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ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
見下ろせる場所 1
2011-06-28-Tue  CATEGORY: 見下ろせる場所
越谷羽生(こしがや ういせ)と所沢春日(ところざわ かすが)が住む場所から電車で30分ほど走ったところに建つ駅前のシティホテルは、草加皆野(そうか みなの)が勤める場所であった。
皆野はまだ32歳だが、改装した時があったとしてもこのホテルには10年の勤務歴がある。
慣れたように羽生がフロントへと近付いていき、その後ろをちょこちょこと春日が追いかけてくる。
久し振りの再会に、フロントで出迎えた皆野は、いつものように最上階にあるラウンジに二人を促した。勤務時間はすでに終わっている。
これまでは羽生と二人で会うことばかりだったが、羽生に特定の相手ができたことで(しかも同居しているため)3人で会うことが増えた。
羽生が住む場所も勤務する場所も繁華街という立地から駅に近く、飲むにはちょうどいいとこのホテルには良く訪れてくれている。
とはいえ、泊まっていくことは、極々稀であるが…。

30階建ての最上階にあるため、市内の夜景が見下ろせる。
いつもであればカウンター席に座るのだが、春日が加わってからはゆったりとしたソファ席に落ち着いた。
日常を報告するような他愛のない話をしている時に、静かな話声だけが繰り広げられるラウンジ内に、突然金切り声のようなものがあがった。
「離してっ!!こんなの、聞いてないっ!!」
決して混んでいるわけではない客席に、その声はあまりにも良く響き渡る。
客の誰もが一斉に声の方向を振り仰ぐと、春日と同じくらいか、それより若いと思われる細身の男が壮年の男に腕を引かれて立ち上がらされようとしているところだった。
腕を引いている男は30代の後半だろう。きちんと着こなされたスーツといい、左右に分けられた髪形、加えて整った顔の造りが引き立って、位の高い紳士を思わせる。
一方若い男はカジュアルな服装ではあるが品質が良いことを伺わせる素材を身に付けていた。
「こんなところで騒いでどうする?他の客に迷惑をかけたいのか?」
誰からも注目を集めていることを感じ取っている腕を引いた男が静かに宥めるが、状況などお構いなしの若い男に激しい勢いで拒絶された。
「この人が俺を連れ去ろうとしているんですっ!助けてっ!!」
「慎弥(シンヤ)っ!!!」
一見、茶番劇にも見えなくないが、ここで騒がれては困ることを皆野は重々承知している。
ラウンジに勤める人間もこの状況を、どう収拾をつけようかと思わず顔を見合わせた。

「皆野…」
「マズイな…」
小さい呟きが羽生と皆野の間で交わされる。
二人の立場がどんなものであるのかなど知りはしないが、売春行為があることや、それに伴ったトラブルが発生することなど、噂だけでなく過去にあった事件などからホテルの人間は詳しすぎるくらい知り過ぎていた。
若い男が言うように、部屋に連れられることが聞かされていない話であればこの場で救ってやるべきだろう。
すでに私服に着替えてしまった皆野だが、スッと立ち上がると、揉め事を起こしている二人の傍に寄った。
「お話中のところを申し訳ございません。私、このホテルに勤めるものですが…」
突然湧いた皆野の存在に言い争う二人の声が途切れる。
次の瞬間「わぁぁぁぁっっっ」と泣き声を上げた男が、引かれる腕を振り払って皆野の腕の中に飛び込んできた。
その態度は守ってくれと訴えてくる、あまりにも華奢な体だった。
「えっ?!あの…、ちょっと…」
口論を始めた二人に近付いた人間など他にいなかったのだから、縋りつかれる理由が分からなくもないが、突然のことに皆野も瞠目する。
まさかこんな風に無防備に飛びつかれるとは思ってもいなかった。
焦げ茶色の髪に、やはり黒というよりは茶色っぽくある瞳が切なげに皆野を見上げてくる。
「助けてっ」
「慎弥っ!!」
彼の名を知る男が不服そうに『慎弥』と呼んだ男を取り戻そうとした。
咄嗟の判断で皆野は胸に飛び込んできた男の背に腕を回し、くるりと体を反転させて二人の間に入り込む。
「すみませんが、場所を変えてお話をしませんか?」
後を追ってきた羽生が静かな声で焦る男に語りかけた。


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粗大ゴミの休暇が平日休みに変わってしまいました…。思いっきり調子狂ってます。・゚・(ノД`)・゚・。
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見下ろせる場所 2
2011-06-29-Wed  CATEGORY: 見下ろせる場所
皆野と羽生の冷静な語りかけと、周りの状況を理解した男は、皆野たちに従うのが賢明だと判断したらしい。
そして誤解を与えているという態度を崩さないまま、自分がとったという部屋があるからそこへ…と誘われる。
男の雰囲気を見れば皆野たちの脳裏を過った内容での揉め事ではないようだ。
プライベートな話に自分たちが首を突っ込むのはどうかとも思われるが、青年は皆野に張り付いたまま離れようとしない。
とりあえず、ラウンジは出るべきだと、その場を後にした。

ルームナンバーを聞いて皆野は一瞬驚いた。
最上階から一つ下の階にある部屋はスィートルームである。
そういえば…、と昼間の出来事を振り返った。フロントで相手をした客の中にこの男がいた…と思い出す。
普段から客を見慣れているだけに記憶力はかなりいいほうだ。
「失礼いたしました。確か…、岩槻(いわつき)様でいらっしゃいましたよね?」
ラウンジ内でとってしまった対応について咄嗟に謝罪の言葉が吐き出される。
皆野が急に名を呼んだことを酷く驚かれる。皆野から離れない青年も同様だ。
スィートルームの客は3連泊の予定だったはず。しかも明日、レセプションホールを借りているのもその人間だった。
客の名前も自然と頭に残る。
直後、男の口角がフッと上がった。
「とても良い方に巡り合えたようだ」
同時に青年からも力が抜ける。
「なんでこうなっちゃうの~…」
ラウンジ内で繰り広げたことが、本当にただの茶番だったのだとみとめている態度だった。

羽生と春日とのプライベートな時間を、邪魔をしてしまったお詫びだと、3人揃って部屋に招待される。
騒ぎのほとぼりが冷めるまで部屋にいればいいということなのか。
「いえ、そのようなことは…」
一緒に出てきた羽生と春日が顔を見合わせ、「俺たちは帰るよ」とその場で退散しようとしていた。
「それでは私の面子がつぶれますね。せめて私の汚名を晴らす話くらい聞いていってください」
岩槻は何故こうなってしまったかを説明したいからと口実をつけて退路を塞ぐ。
このままでは若い男に手を出して断られた印象だけが残るとでも言いたいのか…。
こうなっては状況を理解できる羽生だ。肩を竦めて着いてくることとなった。

皆野と羽生は部屋の造りを理解していたが、春日は初めて訪れたらしいスィートルームの広さに絶句していた。
リビングルームを中央に、両脇にバスルームを備えたダブルベッドの寝室とツインルームがある。
大きな皮張りのソファに3人が並んで座り、正面に岩槻と慎弥が腰を下ろした。
岩槻がご丁寧にも名刺を出してきた。
皆野はそれとなく知ってはいたが、改めて本人から詳しい内容を聞くことになるとは思ってもいなかった。

岩槻征司(いわつき せいじ)。商社に勤める重役だ。祖父が起こした企業の中で立場を確立している。
そして慎弥とは兄弟だという。似ても似つかないのは全く血の繋がりがないからだそうだ。
あえて言う必要もないだろうということをわざわざ口にしてくるのは、端から見て『兄弟』に見えないのを本人たちが充分に承知しているからなのかもしれない。
あとは誤解を解くため…か。
「諸事情がありまして、父が慎弥を引きとったのです。もう物事の判断ができる年でしたから隠すこともしませんでしたが、私も父も甘やかしすぎたせいか、奔放なところがありまして…」
困った目で隣の慎弥を見つめながらさり気なく手を伸ばして頭を撫でるところなど、大事にしてきた弟を見守る姿に映った。
それが何故あんな騒動になってしまったのか…。
「明日のレセプションでおもてなしをする一役をかってほしいと願い出たら機嫌を悪くして…。部屋に連れて帰ろうとしたらあの有り様です」
「どっかのエロジジイの相手をしろって言うからじゃないかっ」
「話相手としての意味だということくらい理解しなさい。しかもその呼び方は何だ」
「顔を見るだけでも虫唾が走るのに、冗談じゃないってーのっ」
兄弟喧嘩のとばっちりをくらったっていうわけか…と、皆野は内心で溜め息をついた。

勝気な印象を持たせる慎弥はきっと、企業の中での社員としての立場はないのだろう。
働いていてよい年だが、岩槻の態度で他企業に勤めさせているとはとても思えない。
はぁ…と岩槻から溜め息がこぼれる。確かにこれではラウンジで言い争いになるのも分かる気がした。
「今までも同じようなことはしてきただろう。何が違うというんだ」
「前は挨拶をするだけだったじゃん。特定の相手を気にかけてもてなせなんてこと一度もなかったっ!!」
「今回は色々な事情が絡んでいるんだ。私が表立って動けば不信感を抱くものも現れる。その辺りの事情は慎弥も分かるだろう?」
企業同士のやりとりには色々な駆け引きがあるのは当然の話で…。
きっと明日のレセプションにも込み入った裏事情が含まれているのは安易に想像できた。
たぶん、好感度を得たい相手がいるのだろう。それも内密に。
慎弥はぶーっと膨れていた。そもそも自分は関係ない、社外の人間だと言いたげに。だけど、『家族』なのだ。

「草加さん。信頼できるスタッフを一人用意していただけませんか?」
岩槻の突然の申し出に皆野は瞠目した。
彼はこの先、何をしようというのだろうか…。

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見下ろせる場所 3
2011-06-30-Thu  CATEGORY: 見下ろせる場所
「すでに申し上げましたように慎弥はこのような態度でおります。何かあった時にすぐに私に知らせてくれる方がいてくれると助かります。多くの人間が出入りする場所で特定の相手を気に掛け続けるのは難しい話です。ですがいないよりはずっと心強い」
「他のスタッフにも気付かせない上で…ということですね?」
「そうです。そのために今回慎弥を呼んだのに…」
岩槻はそっと慎弥に視線を向けたが、怒っているようなふうでもない。
「最初から聞いてたら来なかったっつーのっ」
慎弥はツーンと顔を反らす。
余程内緒で事を進めたかったのが伺える。この様子では岩槻側の従業員ですら知らされていない話なのだろう。
口の硬さもホテル側の信用に関わってくる。悪く言えばそこに付け込まれた感じもしなくない。
ここまで話を聞いて今更拒絶する態度など取れるはずがなかった。
「畏まりました。ですが、レセプションに関する件については私がどうこうできるものではありません。明朝に責任者を伺わせますので、その者と話をしていただけませんか?良い人選をしてくれると思います」
「ありがとうございます。先程端迷惑な騒動を起こした上にこのような我が儘を申し上げて心苦しい限りですが、どうぞ宜しくお願いします」
深々と頭を下げられて、皆野も利用してもらえていることの感謝を述べる。
ホテルを利用してもらう以上、多少の我が儘はどの客からだって聞かれることだ。

長居をするのもなんなので、挨拶を済ませて立ち上がると、剥れていたはずの慎弥が後を追ってきた。
それから呼び止めるように、皆野の袖口を引っ張る。
ふと視線を下ろすと、先程までの態度とは一転してシャイな雰囲気を見せた。照れてまともに視線を合わせようとしないのも、随分な変わりようだった。
「あの…、さっきは、…ごめんなさい。あんなふうにいきなり…」
騒ぎ立てたことを言っているのだろうが、ためらわずにあれだけの演技ができた姿からは変わり過ぎていて皆野のほうが面食らった。
こんなふうに控え目な態度が取れるとは微塵も思っていなかった。
「あ…、いえ。何事もなくて良かったです」
一瞬返答する言葉が出てこなかったくらいだ。
その後ろで岩槻の溜め息が聞こえてくる。
「まったく…。今更恥ずかしがるくらいなら抱きつかなければいいものを…」
皆野は何のことかと思ってしまった。
どうも、茶番劇を繰り広げたことよりも、皆野にいきなり抱きついてしまったことに、今更ながら恥ずかしさが浮かんでいるらしい。
奔放な態度をとることは多々あったとしても、人に体を寄せることは滅多にないようだ。
その上皆野も一瞬にしろ、彼を抱き包んで岩槻から庇ってもいた。他人にそんなことをされたこともないのだろう。
そんなところはまだ子供というのか…。
思わず噴き出しそうになってしまうが、ここは堪えて微笑んで見せる。
「何かございました時にお客様をお守りするのが私達ですから」
再度岩槻からも謝罪の言葉を貰ってから部屋を後にした。

廊下を歩きながら一緒にいた春日がひたすら感嘆の言葉を口にしている。興奮冷めやらぬ、と言った感じだ。
「すごいね…。あんな広い部屋、初めて入った…」
春日にとっては話の内容よりも部屋の造りの方に興味があったようである。
まぁ、一般人が早々入れる部屋でないことは確かだ。現に皆野も泊まったことなどない。
「今度皆野が一泊招待してくれるって」
「馬鹿言ってんじゃねーぞ」
多少価格の変動があったとしても、一泊の代金など羽生も承知している。わざと言っているのだから小憎らしい。
冗談を言い合いながら3人が戻ったラウンジは、静かでいつもの雰囲気だった。

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問題解決…(?)
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見下ろせる場所 4
2011-07-01-Fri  CATEGORY: 見下ろせる場所
翌日の宴会は夕方の5時から始まる。
とはいえ、そのまま宿泊する客もおり、そういった人たちは時間よりも前に訪れてはチェックインの手続きを済ませる。
そのため、チェックイン開始の時間からフロントは宿泊客の対応に追われていた。
パーティーを目的としてくる客人はフロントに立ち寄ることもなく、専属の案内係に誘導されていく。
もちろん途中入場、途中退場する客もいて、ロビーにはいつもより多くの人の姿が見受けられた。
さほど大きくないレセプションだとは聞いていたが、それでも100名は優に超える。
ロビーにも視線を配りながら、皆野は残した仕事に手をかける。
フロント業務に携わる人間は交代制の勤務であり、本日の上がり時間は7時だった。夕方から深夜に向けて勤務する従業員も出社している。それ以降は契約社員のようなアルバイトに引き継ぐこともある。
本日起きた件は、今後のトラブルにならないよう、順に伝えられて行ける手筈を整えておかなければならない。

残務処理に手をかけようとした頃、宴会が終了したのかわらわらと人が流れ出てくる。
感謝の意を込めて挨拶の声をかけ、人波が出つくしたあと、ロビーに響いてくる声が聞こえた。
たくさんの人の声があるのだから、それがなんだ?といったところだが、聞き覚えのある声音に集中すると話声が耳に届く。
昨夜見た時よりも華やかな印象を与えてくる岩槻の後を、やはりきちっとスーツを着こなした慎弥が追いかけているといった雰囲気だった。
私服でいた姿よりは随分と大人っぽく見えて皆野はまた驚かされた気分になった。
「なんでっ?!どうして今夜なの?!後にしてもらえばいいじゃないっ!!」
怒りを込めたように騒ぐ慎弥を宥める岩槻の語りかけは静かなようで、さすがにその会話までは聞きとることができない。
優しく見守る兄の表情で岩槻の掌が慎弥の頭上を撫でている。
「やだっ!!征司くんの嘘つきっ!!」
発された言葉に岩槻は困惑を滲ませていた。
昨日話していた『おもてなし』の件だろうか。
皆野の脳裏を横切るものがありはしたが、知らぬ存ぜぬでいるしかない。
視界の片隅に二人の姿を置きながら仕事を続けていたが、岩槻はその場に慎弥だけを残してホテルを出ていってしまった。
そのことに再び驚いて皆野は慎弥を見つめていた。
岩槻の背を見送る慎弥の目が悲しそうに揺れた気がした。
だが直後、悔しそうに爪を噛んで立ち尽くしている。何かを思案しているらしい。
視界に入ってくる異様な光景を咄嗟に見つけることなどすぐにできる洞察力を備えたフロントの従業員ばかりだ。あえて口にしない…というだけで…。

迷いはあったものの、一瞬だけ見せた愁いの顔つきが気になって、皆野は慎弥に近付く。
「いかがされました?」
突然声をかけられて、慎弥がびくんっと振り仰いでくる。
「あ…」
「何かお困り事でしょうか?」
「…昨日の…」
皆野の顔をマジマジと見返してきて、一呼吸遅れて誰なのか判断できたらしく、ホッと息が付かれた。
緊張感を抜いてもらえることは皆野にとってもありがたい話である。
さりげなく聞いてあげようかと図々しい感情が芽生えてはいるが、慎弥は「うん…」と言い淀んで俯いてしまった。
しばらく無言の時が漂うが、皆野は焦らせもせず、慎弥の気持ちのままに経過を見守る。

「あ、あのさ。この辺で夜遅くまでやってるレストランとかある?」
問いかけられた内容の意図が見えずに、微かに首を傾げた。
「レストランですか?それでしたら当ホテルにも…」
「そうじゃなくて、ホテルから出たいの。…あ、ごめんなさい、こんなこと言って…」
いかにもホテルのレストランは利用したくない的な発言を堂々とされては苦笑するしかない。
それでも口に合わない客もいるわけだし、近隣の情報くらいは押さえてある。
「いえ。何かお召し上がりになりたいものでも?何名様で行かれるのでしょうか」
レセプション会場でも料理は出してあったが、招いた側が口にできるはずもなかったのだろう。
必要があれば予約も取ると、慎弥の思いを汲み取ったつもりで問い返せば、いきなり首を振られた。
「俺一人で行く」
返答に皆野は瞠目した。
憂いはどこに消えたのか、勝気な目線に戻った慎弥に、皆野は胸騒ぎを覚える。
絶対に良からぬことを考えているのは一目瞭然だった。
目まぐるしく回転する脳が今ここで起こった一連の出来事を関連付け始めた。
兄を『嘘つき』呼ばわりしたのだから何かしら反抗する部分を含めている。更に『深夜までやっているレストラン』は、そこで時間を潰す為のものであり、そんなことをする必要があるのは、帰ってきた兄に自分がいないことで心配をかけたいのか…。
思わず溜め息がこぼれそうだった。
…なんという子供じみた感情…。

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トラブルメーカー再びヽ(゚∀゚)ノ
ホテル業務のことについては知識無しです。おかしい、と思っても流してくれるとありがたいです。

ずっと書き忘れてた~~~.....(;__)/|
実は6/29日で丸2周年を迎えておりました。
長いことお付き合い、本当に感謝です。
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見下ろせる場所 5
2011-07-02-Sat  CATEGORY: 見下ろせる場所
一人で…と聞いて、「さようでございますか。ではこちらのお店はいかがでしょう」などと案内できるはずがなかった。
だが、皆野が紹介しなくてもたぶん勝手にホテルを抜け出すのは目に見えている。それも確実に連絡が取れない方法で。
やると思ったことは実行するくらいの行動力はあるはずだ。昨日の岩槻が発言した『奔放』という言葉が脳裏を過る。
どんな内容かは知らないが、なにがなんでも『嘘つき』の兄に一泡吹かせてやりたいのだろう。
甘やかして育ててきたツケはこんなところに表れるものなのか…。

プライベートに突っ込んではいけないと知りながら、皆野は慎弥の真意を探りたく、「岩槻様はご一緒ではないのですか?」と遠回しに話を振ってみた。いないのはすでに承知だが、それをこちらから言ってしまえば意味がない。
昨日知った岩槻の態度では、夜の街に慎弥を、ましてや見知らぬ土地のこの場所で出掛けていいと言っているとは到底思えない。
先程の光景を見られていなかったと慎弥には捉えられたようだ。
慎弥は警戒することなくクルクルと表情を変える。
皆野に指摘されたことが悔しかったのか、兄に言われたことを思い出したのか、頬を膨らませて見せた。
「本当はこの後、ご飯、食べる予定だったんだ。それが、先方の人と、『お互いに時間が取れたから出掛けてくる』って…。だから今日はルームサービスにしなさいって…」
慎弥は俯き加減でポツリ呟いた。『淋しい』と言わんばかりである。
皆野はまたもや溜め息をつきたくなった。
置いてきぼりをくらった嫌味で無断外出か…。そして自分はまたこの兄弟喧嘩に首を突っ込んでしまったわけだ…。

「えーと、ですね…」
呆れたいのだが余りの可愛い反応に、客相手の口調も崩れてしまう。頬が緩むのも止められなかった。
そんな皆野の態度に感じていることを悟ったようで、ますます慎弥の機嫌が悪くなる。
「もういいよっ!!草加さんだって仕事でしょ!!俺のことは放っておいてっ!!」
いつまでも子供っぽい感情でいるのだとは本人も自覚しているらしい。素直と言えばそれまでだが…。
駆け出しそうになる慎弥の腕を慌てて捕まえた。
本来ならこのような行動に出てはいけないのは百も承知している。
しかし、慎弥の話を聞いてしまった以上、放っておけるはずがなかった。あえて言うなら、知りながら放置したことになる。岩槻の不信感を買うだけだ。ましてや話を聞いたのが皆野であれば…。
「お待ちください。少しお時間をいただけませんか?実は私、もう就業時間を終えているのです。少々残務処理がありますがすぐに片付けますので、ご案内いたしましょう」

皆野自身、どうしてこんな台詞が漏れたのか理解できなかった。
ただ、甘えられるものを失って自棄になりかけている彼を野放しにできなかったし、元気づけてやりたい程度だったのだと思う。
そして慎弥の、万華鏡のように変わっていく表情をもっと見たくもあった。
ホテルにいるのは嫌とすでに聞いた話で、例え皆野と一緒でも館内で過ごす慎弥ではない。
だったらこちらから連れ出してやった方が大人しく付いてくるだろうし面倒がない。
案の定…というべきか。慎弥は長い睫毛を瞬かせて、「ほんとにっ?!」と途端に嬉しそうな笑顔に変わる。
穢れを知らない無垢な微笑みだ。
「じゃあ、俺、着替えてくる~。この格好、嫌だったんだ~」
「終わりましたらお部屋にお迎えに伺います」
「ううん、いいよ。ロビーで待ってるから」
皆野はがっくりと項垂れたくなった。それはまさに無言の『仕事をさっさと終わりにしろ』アピールにしかならない。
だけど気付かないのだ、そんなことは。
颯爽と駆け出していった後姿を見守りながら、困ったと思いつつ、自然と笑みが浮かんでしまう。
フロントに戻った皆野は、この後の時間を担当するフロント係に、岩槻への伝言を頼んだ。
少なくとも自分が一緒にいると分かれば安心してもらえるはずだ。皆野の連絡先はホテル側が承知している。
無断外出したわけではなく、皆野が連れだしたことが伝わればいい。

さすがに岩槻の御曹司(?)と理解したからなのか、皆野が残していた処理は口頭で全て済ませることで、すぐに片付いた。
皆野も私服に着替えて慎弥を出迎えると、ぱちくりと睫毛を上下させる。
「なんかさー。草加さんって制服着てると老けて見えるよね」
本音を隠すこともなくビシバシ言ってくる。少し言い方を変えれば『落ち着いている』くらいの回し文句になりそうなのだが、そういった気遣いはないらしい。
思わず気落ちしそうになる。
「さっきだって最初、誰だったか分からなかったもん」
ロビーで声をかけた時のことを言っているのだろう。
こんな職に就いていれば浮かれた雰囲気など醸し出せるわけがなく、自然と貫禄のようなものが身に付いてしまうのだろうか。
それを言えば慎弥だって私服とスーツでは随分と印象が変わるものだ。もちろん口に出すことはないが。

「車での移動でもよろしいですか?」
「うん!もちろんっ!!遠くに連れていってくれるの?」
近隣を案内するだけだと思っていたのか『車』という単語は慎弥に強く響いたようだ。
無邪気な万遍の笑みを披露してくれる。なんとなく、岩槻の心境が分かる気がしなくもない皆野だった。
これは『過保護』に働くだろう…。
「遠く、というほど遠くでもありませんが…」
「俺、遅くなるの、全然構わないから~」
それは俺が構う…と内心でぼやきながらも、我が儘王子の笑顔に癒されていたりするのだ。


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毒牙が…
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