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BLの丘
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やすらぎ 1
2011-03-04-Fri  CATEGORY: やすらぎ
『眼差し』からの時差があります。
過去に振り返っていますのでご注意ください。



いつも来ているパーだった。
鈴の音のようなクラシックが静かに流されていて、客同士の会話を邪魔しない。
一人、カウンター席で佇んでいれば、自然と声が掛けられるような環境。
気が合えば店の外で二人きりの時間を愉しむのも良し。その場で別れても良し。
強制されない雰囲気がこの店にはあるから、自然と通う回数も多くなる。

潰れた心…。
いつまでたっても振り向いてもらえない恋愛観に、些か疲れ気味だった。
「ここ、いい?」
隣の席に座りたいと明らかな感情を持って、肉厚な男が、譲原望(ゆずはら のぞむ)に声をかけてきた。
一般のサラリーマンといった感じだ。
身体の作りはよさそうだし、幾つか若いと思われる雰囲気がある。
どこか勝気な性格は、年上にも怯まない言葉尻から判断出来た。
弁護士などという仕事についていると、それなりに人の性格など見透かせる。
隠せない本心を見破るのは赤子を手なづけるのと同じくらい簡単なことだった。
とくにこういった場…。
隣に座りたがる男の気持ちも分かりながら、許したのは、慰めてほしい本音があるからだろう。

「えぇ、どうぞ。いいですよ」
当然のように、望は男に席を勧めた。
…逞しい身体…。
比べる相手は常にいる。
唯一のように愛した相手を失い、消沈の彼を慰めてあげることは、自分ではできなかった。
一時の過ちですら犯そうとしない人…。
抱き続ける想いをきっと知っているのだろうに、決して返されない言葉は、この先の希望も失わせる。
柔道で鍛えられたその人とどこか、比べようとしてしまう自分は卑怯で汚いのだろう。
好きな人が愛しい人を失ってからすでに3年の時。

周りの誰もが気遣ったのに、誰の手も借りることなく自身を慰めて自己解決してしまった。
それでも今でも深い傷が彼を抉って、安らぎの時を与えないでいる。
まるで十字架を背負った人間のようだ…。
そんな姿を見るのが辛い。振り向いてもらえない今が辛い。

「失恋でもしたの?なんだか浮かない顔、してる」
隣に座った男が心の闇を探ろうとウィスキーのグラスを傾けた。
デリカシーのない発言がチクリと胸に刺さってくるのに、突き放せないのはどうしてだろう。
『失恋』したのなど、何年前だろうと、心の中で失笑する。
この男を受け入れてもいい、それほどまで、誰かに縋りたい、弱さが自分の中に宿るのか…。
たった一度でいい。
本能の赴くまま、誰かに愛されて『必要』とされたい気持ちが渦巻く。
たとえ、それが、偽の偶像だったとしても…。

他愛のない会話が続いた。
そっと抱かれる肩に乗った手を、酷く冷たく感じる。
「なぁ、いいだろぅ?」
耳元に吐息がかけられ、この先の行動をそれとなく促される。
『あぁ、もうどうにでもなれ』…、そう思った瞬間だった。

「望っ!!!」
慌ただしく店内に入ってきた男が、望の肩を抱いた男の手を振り払った。
「ごめん、待たせた…」
待ち合わせなんかしていなかったのに、いかにも『待たせてしまった』という態度で当たり前のようにふるまう姿。
「佳史…」
「何?相手いたの?わざとらしい態度とんなよっ!」
突然現れた栗本佳史(くりもと よしふみ)に望が驚愕の視線を向けると同時、隣の若い男が『時間の無駄をした』と言いたげに席を立った。
彼にすれば、今夜共にできる相手と思ってこれまで望の話に付き合っていたのだろう。
「帰るよ」
少々イラついた佳史の声が望を立ち上がらせる。
あっという間に会計を済ませた佳史が、外に待たせていたタクシーに望を押し込んだ。
「うちでいいよね?」
有無を言わせない発言に、返す言葉もない。
行きずりの男と一夜を共にしようとしていたことを知られて、そんな”淫乱”なのかと責められているようだった。
流れゆく光を目にしながら、ふと鼻腔を撫でた消毒液の匂い。
佳史が仕事帰りのそのままで駆けつけたのを、今更ながらに知った。

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やすらぎ 2
2011-03-05-Sat  CATEGORY: やすらぎ
R18 性描写があります。閲覧にはご注意ください。

病院の裏手側に佳史の自宅がある。
36歳という歳で実家でもある外科の病院を継いだ。
彼は幼いころに母を亡くしていた。
長いこと大学病院に勤務していたが、父の体調不良を理由に、個人経営の病院を継ぐことにした佳史だった。
その父も今では介護施設に預けられている。
もっとも気は確かなので、診られるより診る側のようだが…。
同じ年頃の人間とかわされる会話は、刺激になるものも多いのだろう。

同じ地区で育った友人同士は今でも時折顔を合わせた。
その中の一人に恋心を抱いたのは随分前。
だけど、彼が選んだ人物は自分ではなくて…。幸せそうに暮らす姿を見れば、諦めもついたというのに…。
相手の男がレイプされた挙句に自殺した事件は、望にも暗い影を落とした。
慰めてやりたくても、絶対に振り向かない強い意思は、彼の性格なのだ。
自尊心を傷つけるとも思えたから、望はただ口を閉ざし続けた。

脱がされた服が床の上に散乱していた。
ベッドの上で、何かに縋りたい身体と心が抱き締められる。
大きく足を開き、膝裏を抱えられて、穿たれるものを受け入れる。
「はぁぁんっんっ…、あ、ぁぁっ…」
みっともなく喘ぐ声が下半身から放たれる水音と共に鼓膜に響いてくる。
佳史の気持ちが自分に向けられていることを、随分と前に聞かされた。
望が惚れる男を忘れて自分の元へ来いと…、囁かれたのはどれくらい前だったか…。
まだ忘れられないのに、一時的にも慰めてほしい時に佳史を頼る自分は狡い…。
心をやれない代わりに身体を差し出す。
まるでそんな感じだ…。
それがどれだけ虚しい行為なのか、佳史に対して失礼極まりないことだと分かりながら、与えられる快感に酔いしれた。
「い…っく…っ、だめ、いっちゃ…」
体内のいい部分を張り詰めたモノで幾度も擦られて全身がガクガクと震えた。
「いいよ、…望、イって…」
一際強くなる抽挿と掌に握られてスライドされた性器が腹の上に白濁を巻いた。
締め付けた内筒の奥に飛沫が当たるのも感じた。
汗にまみれた身体を、そっと包まれる。
頭を抱かれて、頬を寄せて、乱れた呼吸の中から吐き出される言葉。
「もう、忘れろよ…」
幾度も聞いた言葉だった。
叶わない思いを抱えて、過ごしてきた月日の長さを佳史は知っている。
見える世界は孤独だけであって、思い人の心は手に入らないと諦めさせたい気持ちが肌を通して伝わってくる。
そんな簡単に心を入れ替えられたら、どれだけ楽だろう。
「ごめん、…こんなことまでさせて…」
溜まるばかりの性欲を吐き出す”一時の相手”役を、いつも佳史はかってくれた。
望が思う相手は、気を持たせることは一切しないといった態度で、ただの友人を貫き通している。
性的な意味で一線を越えることはないと、明言されているようなものだった。
それでも諦められない気持ちは、佳史をまだ受け入れられない思いと重なってしまう。

「俺はいいよ。仮でも偽でもいい。望がラクになってくれるなら、それでいい…」
甘えてしまえばどれだけ楽だろう。
それでも踏みとどまるのは、いい加減な気持ちで付き合って”友人”という関係を崩したくないからなのか…。
望は自分の心がどこへ向かおうとしているのか、自身で判断をすることができずにいた。
こんな虚しい行為を続けながら、返せる言葉は一つ。
「わからない…」

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短いんですけどタイムアップなので…。
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やすらぎ 3
2011-03-06-Sun  CATEGORY: やすらぎ
佳史とは身体だけの関係を続けた2年…。
望が思う相手はひとりきりで、望を思ってくれる人も変わらない。
友人である安住享利(あずみ きょうり)が、『離婚問題を抱えている子がいるんだ』と突然連絡をしてきた。
安住も弁護士であったが、企業問題ばかりを請ける安住と望では専門分野が違っていた。
永遠の愛を誓ったはずなのに、別れるときは悲惨なやりとりがあることを望は嫌というほど見てきた。
いつか、佳史の手も失うのではないか…。
そんなことを思うから、友人から恋人へと移り変われないのかもしれない。

『佐貫がね、デリカシーのないことばっか言って。アイツの言葉で傷ついているようだったら慰めてあげてよ。まだまだ人生これからの子なんだ』
電話での会話で、自分の思い人と安住の家で顔を合わせたのが知れた。
直接的な言葉で相手と隙間を作らずにコミュニケーションをとろうとするのが佐貫光也(さぬき みつや)の性格と言えた。
そんなところに、望も惹かれている、とは安住には言えずにいる。
もちろん、悪気がないことは安住も充分承知しているし、付き合いが長いだけに嫌悪する部分もない。
「うん、分かったよ。でも”人生これから”って僕たちだってまだまだだよ」
若い子を相手にした言い分に苦笑すると、安住も『そうだね』と笑っていた。
話を聞けば、安住の知人からの紹介らしく、また安住の思い相手でもある人と同じ年らしく放っておけないのが分かった。

26歳で離婚問題か…。
ぽつりと内心で呟いてから、残されている他の仕事に取り掛かる。
話を聞いた時は、ただの”仕事”というくくりだった。
だが、実際にその彼を見た時、言いようもない危機感を覚えた。
誰かに似ている…。
気弱げで儚そうで…だけど彼には言い知れぬ努力する姿が垣間見えた。
不安を覚えたのは、佐貫の昔付き合った人間に似ている気がしたからだ。
そして、安住の家ですでに佐貫とも顔を合わせている。
唯一の救いだったのは、彼が離婚問題を抱える、つまり『女性を対象に付き合う人間』だったことだ。
そういう相手に佐貫は無茶をすることはない。
どれだけ好みといっても、男同士なんて特殊で異様な世界のはずだろう。
さり気なく佐貫の名前を出しても、特に反応も見せられなかったことに安堵していた。
今の彼にとっては、目の前の『離婚』のほうが切羽詰まった問題であることだし…。

それなのに、久し振りに佐貫から連絡があったかと思えば、「彼の勤務先を教えてくれ」というもので、何がなんだか分からず瞠目する。
確かに前日、彼にとっては衝撃的な『妻の浮気現場』の写真を見せた。
完全に消沈した姿は見ていたが、それがどうして佐貫と繋がるのか…。
『なんだかえらく落ち込んでいる風だった。そこをチンピラに絡まれていたんだ。今、少し熱もあるし、眠っているから仕事を休ませてやろうと思ってな…』
佐貫の性格を考えると、彼を泊めたのだろなとは簡単に悟ることができた。
気弱な彼の性格では、チンピラに絡まれた後など不安でどうしようもなかったのだろう。
その上、精神的なショックまで抱えている時だ。
嫌な予感はしたが、自分が口出しするのも変な気がして、諦観することにした。
彼が『男には向かない』と最後ののぞみを託して…。

再会した時の彼は、先日見かけた時よりもずっとスッキリしている態度をしていた。
嫌な予感が当たったのを知った。
『抱かれた…』
佐貫の家に居た一夜に何があったのか、即座に知ることができるくらい、彼が纏う雰囲気が激変していた。
自分は一度として、あの腕にかこわれることはなかったのに、どうして目の前の人間はいとも簡単に彼の心を捕らえることができるのか…。
悲しみと恨み。
積もり積もったものが大人げなく爆発していく。

「一時的な癒しに翻弄されて世界を見失うのは間違いだよ。武田君はこの後、幾らだって女性を愛せるし、それを望まれるご両親もいるよね?一度は手に入れたはずの子供を手放すというのはとても辛いことだと思う。ましてやこんな形で暴かれた事実を目の前にして、それでも気丈に振舞おうとしている。もう一度きちんと自分の子供を儲けたいと思うなら、頼るのは佐貫でなく、僕にしてくれないかな」

彼の希望の綱を絶ち切るものでもあったけれど、同時に望自身にまだチャンスがあると思わせたいエゴに見舞われた。

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また短い…。ごめんなさい。
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やすらぎ 4
2011-03-07-Mon  CATEGORY: やすらぎ
全ての行為が無駄だと知らされたのはそう遠くない日のことだった。

望は彼の為に時間を費やした。
端からみたら、佐貫から引き離すように、『女』と共に生きるように導かせていたのかもしれない。
佐貫に振り向いてはもらえないと、たぶん誰よりも自分が一番良く知っていることなのに、諦めきれない往生際の悪さ。
彼と佐貫が完全に離れれば、いつか自分を見てくれるのではないかと微かな期待だけを胸に抱いていた。
その不安まで佳史に話してしまうことになったが…。

彼の存在は佳史の耳にも入っていた。
佐貫が自ら語るはずもないのだから安住からでも聞いたのだろう。
そういえば、安住の思い人と同じ年と言っていたっけ…。
『離婚』云々のことまで話すわけがなかったが、望と関係している時点で、どんな状況になっているのか想像は容易かったはずだ。
躍起になる望の態度を、佳史に指摘されるくらいだった。

いつものように、惨めな身体を慰めてもらった後、横に転がった佳史が小さな溜め息を零した。
「望の気持ちが分からないわけじゃないけど…」
佳史も希望がないことを承知している。
どうがんばっても、佐貫は望へと向いてはくれない。
しかも佐貫の恋心をくすぐる相手が目の前に現れてしまっては、尚更そちらに気が向いてしまうだろう。
「ごめん、佳史にこんな話、するべきじゃないよね…」
「辛い気持を吐き出してくれる点では困らないけどね。少しは気休めになっているのかな」
「佳史には感謝してる…」
ただ、その思いは”愛”には変わらない。
こんなに尽くしてくれて、それでも応えてやれない自分も相当な卑怯者だ。
「甘えたい時に甘えてくれればいいから。俺はいつまででも待ってるよ」
優しく髪を梳いてくれる手。
この手を失わないための狡賢さと佳史が知ったら、軽蔑されるだろうか。
いや、それでもいいと、佳史なら言うのだろう。
愛情の深さは、これまでに嫌というほど感じさせられてきていたのだ。
そして頷けない自分…。

彼の離婚問題が淡々と片付いてしまった後、佳史の態度が俄かに変わった。
やたらと望に構うようになった。
佐貫を忘れさせたい思いがあるのは随分前から知っていたが、少しでも希望があることまで潰そうとしなかった佳史なのに、呪文のように「諦めろ」と繰り返される。
後から考えれば、望を傷つけないための先回りだった。

その日は突然やってきた。
佳史の態度がおかしいと思い始めてほんの数日。
不意に事務所に佐貫が現れて、どうしたものかと驚愕した。
さらに、佐貫が纏う雰囲気が、以前とは全く異なっていることにも驚いたし、言いようのない恐怖心を持たせた。
「支払いをしに来た」
「支払い?何の?」
脈略もなく始まる話に、益々意味が分からなく、訝しげな表情を浮かべてしまう。
「成俊の弁護料」
自然と口から発される名前は、望が佐貫の口から聞きたくないと願っていたものだ。
「な、に…?」
みっともなく声が震えてしまう。
長いこと、正面から見られたことなどあったか?と思ってしまう、まっすぐな眼差しで佐貫は望を見た。
「おまえには悪かったと思ってる。もっと早くに何らかの意思表示をするべきだったな」
淡々としたように佐貫から聞かされた内容は、ガタガタと望の精神を切りつけていった。
全部知ってたんだ…。
分かっていて、曖昧にしたままだったことを素直に謝罪してくる。
こういうヤツだ…。
武田成俊(たけだ なりとし)という、望がずっと弁護を引き受けていた青年と暮らすようにしたこと、二度と過ちは繰り返さないと断言する力強さ。
佐貫から告げられる話に、望は傷ついていながらどこかホッとしていた。
闇の中に放置されたままの心が、ようやく暗いトンネルを抜けていくような気持ちが走った。
自分では変えることのできなかった佐貫の心を、ほんの僅かな間で掴んでしまった二人の間に、自分の入る余地などないのだと知らしめられた。
自分が弁護して彼の自由をもぎ取ったことも、皮肉な運命だ…。

「うん…」
静かに頷いた望の頬を一筋の涙が伝う。
それを自分の責任だと罪をかぶる佐貫も、きっと心を痛めていたに違いない。
二人で背負った十字架。
寄り添うことすら許されなかった二人の思いが、新たな希望をもって離れていく。

自分が何処へ向かうべきなのか…。
真っ先に思い浮かべた人物。
今はまだ、佳史の思いに応えてやれないけれど、慰めてほしいと頼ってしまう自分はどこまで甘えているのか…。
泣き崩れた望を支えた手は、ただ温かかった。

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遅くなりました―。
やっと書けました~。
かなり端折って書いたけど理解できるでしょうか…。
ちょうど成俊がレイプされた頃のことです。

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やすらぎ 5
2011-03-08-Tue  CATEGORY: やすらぎ
佐貫が、一生かけて守りたいと思った伴侶を再び得たことで望の心の中は整理されたように思えた。
だが、あまりにも短い期間で逢瀬を重ねて想いを通じらせた二人に、まだどこか、希望の光を失えなかったのかもしれない。
それくらい急展開を見せての付き合いだしは、佐貫たち二人の奥底までは探れなかった。
何かを知ったような佳史ですら、口を開こうとはしない。
無駄な努力…。分かっているのに…。

佳史が口を閉じるのはたぶん、きっと、望を傷つけたくない気持ちと、二人を守ろうとする意思からなのだろう。
甘え縋ってしまう態度は以前と変わらないものの、望の心には今まで以上の深い溝ができた気分だった。
佳史が必要以上に甘く接してくる。
赤子を不安がならないように見守る保護者のようだった。

それを申し訳ないと思ってしまう。
まだ完全に、佳史を頼れないでいる心のふらつきが望の中にあった。
そんな望でも佳史の態度は変わらないし、包んでくれる温かさに酔えてしまえればどれだけ楽になれるのだろうと自身の気を向けようと努力したけれど、思いのままにならないのが心なのだ…。

半年という月日はあっという間に流れて行った。
佳史の傍にいながら、全てを預けられずにもどかしさだけが渦巻いていく。
心の一部は佳史に寄せた…。

そんな日のあること。
佳史から連絡を受けた電話に心が凍りつくかと思った。
『佐貫が事件に巻き込まれた…。生死が危ぶまれる…』
刑事という仕事柄、何かと物騒なことはいくつもあったけれど、命に関わることはこれまでなかった。
…”いなくなる”…
わなわなと震える身体が、まだ彼への想いを残していることを改めて感じさせた。
分かっていながら連絡してきてくれた佳史の行動まで、気が回らなかった。

病院に駆けつけた時、すでに佐貫の意識はなかった。
当たり前のように居座る”彼”を佳史が支えている。
決して二人は離れないのだと、望に言い聞かせているようでもあり、望の為を思っても佐貫を助けたい一心の佳史の心が知れた。
生死の境目を彷徨った佐貫の魂を呼び戻したのは、誰が何を言うまでもなく、”彼”だったのだろう。
もう、本当に、どこにも付け入るすきなど残っていない…。
なによりも、崩れそうになる自分を、二人、と共に支えてくれた強靭な佳史の精神。
佐貫が守りたいもの支え、佐貫を守りたいと思う自分をまもってくれた。
佳史が守ったものは、彼らの幸せと、自分への愛情。

佐貫の意識が戻った時、もう心に巣食ったなにもかもを諦めた。
生き帰ることが”奇跡”だったと教えられ、戻してつながる魂を感じる。
自分では絶対にできない”奇跡”をみた。
横たわる佐貫にしがみついた。
包んでくれる腕が、「すまない…」とあやまる。
佐貫に抱き締められた瞬間、全てがはがれおちた。
最初で最後の、ふれあい。
恋心の別れ…。

誰にも秘密にした時間は、きっと佐貫にとっても辛かったはずだった…。
彼の腕から伝わったのは、無言の「幸せになってくれ」と願う気持ちだった。

なにより、生きていると見せてくれたことに感謝するべきなのだろう。
決して揺るがない想いはもう離れない二人をあらわした。
何もかもが、望の頑なな心を解きほぐしていく。
「しあわせ…」

導いてくれる人間を佐貫は知っていた。
そこに収まることを望まれた今…、彼の為なのか自分の為なのか、もう分からなかった。

次の日、見舞いに訪れた病室の外で、佳史に抱かれた肩から強い温もりを感じた。
「もう、会わなくていい」
冷たいようで優しい言葉。
友人として時を刻めと、言われた瞬間だった。

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週末明けまで何もなくても心配しないでください。
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