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ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
木漏れ日 6
2013-08-09-Fri  CATEGORY: 木漏れ日
煙草の匂い一つが何だ、と問われたらそれまでだ。
鳥海も身近に八竜がいるため、意識しなくても移り香が身を包むことがある。
それが他人にどう感じられるかは深く考えたこともなかった。
白神にとっても同じことで、これまで鳥海が気付かなかっただけで、どこかで浴びていたのかもしれない、と思うことはできた。
だけど『部屋の中』という、白神が一人暮らしする環境だからこそ、今までとの違いが胸に引っかかるのだ。
聞いてもいいのだろうか…。
躊躇いはあるものの、疑問は正直に鳥海の口からこぼれおちる。
「なんか、臭い…。前と違う感じがする」
「『臭い』ってひどい。掃除はしているよ」
「そーいう意味じゃなくてさ。えーと、なんだろう。なんか違うんだよ」
漠然とした感覚は具体的な言葉にはならなくてもどかしさも浮かんだ。
理系で過ごした鳥海は自他共に認めてボキャブラリーが少ない。…それも言い訳なのだけれど。
この話題に食いつく鳥海に、やはり思い当たるところがあるのか、白神は誤魔化しきれないとため息をひとつ吐いていた。

座ることを促されて、部屋の中央にある小さなテーブル脇に胡坐をかく。
もしかして、何か相談ごとでもあったのだろうか…。
デザートをエサにされたのか、誰もいない話しやすい空間に誘われた過程を振り返った。
白神はテーブルの上にシュークリームとあんみつを出すと、飲み物として作り置かれていた麦茶の冷水筒とグラスを持ってくる。
角を挟んで隣に座った白神は、鳥海と視線を合わせたあとで、そっと俯いた。
「鳥海って変なところでカンがいいよね」
「変なところ、は余計っ」
「それって何?天性の勘なの?」
「別に。なんとなく分かることだろ」
「ま、鳥海のいいところ、なのかな」
「お褒めに預かり光栄です」
フフフと笑われて、話をあやふやにしたいのかと過った。
でもなんと切り出したらいいのか探っている雰囲気も感じることができる。
誰だってうまく説明したいと思うものだし、同じような性格だから心の葛藤も理解できて待てた。
「まぁ、今更鳥海に隠し事する気、ないけど」
「『猫』の話が嘘だったら『贅沢プリン』と『濃厚ガトーショコラ』追加」
「絶対に嘘じゃないって言っておく」
ちょっとムッとした顔で白神は言いきった。
単に、これ以上奢りたくない財布事情なのだろうか…。

とにかく食べちゃおうと取り出されたシュークリームと抹茶あんみつを、半分こにしようとする。
鳥海だったら一人で平らげることも可能な量なのだが、白神にはいっぺんに消化できないそうで、食べ比べができる点で重宝されていた。
デザートを食べられた時点で燻っていた問題が霞むのは、白神に真剣に向き合っていない証拠か…。
「どっち先に食べるの?」と白神に聞かれて鳥海は「シュークリーム」と即答する。
掌ほどの大きさもある特大シュークリームはずっしりとした重さがあった。
こんな時は当然先に口をつけていいものだろうと、鳥海は手渡されたシュークリームに大きな口を開けてかぶりついた。
たっぷりとしたクリームが口の端からこぼれそうになって、慌てて指で口に戻し入れた。
「あっ、ずるいっ。鳥海、一口目、大きすぎだよっ」
手を伸ばしてきた白神に食べかけのシュークリームを渡す。
口いっぱいに広がる甘さをじっくり咀嚼する目の前で、今度は白神がパクリと食いつく。
減り具合を確かめてはもうちょっと…と二口目を頬張ろうとする白神を寸でで止める。
「ダメだよっ、一口ずつっていうルールだろっ」
こうやって『半分こ』ずつ分け合ってきたのだ、鳥海と白神は…。
いつの間にか作られたルールは多少の諍いは招いても、終わってみれば"食べ物の恨みは恐ろしい"事態を呼びこんだりしてこなかった。
お互いにどれほどで満足できるかの線引きがきちんと出来ている。
「皮はいいからクリーム食べたい」と白神に強請られて、渋々ながらも鳥海は食べる割合を変えた。
間違ってもクリームだけを吸い上げてしまう、などといった意地悪な食べ方はしない。
黙っていても、鳥海から食べ始めたのに最後の一口は必ず鳥海に譲ってくれるところも、暗黙の了解だった。
最後は残り少ないクリームがまとわりついただけのものだったけれど…。

口のまわりについたクリームを舌を伸ばしてペロリと舐め上げ、同じように白神も下唇の端に残した白いものがあり、そのままでいるとは気付いていないのかと指先が向けられる。
「おまえ、ここ、ついてる」
親指の腹で掬い取って、汚れた指を自分の口でしゃぶれば、目をパチクリとして驚いている白神が微動だにせず固まってしまった。
「何?」
今更驚かれることでもないと、こちらの方が不思議に思って見つめ返してしまう。
正直、こんなことは人前でも平気で繰り広げてきた鳥海と藤里だったのだから。
「あ…、あぁ、…鳥海のそれって…。あー、そっかぁ、鳥海だぁ」
何やら一人で納得している白神の脳内はまったく見えてこない。
鳥海は眉間の皺を深くした。
それとは対照的に、何故か、へへへと照れ笑いを浮かべられる。
「藤里?」
鳥海の疑問は分かるのだろう、白神はすぐに「違う違う」と両手を胸の前で振った。
間違っても鳥海に対して照れたわけではないと。

「この前、おんなじことされたことがあって、誰だっけ、誰かがよくするよなぁって思いだせなかったんだけど、鳥海だったんだってはっきりしただけ」
「そうなの?」
「うん。鳥海って空気みたいに動くから頭からすっぽり抜け落ちてたんだ」
…そりゃ、意識する対象にまつられていても困りますが…とは胸の声。
更に鳥海以外の人にされたことが甦ったのか、思い出して照れたのも可愛げがあるところだった。
それよりも気にするような相手ができたのか…ということが、先程鳥海が感じた"焦り"なのだと響いた。
恋愛を含んだ話をすることはあっても、ふたりともまだ『夢物語』の一部でしかなかった。
そんな感情を抱いたこと…。

「でもやっぱり兄弟だよね。声のかけかたとか、動きとかが絶妙なタイミングで同じでデジャヴ起こして、その時は『あれ?これ、誰かだぁ』っていつもみたいに安心してされるがままになっていたけど、後で考えたら恥ずかしいことされたなぁと思って…」
首をカクリと横に傾けながらペロッと舌を出した白神の後半の言葉は鼓膜から鼓膜へと通過していった。
意識するってそういうことなのか、ふーん、と納得しかけたものは、急カーブを描いて戻ってくる。

…『やっぱり兄弟』…???

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木漏れ日 7
2013-08-10-Sat  CATEGORY: 木漏れ日
「じゃあ次食べよう」と何でもないことのように、白神はあんみつに手をつけようとした。
こちらはスプーンでひとすくいずつ食べるものだ。
デザートに気を取られるべきか、白神の発言を掘り下げて問うべきか…。
白神は添えつけのプラスチックスプーンを鳥海に渡してきた。
…まずは目の前の獲物だろう…。

本格抹茶クリームは大人の渋みを口腔内に撒き散らしてくれる。
「良かったね、これ、白玉、二個入っているよ」
それぞれ好きな具を交互に食べ続けた。
和菓子が年寄りの好きなものとは、一部の人の勝手な固定概念だろうと思わせる。
…美味しい。美味しいのだが…。
どこか夢中になって堪能できない心に引っかかるものが、美味しさを半減させてくれていた。

食べ終わって麦茶で喉を潤してから、別の本題に脳が動く。
「藤里~っ」
言いたいことは白神も分かっていて、『隠し事はしない』そのままに、心を開いてきた。
開き直った、という態度に近い。
「昨日、鳥海のお兄ちゃんに会っちゃった」
へへへ、とまたほんわかな笑みが向けられる。
「へへへ、じゃねーよっ。にぃに会ったってオレ聞いてないしっ?」
「だって昨日のことじゃん」
サラッと肯定してくれる。
一体何があったのだと更なる疑問が脳内にひしめいた。

鳥海との付き合いから、すでに八竜と白神は面識があった。
それはそれで別に怪しむこともない。
しかし、"特別"な雰囲気が漂うだけに突っ込みも入る。
「なんで?」
「えーとねぇ」
鳥海は黙って白神の言葉に耳を傾けることにした。

鳥海がいたからなのだろうが、白神は不動産屋を通さずに大家とも親しくなっていた。
エアコンの効きが悪いと、寝不足になりつつある昨今、大家の方に直接話をしに行ったら、そこに八竜が居あわせたのだという。
その場で「様子見てやるよ」と八竜が部屋まで来てくれたそうで。
大家も自分の財産だけに、確認の意味もあって足を踏み入れてきた。
修理自体はチョイチョイで終わったらしく、見学していた大家が、親切にも家にあった買い置きのエクレアを持ってきてくれたそうだ。
大家にしてみたら、突然の依頼に対する八竜への"駄賃"であって、白神に対しても不便をかけた詫びであった。
きっとその時、八竜は白神に食べることを優先させたのは容易く想像できる。
一服しながら白神の動きを追って、手が伸びていた光景は、鳥海でも日常だった。
家の中で、幾度となくそんな動きを積み重ねてきた。
一つのデザートを分ける時、八竜は決まって先に鳥海に食べるよう促したし、いつの間にか染み込んだ鳥海と白神の立ち位置が無の状態で八竜とも重ね合わさって受け入れたのだと判断できた。
エクレア一個で済ませようとしてしまうのは、地域の人間性なのだろうか…。
そして一緒に戻った大家の家で、猫じゃらし遊びにふけってしまったそうなのだが…。

「ここで"休憩"してたから。その時に八竜さん、一服したかったみたいだし。煙草の臭いって鳥海言うの、その時のでしょ」
そこで懐いて大家の家に一緒に戻る白神の行動もどうなのだろうか…と頭を抱えたくなる。
鳥海と同じ仕草を見せたことでより身近に感じたのだろう。
寝不足で身体がだるく、大学に行く気にはなれなかった…とは、絶対に単なる言い訳だ。

兄と同じ行動を取ったと言われても嬉しいことではなく、またそれとなく気を惹かれている白神を思っても複雑な気分に襲われる。
兄に信頼を置いてくれるのは正直嬉しいことだし、しかし、"特別"な目はどうしたらいいのだろう。
白神が『勘がいい』と褒めてくれたけれど、単に"兄絡み"だったからに他ならない。
同じ"匂い"を感じただけだ。
「で?えーと何?まさかにぃとの仲、取り持て、とか言うの?」
「うん♪」
…"うん♪♡(←マーク付いてる)"じゃねーだろ…と、思いっきり脱力した。
デザートに誘われたけど、下心はそっちだったのだ…。
大元を辿れば、鳥海と同じように気を許せる存在として位置づけられたに過ぎない。
昨日の今日で舞い上がっているのか、箍がはずれてしまえば、無邪気なものだ。
問題は八竜にその気があるかどうかなのだけれど…。

「『贅沢プリン』と『濃厚ガトーショコラ』」
「ご褒美の時に買ってあげる」
フフフとまた白神は微笑んだ。
デザートの一つや二つで請け負ってしまおうとする自分の根性もどんなものなのだろう…と過ったけれど、幸せそうな白神を見ると力が入らなくなってしまうのだから不思議だ。
同時に目を覚まさせてやりたい友情も湧く。
意地の悪い八竜になど、白神を委ねられるわけがない、というもの。
"憧れる"という意味では、先日出会った瀬見が何故か脳裏に浮かんだ。
もし同じように、八竜に瀬見との再会を希望したら、どんな態度に出られるのだろう。
眉間に皺を寄せられる姿しか思い浮かばない。

"大人"に憧れるのは、この年代の宿命なのだろうか。
なんとなく、やっぱり似ているのかな、と鳥海は白神と自分を重ねた。

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木漏れ日 8
2013-08-11-Sun  CATEGORY: 木漏れ日
夕方家に帰るとリビングの座卓で八竜と父親が仕事の続きらしき会話をしていた。
テーブルの上に何冊かのカタログと用紙を広げ、かたわらにはビールの缶と枝豆があってそれらをつまみながら"仕事"をしているようだ。
家の続きになっている事務所兼作業場で仕事をするのが日常だが、自宅でもこうやって"残業"をすることはよくあった。
「にぃ、藤里に会ったんだって~?」
「とおり?」
八竜のとなりに座りこんで、早速目の前の枝豆に手をのばすと、父親との会話は中断される。
仕事中だろうがおかまいなく話しかけるのはここが自宅だからだろう。
八竜も疑問には耳を傾けてきた。
「とうり。白神藤里だよ。三丁目の…」
おおまかな地図と賃貸屋の名前を出せば、すぐ頭に浮かんだようだ。
「あぁ、エクレアちゃんか。同じ学部だっけ?」
「そう。たまに泊まりにいったりとかしたじゃん」
「友達だったのか…。あの子、でも何も言っていなかったぞ」
近所付き合いの中では飛び出す人物名がなかったので、鳥海とも親しいとは思っていなかったらしい。
八竜にとっても記憶がないくらい影の薄い存在だったのか、と分かると、気の毒になってしまう。
接客商売という点では八竜も記憶力は良いほうだった。
とはいえ、接点があれば…の話で、大部分は"仕事"で繋がっているのだろう。
藤里のほうからも鳥海の名前を出されなかったことで結びついていない。
「『ありがとうございました』だって」
「ああ。そう言えば仔猫の貰い手、探してくれって頼まれてたっけ」
修理ついでに世間話に火が付き、情報があちこちとびかうのもいつものことだ。
頭に浮かぶ話題も次から次へと変わっていく。
思い出した話には父親も参加してきたし、会話はどんどんと仕事のことから離れていった。

やがて母親にしかられてテーブルの上が片付き、夕食の時間へと流れ込んでいった。

「脈なしだ」とあっさり白神に告げると、「えぇ~っ」とあからさまに唇を尖らせてきたのは翌日のこと。
今日の昼食は学食でカレーライスを頬張る。
剝れられたって藤里の顔も名前も覚えていなかったヤツにどうしろというのだ。
それ以前に兄に関わるのはやめておいたほうがいい、と忠告をしてあげたいくらいだった。
「なんでだよ。にぃのどこがいいの?ぜーったいやめておいたほうがいいって」
「八竜さん、鳥海みたいで落ち着くんだもん」
…それは自分のことも褒められているのだろうか…。
サラッと言われることには言葉も詰まってしまう。
似たようなものであるのに隔てられるのは、年齢差があるからかと過った。
「わからねぇ…。口やかましいだけだよ、にぃなんて。すぐこき使うし」
「鳥海だから甘えてるだけじゃん。いいなぁ。『○○して』ってお願いされるの」
「こっちが頼んでも言い訳つけて逃げられるし」
「鳥海に経験を積ませてくれてるんでしょ」
「汗くさいし」
「何事も一生懸命に取り組む証拠じゃない」
見事に変換される思考には絶句するしかない。
良くもここまであがめられるものだ…。
恋は盲目とは良く言ったものだ…と変に感心してしまう。
がっくりと力が抜けている時に、白神は「ねぇねぇ、もしかして八竜さん取られるのが悔しいの?」と訳の分からないことをのたまわった。
…熨斗つけて送ってやりたい…。

仲が良い兄弟だとは昔から言われたが、鳥海にしてみたら実感がない。
しょっちゅう喧嘩していたし、泣かされたことも一度や二度ではなく、近所の前で恥をかかされたこともある。
理路整然と物事をとらえて二の句も告げられなかった。
上を、先を行く人間だと、知らずに教え込まれていた力関係は覆ることがない。
それが"悔しさ"というのなら、そうなのかもしれないが、白神の言う『取られる』とは明らかに違うだろう。
背中を見て育ってきた事情があったとしても…。

二人してそんな話をしている時に、通りかかった森吉鷹巣(もりよし たかす)が足を止めてくる。
浅黒く焼けた肌は健康的で、短く刈りあげた頭髪も爽やかさを醸し出していた。
ダイビングが趣味とは本人から直接聞いたことがあった。
「あ、おまえら、週末空いてねぇ?海小屋、貸切で予約したのはいいけど、欠員が出ちゃってさ。一人単価が高くつくから、誰か探しているんだよね」
それこそ、誰かれ構わず声をかけているといった状態らしく、切羽詰まった状況に焦りも浮かんでいるようだ。
丸ごとキャンセルになれば、それはそれで懐が痛むのだとは察しがつく。
特にスケジュールがあるわけでもなく、バーベキューしたり海にもぐったりと好き勝手に遊んで、ワイワイと交流を図るのだろう。
こういった誘いはこれまでも良くあることで、その時々のメンバーと予算で参加したりしなかったりした。
人付き合いがあるから気さくに声もかけてもらえている。
「週末?うーん、オレ別にどっちでもいいけど」
「鳥海、行く?だったら僕も行こうかな」
鳥海の返事に藤里の声がかぶさってくれば、森吉が途端にニカッと笑顔を浮かべた。
「マジっ?!感謝~っ。何台かで分乗でいくんだけど、じゃあ俺の車、五城目んちに迎えに行ってやるよ」
そそくさと脳内で席の割り当てが変更されているのか、約束をとりつけられた。
流れ的に白神の家も回ってもらってもかまわないのだが…と言い淀んでいると、「じゃあ僕、鳥海の家に前の晩、泊まっているね」と集合場所が決定されていた。
無邪気な声に反論できないのは鳥海も森吉も一緒である。

一人暮らしの白神にとって、寝泊まりする場所はどこでもいいのだろうか…。
小さい頃からあれこれと制約を付けられていた鳥海にはどことなく羨ましいと思える部分でもあった。
外泊する場合には、必ず行き先と友人名を確かめられていたし、どんなことがあったのかと会話の中で引き出されていた。
つじつまが合わないことがあれば執拗に確認された。
大事にされた…とは聞こえはいいが、うっとおしかったのも確かかもしれない。
…藤里が一緒なら、何も言われないだろう…、とは、長年の間で培ってきた、自由を得るための手段だ。
自分の目的を果たすために、鳥海はいろいろと策を巡らせてきた。
信用できる人間をそばに置くこと。
一番のポイントである。

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木漏れ日 9
2013-08-11-Sun  CATEGORY: 木漏れ日
白神が泊まりにくることはすんなりと受け入れられた。
目が届く範囲にいることは何ら問題がない。
白神は「同じ屋根の下で寝られる」と喜んでいたが、それもどうなのだろう…。

そうはいっても、肝心の週末、八竜は「飲み会だ」と言って出かけていた。
玄関ですれ違いざまに、「あ、エクレアちゃん」と声をかけられて、それだけで喜んでいた白神はご機嫌だ。

「ねぇねぇ、僕たちも行ってみない?」
母親に夕食の用意をさせるのを後ろめたく思ったのか、後をつけたかったのかは定かではないけれど…。きっと後者だろう。
その行き先が『若美庵』だったから快く鳥海も応じられた。
夜のあの店の雰囲気は憧れの的だったから。

『若美庵』は和の趣をかまえた店で、カウンター席と小上がりの席が見えるように並んでいる。
鳥海と白神が顔を出せば、宴会席に整えられたところから声がかかってくる。
最初に気付いたのは八竜の同級生で、鳥海も面識がある人だった。
「おー、鳥海じゃん。何、こっち来いよ」
気さくに声をかけてくれるのは昔からで、人懐っこい鳥海はすんなりと入っていけた。
白神にも向けられる視線も同様で、気持ち良く受け入れてくれる。
「なぁ、奢られておこうぜ」とは、鳥海の囁きだった。
この時点で財布の心配をしなくていい現実を知って心が躍る。

突然の参加に反対する人間がいないのは、八竜の人柄もある。
「おまえら、明日の朝、早いんじゃないの?」
一応牽制するように咎めてきたのはもちろん八竜で、深入りさせない心配りが含まれていた。
その話題もみんなの中に広まっていく。
「どっか行くの?」「いいねぇ、学生は」などなど。
最初は戸惑いがあった白神も徐々に馴染み、隅っこに座っていた存在はやがて人の輪の中に溶け込んでいく。
「可愛い、可愛い」と頭を撫でられているが、見た目とは裏腹に結構キツイんだぞ…とは飲み込まれた。

遅れて登場した瀬見に、自然と顔が向いた。
「悪い、遅くなった」
「よぉ、仕事、お疲れだな」
やはり労いの言葉がこぼれるのは、同じ立場にあるからで、黙って成り行きを見守ってしまう。
場を一通り見まわした瀬見は、鳥海がいることに少し驚いていたようだ。
視線があっては、ドキンと胸が高鳴って、酔ってはいないのに身体が熱くなる感覚を覚えた。
同級生の誰に声をかけられるのとは違った風が流れる。
「あれ、鳥海くんも来ていたの?」
鳥海の名前を覚えていてもらえたのかとは、また驚きだった。
「金魚のフンだ、金魚のフン」
「八竜、それ、ひでぇよ。こんな可愛いどころ、ふたり揃えるって俺たちじゃ無理なんだからさぁ」
「昔は八竜の方が連れまわしていたのになぁ」
八竜のセリフにすかさず同級生同士の突っ込みが入っている。
苦々しいやりとりはいつものことで、重宝される存在は昔からだった。
それはある意味、この中にいれば不安はない、安堵感を植え付けられていのだけれど。

席は入れ替わり立ち替わりで、気付けば白神は鳥海の手を離れて八竜の隣にいる。
立場上、お酌を続けていた鳥海は、瀬見に「そんなことしなくていいよ」と大人しく座らせられた。
「八竜に連れて来られたわけじゃないよね?」
遅れてきた瀬見は事の流れを問うてくる。
そんなんじゃなくて、友達とご飯食べに来ただけだと伝えれば、仲間内の親しみから加えさせられたいきさつを理解してくれたようだ。
先程までの中断された話題に戻されて翌日の予定を瀬見に知られた。
「海に行くんだ。いいなぁ」
単なるつぶやきなのだろうが、「今度一緒に行く?」と発言できたのは社交辞令に慣れた世界観か…。
他の人には発せられることはなかったのに…。

「次の休み、いつだっけ」
と、脳内で逡巡されることに、またもや胸が高鳴った。
真剣に捉えてもらえたのは、お世辞でも嬉しい。
会話の流れから紡ぎだされた言葉だと自分を戒めても、素直な表情は全身からあふれ出た。
「瀬見さんたちとも行ってみたいなぁ」
鳥海がつぶやくと、次々と反応した声が届く。
「あ、いいんじゃね?俺らだけより、ずっと"華"あるし」
「八竜に『連れてこい』って言ってもいっつも誤魔化されたしなぁ」
「『にぃ』~?許可ちょーだーい」
兄たちが楽しげに出かけていった風景はすぐにでも浮かぶ。
茶化した声に八竜は苦笑いを浮かべていた。
小中高と共に過ごしてきた連中の言葉はズバズバと切りこんできた。
次々と決まっていく内容は予想外と言っていい。
挙句には「訳のわかんねぇ、サークルに参加させるより、ずっと安全」と吐きだす人までいた。
制約がついた過去をこの場にいる人は知っていた。

酔いが回ると眠くなるのが鳥海だった。
コロンと座布団の上に身を横たえるとあっという間に睡魔が襲った。
次々と進められる酒があったことが大きい。
「ったく、飲みすぎるなっていつも言うのにっ」
「箱入り息子は免疫がないんじゃないの?」
苦々しい八竜の声も夢の奥に消えていく。
だけどこんなになるまで放っておかれたのは、ここにいる人たちに完全に気を許していた証拠でもあった。
「明日、起きられるのかねぇ」
続いた八竜のつぶやきの後に、「行かせたくないんだろ」とは、誰の声なのか…。
「鳥海くん、ちゃんと育っているじゃん」
何かを咎めるような声音は、見つめてくれていた奥深さがある。
「でも泊まりじゃ気が気でないよな」
「え?泊まり?」
「八竜、弟の話、ちゃんと聞いとけよ。藤里君、そう言ってたよ」
八竜の疑問には呆れる声が被さった。今更にして暴露された内容は初耳だと酔いも吹っ飛びそうだった。
一瞬にしてその場が静けさに包まれて八竜の顔色を伺った。
その空気を感じて八竜は眉根を寄せたものの、「まぁいい」とこの話を切り上げてしまった。
成人した弟は自分で判断できないほどバカではない、と言いたげに。

八竜が過保護なほど目を光らせ始めたのは、小学生の鳥海がランドセルを背負っていた低学年の時だ。
中学校に上がった八竜が離れた途端、帰宅時に「飴あげる」と声がかけられた。
ついていった鳥海は、一晩、家に帰らなかった。
街中を大騒ぎに陥れて、近所の繋がりは、不審者をあっという間に割り出してくれた。
「可愛くて、触ってみたかった」…。
犯人は鳥海の知らないところで、そうつぶやいたのだという。

鳥海は監視を嫌っても八竜の神髄は白神には見えていたのだろうか。
大事にされる背後関係。
知らずに感じとれた憧れ。
隠された真実を瀬見は黙って聞いていた。

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みんな忙しくて読んでる暇なんかないよねぇ…と思いながら私は暇なの…とupする。
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木漏れ日 10
2013-08-12-Mon  CATEGORY: 木漏れ日
「ほらっ、出かけるんだろっ」
八竜に叩き起こされた時、鳥海と白神は鳥海の部屋のベッドの中で寄りそって寝ていた。
歩いた記憶がないことで、飲んでいた席から無事に送り届けられたのだと悟る。
両親も兄も鳥海の部屋の出入りは勝手にしていた。
「ったく、似たもん同士だなぁ」
つぶやきは昨夜からの一連の行動を物語ってくれる。
酔っては正体をなくし、寝相までそっくりだと呆れた声は、それでも安堵がある。
寝ぼけた頭をかいて、モタモタする動きをけしかけられながら、森吉が迎えに来るまでに支度を整えられた。
「忘れ物、ないか?」と問われることを鳥海はウルサイと思っていたし、白神は優しいねと陶酔していた。
家の前に横付けされた森吉の車に乗るまで見送った八竜は、いつものように「何かあったら連絡しろよ」と声をかけてくる。
森吉から直接行き先を聞いて、八竜も安心したことだろう。(小細工を使って嘘がばれた時の恐ろしさは鳥海が一番良く知っているので逆らわないことに決めている)
幼い頃から繰り返されたことに、また「うん」と頷く姿は変わらない。

大型のRV車にはもう一人、能代千畑(のしろ ちはた)がいた。
熊みたいな大きな男で、寝起きらしく、無精髭を生やしたままだった。
後部座席に乗る鳥海たちに助手席から振りかえられる。
「おーっす。おまえら、朝っからさわやかだねぇ」
「能代さんがムサいだけでしょー」
「鷹巣~っ、テメーっ」
すかさず森吉が言葉を発しては、じゃれていた。
能代は浪人したそうで、歳は一つ上である。
能代も海辺で育ったため、森吉とは何かと気があっていた。こんな集まりの時はほぼ確実に二人がセットになってやってくる。
一通りの挨拶を済ませてから車は動き出した。
「今日は何人くらい来るの?」
鳥海が話しかけると「何人だ?」と言うようにふたりは視線を合わせた。
森吉がうーんと唸ってから答えを出す。
「15…6、人だっけ?増えて20人になったとか、誰かが言ってたけど」
「はぁ?また大所帯になったもんだなぁ。最初10人くらいじゃなかったっけ?」
誰でも声をかけた結果だろうか…とは飲み込んだ。
人数が増えても対応できているのであれば別に問題はないけれど、というのも心の声だ。
総じて取り仕切っているのがこのふたりなのに、この曖昧さはいかがなものなのだろう。
とはいえ、過去の経験もあって"お任せ"していた鳥海と白神は、やがて肩を寄せ合って眠ってしまった。
「このふたりは良く似てんなぁ…」
後ろを振り返った能代のつぶやきは夢の中で聞いた。

もう二台の車と合流して9名が揃ったが、あとは現地集合になるらしい。
途中休憩を入れて3時間ほど走った海岸に着いた。
海水浴場として有名なところから少し離れた場所に民宿が建っている。
目の前の階段を下りていけば砂浜に出られる好立地で、場所柄、他の客もほとんど足を踏み入れてこない。
「わー、海だ海~」
「今日は穏やかだな。先にひと泳ぎしてくるかぁ」
晴れ渡った青空とキラキラ光る海を前にはしゃぐ白神と、眩しい眼差しで見つめる能代がそれぞれに確認をとる。
車から荷物を下ろしながら森吉が振りかえった。
「能代さ―ん、部屋割り、どうしますぅ?」
「ごろ寝でいいじゃん。勝手に出入りするだろ。あとは自己責任」
アバウトな回答に慣れた連中も、グループを作ってはそれぞれ消えてっいった。
二階建ての建物は、二階に4部屋あるそうだ。ある意味早いもの勝ちである。
大声の一つもあげれば、全ての人に響き渡るところは、イタズラも仕掛けられない良さかもしれない。。
昼食は浜でバーベキューをするから、という連絡事項を受けただけで、解散になった。
鳥海と白神は森吉たちにくっついて同じ部屋に入った。

「五城目たち、どうするの?泳ぎに行く?」
10畳の畳部屋に長方形のテーブルがあるだけの質素な作りを見渡し、部屋の隅に荷物を置くと森吉が話しかけてくる。
二人はすでに荷ほどきをしていて、「一緒に行くか?」というお誘いだった。
ここにいても仕方がないと首を縦に振る。
「下にシュノーケルのレンタルセットがあっただろ」
「こいつら、バケツとスコップのセットのほうが似合っていそう」
クスクスと笑われ、鳥海と白神は同時に唇を尖らせていた。
ここまで来て砂遊びでもしていろというのか…。

ザッと勢いよくTシャツに手をかけた能代はそのまま全裸になってしまった。
「「わぁぁっっ」」
隠すべきところを隠さない振る舞いも立派だが、目に飛び込んできた鎮座する龍も立派だった。
兄のだってこんな間近で見たことはない、と慌てる。
鳥海と白神は視線をそらしているつもりでしっかり見入ってしまった。
「あぁ?」
何だ?と言うように、能代は気にした様子もなく黒のサーフパンツを穿いていく。
声を失っている鳥海たちとは反対に、森吉は笑っていた。すっかり見慣れた光景のようだ。
「せめてタオルでも用意しろって?」
「そんな面倒癖ぇことしてられるかってぇの」
「後ろを向くとかさぁ」
「窓の外に見せてどうするんだよ。そっちのほうが犯罪だろ」
何を言っても能代の態度は変わることがないようで、逆に「早くしろ」とけしかけられる。
ワイワイとじゃれあってくれる二人はいいのだけれど…。
目のやり場に困る…とは鳥海と白神の無言の訴えだ。
なんだがいきなり"洗礼"を受けた気分で、鳥海たちは角の隅で背を向けたが、背後では「コソコソしてんなよ」とデリカシーのない能代の言葉が投げかけられる。
…そんなこと言ったって、"お披露目"できるほどの筋肉も分身も持ち合わせていないのだ…。
鳥海はネイビー地に大きなドッド柄の、白神は赤地に白のボーダー柄のサーフパンツをそれぞれ身につけて振りかえる。

「鳥海の水玉って大きいね」
「藤里のも明るくていいな」
お互いの感想を言いあい笑うと、能代と森吉が明らかに眉をひそめた。
ふたりの視線が瞬時に交わされて、一拍の後、大きなため息が吐かれた。
「おまえら、上に何か着とけよ…」
「海に入るのに?」という疑問は無視された。
「日に焼けるから、かね?」
鳥海と白神は互いの肌の色と、傍らに立つ体躯の良い人間の焼けた肌の違いを見ながら、「日焼け止め、塗らなくちゃかな?」と明確な答えをもらえないことに首を傾げる。
その後の「アイツら、人前に出せねェよ…」とボソボソと困惑する能代と森吉の会話は鳥海たちには届いていない。

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