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BLの丘
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七色の虹 1
2012-09-11-Tue  CATEGORY: 七色の虹
本荘由良(ほんじょう ゆら)は会社の事務所で携帯に届いたメールを読んだ。
送り主は双子の弟の由利(ゆり)からで、今夜は会社の同僚と飲みに行く、というものだった。
同じ会社に勤めていたが、双子が揃うと何かと話題性が高いおかげで、社内ではあまり関わることはない。
もっとも部署が違うのだから、そう簡単に出会うこともなかったのだが…。
故意的に避けていた部分もある。
…今夜の夕飯は一人か…と少しばかりの淋しさを含ませた。
そんな光景を見ていた一つ年上の新庄瀬見(しんじょう せみ)が気付いて話しかけてくる。
背は高いしがっしりとした体つきは頼りがいを生みだしてくれるけれど…。
そして慕っているのも確かだったが、あくまでも仕事から繋がる付き合いに限られていた。
色々と面倒を見てくれることはありがたくもある。
「由良、どうしたの?なんか落ち込んでいるみたい」
文具メーカーに勤めて、由良が所属するのは在庫管理室であり、いつも膨大な数字に追われていた。
パソコンの画面を見ての溜め息ではないことを新庄は読み取ってしまった。

「あー、いや…。ユーリが飲みに行ってくるってメール寄越して…」
人に対しての気遣いが深い新庄には由良も懐いていた。
何かあるごとに相談に乗ってくれるし、由良の生活、感情状況も理解してくれている。
溜め息の先にあったものがこの一夜にある淋しさなのだとは、簡単に分かるのだろう。
宥めるように、「じゃあ、俺たちも出掛ける?」と声をかけられた。
それでもいいが…と由良は一瞬考えた。
遅くならなければ何の問題もないだろう。
その辺りも新庄はわきまえているし、嫌がることはしてこない。
「う…ん…。一時間くらい…二時間くらいなら…」
「本荘君が帰ってくる時間までには…ってことか…」
「だって暗い家に帰ってくると不安がるから…」
由利の性格は知り過ぎるほど知っていた。
いつも一緒にいただけに、ちょっとしたことで恐怖心を表す。
甘やかしてきたのは由良自身の責任なのかもしれないが。
同じ顔が脅える姿は、できるだけ見たくない。
由良の意見に苦笑を浮かべながらも、由良がアルコールを飲まないことを悟ってくれる。
社内で本荘兄弟が近付くことはなくても、一歩出れば誰よりも親しい存在に変わる。
時々、帰り道を一緒にする光景を晒すが、その時に詳しい連絡などなく、周りの人に「どんなテレパシーだ?」と驚かれていた。

新庄とお好み焼きと焼きそばを楽しんで、希望通りの帰宅時間になった。
強制はされなかったけれど、目の前で仕事上がりのビールジョッキを喉越し良く煽られては、少しばかり不貞腐れていたのか、由良もグラスを傾けた。
そんな姿に新庄は何も口出しすることなく、見守ってくれている。
由良が帰宅しても、案の定、由利はまだ帰ってきていなくて、リビングの照明を煌々と付けて待っていた。
それなのに…。

普段から深酒をすることのない由利で安心していたところもあったのに、由良が連絡をもらったのは由利の同僚の高畠萩生(たかはた はぎお)だった。
由利との会話の中で数多く登場する人物名だったし、由良自身、何度も顔を合わせている。
由利が気を許せば由良も…というところもあって、新庄同様、面倒見の良さに安心していた。
『由良、住所、教えて。ユーリ、送っていくから…』
電話越しの声にどうしたのかと訝る。
「え?ユーリ、どうしたの?」
心配する声に、呆れたような、困ったような返事が届いた。
『酔いつぶれた…。もう、今、爆睡中』
そんなことは普段ありえることではなくて、由良は瞠目してしまう。
理性を保とうとする性格も由良は知っていたから、酔い潰れたという事実が理解できなかった。
とにかく帰してもらわなければならないのは確かで…。
すぐに住所を伝えれば、三十分も立たずにマンション前にタクシーが着いてくれた。
到着時間を聞いては、マンションのエントランスで待つ由良に、高畠が労いの言葉をかけてくれた。
それこそ、こちらが言うべきものなのだろうが…。

「迷惑でなければ部屋まで運んでやるけれど…」
タクシーの中で完全に撃沈している由利は揺さぶろうが叩こうが目を覚まそうとしない。
そんな由利をここで放置されても由良が運べるはずがなかった。
「迷惑どころか…。お願いしたいよ…」
情けない声を出した由良に、微笑んでくれた男はタクシーを待たせて、由利を横抱きにして由良の後をついてきてくれた。
勝手に入る由利の部屋ではあるけれど、今更文句なんて言われたくない。
ベッドに横たえてくれて、肌掛けをかけて、由利の部屋を出た。
すぐに玄関口に戻る高畠は、タクシーを待たせていることもあるのだろう。
「高畠さん、ありがとう…」
由良が玄関で謝礼を述べれば、やっぱりクスリと笑ってくれた。
手を伸ばしてくしゃっと由良の髪を撫でる。
「いいよ。由良もユーリを待っていたんだろう。早目に寝ろよ」
温かな手が状況を的確に指摘してくる。
それは普段由利に対して取っている態度と変わらないだろう。
でも由良には思い出深いものがあった。
まだ入社したばかりの頃、高畠は後ろ姿だけで由良に「由良?」と声をかけてきたことがあった。
単なる偶然だったのだが。
何かと注目を集めた双子の入社に、完全に戸惑いを覚えていた時、由良には間違われないそれが嬉しい出来事だったのだ。

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言わずと知れたスピンオフです。
書く気はなかったのに書けと脅されて(←)みこっちゃん書きながら考え込んでいました。
でも今週から来週明けにかけてちょっと忙しいので余韻残して止まります。
気長に待っていてくださいね~。

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七色の虹 2
2012-09-12-Wed  CATEGORY: 七色の虹
由良は高畠を見送ってから再び由利の部屋に戻った。
外で酔いつぶれてくるなんて珍しすぎる光景だった。
「何があったんだか…」
理性を失うことのない由利の性格も判れば、ハメを外した原因も知りたいところだ。
心配にはなるけれど…。その反面で少しだけ感謝した。

…会うことができた…。

社内でも部署が違えば滅多に顔を合わせる存在ではない。
特に兄弟とはいっても由利と由良は距離を置いているために、由利が親しくする社員とも自然と接触がない。
その間があるのに、高畠には由利だけでなく由良も気遣ってくれる面を見せる。
入社した時から感じられる優しさが、由良には深く染み込んでくるのかもしれない。
「困ったサンだね…」
ベッドの端に腰かけて、絶対に届いていない言葉を由利に投げかけながら、たった数分の触れあいに悦びを表して、由良は眠っている由利にくちづけを落とす。
それこそ、感謝の表れだったのか…。

******

社屋のすぐ隣にあるコーヒー店で売られているカフェラテが由良のお気に入りだった。
昼食を済ませた後に一人で買いに行くことも多々ある。
食事はもっぱら食堂で取っていたし、そこでも飲み物はあり、また休憩室でも自販機は存在するが、由良は移動距離を考えてもこちらの店を利用することが多かった。
まだ入社して間もないころ、緊張の一つもあって、由良にとっては息抜きの一つだったのだと思う。

注文の順番待ちの列に並んでいると、いきなり背後から、「あれ、由良じゃん」と太い声が届いた。
後ろ姿だけで由良と由利を見分けられる人物がどれほどいるのかと、咄嗟に由良は振り返った。
見たことのある顔だ…と脳が反応すれば、同じ社の人間なのだと分かる。
しかも由利が親しくしていると知るから、判断は早かったが、すぐに名前が出てこなかった。
体格の良い男は親しげにスッと由良の隣に並んでしまった。
それから耳元に唇を寄せては小声で囁かれる。
「あ…」
「おごってやるから、ココ入れて」
割り込み、と周りに知られたくないせいだろう。
「…ん…、と…」
どう言葉にしようかと悩んだ時、雰囲気を感じた男が改めて自己紹介をしてくれる。
「ユーリんとこの高畠。ユーリに前から話題に出されて、あつみ(湯田川)にけしかけられて買いに来たんだけど、意外と混んでるのな…」
ここに由良がいてくれて良かった、と喜ばれてはそれ以上何も言えなくなる。
ただ一つだけの疑問があった。
「あの…、よく俺とユーリの違いが判りましたね」
サクサクとした性格の高畠はよどみなく会話を進めてくる。
滅多に出会う人間ではないといった雰囲気は全くない。それは由利と同等に扱われている証拠なのか…。
「正直、事務所にユーリとあつみを残してきたからね。ここにいるのは由良だって思うじゃん。ちょっとズル?」
首を傾げながらも微笑んでくる姿には、双子が混同されることの抵抗のようなものを知っているのだろう。
そんな裏話があったとしても、全く違う人間として見てくれる雰囲気だけは感じられた。
個人として見てくれること…。
「うん、ズル…」
一応、先輩なのだが、そんな口調も受け入れてくれる。
「コイツ…」
クスクスと笑われて、高畠が示す態度はコツンと軽く拳を由良の額に当ててくる。
上下関係を持たせない、また自然な態度に由良は好感を覚えた。
由利から聞いていた話だけでもその人の良さは理解できているが、実際に感じればまた印象も変わってくる。

高畠は順番が来ると、由良のお気に入りのカフェラテを4つ購入した。
「あ、俺の分は…」
財布を取り出す由良の手を、手のひらをかざされて止められる。
「いいから。順番譲ってくれたお礼。ユーリが『由良が好きなんだ』って教えてくれたの。近くでもなかなか外には出ないからな…」
社内に籠ってしまう人間を知るのだろう。
どんな事情があって高畠が買いに出たのかは知らないが、この情景を見れば確実に『買い出し』の足に使われたことは確かだろう。
それでも戸惑う由良に「ま、お近づきのしるしってことで」と茶化して、一緒に戻りながら社屋のロビーで別れた。
高畠と一緒にいたことで由利に間違われていたことは確かに伝わってくる。
どこまで高畠が違いを理解しているかは疑問だが、サッと由良の名前を呼んでくれたことが、この時の由良は嬉しかったのだ。
そのことはずっと由良の心の中に住みついている。


******

あの時に飲んだカフェラテは、とても甘かったな…と、眠りにつきながら由良は振り返っていた。
ズルなのか、カンなのか、あれ以降、高畠と顔を合わせても、他の社員のように間違われることはなかった。
ただ、近付けなかっただけ…。

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短くてすみませんが…。
それと予約できたらしますが、何もなかったらしばらく待ってください。
ちょっと出かけてきます。

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七色の虹 3
2012-09-13-Thu  CATEGORY: 七色の虹
由利の酔い潰れた原因が痴漢行為にあったからだと聞いては、由良も憤りを感じる。
その美貌故か、狙われることは由良も一緒だったが、抵抗力が低いのはどうしても由利で、心配は増えていく一方だ。
そして後日、その相手に由利と間違われる出会いにあってしまっては、憎たらしさしか浮かばなかった。
由利がもう一度会えば絶対に嫌うと思ったのに…。
結果は、由利の中で最初のイメージと違いすぎたことか…。
惹かれて堕ちていくことに時間はかからなかった。
頼れる何かを感じたのだろう。…由良とは違うものを…。
そのことに納得ができなくても、流れていく気持ちにセーブはかけられない。
何よりも感心できたことが、咄嗟に由良と由利の違いを感じ取ってしまったことだった。
二人の違いを知る…。きっと由良と由利の中で重要なキーワードだったような気がする。
由良が高畠に気を取られたように…。

真剣に由利だけを追い掛けていく姿に、軽薄さがないことは由良でも悟ることができる。
諦めにも似たものか…。それともこれを良い機会だと由良自身が思ったことか…。
どうしたって由利は、一番近くにいた由良を頼りにしすぎていて、またその由利を甘やかして、由良は離れられなかった。
淋しさと同時に訪れるものは…、自分の時間。

普段であれば一緒になることのない食堂で、呑気にティラミスなんか頬張っている由利を見てしまえば、不機嫌も露わに隣に腰をおろして、そのフォークを取り上げていた。
周りからの視線が、どうでもよいものに感じられた瞬間だったのかもしれない。
後ろめたさがあるような由利に気付いて、由良は預かってきた『羽後雄和』と表記された名刺を渡した。
この先は由利が判断すべきことである。
こんな時、やはり気遣ってくれる高畠が、目の前の席から「由良、メシ、なんか買ってきてやるぞ」と声をかけてくる。
食欲なんかもうなくて…。つい強い口調で「いらない」と突っぱねてしまった。
そんなふうに振舞う態度ですら、高畠は肩をすくめてクスリと笑いながら見守ってくれている。
嫌がるような態度には出ない。分かっているからこそ、ここで由良の甘えが出るのかもしれない。
由利と同様に可愛がられているのか、それとも個人的に見てくれているのか、まだ由良には判断ができなかった。
いつ嫌われてもおかしくない、その危険を探りながら…。
自分の正直さを知ってほしい感情は隠せなかったし、きっと、高畠が理解できていたのだろう。
居心地の良さは深まっていくばかりだ。
それすらも認めてくれているのだと、自惚れにも似た感情が湧く。

由利を羽後雄和という人物に託すことができたなら…。

動揺と期待、恐怖、心配や安堵…。様々な思いが錯綜した。
結局、由利の思うままに任せるしかない。
次に羽後に出会った時、由良は、辛辣なほど冷たい言葉で釘を刺した。
『ユーリを泣かせたら、ぶっ殺してやる』…。

迎えでた態度は、「二度と悲しませないし、嫌なことはしない」という宣誓のようなもの。
その時だけでも、由良と由利の思いあう感情を悟って身を固めたことを由良は知った。
それこそが、『覚悟を決めた』結果なのだろう。

由利が他の人間を頼りにするという現実を知っては、無理に隠そうと言う意識が薄れた。
これまでは故意的に避けられてきた社内での接触も自然体で行われるようになる。
もちろんまだ甘えを感じるところはあったけれど、少しずつ距離が生まれているのも確かな出来事だった。
何より、由良には、企画室の人間と食事を共にできるという嬉しさがあったのかもしれない。
それはいつしか、由利がいなくても違和感を持たせない近付き方に変わった。
新庄がついて来てくれるのは、高畠や湯田川と同期ということで、話題が膨らむせいか、由利と由良の違いを皆に植え付けるためか…。

食事が終われば、由良はカフェに出向こうとする。
高畠が「俺も行こうかな」と追ってきてくれるのが単純に嬉しくて、その後に続いた新庄の「あ、じゃあ俺も」という言葉を咄嗟に振り切っていた。
「新庄さんのぶん、買ってきてあげる」
「(高畠)萩生クーン。是非俺のぶんも」
「あつみ~っ。おまえは動きたくないだけだろーっ」
なんやかんやと会話を交わしながら、ついてきてくれる存在に心が躍った。
由利ではないが、束の間のデートを楽しむ雰囲気に陥らせてくれたのだ。
二人で動いては、さりげない仕草の中で、しっかりと見守ってくれている姿に安心する。
並んでいる列の中、「由良の分だけおごってやるよ」とそっと囁かれること。
「え?どうして?」
過去、なかったわけではないが、意味もない対応には戸惑いも浮かぶ。
ふわっと笑みを浮かべた表情を見上げれば、ポンポンと頭上を叩かれた。
「ユーリがいなくて淋しかったんじゃないの?甘い時間、過ごしとけよ」
いつも一緒にいる存在…。
もう割り切っていたつもりなのに、心の奥底にはびこるものを、こんな形で感じ取られてしまっているのか…。
でもそのことを他の人間の前で言うことがない気配りに鼻の奥がツンとする。
だけどそれは飲み込んだ。
「ありがたくおごられとく…」
強がった口調に、またクスリと笑った高畠は、それ以上由利のことを口にすることはなかった。

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七色の虹 4
2012-09-14-Fri  CATEGORY: 七色の虹
由利と企画部の人と、由良たちの食風景はお馴染みのものとなり、時が過ぎれば興味深げに見てくる人間も減った。
時々由利はいなくなったけれど、それすらも誰もが受け入れ、改めて口に出すこともない。
双子の片方がいなくなれば、そこにいるのが由良だと判断もされる。
すっかり馴染んだ環境が由良には心地良くもある。
何より、高畠と共に過ごせる時間が少しでも持てることが、毎日の活力に繋がっているようだった。

帰るエレベーターを降り、ロビーに出ると、偶然にも見慣れた姿が視界に入った。
「高畠さんっ」
由良は思わず一人でいる後ろ姿に声をかける。
その声に振り返られ、ふわりと笑みを浮かべられては由良の気も良くなる。
「おぉ、由良。ユーリならもうとっくに帰ったぞ」
「知ってる。今日、羽後さんが来ていたから」
「あぁ、そうか。なんだ。デートだったんだ」
詳しい連絡なんて取り合っていなかったけれど、月のメンテナンスに表れた羽後を見ては、今後の予定など想像ができるというものだ。
雰囲気だけで悟れることに、最近は羽後も由利も『恥ずかしがる』今後を言葉で伝えてくることはなくなった。
改めて伝えられないことで由良にも見守るような余裕が生まれる…というところだろうか。
二人には二人の生きていく道がある…。

「なんだ、じゃあ、由良は今日は一人なのか」
高畠から気遣われる声が聞こえると、その反応に甘えたくなる。
「そうそう。高畠さん、付き合ってくれるの~っ?」
いたずらに声をかけたのに、本気か冗談か返ってくる声があった。
「しょうがないな~。…と言いたいところだけれど、ごめん。月末で金がないんだよ」
それは、『奢りたい』という年上だからこその気遣い。
誰もそんなことは期待していないと由良は唇を尖らせた。
「声、かけるたびに『奢れ』って言っているんじゃないんだけど」
「そう?由良からの誘いはそうだと思っちゃうなぁ」
クスクスと笑ってくる態度はどこまで本気か。
冗談で返してくれる口調はやっぱり馴染む。
「じゃあ、俺んち、来る?簡単なものだったら夕飯、作るし」
「由良の?…毒とか盛られないだろうな…」
「もぅ…っ。どんな料理だよ~っ」
気軽に腕も叩くことができる。
その雰囲気ですら楽しい。
由良があげる態度、何一つ嫌がれないことに、由良の気持ちは益々浮き上がっていくのを感じた。

どんな理由であれ、自宅に来てくれるとは予想外な出来事でもあった。
ふざけた口調で会話が進められても、こんな風に触れあえることは心に悦びを運んでくる。
…家で何が作れたかな…。
冷蔵庫の中身を思い浮かべながら、高畠の気が変わらないうちに、とその腕を引っ張った。
「いつも、おごってもらってばっかりだし…」
「本気で?」
訝る高畠に素直に頷く。
「嫌?」
小首を傾げた由良には核心的な狙いが込められている。
見目の良さは狙われた数だけに、由良の方が知るのだろうか。
そこに釣られてくれればいいのだろうが…。

「嫌って言えるわけないだろう。由良に誘われて断る奴がどこにいるんだよ」
いつものように頭上に手のひらが乗せられた。
たったそれだけのことが嬉しい。
どこまで真実かは分からないけれど、近付ける状況にただ浸った。
「作れるの…、チャーハンとかしかないよ」
一応、前もって伝えれば「充分」と微笑んでくれる。
それから「俺、ラッキー」と悦びを表してくれた。
その反応だけで心が躍ってしまうのだ。
由利がいない日の夜。こんな偶然が訪れてくれるのなら、淋しさも当然薄れた。

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七色の虹 5
2012-09-16-Sun  CATEGORY: 七色の虹
由良と由利の食事場所はもっぱらリビングテーブルで、ペタンと座っての食事だった。
一応二人掛けの小さなダイニングテーブルがありはするものの、すっかり物置台と化していて、現在使用不可を物語ってくれている。
それに気付いた高畠だったが、何も口にしてはこなかった。
各家庭、色々と事情はあるものだ。
高畠は今更緊張感を覚えるわけでもなく、上着をソファの背に投げ、ネクタイを緩めた姿で由良の斜向かいに胡坐をかいて座っている。
普段着に着替えた由良は、あまり具が多いとは言えないチャーハンと、冷凍してあった春巻き、乾燥タイプのわかめスープを用意する。
…あと、何かあったっけ…と冷蔵庫を覗いて浅漬けのタッパーを出した。
「ビール、飲む?」と聞けば、「いただけるものであれば、何でも」と茶化した口調で答えてきた。

品数は少ないがそれなりに賑わったテーブルの上である。
高畠が感心したように、「由良って手際、いいのな…」と褒めてくれ、由良は謙遜しながら内心では舞い上がっていた。
「でも、作ったの、チャーハンだけじゃん…」
「それでもさ。野菜切ったり、炒めたりって、慣れていなきゃこんなに素早くできないだろ」
「うーん…。ユーリと一緒にやっていると、どうも危なっかしくて…。自分でやったほうが安全って思って回数も増えたからじゃない?」
「あ、ひっでー言い方。あとでユーリにチクってやろ~」
「いいよ~。ユーリも分かっているし~ぃ」
由利の性格を良く知るのは何も由良だけではない。
高畠も同僚となれば、見えてくるものがあるし、だからこそ、そばに付いていた責任感のようなものがある。
開き直った由良の発言にクスクスと笑いながら、ほのぼのとした二人きりの食事を楽しんだ。
「美味い」と言いながらあっという間に平らげてくれれば嬉しくもあるし、また不安にもなる。
高畠には多めによそったのだが、体格からしても物足りなかったのではないだろうか…。

「あ…と…、高畠さん、お腹いっぱいになった?」
由良の皿にはまだ三分の一ほど残っている。
由良はこれを全部あげてもいいとまで思っていた。
高畠は由良の不安を感じ取るのだろう。
「もちろん。俺が早食いなんだって知ってるだろう。由良は由良のペースで食べればいいんだよ」
「うん…」
由良もまた、高畠なりの気遣いなのだと悟ることができた。

それから数口、雑談を繰り広げながら由良はスプーンを口に運んだのだが、一人だけ食べていることに居た堪れなさを感じてしまう。
みんなでご飯を食べている時は、由良と由利は大概同じ時に食事を終えたし、由利がいなくても他の三人で会話をしていてくれているから、由良が後ろめたさを覚えることはなかった。
それが”ふたり”になった途端、どうだろう…。
由良は無意識のようにチャーハンを掬ったスプーンを、高畠の前に差し出していた。
「食べるの、手伝ってよ」
「由良?」
「あーん、して」
高畠は困ったように微笑みながらも大人しく口を開けてくれて、由良はその中にスプーンを入れた。
そのまま次に自分の口へと運ぶ。
モグモグと咀嚼し、高畠が「俺はユーリじゃないんだけどなぁ…」とぼやいていた。
由良と由利は人目憚らず、どこでもこんな光景を見せてくれる。
由良だって、由利以外の人間にこんなことをしたことはない。
そこは酔いの勢いで…と捉えられてしまうのも困るが…。

「いいじゃん」
照れを隠すように、またスプーンを送り届けると、今度はふたりに会話もないまま黙って受け入れた。
その、暗黙の了解とでもいえそうな雰囲気が、由利に近い存在のような気がして、ますます由良は心が跳ねあがる。
由良のしたいことをあえて声にしなくても理解してくれる洞察力は、奥に隠した気持ちまで見透かしているのだろうか…。
だけど単なる親しい仲、の域を越えていない空気が醸し出されているのも確か。
高畠はきっと、由良と由利を別の人物と捉えていながら、扱いは同等のものなのだと教えられるようだ。
膨らんだ風船はあっという間に空気が抜かれてしまった気分になる。

空になった食器をシンクに運んで、この時ばかりは高畠も手伝ってくれた。
このまま帰られてしまうのだろうかと思うと、まだ引き止めたい思いが浮かんでくる。
「高畠さん、まだビール飲む?他のものがいい?」
隣に立つ高畠を見上げると、クスリと笑われて彼の掌がくしゃくしゃと由良の髪をかきまわす。
「素直に言わないところが由良の可愛さだよな」
「?」
一瞬言われた意味が分からなくて目をパチパチと瞬かせた。
由良の仕草に、また笑みが漏れる。
「一人でいたくないんだろ?」
そこまで言われて、誤解されているのだと気付いた。
誤解…というか、半分は当たっているのかもしれないけれど…。
もともと、高畠がここに来てくれたのは、由利がいない状況を気遣ってくれたからだ。
だけど素直に認めるのも悔しくなる。
というか、違うのだと言いたくなる。
そして誤解が生んだことでも、まだ居てくれる意思が伝わってきて、甘えが走った。
唇を尖らせてそっぽを向けば、本気で機嫌を損ねたとは思っていない高畠が「由良姫のご機嫌を取らないと帰れませんので」と、おかわりを要求してきた。
「別に無理しなくていいもん…」
「無理じゃないし。俺がおまえを放っておけないだけだよ」
どこまで本気で言ってくれているのか…。
とんがった唇とは裏腹に、隠せない喜びを浮かべた由良は新しい缶ビールを取りだして、ついでに由利が買い置いておいた野菜チップスの袋を開けた。
今更どちらが買ったものでも、半分残しておけば文句も言われない日々である。
今度は、由良は高畠の隣に腰を下ろした。

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休暇ありがとうございました。
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