスネをかじりまくった学生身分。
お小遣いをもらっていて、その中から買った品々は、行く末『家族の物』とみなされるのだろうか。
変な理屈をつけられては、鳥海はいつも負けていた。
それでも身体の欲求は抑えられなく、「俺っ、コンビニ行ってくるっ」とまた自腹を切るはめになった。
食べたいものは食べたいのだ。

「あー、じゃあ、ついでに煙草、買ってきてよ」
やはり呑気な声が鳥海の背中に届いた。
今更ながら、自分では動きたくない姿勢が見えてくる。
煙草が切れた アイスも切れた = 買いに行く弟は予想できる 自分は"ついで"を頼む。
兄の思惑どおりに動いている結果だ。
こうやって、幼い頃から"ついで"と走りまわされていた。
下の子のほうが強い…とか良く言われるけれど、理屈で言い含められる五城目家には当てはまらない、といつも苦虫をつぶす鳥海なのだ。

「ほら、駄賃」
そう言って投げ出されたQuoカードは500円の未使用カード。
煙草一つ買ってもおつりがくるものは、返却不要であるのが、やっぱり五城目家のルールだった。

先程の不機嫌は霧散し、万遍の笑みで近所にあるコンビニまで出かけた。
おつりで好きなアイスがもうひとつは買える、と張り切った。

コンビニまでは徒歩5分もかからない。休日のせいか、少し混んでいた。
どこかに出かける団体らしき男女のグループも映り込んでくる。
アルコールやロックアイスなどを買い込んで…、バーベキューでもするのだろうか。

そんな中で鳥海はお気に入りのアイスと新発売のデザートケーキを選んだ。
レジカウンターで兄の煙草も注文する。
なんとなく脇にある"からあげ"も欲しくなって、それも頼んだ。
兄にお小遣いをもらった…という気の緩みがあった。
しかし、いざ財布を開けた時、現金が想像以上に入っていない現実を思い知らされた。
考えてみれば、昨日、新聞の集金に来た人に、誰もいない事情もあって立て替えておいたのが甦る。
今日の朝、母からもらえばいいや、と思っていた呑気さは、『町内会』まで予想していなかった。

しばしの葛藤がその場で繰り広げられた。
煙草代はもらってあるのだから、それを削るわけにはいかない。
でもアイスは欲しいし、また注文してしまったフライヤーで良い匂いを漂わせる"からあげ"は買って帰るべきだろう。
「えーと…」
モタモタした背後には、すでに行列ができていた。
パニクった頭は咄嗟に何を削るべきか判断出来なかった。
今更『お金が足りません』と言うのも憚れる。
確かに馴染みのコンビニで、店員も知っていたけれど、ツケにしてくれとは言えない。
思わず見やってしまったバイトの"お兄ちゃん"と無言のアイトークが交わされ…、しかし「ん?」と首を傾げられた。

急いでいるのは誰も同じなのか、遅々として進まない会計処理に背後の不満が確実に伝わってくる。
後ろにいた薄汚い親父が、「何してんだよ~っ」とあからさまに声を荒げる。
「あ…」
「こんなとこで"デート"してんなよ~」
酒臭い息が近づいて、いきなり尻を掴まれた。
無言の会話はそんなものじゃないのに…っ。

…っ、こ、この酔っ払い…っ!!こんな昼間から飲んでんのかよっ!!
見た掌にはワンカップの瓶が2本握られている。
…っていうか、尻、触るかっ?!
「『桃尻』だなぁ」
ニヘラァと笑ったオヤジの笑みが不気味で鳥肌がたった。
鳥海は赤面しながらも怒りを滾らせた。
だけど、もっと後ろに並ぶ人間は、ふざけているなよと、時間の無駄だと更に表情を不機嫌にあらわした。
人の感情を察知する力くらいある。
ここで揉め事を続けるなんて、どうしたって、状況は良くない。
近所だけに、問題は避けたかった。

その時、スッと差し出された缶コーヒーと似たようなQuoカードに意識を向けられる。
「一緒に会計してくれないかな」
落ちついた声が騒動を遮っていた。
鍛えられた体格が、私服の上からも見てとれる。
鳥海より10センチほどは高い身長のせいか、隣に並んだ人を見上げていた。
八竜と同じ歳くらいの、しっかりとした社会人だと思わせる人が、"まとめて支払い"を店員に訴えていた。
大人の落ちつきがさりげない仕草から醸し出される。
「え…?」
もちろん動揺したのは鳥海で…。
彼の視線だけは『早く』と促していた。

ここでもっと時間を取るようなことは回避したいのは店員も同様の思考なのだろう。
ピッと会計終了の音が響いた。

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またスピンオフです…。
え?!誰?!…次回登場の予定。
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木漏れ日 2
2013-08-08-Thu  CATEGORY: 木漏れ日
すみません、またやってもぉたようで…。
足踏みされた方、本当にごめんなさい。



立ち止まっているわけにもいかず、流れにそって彼と一緒に外に出る。
「あのっ」
他の客の迷惑にならない端に寄ったところで、彼は店員から返却されたカードを差し出してきた。
使いきった八竜からの駄賃は廃棄してくれとお願いしてきたので、こちらは残高があるはずだ。
「?」
意味が分からずに鳥海が見上げると、「あげるよ」とにっこり微笑まれた。
目鼻立ちの通った爽やかな笑顔は一瞬人を惹きつける。休日だと思わせる容姿に堅苦しさは見られない。
「え?で、でも…? あっ、っていうか、それより払ってもらっちゃって…っ。あのっ、うち、すぐそこなんですっ。にぃ、いるから、…あ、兄貴いるからお金もらってくるんでっ」
いくらなんでも見知らぬ人におごってもらうわけにはいかないと、咄嗟に鳥海は差し出された手を押し返し、今後を考えた。
『知らない人に付いて行ったり、物をもらってはいけません』とは、幼い頃から耳にタコができるほど聞かされた言葉だった。
親の仕事柄、近所でも鳥海は比較的顔が知られている。
学校帰り、『五城目電気の息子だろ?おじちゃん、お父さんのところに行くから、一緒に乗せていってあげるよ』と声をかけられ車に乗せられそうになったことは幾度あっただろう。
『お宅の子供が食べた品が実は…』と詐欺まがいの事件に巻き込まれたこともある。
食べてしまったものを吐きだすわけにもいかないと、母親は、今回だけは…と渋々財布を開いた。
近所づきあいのこともあったから、何かと理由をつけて(それは『先日ジュースをもらったから』とか『いつも息子が世話になっているので』とか些細なことで)格安で請け負っていた家計が裕福なわけがなかった。
父親はとにかく情に深い人である。
相手の身元がはっきりとしていれば、急な呼び出しにだって対応してしまう。
『洗濯機の調子が悪い』と行ってみた先で、原因が水道にあると判明してはそちらの修理までして、請求書には、専門職ではないのでどれくらいかな、と結局は部品代だけ書きこんでいた。
近所に親しんだ『五城目電気の息子』は、親と同じように誰からも好かれていたので、やはり誰からも声をかけられる。
外でバカなことはできない、と悟ったのも少年時代だった。

鳥海が「少し待っててください」というのを、目の前の男は「いいよ、そんなの」と相手にもしてくれない。
それどころか、持てあましていたQuoカードを鳥海の買い物袋に滑らせてきたのだ。
「あっ!」
「俺、こういうの持ってても、つい使い忘れちゃうんだ。後片付け代だと思ってもらっておいて」
「そんなっ、困りますっ。ホント、うち、すぐなんですっ。あ、じゃあ、これ、丸ごともらって500円返すから…っ」
「だからいいって」
クスクス笑っては、話を流されてしまう。
だけどどうにも鳥海の中では納得ができなかった。
場所が近所のコンビニだけに、『鳥海がトラブった件』が家人の耳に入るのも時間の問題である。
それこそ『近所に親しんだ家族』はどこでも平気で世間話を繰り広げてしまうのだから、店員との会話など日常茶飯事だ。
「良くないですっ。あーっ、もう、にぃ、出てくるかな~? …っ、やっぱオレ行ったほうが早いよ~ぉ」
すっかり寛いでいた八竜が衣服を身につけているか、と頭を過れば、どれが一番相手を待たせずに済むかと身体が動きだそうとする。

店内へと出入りする人を横目に、この人も忙しいのだろうかと慌てた。
足止めを食らわせているのは鳥海で、鳥海が去ってしまえば戻ってくるのも待たずに消え去っていそうだ。
「あの、急いでいるんですよね…?」
打って変わって神妙な態度に出た鳥海に、男は益々笑みを深める。
「うん…って言ってもいいけど、そんな状況だったら君を置いて帰ってたよ」
どこまでも崩れない態度は、雑談に付き合っている時点で真実なのだろう。
事実、彼は微塵もそんな素振りを見せずにいる。

新しく店内から出てきた男に、どちらともなく視線を走らせた。
少し足元がふらついた男は、先程鳥海の尻を撫でた酔っ払いだと気付いたせいだ。
相手も分かったようにこちらを見てくる。
またニヤリと笑われて、思わず身体が飛び退けようとする。
「あんたの尻、締まりが良さそうだよなぁ。へへへ、こんな昼間っからホテルかぁ?」
卑猥なセリフを吐かれることに、どっちが"こんな時間から"だよっと、頭に血が上りそうになった。
それを男に止められる。
「放っておけばいい。ほら、早く帰って」
促された言葉を逆手に取ることができた咄嗟の判断は、後々自分を褒めてやりたいと思うことになる。
親父が「なんだ、ふられてるのか?」と自分たちに絡んできたことも追い打ちをかけた。
「早く行こっ」
彼の腕を掴んで、歩きだした。
もちろん、自分ちの方向へ。
付いていくことがダメなら連れて帰るのは許されるだろう…とこちらも訳の分からない思考が掠めていった。
男は突然のことに目を瞬かせていたが、大人しく鳥海の動きに従ってくれる。
本当に時間には追われているわけではないようだ。
酔っ払いは追ってくることはないし、鳥海はすぐに見えた看板を指す。
「ほらほらっ、あそこっ。『五城目電気』ってあるでしょ」
同じように視線を向けてくれる男をまた仰ぎ見る。
「五城目?」
何か考えている眼差しが見えたが、とにかく返金を急ぎたい鳥海には、怪しいものではないですと伝えられたことに満足を得ていた。

逃げられないように腕は離さず、少々急ぎ足で進む後ろをついてきてくれる。
半分は諦めの境地でもいるのだろうか。
家に着いては、仕事場用の玄関ではなく自宅側に押し入る。
「にぃ~っ!!お金たんなかったよ~っ!!」
「あぁぁっ?!」
のどかな住宅街に響くいつもの声は、客人がいるとは思っていない証拠だった。
「でさぁ、変わりに払ってくれた人がいて~」
そこまで伝えただけで、ドタバタとこちらに向かってくる慌ただしさが走った。
すぐにも姿を現した八竜はきちんと服を着ていた。
「てめーっ、俺はちゃんと金渡した…って…っ?ええっ?!瀬見っ?!」
顔を合わせた途端に八竜の声は驚愕に変化して目を見開いた。
文句は連れ込んだ人間によってかき消されたらしい。

「『五城目』っていうから、まさかと思ったら、八竜の家だったのか…」
驚きは彼も同じだったようだ。
瀬見(せみ)、と呼ばれた男は、鳥海と八竜を見比べていた。
…へっ?!知り合いなの?!
こちらも双方に顔を巡らせる。
人付き合いの良さは、兄にも言えることだったけれど…。
「どうしたんだよ、おまえ…」
状況が把握できない八竜は、束の間の無言を生みだしていた。

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木漏れ日 3
2013-08-08-Thu  CATEGORY: 木漏れ日
新庄瀬見(しんじょう せみ)と彼は名乗った。
何でも高校時代、八竜と共に過ごしたらしい。
久し振りの再会に何故か八竜のテンションも上がっている。
「うっわー、久し振り。何?コイツ、迷惑かけたの?」
グリグリと頭上を撫でられることに、うっとおしさを訴えた。
バシンっと叩いた手も、気にされていない。
「そんなことないよ。ちょっと困っていたみたいだからさ」
助け船を出した過程は嫌でも知られていく。
そのたびに八竜から罵りの言葉が発された。
「バカかっテメェ。財布の中身を確認しないで飛び出すかよっ」
立て続けに頭を叩かれては、これ以上バカにしたいのか、と逃げを打つ。

「まぁまぁ。でも薄気味悪い客もいたからいいんだよ」と穏やかに話を進められて、また八竜は怪訝な眼差しで鳥海を見下ろした。
トラブルメーカーと言わんばかりだ。
「鳥海~っ」
過去の誘拐事件から、何かと気遣ってくれた兄を知るからこそ、それ以上の文句も出ない。
瀬見の言う『薄気味悪い客』は過去を彷彿させてくれるに充分だった。

「あー、悪い。で、何?さっき立て替えた…とか?」
八竜と瀬見は鳥海を無視して、事の成り行きを確認する。
やがて、玄関先ではなんだ…と思ったのか、「寄ってけよ」と室内に促していた。
知る人だからなのか、瀬見にも抵抗はない。
金を返してもらうというより、純粋に再会を喜んでいるようだった。

「鳥海、茶いれろ」
どこまでも図々しく動く八竜に、これまでの過程があって逆らえない。
本来なら母が隙なくお迎えしてくれるのに、肝心の存在は不在だ。
買ったばかりのアイスクリームと、グラスに注いだだけの麦茶をトレーに乗せてリビングに向かう。
何やら懐かしい話で盛り上がっているようだった。
「にぃ、煙草」
「おまえ、禁煙しろよ」
どんどんと繰り広げられる世界に、堂々と居場所を確認した鳥海は、買ってきたアイスの封を開けた。
体に悪い、と咎められた八竜は苦笑いで誤魔化している。
「息抜き、息抜き」
人の嗜好は分かるのか、瀬見も肩をすくめるに留めていた。
ようやく吸えたと言わんばかりに、八竜は煙の味を堪能していた。

「しっかし、迷惑かけたな」
「彼のカードを見て、しまっておいたものを甦らせてくれたよ」
良いきっかけだったと、決して鳥海を責めない口調には、大人のスマートさを見せつけられた気分だった。
アイスを頬張りながら、二人の違いを感じとる。
義理人情を大事にする兄もそうだが、瀬見も周りに配慮できる人間なのだろう。

それでも世間の狭さを教えられたと苦笑いされて、目があった時には、ドクンと心臓が高鳴った。
…なんていうか、寄りそえる安堵感がひしめいてる。
八竜は悪いと心底思っているようで、財布をとりだしていたが、瀬見は掌を見せていた。
「まぁまぁ、細かいことは気にしないでさ。鳥海くんが無事だったってことでいいんじゃない?」
意味深に告げられたことは八竜を充分に刺激していた。
「鳥海~っ?」
「ケ、ケツ、触られただけだし…」
「おまえはっ…っ、危機感持てって言うんだよっ」
だったら、一人で買い物に出さなきゃいいじゃん…とはまた飲みこまれることだった。
見張られるなど実行されたら、単にウザい存在だ。

彼らは懐かしい話に没頭していく。
新しく知れる兄の素行にも驚かされたが、鳥海は瀬見の行動に気を取られていた。
この近くに実家があり、その帰り道だったこと。
勤めた会社にいることや、社会人となってのお互いの苦労など。
サラリーマンも自営業も、働くことに大変さは在るのだと。

談笑を繰り広げているうちに、母親が帰宅した。
「まぁ、何のおもてなしもしないで」
「おかまいなく」
思えば、友人を呼ぶたびに、話しかけて、どんな付き合いなのかとさりげなく悟っていた母親だ。
挙句の果てには、使い走りに使われる。
「お菓子、何か買ってきて。ほら、お金」
「それより、新聞代なのっ」
「本当にお構いなく。俺、もうお暇しますので」
この場から消えてしまう危機感を覚えたのは何故なのだろうか。
すでに知れた彼の人の良さもあって、鳥海はまた「待ってて」とおしとどめた。

何が惹きつけるものなのかも分からない。
でもこの偶然の出会いを無にしたくなかった。
感じたスマートさは、これまで出会ったことが無い。
"大人"の世界に惹かれた瞬間だった。

「待ってて…」
今日何回目のセリフなのだろう。
逃げ場を失ったと言わんばかりの瀬見は、「ついていってあげる」と腰を上げた。
瞠目する鳥海を無視して、「また酔っ払いに絡まれたら困るから」ともっともらしい理由を口にしてくれた。
これだけ近い距離なら、苦もないのだろうか。
『絡まれた』事件は、家族にも影を落とす。
過剰な心配はどこから来るのだろう。

「いえ、いいです…」
すぐに断るのだが、まだ八竜と会話をしたいと暗に含まされては、また戻ってくることを約束されていた。
"一人では歩かせられない"…。
それもまた、影ながら漂う。
最初に見せた危機は、彼の胸に深く刻まれたのだろうか。

…子供じゃないのにっ…。
悔しさは瀬見には届いていない。
それどころか、付いてきてくれる安堵感は何なのだろう。
尻を揉まれる、などといった、理不尽な行動を浴びたせいだろうか。

「何食べたいの?」
「鳥海くんの好きなものでいいよ」

それは、レジ前でどれも手放したくなかった会計時間を振り返られているのだろうか。
どこまでも鳥海を気遣ってくれる姿勢に、もっと深く惹かれていくのだった。

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木漏れ日 4
2013-08-08-Thu  CATEGORY: 木漏れ日
二話書けたから先出ししておきますね~。また今夜お会いしましょう。(こんな呑気なことをいっては、自ら首を絞めるんだろうけど)



コンビニに再訪したことは店員にも少々驚かれていた。
たぶん瀬見を連れていたからだったのだろうけど。
鳥海だけなら一日に何度も行くことがある店だ。
「何もいらないの?」
「鳥海くんの食べたいものを選びなよ」
鳥海がリクエストを聞いても瀬見は興味が無いようだった。
カゴの中に適当に放りこんでいるのを後ろから見学されているのはあまり気分が良くない。
こちらのほうが品定めされているようである。
「こっちとこっち、どっちがいい?」
「どちらでも」
確かに率先して買い物ができる状況でもないのは理解できるが、何か意見もほしいところだ。
思わず不貞腐れたように唇を尖らせてしまえばクスクスと笑みが降ってくる。
「そこ、怒るとこ?」
「別に怒ってなんか…っ」
「ほらほら機嫌治して。お菓子買ってあげるから」
「もう…っ!」
完全に遊ばれていた。
頭上をポンポンと宥められて、まだ笑い続ける瀬見を睨み上げるけれど、相手にされていない。
これのどこがおもしろいのかと余計に頬が膨らみ、瀬見はまたからかってくる。
八竜の友達と接触する時など大概こんな扱いにされてしまうのだが、自然と出てくる雰囲気がすんなりと馴染む。
つい先ほど知り合ったばかりで、まだ何も知らないことだらけなのに、違和感が一つもなかった。
こちらが腕を叩いてみても動じていないし、嫌がられてもいない。
瀬見にとっては友人の弟、というだけの存在なのだろうけれど。
それもなんだが悔しく感じられることだった。

レジでは先程の店員が不思議そうに、またあからさまに瀬見に視線を送るのが分かった。
経営者のおじちゃんやおばちゃんだったら、あれこれと聞かれるところだったのだろうから、アルバイトで良かったのかもしれない。
確実に帰宅は遅くなる。
鳥海が支払いをしている時に、瀬見は手を伸ばしてきて荷物を持ってくれた。
帰り道、歩き出してから瀬見が納得したように覗き込んできた。
「すっかり常連客なんだ。煙草、売ってくれるのもそれだからか」
「煙草?なんで?」
意味が分からないと車道側に立つ瀬見を見上げれば、フッと笑われた。
「身分証明書求められたことない?俺だったら一回確認するね」
それは遠回しにガキっぽいと言われているもので、こちらにもまた不機嫌さが表れてしまう。
悪いがそんな事態に出会ったことはない。世間一般の基準にあっているということだと思っている。
瀬見の視力がおかしいのではないかと含ませて声を荒げた。
「ないよっ。他のお店じゃ買ったこともないから知らないけど」
「へぇ。八竜もそこのところはわきまえているんだ」
妙に感心している態度に出られ、どうしてこの場で八竜の名前が出てくるのか話が見えない。
怒りも疑問に変わる。
「なんで、にぃ?」
「煙草の買い出しを頼まれる時は、この店に行く時だけだろ?」
「うん、そう。…う、ん…、そ、うかな…」
一度答えておきながら頭を巡らせて過去を振り返ると、確かに瀬見の言うとおり、他の店で購入したことが無い現実につきあたった。
煙草を吸わない鳥海が、八竜の要望がない限り手を出す品ではなく、他店での反応を『ないもの』と決めつけていただけだっだ。
年相応に見られるのだと自慢げに発言したのに、単に背景事情を承知しているからスルーされていただけと気付かされて、また唇が尖った。
「八竜だって鳥海くんが気分を害するようなことは避けていたわけだ」
成人しているのに年齢制限のあるものをすんなりと購入できない状況は確かにおもしろくない。
そんな体験をしなくて済むように回避されていた。
だけど素直に認めたくなんかない。
「そんなことないよ、ぜーったいっ」
「そう?"大人体験"させてくれた八竜の優しさだと思えばいいじゃない」
「お、おとな…って、オレ、じゅーぶん大人なのっ」
だいたい、優しさってなんだ?!腹の底で笑っているなら優しさとは言わないだろ???
真剣に反論する鳥海の声も、肩を震わせて笑う瀬見に「はいはい」と宥められて終わった。
確かに瀬見や八竜からみたら、まだ毛が生えた程度のヒヨコかもしれないけれどさっ。
「今の鳥海くんが可愛いって褒めたつもりなんだけど」
「それっ、褒め言葉じゃないからっ」
シレッと言われても素直に受け入れられるはずもなく、瀬見の腕を叩いたりボディブローを入れる真似をしているうちに、家に着いてしまった。
でも心底機嫌が悪くなったわけではなかったのだ。

瀬見は一時間ほど昔話や現状に花を咲かせてから帰っていった。
文房具メーカーに勤めるサラリーマンで、毎日商品と数字をにらめっこしているとか。
身近に働く人間が自営業である鳥海にとって、『会社』という組織はイマイチ、ピンとくるものではなかったが、自分の将来を考えても聞いておいて損はない話だと思えた。
どちらも邪魔にしなかったから鳥海はお菓子目当てにリビングに居座って二人の話に耳を傾けており、時々話題に誘われては邪険に扱われてむくれる。
ボロクソに言い放ってくれるのが八竜で、フォローを入れてくれる瀬見に感謝し、八竜を責めるとなんだか気分がよくなった。
普段滅多にこんなふうに隙をつくことなんてできなくて、それも鳥海の知らない八竜の一面を瀬見が知っていたからだろう。
瀬見が中立な立場にいたから、言い負かすことはできなかったが、一方的な攻撃を受けまくっていた過去とは違った。
そんな単純な理由で、鳥海の瀬見に対する評価は上位ランクになったのだ。
話の最中に追加で購入したデザートケーキまで平らげていたことを、「甘いもの好きなんだ」と笑われたのは恥ずかしかったけれど。

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木漏れ日 5
2013-08-09-Fri  CATEGORY: 木漏れ日
大学の敷地内で友人の白神藤里(しらかみ とうり)に出会った。
選択する講義が似たりよったりで、何かと顔を合わせて自然と仲良くなっていった人だ。
入学式に「おまえ、高校生?」とあからさまに問われて、「人のこと言えないっ」と文句をぶつけた。
鳥海を『高校生』と言うなら、白神は『中学生』だろ、と。
どっちもどっちだ、と言い放った周りの目は無視することにする。
漆黒のサラサラとしたストレートの髪はクセにもならなそうで少しだけ憧れる。
癖っ毛の鳥海は毎朝寝ぐせに苦労させられていたからだった。
その話をしたとき、「何?直していたの?わざと跳ねらせていたのかと思った」と言われて脱力した。
歯に衣着せぬ物言いは清々しいほどで、親しくなっていくのに時間はかからなかった。
遠方から来た白神が知らないことも多く、地元っ子の鳥海があれこれと世話を焼いたことも関係する。
「この辺は物騒だから近寄らない方がいいよ」と教えたのは、自分と似たような容姿があったからだろう。
ふっくらとした唇は黙っているときに吸いつきたくなる…とは、誰に聞いた話だったか…。
逆に口を開いたら辛辣だと敬遠もされていた。
鳥海にとって、隠し事をしなくていい点で信頼をおけるものになっていたのだけれど。

「鳥海~っ。この前のノートみせてよ」
「サボったのおまえだろっ。落第しろ、留年っ」
「そんなこと言わないでさぁ。僕、鳥海だけが頼りだって知ってるだろ?」
おだてられていい気になるのは現金な証拠だ。
無碍にできないのは、きっと白神の仕草にもある。
兄しかいなかった鳥海にとって、弟ができた気分でもあった。
どうにも放っておけないのだ。
世話好き…なのは、血筋なのだろうか…と時々父兄と重ね合わせる時がある。
「で、何があったの?サボるなんて珍しいじゃん」
学業において真面目な態度で接していることも知っていたから、半分心配していたとは素直には言わない。
しかし言いたいことが分かる白神は肩をすくめてみせた。
「さぼったわけじゃないの。大家さんちの飼い猫に仔猫が生まれてさ。それ、見せてもらってたら傷だらけになっちゃったの」
じゃれて遊んでいて"怪我をした"と発言する思考はいかがなものなのだろう…。
目立った筋肉のない細腕に見える引っかき傷は確かに痛々しいが、状況は"サボり"だろうと悪態をつきたくなった。
悪びれていないところに邪気がない。
「『若美庵』のランチで手を打ってやろう」
「ダメっ。あそこ高いから。ねぇ、僕、仕送りのビンボー学生だって分かってる?」
「だからランチにしてあげたんじゃん」
一駅先にある和食亭は、夜は大人の雰囲気を醸し出した"敷居の高いところ"の印象があったが、昼間であれば気軽に入れるたたずまいで、ちょっとした"背伸び"感を味あわせてくれる。
交換条件にはもってこいだとかけひきを試みるが、あっさりと却下された。
「鳥海が食べたがっていた新作…、どこのだっけ?」
それが何なのか、コンビニのデザートだと分かることも伝わって、差がありすぎじゃねぇ?と恨めしく思うものの、奢ってくれるだけありがたいか…と考えられるところは、やはり鳥海の人の良さなのだろう。
「三個」
「二個だよぉ。半分こして食べ比べしようね」
結局は自分も食べたいんじゃん…とは、何故か飲み込まれてしまう。
何故デザートを買うことに戸惑いを覚えるのか鳥海には理解できなかったが、白神が食べたい時、いつも付き合わされている鳥海は文句もない。
白神に言わせるところ、"恥ずかしい"らしいが、その神経も謎のままだ。

その日の帰り、忘れられないうちに、と近所のコンビニに向かった。
『絶品大きなシュークリーム』と『本格抹茶あんみつ』を買い込んで白神のアパートに寄り道する。
一人暮らしの白神の部屋は7.5畳のワンルームで、小さなキッチンとユニットバスがあった。
家がすぐ近くにありながら、外泊させてもらったことも数度あるアパートは、鳥海の両親も良く知っていた。
それもこれも、地域に密着した、表には出ない裏情報が不動産屋と電気屋で交わされた結果である。
口が堅いのは商売上なのか、信頼関係があるからなのか…。
どちらにせよ、守られているのだとは鳥海は気付くことがない。

上がり込んだ部屋に、鼻腔を掠めた匂いがあって、鳥海は眉間を寄せた。
これまで感じたことがない香りは、だけどとても馴染みがあった。
『煙』…。
「藤里、おまえ、煙草吸った?」
素朴な疑問はすんなりと喉からこぼれた。
二人とも喫煙者ではない。嫌煙者でもなかった。
自分が訪れるように、他の友人が訪れても何の問題もないはずなのに、これまでの付き合いから身近にいる喫煙者が思い出せない。
「え?…吸わないよ、そんなの…」
一瞬だけ見えた動揺を、鳥海は見逃さなかった。
…なんだろう、この焦燥…。
ずっと同じような存在だったのに、気付かないうちに"大人の階段"を昇られているような錯覚。
ふと過ったのは、"サボり"は真実なのだろうかという、疾しい疑惑。

思考を襲ったのは、"置いていかれる"焦りに間違いない。
何より、刺激した香りは『兄』と同じもので、余計に"大人"を浮かばせていた。

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