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想いを確かめて 1
2012-07-14-Sat  CATEGORY: 想いを確かめて
遅くなりましたが、リクエスト企画です。
アンケートで頂いた一位千城と英人編、そしてhit様も千城と英人だったので、…すみません、横着して一発でイキタイと想います。
ただ、hit様のご期待にこたえられるでしょうかね。
添えない結果になったとしてもどうかお許しください。
なるべく頑張ります。
こいつら、書くのも、久し振りすぎて…。
アンケートまで貼って…こんなもので本当にごめんなさい。
では…お楽しみいただければ幸いです。





父親である湯沢雄吾(ゆざわ ゆうご)は日本に来るたびに、必ず母親の墓へと寄った。
その墓は、英人の母親である『暮田家』の実家が用意してくれた無縁仏だ。
今後の繋がりを持たせないようにと、遺産の放棄も含めて、英人に提示されたものだった。
生きてきた過去、良くは思わなくても、母の墓の一つくらい、用意してやりたい気持ちがあったから、英人は無条件で受け入れた。

榛名英人(はるな ひでと)は何も分からず、また言いくるめられたのかもしれない。
だけど、母を埋めてくれた場所があったことは、息をつけることでもあった。
父が帰国するたび、英人は”墓参り”に同行した。
“付き合った”…というと変だろうか、
滅多に訪れる場所ではなかったけれど、そんなところで親子の絆をはかれる。

アメリカに生活拠点をおく父と、普段の接触はない。
それは”榛名”という立場に名を置いた息子のことをおもうからなのかも…。
やたらな行動はマスコミに叩かれる。
一つの綻びは、榛名家の失脚を招くものにもなる。
力をつけた現在、一つくらいのゴシップは揉み消してしまうのだろうが…。
万が一…は避けたい父親の愛情も含まれた。
同じ…、”情報”を扱う人間として…。

湯沢が買ってきた大きな花束を添えて、墓前に挨拶をした。
同じように倣って、英人も手を合わせる。
父親に出会わなかったら…、千城から真実を聞かされなかったら、今でも英人は、母親を蔑んだままだっただろう。
生かしてくれた命を…、好きに生きさせてくれた影の苦労も知らないまま…。

腰を上げて振り返った時、目を見開く老女と視線があった。
彼女も向かうところは同じなのだと分かる。
葬式の時以来、会うこともなかった祖母だとは、英人はすぐに気付いた。
同じように、現実を把握できない、灰色のワンピースを着た老女は、その場を見回していた。
その視線を追って…、湯沢がやはり瞠目し、大人しく頭を下げた。
「ご無沙汰しております…」
「あ…、なた…っ。何でここにっ。英人っ!!あなた、連絡を取っていたのっ!?」
声には恨みの方が強い。
娘を奪って、挙句には好き放題の生活をして、捨てたも同然…。
憤る祖母の言葉に、父親は何一つ反論しなかった。

英人も祖母と連絡を取ったことはない。
ただ、こうして墓参りをしてくれていることが、不思議で喜びだった。
見捨てた…かもしれないけれど、やはり、血の繋がった『娘』だったのだ。
地元の世間体など、考えることはたくさんあったのだろう。
どうしても同じ墓に入れられなかったしがらみなど…。

「英人とは偶然画廊の方で出会った…、それだけです。朝子のことは、その時に私が無理矢理聞きだしました…」
どこまでが真実か…。
湯沢は英人を守ろうという態度にでる。
英人に言葉を挟ませず、嘘を真実として語る。
そして頭を上げることなく、震える祖母の次の言葉を待っていた。
どんな叱責も受けようという覚悟が見える。

「画廊?」
不思議そうな声を上げたのは祖母の方だった。
英人の生活など、詳しく聞いたことがないのだから当然と言えば当然…。
訝しげな視線が英人へと移ってくる。
葬式をあげてもらって、もう、出会うことはないと思っていたのに…。
それくらい希薄なものだと思っていた。
見える面影は母にとてもよく似ていると感じた祖母の表情が心配げに歪む。
見放されたわけではないと思わせてくれるようなもの…。

声を出せないでいる英人の隣で、肩を抱いた千城が、「初めまして」と頭を下げた。
「榛名千城(はるな ちしろ)です。英人の…おばあ様でいらっしゃいますか?」
状況を把握しつつも、確認を求める千城の声はよどみない。
「なに…?」
状況を全く理解できない祖母に、千城の声が冷淡なくらいたたみかけられた。
「英人の身を預からせてもらっております。榛名グループ次期当主。今はまだ、タダの一社長でしかありませんが」
皮肉をたっぷりと込めた言葉は、どこまで理解されたのだろうか…。
聞きなれた名前と、役職は、改めて湯沢の身も震わせるものになった。
堂々とした立ち振舞いは、一朝一夕で身に着くものではない。
威厳を存分に纏わせた姿に、その場の全員が言葉を発せず、かたまった。
「ちし…」
「血縁を持つ方に対して、お話しておかなければならないことがありますが…。お時間はいかがでしょうか?」
有無を言わせない態度は相変わらずだった。
湯沢もすでに知ること…。
無縁墓地を用意しても通ってくれる愛情の深さを感じては、このまま勝手に済まされない内容なのだとは、千城のほうが感じたのだろうか…。
英人はもう、『暮田(くれた)』の姓ではない…。
勝手に決めたことを怒られはしないだろうが…。血を繋ぐものとして曖昧にはしたくなかったのだろう。

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想いを確かめて 2
2012-07-15-Sun  CATEGORY: 想いを確かめて
祖母は持ってきた花束を墓前に供えた。
父と自分が供えたものを、どこか邪魔にしながらも、気持ちだけは汲み取ってくれているようだった。
短い、手を合わせた時間。
千城は慌てもせず、祖母の気持ちが向けられるのを待っていた。
先程紹介された内容を、どのように受け取っているのだろうか…。
動揺は彼女にもあるはずだった。

英人は、今更恐れるものは何もなかった。
千城がそばにいてくれれば、すべてがうまくいく…。
そのことを過去の経験でも嫌というほど知らされていた。
不安を抱く身内のことですら…。優しく見守ってくれる榛名家の両親と、離れた父親の存在…。
自分は一人ではないと、再度確認させてくれる。
何よりも勇気づけてくれた人…。

千城は近くにあった、日本庭園の素晴らしい庵に招待した。
涼をとるようにと、抹茶と餡が混ぜ込まれた品は、祖母の好物でもあるだろう。
まぁ、それを差し出したのは、偶然というのかもしれないが…。
千城と英人は並んで座り、また湯沢は英人の隣に落ち着いた。
一人正面に座った祖母は、居辛さも感じているのだろうが、この状況の説明を求めてくるものである。
誰が最初に口をつけるか…といった中、誘われた祖母は状況を把握して、手を合わせて匙をとった。
続いて英人も一口目を頬張る。
緊張した面持ちを全員が抱え、甘さとほろ苦さを味わう中で、肝心の話題が千城の口から滑り落ちた。

「もっと早くにお知らせするべきでしたが…」

初めて聞かされた時、湯沢も動揺した。
右も左も分からないような息子を、世界を征服するような中へと押し入れられた事。
初めて出会ってから、多少の情報は仕入れていたかもしれないけれど、聞かされた現実は想像の域を越えていた。
英人が、”榛名”という名の中で、過ごしていけるのだろうか…。
“一般庶民”という括りが全く通用しない世界観。

父親として、何もできなかったが、これからは見守っていきたいからと、許した全て…。
理解してもらえているという安堵もあるのだろう。
千城は淡々とこれまでの経過を語った。
英人がすでに『暮田』の名字を捨て、”榛名”の一族として成り立っていること。
愛してやまない存在は、性別や過去を越えて、唯一の人として寄り添っていること。

もちろん、目を剥いたのは祖母だったが…。
「ひ、でと…っ、あなた…っ。朝子だって充分恥をさらしたのですよっ。あなたまで…っ。どこまで当家の血を汚せば…」
それは”男同士”…という付き合いを否定されることになるのだろうか…。
貶されて項垂れて、だけど毅然とした千城の態度は変わらず、声を荒げる祖母に向き合う。

「権力で物事をどうにかしようとは思いません。私と付き合うことで『暮田家』の血を汚すというのならば…、その発言だけで『榛名』も穢したことになりますよ。私はそれくらいでは動じませんが。英人は暮田家の名を汚しても”榛名”は汚さない。英人を生んでくれ、育ててくれたこれまでには感謝しています。どんな形であれ、英人と母を見てくれていたことに尊敬の意を表します。今後は全く関与されなくて構わない。ただ、そちらが英人に一切の財産を渡さないと言ったのと同じように、今後、英人が得る全てのものを放棄していただきたい。血縁はないと、言っていただいてほしいくらいです」
冷淡で、感情の一つもないような態度は、英人とて、久し振りに見るものだった。
出会ったばかりの頃、ビジネスを優先させた男を彷彿とさせる。
いや…、仕事を取り仕切る場所では、これが”普通”なのだろうか…。

『榛名』の名になったと改めて知ったとき、寄ってくる浅ましさを誰よりも千城の方が知るのだろう。
それだけのステータスがどこにでもはびこっていた。
千城は英人を暮田家から”他人”にすることで、守りにはいっていた。
完全に切り離し、頼る場をなくすこと…。

祖母は失言に気付いたのだろうか…。
地域社会に根付いた見栄を守るばかり。
一番大きいと言えるような組織の中に収まった孫は、何かの時に頼れるもの…。
その根を、千城は踏みつぶした。
決して、二度と、屈辱を味あわせないようにと、表向きの情など必要ないと手を振った。

それが…、その悔しさが伝わったのだろうか…。
「これは…?!この男は?!この男さえいなければ、朝子だって苦しむこともなかった…っ!!」
向けられる恨みは多々あっても良いはずだ。
英人だって恨んだ人生の過去がある。
今でこそ、少しは見直されているけれど…。
残される遺産…。そこに目が向いてしまうのは、人間の醜さなのだろうか。
「英人が望むなら一部を残しましょう。ですが、湯沢さんは一銭も受け取らないはずですよ。彼は父親であって、だが、父親ではない」

恨み辛み…。抱えたものはとても大きい。
千城の発言には英人を始め、全員が固まったのかもしれない。
望まれても湯沢にビタ一文渡す気はない、とは、過去の生活があるからだろうか。
さらに、湯沢の心理も突いている。
そんな情けない父親になるなと…。

「生きていく上での恥は見栄と違う。見栄を尊重されるならそれもありでしょう。お考えを改められるかどうかはこの際、どうでもいい。ただ、英人が『榛名』にいることだけは知っておいてください。危害を加えるものには、それなりの制裁を施しますので」

地域を重視した考えとは全く異なる。
権力は…と千城は言っていたが…。
守るべきものはどんな手段を使っても守り抜くのだと、その言葉が伝えた。
力関係はどうしたって違いすぎる。
生きていく世界が違ったことを祖母は知らされることになった。
同じように、湯沢も…。
息子は、息子ではない…。

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想いを確かめて 3
2012-07-16-Mon  CATEGORY: 想いを確かめて
「孫なのに…っ」
悔しそうに吐き出される祖母の声に、千城が嘲笑うように口角を上げた。
「『孫』…ですか…。今更そう呼ばれるのですか?娘の骨すら、汚らわしいと受け入れられなかったのでしょう? この場でこちらから”お願い”をさせていただきます。英人を『孫』と呼ぶことはやめていただきたい。誇称されては当家が迷惑です。吹聴されるようなことがありましたら、然るべき手段を取らせていただきます。世間体を気にかけるのは私共も同じ。一族の名に、親族も見捨てる暮田家と縁があるなどの、恥の上塗りはしたくありませんので」
千城の発言は、同情の余地などないといった感じだ。
抑揚のない声が響いた。余計に冷静に物事を判断し結論を出す千城の能力を思う。

改めて教えられた英人の現在の生活、立場を逡巡し、祖母は瞠目して声を失った。
英人は『榛名』の人間になっているのだ。
もともと英人に絶縁しろと言ってきたのは、暮田の人間である。
それを今更、『榛名』という名を得たからと、復縁したいと言うほうがおかしな話だった。
暗に、掌を返したように、英人に近づいてくることが、意地汚く生きる”恥”だと含ませている。
“見栄”を守るのなら、そのような態度にでるな、と。
千城の言いたいことの意味が分からない祖母ではなかったようだ。
祖母は理解したように、小さく頷くにとどまった。
どのみち、『榛名』を敵に回して生きていける世界でもない。

千城は先手を打っていたのだ。
いくら付き合いがないとはいっても、いつか何かの時に知られる可能性は高い。
改めて祖母に移籍の話をしたのは、後々の面倒事を無くすためだった。
こちらから告げることで確かな”要望”に変わる。
英人が受けた同じやり方で、英人との縁を正式に切らせた。

「私からも…」
湯沢が唐突に口を開き、床に両手をついて頭を下げた。
こうして顔を合わせた現在、思うものがあるのだろう。
「…と、…さん…」
「英人のことを、…また千城くんのことを嫌がらず、黙って見守ってください。私は朝子を…、彼女を『愛している』と言葉だけで終わらせてしまった。だけど彼らは、筆舌しがたいくらいのもっと深いものを持っている。お互いを思う気持ちは、私達が想像する以上のものがあります。このまま、何の弊害もなく、幸せになってほしい。自分たちが身を引くことでその幸せが守られるのであれば、そうしてやりたいんです。ご理解ください」
英人の過去にも未来にも口を出さないようにと、湯沢にも希望された形だ。
『孫』と思うのは心の中だけに留めてほしい…と。
事実、湯沢も『父親』と名乗ることはない。
誰よりも英人の幸せを望んでいるからこそ。
認められない関係の苦しさは、駆け落ち同然だった父こそが、理解できているのだろうか。

厳しい言葉を投げつけた千城も、英人を優しい瞳で見つめる。
先程までの威圧感を発していた人物と同一とは思えない慈しみが漂っていた。
「英人の人生を全て受け入れる覚悟はできています。何もご心配されませんように」
軽く一礼したのは、最低限の挨拶なのだろう。
そしてこれをもって、この出会いも話題も終焉を迎えるのだと。

英人は一つも言葉を発せず、事のなりゆきを見ていた。
今更愛情もないのは当然のことなのかもしれない。
母の墓だけは設けてもらった。知らなかったが、時々、こうして訪れてくれていたことも、初めて見た。
それは『娘』を愛していた証拠でもあるのだろう。もっと早く知れたなら、抱く感情は違っていただろうか。
だが与えられた現実が厳しかったことは覆せるものではない。
『無縁仏』という存在が、冷たさを生む。
父の湯沢は、それでも『墓を用意してくれたのだ…』と噛みしめるものがあったようだが…。
自分の不甲斐なさを承知しているからこその感謝なのだろう。

「英人…」
祖母の囁きに視線を合わせる。
これこそが、今生の別れだと感じた。
もう出会うことはないと思ったのは以前にも感じたことだったけれど…。
これはまた改めたものである。
もう関わることはない。
たぶん千城が、榛名家がそれを許しはしないだろう。
それでいいと、英人も過去と同じ感情を抱いている。
本当の意味で関係を断ち切ることが、双方にとって最善の方法なのかもしれない。
金品の授受は不要な感情を生みだすのだろうから。
『榛名』と名乗った時の、祖母の反応のように。

「幸せに…」
祖母から発された言葉は、娘に言えなかったものなのだろうか。
本当はそう言って送り出してやりたかったのではないか。
何が阻んだのかは、今では分かることではない。

榛名というものがどれだけ大きな影響力を及ぼすのかは、世間を知る人間だからこそ感じるものがあるのだろう。
千城が提示した条件を飲めば、榛名からのバッシングはなくなり、暮田家も守られるものになる。
守りたいものは家系なのか、地元なのか…見栄なのか…。
世間体などは、本音を隠すものとなって辛酸を舐めたはずだ。それが今後も続く。
過ぎ去った日々がそれらを語っていた。

湯沢は頭を上げなかった。
必ず幸せにする、と誓ったことを実行できなかった後ろめたさと、英人を見守ってくれる態度への感謝なのか…。
英人は一言だけ返事をした。

「母さんのお墓、ありがとう…」

もしかしたらまたこうした偶然で出会うかもしれない。
だけどその可能性はものすごく低いことのような気がした。
母の墓は、英人と共に『榛名』に渡ったのだ。

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想いを確かめて 4
2012-07-17-Tue  CATEGORY: 想いを確かめて
過去の仕打ちを考慮しても、この場で母の墓について感謝の言葉を発することができたのは、英人に愛されている余裕と実感があったからだろう。
父を赦した時のような感情はもちろんありはしないが、たったそれだけが、唯一情を向けられることだった。
世間を知らなかった英人は、あの時祖父母の手助けがなかったら、母を供養してやることなどできずにいたはずだ。
自分がいかに世間知らずの未熟な考えと行動を取っていたのかは、千城に出会って気付かされることとなった。
蔑んでいた母から、愛情を向けられていた真実も…。
ずっと音信のなかった暮田家が何故最後の情けをかけてくれたのか…。
確かめたい思いもあるのかもしれないが、英人は自ら浮かびあがった疑問を排除した。
今は千城がいてくれる…。榛名家がある…。
聞いたところで、英人の過去も未来も変わるものではない。
どうでもいいことのように思えたのだ。

祖母を見送り、三人はまた墓前の前に立った。
湯沢が長居をするのはいつものことだ。
「次はいつ来られるかな…」とポツリと呟く。
英人は母親似である。どこが似ているのかと自分とは体格の違う父親を見上げながら、一つの提案を口にした。
「父さん…、骨を…少し持って行かない?」
「えっ?」
まさかの発言に目を見開いて英人を見返してくる。
捨てたと思われていた息子に、墓参りをさせてもらえるだけでも幸せだと感じていた。
調べられる能力を持っていながら、探そうともしなかった。亡くなった人に対しても、残された人に対しても、失礼極まりない態度だったはずだ。
それはもちろん、妻と交わした約束があったから…と言い訳をしたとしても…。

「俺、ここのお墓を今からどうこうしようとは考えていない。でも父さんにはきちんとしたお墓を持ってもらいたいと思っている。でもそれ、たぶん日本じゃないでしょ。その時、持っている分だけでも一緒に埋めてあげるから…」
「だが朝子は…」
「一番愛してくれたのは父さんだと思う。一人にされてボタンのかけ違いになっちゃったけれど、いつまでも一人は、母さんも淋しいんじゃないかな。もう一回愛してあげてよ。そばにいたら、母さんも心変わりするんじゃない?」
最後はちょっとした冗談も含まれていたけれど…。
改めて過ぎし日を振り返れば、母も淋しかったのだと思う。
ただ”意地”が邪魔をして、父に本音を晒せなかった…。
英人が同じ道を歩んだように…。同じ生活を通過してきてしまったから気付くこともある。
父親がかかさずこうして墓参りをしてくれることも、後悔より愛情の深さが残っているからだと感じることができる。
「英人…」
湯沢が顔を歪めて泣きそうな表情を見せた。
あえて暗い雰囲気にならないようにと気を使って英人が笑顔を浮かべた。
「でも再婚したいときは遠慮なくしちゃってよ。まだ若いんだからさ」
「それは…ないな…。生涯朝子を愛すると誓った言葉に嘘はない。これからもずっと愛し続けるよ」
「と…さん…」

こうまで惹かれあったふたりが、何故不幸な道を歩んでしまったのだろう。
今になってそんな疑問をぶつけたところで何も変わらないのだから、父親の言葉を信じて、母親を預けたいと再び思う。
父親の想いを確かめられたことは、英人にとっても嬉しいことだった。
その気持ちは千城も同じだと言うように、英人の頭を胸に引き寄せた。
二人を視界に入れては湯沢も微笑んだ。
「…そうだな…。もらっていこうか…」
一人でいることの淋しさを痛感させてしまっただろうか。

一緒の墓に入るか?と聞かなかったのは英人なりの配慮でもあった。
あくまでも『暮田家』が用意してくれたところだ。そこに父親が入るとは思えないし、プライドを持っていないとも考えられない。
そしてせっかく用意してもらったという気持ちも、”一応”英人の中にあった。
だから最初に、ここは残す、と伝えた。
意味は充分通じているはずだ。湯沢の答えに、英人も少しだけ胸のつかえが取れた気がした。

長年日本に来たことがなかった湯沢は、見て回りたいところが多いらしい。
フランスで出会った時のように、休暇に旅行することはあっても、これまでは故意的に日本は避けられた場所だった。
英人と千城に気を使うところもあるのだろう。
言い訳なのかどうなのかは分からないが、旅先を言われては送り出すしかない。
今は新聞記者とはいっても、もともとはカメラマンで写真は生活の一部になっている。
風景でも人物でも、撮りたいものはたくさんあるのだと悟った。

「帰りにはまた寄るから」
帰国する前に顔を見に来ると言われて納得する。
旅先での偶然の出会いは時に驚く出来事を生みだす。
今回は…、それぞれの本音が零れたことになるのだろうか…。
抱きしめられた千城からも、自分を愛してくれる愛情の深さを教えられた。
守るべきものは、どんなことがあっても…。


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終わりにしようかと思ったけれど…。爆弾が飛んでそうなので…。
それに千城と英人…というより、英人とパパになっているような…(汗)

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想いを確かめて 5
2012-07-17-Tue  CATEGORY: 想いを確かめて
K様 村新着に上がっていたとご指摘ありがとうございました。
私の技術(知識)では消し方が分かりませんので…、諦めてupします。
お待たせするのもなんですものね…。




去り際、湯沢は改めて千城に向かい合った。
「千城くん…。なんとお礼をしたら良いのかな…」
英人には湯沢が口にする”お礼”の意味が分からなかった。
千城が暮田家と正式に切り離してしまったことだろうか。
だがそれは考えれば、最終的にどんな権力でも圧力でもかけて、この展開に持ち込んだだろうと読むことができる。
だからこそ、堂々と『榛名』の名前を出した。
「君がしてくれたことは、私達にとって”和解”だった…」
「和解?!」
ますます理解不能に陥る英人に一度は視線を投げたけれど、たったそれだけで湯沢の言いたいことを千城は把握してしまったらしい。
ふわっと英人にしか見せないような、比較的穏やかな笑みを浮かべて対応する。
「申しあげたでしょう。英人を守るためなら俺は何でもしますよ」
「英人の件を片付けるのと同時に俺のことまで解決してくれるとは、ね」
「それは単なる偶然ですが」
穏やかな笑みはニヒルなものに変わる。”偶然”が故意だったのだとは、表情だけで判断できた。
最後まで全てを予測した咄嗟の企てだったとまでは、英人には想像もつかなかった。

「な、なに?」
一人、のけものにされていることにようやく気付く。
確かに物事の理解力は千城なんかに敵うものなどないのは百も承知しているけれど…。
千城が、英人の疑問ばかりで大きく見開いた眦から頬を撫でた。
「英人が暮田家との接触を持たせないように、同じように湯沢さんとの間も断ち切ったんだ」
会話の中に、そんなことは一言もなかった。黙って聞いていた英人は一言も漏らさないように聞いて、頭で整理していたはずだった。
交互に千城と湯沢に視線を送ると、湯沢は「やはり英人には千城くんが必要だな」とどこか呆れたような笑みを見せた。
「朝子の墓参りを英人と一緒にしていたことで、あの人はこちら側の繋がりを自分なりに想像したんだ。自分たちでは入り込めないものを。…それは英人が俺を赦したことを証明したし、同時に『榛名』との交流があることを表している。俺に関わることまで、”危険”と判断したんだろう。実際、英人は葬式が終わった後も、実家からは何一つ連絡を入れてもらえなかった、差別的な証拠だ。俺はどれだけ罵られるかと思っていたが、英人の手前もあったんだろうな。更に千城くんは財産の件でもバッサリ切って発言すらさせなかった。二人(父と母)とも”無縁”と知らしめて、朝子とのことまで認めざるを得ない状況に追い込んだんだ。事実上の”和解”だよ」
「どれだけ嫌った親でも、情が生まれた今、何かにつけて言われることは気分のいいものではない。それが分からないのか、あの人は自分たちの行動を棚に上げて屈辱的な発言を繰り返した。問題になりそうな種は摘みとって枯らすのが一番面倒がなくて良いんだ」
たたみかけられるように告げられる双方の発言に、英人の脳内はパンク寸前だった。
何より千城がこれっぽっちも暮田家のことを良く思っていないのは、冷徹な声音で感じ取ることができる。
『娘を引き取ろうともしなかった…』…。
揶揄した台詞は、少なくとも英人は両親に情愛があることを知らしめていた。
別世界に住む人間だと、徹底的に排除した結果だ。
だから、湯沢にも近付くなと…。

「ちしろ…」
英人だけではない。かろうじて引っかかっている程度の存在の湯沢かもしれない。
それでも湯沢まで叱責を浴びることなくこの状態に持ち込んだのは、英人が真実を知り、父親を頼る感情があると理解しているからこそ…。
どこまでこの人は先を読むのだろう…。
自分もせめて行間を読めるくらいの読解力を身につけなければ…と思うが…。
十中八九、無理な話…。
でも聞けば教えてくれるのだから、これでいいや…という甘えた気分に包まれる。
「ありがと…」
涙がこぼれそうになる。逞しい腕が、『絶対に傷つかないように守ってやる』と力強く背を抱いてくれた。
いつだって、いつまでだって変わらないから、英人は不安を払拭して甘えられる。
深く深く愛してくれる、この心と体に…。

束の間の抱擁の後、腕の力が抜けて振り返った時、父はもう何メートルも離れた場所で背中だけを見せていた。
人前でありながらこんなふうに振舞えてしまえるのも、安心感があるせいだろうか。
「父さんっ!」
英人の声にも振り返ることなく、湯沢の歩みは止まらない。代わりに片手を軽く上げて「また…」と再会を約束してきた。
幼いころ、とても大きいと感じていた背中は、今はとても小さい。


帰り、どこかで食事でも摂っていこうか…という千城の提案に、英人ははっきりと首を振っていた。
「いらない…。…それより、家に帰ろう…」
英人の真意は汲み取られているのだろう。
何かを食べる…という行為より、肌を合わせる行為のほうを英人は望んでしまっていた。
今がどれほど明るい時間でも、千城と一緒になってからは、時間の感覚が鈍っているような気がする。
…ただ、甘えたかった…。
この腕は自分のものだけのものなのだと、再び確認しておきたい欲望が湧きあがってくる。
今の自分に残っているものが、千城だけだと思うからだろうか。
もともと、千城しかいなかったけれど…。
乗り込んだ千城の運転するスポーツカーはグングンとスピードを上げていく。
それがなんだか、千城も急いてくれているようで、英人は一人、心の中で安堵の息をついていた。

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