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BLの丘
契りをかわして 11
2012-03-16-Fri  CATEGORY: 契り
あれから幾度か、信楽に抱かれることはあった。いつものように、相手に縋る態度を見せ、でまかしの言葉が発される。
満足などできない現実を知る…。
甲賀のように、狂うようなときは訪れなかった。
どこまで信じられているかは知らないが、今の生活を続ける上で必要な行為だった。
頭を過っていく逞しい体がある。
仕事の違い、若さの違いもあるのだろう。一度抱き締めた甲賀とは、家の中で暮らす信楽とは明らかに違っていると思われた。
別に信楽がすたってきたわけではない…。
だけど感じてしまう、直感的なもの…。
常に肉体労働をしいたげられていた甲賀と、鉛筆やパソコンを相手にするだけの信楽は違っている。
伊吹自身、何を求めるのだろうか…。
抱いて、自分を抱き締めてくれた体はあまりにも強靭で…。
若さ…。それを言ったらあまりにも失礼だろう。

『伊吹…』
呼ばれたのはある日の夜。
響いてきた電話の耳元の声だけで断る術を見つけられなかった。
電話で誘われて…
あの夜に見えた全てを、もう一度感じたいと…、探したいと溺れていく。
出会えば…。

プラスとマイナスの磁石のようだった。

二人は出会い、何の確認もなく身を重ねた。
うつ伏せる体。覆いかぶさってくる肉体。埋められる肉…。
熱くて何もかもを満たしてくれる空間…。その時間に嵌り堕ちていく。
一時的なものと分かり切っているのに諦めきれない全てを覆ってしまうもの。

「甲賀…」
うめくように吐き出される声を、いつだって飲み込むように塞いだくちづけが落ちてくる。
「伊吹…」
鼓膜の奥まで響いてくる声が気持ちいい…。響いて、響いて、伊吹を包みこんだ。
「甲賀…」
幾度でも呼びたくなる名前…。
そして残されていく声。
だけど自分のものになりはしないと分かるからこそ、今を…、この時を大事にしたかった。

『好き』…。
その言葉は二度と言うことができない。
そもそも、この関係自体が間違っている。

帰って、待っていてくれる人。
伊吹から縋って、「離れていかないで」と強請った人。
今更、何をどうしろというのだろう。
何もかもを用意されたあの時のように、出迎えられたなら伊吹の心は変わったのだろうか。

今は、信楽がいる…。

半年。
二人の関係も、三人の関係も変えない時が過ぎた。
信楽はどこまで信じてくれているのか、”営業”の一環だと伊吹の行方を見守ってくれている。
たまに、泊まりになりそうな朝も、伊吹は黙って帰宅した。
見守ってくれているのは甲賀も同じかもしれない。
何かを気付きながら、だけど何も言わずに、伊吹が口にするまで待っていてくれるような…。

「伊吹…」
ある朝、甲賀の声が聞こえた。
シャワーを浴びて帰ろうかと思った矢先だ。
何故この関係がやめられないのか…。どうして信楽に全てを委ねられないのか…。
幾度も後悔しながら、だけど体に植え付けられた”快感”が行く先を拒んでくれた。
甲賀の逞しさを忘れられない…。

『好き』…。

なんなのだろう。心の中に巣食った思いを、伊吹自身、どう処理していいのか分からずにいる。
もう一度甲賀に出会いたいと…、心より体が望んでしまうのだった。

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全然書けなかった…短くてすみません。
お詫びに広いベッドに変えてみました(←どうでもいい? あ、そう…。)
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契りをかわして 12
2012-03-17-Sat  CATEGORY: 契り
出会うたびに惹かれていく心がある。甲賀が同じ気持でいるわけではないだろう。伊吹だけが惹かれているのではないか…。
甲賀にとっては単に、抱ける体でしかないのだろう…。
割り切って始めた関係なのに、逢瀬の数が増えれば増えるほど、はまっていくのは伊吹のほうだと思われる。
それでも離れられない、…満ち足りた時間は伊吹の精神の中で大きくなっていくばかりだ。
過去、味わったことのない満足感…。
この半年、逞しい体に溺れてしまった。
信楽が気付いていないわけはない。だけど何も言われないのをいいことに、この状況から抜け出せなかった。
甲賀に呼ばれれば浮かれた心で待ち合わせ場所に向かってしまう。
信楽についた嘘は、一体幾つになるのだろうか…。
どちらに対しても別れを切り出せないのは、伊吹の弱い部分でしかない。
甲賀がどんな思いでいるのか、それも確かめられない。
寄り添っていく、重い存在になりたくなくて、今までと変わらない立場を作ってしまう。
こうやって上辺だけの態度を見せることには、慣れ過ぎている…。

起き上がった伊吹を引き止める声は、今まで聞かれることはなかった。
本当に眠っていたのか、伊吹の立場を気遣って起きることがなかったのかは疑問だ。
「伊吹…」
声が聞こえて伊吹は動きを止める。
気のせいかと確認して見下ろした先、はっきりと瞼を上げた甲賀が伊吹を見つめていた。
彼はまだ横になったままでいるが…。
眼差しにドキリとしてしまう。その下に見える肉体美があるからこそ…。
逃げ出すようにその場を離れていた過去は、もう一度触れられてしまった時に自分がどんな態度に出るか、想像できなかったから…。
「あ…、お、起こしちゃった?」
咄嗟に営業スマイルが漏れる。
いつまでも軽い関係で…。それを願ってしまう自分は、甲賀に嫌われたくないだけだ。
「こんな早く、どこに帰ってるの?」
どこまで知るのだろうか。どんなことを想像しているのだろうか。
十中八九、彼が脳裏に思い描いていることは、外れていないだろう。
信楽の存在を知られたら、…はっきりと伝えてしまったら、もう、”続き”はないだろうか…。
「あ、今日も用事が…。家に帰って準備したいし…」
「『用事、用事』って、伊吹、どんだけ忙しい人間だよ?!」
「甲賀…」
甲賀の、この苛立ちは、何を表しているのだろう。
期待してしまう気持ちに、甘えたくなる自分自身が冷静になれと警鐘を鳴らす。
重荷や負担になる存在にはなりたくない。ずっと続けてきた、軽い関係。
一時的にでも伊吹を包んでくれる逞しい肉体を、まだ感じていたいと思ってしまう。
引きとめてほしいと願いながら、反面で信楽になんと伝えようかと葛藤が起こる。
信楽に対して、してもらったことがあまりにも大きくて、裏切れないのだ。
「伊吹」
伸びてきた腕が、伊吹をつかまえた。
起きた体が再びシーツの海に沈められる。
触れたら、離れられない…。誰よりも伊吹自身が知る。
くちづけられて、肌に指先が這わされて…。溶けていくような気持ちの良いくちづけに、逆らえる術などありはしない。
抑え込まれた体の下で、体が感じるままに”素”の面を引き出されてしまう。
甲賀の舌先が伊吹の上顎を撫で上げて、幾度も味わった快感が再び伊吹を包んだ。
「こぅ…、あっ…」
抓まれた乳首が、まだ昨夜の余韻を残している。

…ごめん…。
胸の中で呟かれた言葉は、信楽に対してなのか甲賀に向けてなのか、伊吹自身も分からなかった。

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契りをかわして 13
2012-03-18-Sun  CATEGORY: 契り
R18 性描写があります。閲覧にはご注意ください。


逞しい胸。力強い腕。包んでくれる全てが、伊吹を虜にしてしまう。
帰らなければ…。そう思うのに離してくれない体に酔いしれて…。溺れていく。
「甲賀…」
「伊吹…」
囁けば返ってくる、体をしぴらせる音が鼓膜に響く。
「甲賀っ」
どれほど強い力で抱きしめても、何の違和感もなく伊吹を包んでくれた。抱き締めて、普段の人付き合いの苦労を「もういい…」と言うように宥められた。
人間関係に疲れていた時に、優しく包んでくれる力は、あまりにも強すぎて…。だからこそ伊吹は離れられない。
信楽は見守ってくれているけれど…。今では感じられなくなってしまった肉体。
どれほど甲賀は強くて、逞しくて、期待を持たせるものなのか…。

誘われて、抱きしめられて、溺れて…。
だけどこの先に何があるのだろう…。
自分はどこに帰るべきなのか。
待つ信楽を知る。気まぐれに呼びよせる甲賀も知る。
危険な火遊び…。ただ、それだけなのかもしれないと、幾度思ったことか…。

濡れる下肢を見つめて…、届けられる熱を感じて…。
初めて感じた”気持ちいいセックス”を味わって、伊吹は自分がどこに向かっていいのかが分からなくなる。
こんなことがいい結果を生まないなど、嫌でも知れたことだった。

朝帰り…。もうその言葉も言えない昼帰りになった。
二度目…というのか、数度目、甲賀に求められて伊吹は逆らえなかった。
まだ濡れたままの後孔はすんなりと侵入を許し、快感の渦へと落とされた。
絶え間なく襲ってくる刺激に翻弄され、だるかった体はそれ以上の享楽を求めて蠢く。
「甲賀…っ」
包んでくれる体が愛おしい。包まれている体が悲しい。
どちらも想いを告げることのないまま、余韻だけを残して、今日の逢瀬も幕を閉じた。

聞く、聞けない…。脅えているのはどちらなのだろうか…。

帰りついた部屋には、黙っている信楽がいた。
リビングのソファに座り、濃いコーヒーを飲みながら、伊吹を待っていたのか、仕事の合間だったのか、濁らせた雰囲気がある。
信楽のことは好きだった。幾度も抱かせるほど…。
だけど今は…。力の強さの違いを感じてしまっている。
他の男に走った時、普通の人間なら怒り、許しはしてくれないだろう。
それなのに、黙っていてくれている信楽。
…それほどまで、伊吹を手放したくない証拠なのだろうか…。

「伊吹」
リビングで姿を確認してから逃げ出そうという伊吹の背後にかけられる言葉は冷たい。
もう本当に、嫌われたのかと、呆れられたのかと思った。
「飲みに誘われて…、遅くなってごめん…。眠いから…」
いつもであれば言い訳の言葉を信じて見逃してくれたはずの信楽の態度が、この日は違った。
「伊吹、全部脱げ。全部脱いでここで四つん這いになれ」
信じられない言葉が漏れた。
こんなふうに伊吹に命令するような人ではなかったのに…。しかも、日が差し込んでいる昼日中…。
求められたことはあまりにも酷い…。
信用のなさを完全に与えた。
「信楽さん…」
抵抗の意味も含めて発した言葉に、信楽の言葉は更に冷たく響く。
「ただ飲みに出ているだけだと?!証明しろっ。その体が全てを物語るだろうっ?!」
信楽の中にあったうっぷんが弾けた。
夜明け前にこっそり帰ってくる控え目は許されても、日の高くなった時間は、許されなかったらしい…。
堂々と繰り返された、『朝帰り』…。

いやだ…。そんなことはしたくない…。
真っ先に訪れた感情に、すぐに首が横に振られる。
伊吹の態度をみて、ますます不機嫌になるのは、信じた人に対しての裏切り、と言っていいのだろうか…。
「伊吹っ」
「…や、だ…」
「何も見せられないと?!」
甲賀に抱かれた直後、日のあたる場所で裸体を晒すなど…。
ある程度のプレイは引き受けてきたかもしれないが、今だけは…、これだけは頷けなかった。
足を広げたら確実に分かる後孔の柔らかさ。いくらでも反応してしまいそうな、まだ余韻を残した乳首や性器。
信楽に触れられるのとは違う魂が眠っている。
それを目の前にした時、信楽はどんな態度に出るのか…。
「伊吹」
近付いてきた信楽が冷たい表情のまま、伊吹の衣類を剥がしにかかった。
こんな信楽は知らなくて、伊吹は恐怖も混じって大人しくなってしまう。
これまで与えた精神的な苦痛も分かるから…。なすがままに流された方がいいのだろうか。
引っかかったワイシャツの袖は伊吹の腕を拘束する。
引き抜かれたネクタイが、伊吹の片足首と手首を結んだ。
簡単に組敷かれるほど、伊吹の体は軽く、華奢だった。

流されて何もかもを受け入れるべきだと思っても…。それで許しを得ようと思っても…。
「信楽さんっ」
さすがにこの態勢はいただけない。
焦る伊吹の声は届いているはずなのに、完全に無視して、…見えたのは実物として見たこともない、男性器を模したバイブレーターだった。
…いつの間に…?!
最大の疑問が脳裏を滑っていく。
だけどその思考を止めてしまうように、冷淡な信楽の指が敏感な部分を撫でた。
まだ萎えた部分。ひくついた後孔。
「し…っ」
「伊吹。悪い子だね。こんなに柔らかくして。どこの誰にどうやって可愛がってもらったの?」
完全にバレた瞬間。
冷汗と共に萎えたはずなのに濡れてしまった先端がある。
「伊吹、こういうの、好きなの?」
反論する隙すら与えられなかった。器具を使われるなんて…。滅多にあることではない。
「やめ…っ」
「美味しそうに飲み込んでいく…」
「ぁあっっっ」
差し込まれたバイブレーターを肉筒が包んだ。
激しく揺れ動く塊に、信楽とも甲賀とも違う動きを感じてしまう。
じっくりと見られている、それも羞恥と悲しさを運んでくる。

動かせない腕。押し付けられて吐き出せない後孔。
そして極めつけは…、性器の根元を締め付けてくる紐があった。普段信楽が使っているデジタルカメラのストラップだった。
「カシャ」っと一つの音がする。
どこを撮影されたのかすぐにでも知れた。
「やだぁぁぁぁっっ」
「伊吹。僕はいくらだってこの痴態を公表できる場所にいるからね」
こんな羞恥は…っ。
それ以上は言わない。
それ以上言われなくても、何を望まれているのか悟った。

無言の圧力だ。甲賀と別れて来い…と。
今なら、まだ許すと…。

「しぃ…ら…」

生活に必要な全てを整えてくれた人…。
「好き」と最初に言ったのは…。
逃れられない運命を感じて、甘えている自分も感じて…。
「信楽…」
日が差し込むリビングの中で、羞恥の中、呼んだ声に満足を表してくれる姿がある。
ゆっくりと抜かれるバイブレータのあと、潜ってきた信楽の耐えた分身。
抱きしめられて、抱きしめて…、だけど肉体の大きな違いを伊吹はまざまざと感じてしまっただけだった。

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日頃の短さにお詫びを申し上げて。長くしてみました。
続きは相変わらずアヤシイ…。
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契りをかわして 14
2012-03-19-Mon  CATEGORY: 契り
幾度も精子を吐き出した性器からは、ほんの僅かな白濁しかこぼれなかった。
それが何を意味することか、見つめた信楽は理解できるだろう。
もう何も言われなかったけれど…。
動かない体…。信楽は性交の後処理もしてくれて、伊吹を抱きかかえ、ベッドまで運んでくれた。
伊吹のために…。信楽の感情が、想いが、痛いほど見えてくる。
同時に、この人を裏切った自分が悪い、と、これで許してくれた信楽に感謝すべきだとも思った。
ただ抱くだけの甲賀とは違うのだと…。

雨の日、いつものように営業活動に出掛ける。
居てくれないことを願った。滅多に事務所に顔を出す人ではないけれど…。
同じように顔を出してくれているかもしれない人に用事があった伊吹だ。
「こんにちは~」
明るい笑顔を振りまいて…。だけど真っ先に視界に飛び込んできたのは、普段は空いた奥の席に座る甲賀の姿。
思わず顔が引きつりそうになるのを、手前にいた年上の社員に視線を反らすことで誤魔化した。
「多賀さん、元気だね~。こんな薄暗い日に顔を見ると、明るい気分になれるよ」
「そうですか~?そう言ってもらえるとお邪魔して良かったです。これ、今月の冊子です。あ、そうそう、新しい商品が出たんですよ~」
「俺ももう歳だからな~」
「でしょ、でしょっ」
「『でしょ』はないだろ~」
「あ、そうですね。大丈夫です。まだバリバリ現役で~。でも保険は考えてくださいよ~」
会話を聞いていた周りからも笑い声が漏れる。
仕事の邪魔になっているはずなのに、伊吹が登場したことで、ひと息いれる休憩時間のようだ。
こんな雰囲気がこの会社の明るくて来やすいところでもあった。

順に席を回り、配布物を置いて、最後が甲賀だった。
「久し振りじゃん」
そうしょっちゅう事務所に顔を出すような二人ではなく、誰に聞かれても問題のない一言だが、甲賀が発した言葉に、伊吹には重い意味が込められていた。
あの日以降、伊吹は甲賀の誘いに応じなかった。
「ご無沙汰してま~す。はい、こちらどうぞ」
当たり障りのない台詞が吐き出され、すぐにでもその場を離れようと踵を返す伊吹の手首を、甲賀の大きな手が掴んだ。
「待てよ」
驚いたのは伊吹のほうだ。こんな場所で堂々と関係をバラす気はこれっぽっちもない。
それこそ、体を武器にした営業マンだと、今まで思いもしなかった連中にまで過らせる可能性がある。
「はい、何でしょう。新しい保険のご案内ならいくらでもしちゃいますよ~」
無駄に明るく振舞う伊吹の態度に甲賀も気付くものがあるのか…。
「じゃあしてもらおうか。後でうちに来てよ」
それがただの口実だとは分かる。他の社員の目の前で、営業を語ってプライベートな時間に会う理由だった。
「え…、うち…?」
「早速今日とかどうよ?」
「多賀さん、売るね~」
こんな声のかけられかたをして断れるわけがなかった。誰だって契約の一つを大事にする。
売り上げが見込めると思えば食いついていくのが営業というもので…。
職場で話すより自宅でゆっくりと…と思う社員がいるのもおかしな話ではない。
「え、と…、石部さん…」
「住所、知ってんだろ?終わったら連絡するから」
あまりにも堂々と発される全ての言葉に、頷く以外の行動が取れるだろうか。
表情が引き攣りかける伊吹を感じるのか、甲賀の手が離れた。
ホテルで会うことは何度もあっても、自宅に呼ばれたことはない。本気だろうか。
彼の生活が知れる場所…。

嘘でもいい。
久し振りに出会い、その手に触れられて、伊吹の欲望が体を巡ってしまった。
事務所を出て、雨の中に下りたって、降ってくる雨を見上げた。
伊吹の心みたいだ。
信楽に何度抱かれても、甲賀がくれたような”気持ち良さ”は得られなかった。
素を曝け出すような、狂ったセックスはあれから一度もない。
伊吹がしがみついて、守ってくれるような力強さが感じられない。それは余計に伊吹の気持ちを冷めさせた。
演じるセックスではなくて、体の相性のいいセックスがしたい…。
一度覚えた味は、簡単に消えてはくれなかった。

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契りをかわして 15
2012-03-21-Wed  CATEGORY: 契り
ほんのちょっとの甘えだった。
営業活動に出ていて、帰宅が遅くなる日などたくさんある。
信楽はいつも待っていてくれたし、ある程度の時間までなら許してくれる。
「遅くなりそうだから先に休んでいて」と、先手を打っておけば疑われることもないだろうと。
夜中の内に帰ればいい…。夜中の帰宅でも、帰ってきたのだと信楽が分かれば何も言われないはずだ。
これまでだって…、今までも同じことは何回もあった。信楽がどんな態度に出るかは、すでに知ることでもある。

「会社が終わった後に話を聞きたいっていうお客さんがいてさ~」と今夜の予定を電話口で告げれば、案の定信楽は「契約、とれるといいね」と激励の言葉で見送ってくれた。
その瞬間にも、伊吹は”甲賀に抱いてもらえる”という期待で膨らんだ。
ここのところ、ずっと避け続けた甲賀が何と言ってくるのか、その心配ももちろんありはしたけれど。
甲賀にはセフレという存在が、あと何人存在するのだろうか。
その一番になれなくても、伊吹が知る中で最高の肉体と快感をくれる人。
『夜中のうちに帰れば…』
固く胸に刻み込む。

夕方の五時前に甲賀から電話が入った。
こんなに早く?と一瞬驚いてしまった伊吹だ。
どこかで待ち合わせ、ホテルに入り込むのでもいい、と考えていた伊吹だったが、最初言われたように「自宅に来い」と告げられる。
早くに快感を味わえば、早くに帰れるという思いも過る。
初めて行く場所は、会社からあまり離れていない単身者用のマンションで、他の顧客と話をするために、以前にも訪れたことがある所だった。
すでに帰宅していた甲賀は、昼間の作業着とは違い、また外で逢っていた時に着ている服よりもずっと寛いだ様相でいる。
風呂に入った後だと分かる、濡れた髪もしていた。
2DKの部屋の中には、仕事道具でもある工具などが玄関先に置かれていた。
どんな仕事をしているのか、その詳しい話など聞いたことがなかったが、何を見ても重量がありそうで、これらが甲賀の逞しい筋肉を育てているのか…と微笑みたくなったくらいだった。
「こんばんは~」
伊吹からはいつもの明るい声が発される。
軽い関係を思わせる雰囲気を、どこまでも継続していきたい思いがあるからだろうか。

「お待ちしておりました。…って、伊吹、家帰ってないの?」
「こんな早く…なんて思っていなかったもん。会社から直行」
「ふ~ん。それって何?早く逢いたかったってこと?」
伊吹の格好を見て、伊吹の返事を聞いて、あながち間違っていない問いかけに言葉が詰まる。
もう少しうまく立ち回らなければ…と思うのに、堂々と発される全ては、伊吹の調子を崩してくれるものだった。
「営業ですから…」
「まさか本気で保険の話をしに来たわけじゃないだろ?」
家の中に招き入れながら、その間も会話が続く。
求めているものはやはり体なのか、と安心したような、悲しくなるような気持ちが湧いた。
入ってすぐに見えるキッチンと、並んでいる扉がバスルームだったりトイレだったりするのだろう。
その奥、十畳ほどの部屋に小さなテーブルや家電製品が揃っている。
ベッドがない、とはもう一部屋に収められているのだろうと推測した。
招き入れられた場所に疑問も浮かんでいたが…。
「あのさ。先にシャワー使わせてくれない?」
「いきなり、かよ。まぁいいけど。寛いでいってください。着替え、貸そうか?」
「あー…、うん。何か簡単に着られるものがあれば…」
下着はコンビニで購入してきたが、それ以外のものがあるわけでもない。
甲賀の申し出を有り難く思い、部屋の隅にカバンを置いて立つ伊吹は、隣の部屋から衣類を取りだそうと動く甲賀の背中を見送った。
一時的に体が隠れるものがあればいい…。
甲賀のサイズの、大きなTシャツだけを借り、バスルームへと案内される。
自宅に呼んで、気兼ねなく接してくれる態度もいいな…と伊吹は安堵感を覚えた。
気を使わない関係…。
甲賀との関係は、こんなにも慣れ親しんだ気持ちを持てるものだっただろうか。
あまりにも余裕をもっている自分が、返って怖かったくらいだ。
信楽に対して、何かを返さなければならないと思う焦燥が、ここにはない。


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