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策略はどこまでも 1
2009-06-29-Mon  CATEGORY: 策略はどこまでも
22時を大きく回り込んだ時間帯。週末の金曜日だから休日である明日、のんびりできる安心感はあったが、体は疲れ果てていた。
こんな日はビールでも飲んでさっさと寝てしまいたい。

桜庭那智(さくらば なち)は、辿り着いた自宅マンションの郵便受けに入った封書類の中で懐かしい名前を目にした。
『岩村卓也』。3年前に卒業した大学で同じ学部だったやつ。卒業後も時々会いはしたが、就職した土地が離れてしまったため、連絡を取るのも年に数度という頻度である。
突如舞い降りた同窓会の案内状。同窓会とはいっても大それたものではなく、普段着で気軽に参加してほしい旨が記されていた。
場所だって大学時代によく通った近くの居酒屋。もしかして、気兼ねなかった連中にしか案内を出していないのかな?と、那智はまず誰に連絡をしようかと思案した。受け取ってない人物に連絡を入れたのでは失礼にあたる。
そもそもただ再会を果たすための飲み会だったら何もわざわざ郵送物でなくったって、電話連絡でもしてくればいいことなのに。

建設機械の販売業に携わる仕事についていた那智は、電話やメールで人とやり取りをすることが多かったから、郵送物が届いたことに少々の違和感を覚える。
とはいえ、お互い仕事で忙しい身を思えば、案内くらい確実に手元に届けたかったのだろうか。

9月の残暑が厳しい中、部屋のエアコンを入れて案内状を読み終えると、とにかく休みたくてネクタイの結び目に指を入れた。
上着なんてとっくの昔に脱ぎすてられ、今日一日はワイシャツのみで過ごしていた。腕に抱えられるだけで邪魔にしかならなかった上着をハンガーにかけてクローゼットに戻し、バスルームに向かおうとしたとき、鞄に入れっぱなしにされた携帯電話がブーブーと振動を伝わせていることに気づいた。
営業職である那智は、会社から支給されている携帯電話とは別にプライベート用でもう一つの電話を保持していた。
カバンの中で震えているものが会社のものであれば、速攻で無視だと悪態をつく。
機械の故障やメンテナンス、トラブルなどには会社のそれなりの部門が設けられており、営業の身に連絡がくることがないように組織作りがされているものの、まず連絡を入れるのはここだと言わんばかりに電話をしてくる連中がいる。販売業の立場上、それも分かる気がするのだが、なんていっても時間が時間である。
先ほどまで得意先に上げる事務処理で会社の机にへばりついていた身には関わりたくないと思えるものだった。

「誰だよ、こんな時間にかけてきやがってっ」
外見からは想像もできないような汚い言葉が口を突いた。
身長170センチをなんとか越えたところで成長は止まっていた。小柄ながらも体の均整は取れている。その上にチョコンと乗った顔は、男らしいとはあまり言えずにどちらかといえば可愛らしい印象の方が強かった。とがった顎元、ぷっくらとした赤い唇、高くない鼻に長い睫毛を纏った二重の大きな瞳。
大学を卒業して3年がたつのに、いまだに就職活動中の大学生に間違われる。私服で夜の街を歩けば補導されかけたことだってあった。
カバンの中で唸っていたのがプライベート用のものだと分かると、ふと表情を緩めた。
画面には『高柳久志(たかやなぎ ひさし)』とある。岩村同様、大学時代に仲の良かった人物だと分かると、先ほどまでのとがった気持ちも薄れて懐かしさに通話ボタンを押した。

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策略はどこまでも2
2009-06-29-Mon  CATEGORY: 策略はどこまでも
那智は大学を卒業しても、大学からそれほど遠くない会社に就職が決まった。一度は引っ越しをしたものの、電車に乗っての移動距離は30分と離れていないので、その界隈に残った連中とは今でも良く会う。
そんな中に高柳もいた。
「なっちー、お疲れさん。案内状、届いた?」
特にこれといった挨拶もなく、いきなり本題に入るとこはいつものことだった。昔から高柳は思ったら即行動という部分がある。きっと那智同様、帰宅後に郵便物を見つけて内容を確認し電話をかけてきたのだろう。
とは思っても、つい今しがた見ていた件を早速口にされれば苦笑いが浮かぶ。まるで自分の行動を見られていたかのようだ。
バスルームに行くのを諦めて、リビングのソファにぼすりと腰をおろした。

高柳の声はもともと低いが、電話を通すとさらに低く聞こえる気がする。だからといって聞きづらいものでもない。
『あの声が体中に響くのよ』といつぞやの女の子が言っていたのを、電話で声を聞くたびによみがえらせていた。
高柳はモテた。いや、現在でもその人気は健在なはずだ。高校の時からラグビーをやっていて、大学ではアメフトに転向したが、そこで鍛えられたがっしりとした長身の体に、見事なまでに整えられた顔のパーツは、通り過ぎる者を振り向かせていた。
付き合うことを目的として寄ってくる数も相当数で、那智が知っている大学時代だけでも10本の指が簡単に折れてしまうほどで、一人の人間に定着したことがない。
そんな高柳の顔を思い出しながら、笑い声を抑えて言葉を返した。
「うん、見た。今日届いていたみたい」
「うちも今日来た。でさ、12月だって?」
「え?年末?」
詳しい日程まで確認していなかったから、高柳から告げられた言葉に驚きを示した。
就職している人間が大半の今、何も選んだように忙しいと分かる12月に同窓会なんて開かなくてもいいだろう…と。
「ちゃんと読んでんの?」
電話の向こうで呆れたような声がする。『見た』って何を見たのだ?と言いたそうだ。
電話機を顎と肩で挟みながら、リビングテーブルに投げ置かれた書面を再度手に取る。
しばしの沈黙も苦にならず待っていてくれるのは、那智が改めて、届いた案内を読み返しているのが分かっているから。
「ホントだ。…ってか、12月なんてヒサ、無理じゃん」
卒業後、高柳は物流会社に就職した。全国に支社を持つ大手の物流会社で、12月は年間の中でも一番の多忙を極める月と、この数年で何度も聞いた話。
休みは交代制だったから土日休みの那智と合うことも少なく、それでも休みが合えばほぼ必ずといっていいほど一緒の時を過ごした数少ない親友の一人で、何を思って電話をかけてきたのか即座に那智には理解できた。
同窓会が開かれるのは土曜の夕方から。
一番忙しい時に自分の都合よく休みが取れるわけんないじゃん、と那智は勝手に決め付けていた。
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策略はどこまでも3
2009-06-30-Tue  CATEGORY: 策略はどこまでも
「いや、別に一日くらい俺いなくったって支障ないし。つーか、さ。誰が来るか聞いてる?」
12月の師走の最中、わざわざ『気軽な飲み会』とまで追記された同窓会に、どれくらいの人数が参加するのかと疑問は確かに浮かぶ。
参加人数の少なさを危ぶむ声に、同じことを思っていたんだなーと那智はこの案内状を受け取った何人の人間がそう感じたのかを思ってしまった。
整髪料で整えられた髪をクシャクシャと掻きまわしながら、また案内状はテーブルの上に投げられた。
「んにゃ。まったく。俺今帰ってきて見たばっかだし。誰とも連絡とってない」
「今ぁ?何をそんなに頑張って仕事しちゃってるわけ?…そっかぁ。知らないかぁ」
高柳はこんな時間になって帰宅したことを驚いていたようだが、仕事をしていれば色々なこともあるかとそれ以上は言いはせずに話を元に戻した。
やっばり誰のとこに案内状が届いているのかしりたいのか、こいつも、と那智は思った。
高柳とは昔から考えていることが似ていて、一緒に行動を取る時などでも話がスムーズだった。
「今回の幹事も岩村だろ?…12月なんて…。…そうだよ、岩村じゃん。ヒサ、岩村と仲良かったんだから聞いてよ」
那智はひらめいたかのように疲れてトロンとした目を突如開いた。

在学中から岩村は合コン等の幹事役を引き受けていた。周りの面倒見が良いというのもあったし、何より責任感が強かったから、みんなの信頼度が厚く慕われていた。岩村が企画する合コンや飲み会は定評があって参加率が高かった。
那智だって岩村とは親しかったほうだが、高校から一緒だった高柳には及ばない。今だって頻繁に連絡を取り合っていることはこれまでの話の中で聞いている。
それなのに参加者のことを自分に尋ねて電話をかけてきた高柳を不思議に思わなかったなんて…。最初に掛ける相手が違うだろう?
「うーん。それがあいつも忙しいみたいで連絡つかないんだよなー。それに参加者がどれくらいいるかなんて今の時点であいつだって分からないだろ?なっちのとこで、誰が参加するとか話聞いたら教えてよ」
要は誰に案内状が行っているかよりも、誰が参加するのかを知りたいってとこか。確かにどれくらい親しかった人間が何人来るかによってから決めたいとも思う。

「ああ、まあいいけど。ちなみにヒサ、行く気なの?」
仕事のことまで思えば、参加意思があるとは思っていなかったから聞いたのに。
「なっちが行くなら休み取る」
「俺、基準?!」
笑いながらであっても即答されれば、多少の驚きも生まれる。
「だってなっちが行くって言えば、結構な人数が集まるじゃん」
「それ、嫌味?」
返された言葉に尖った声が響いた。おまえの存在、どんなものだと思ってるんだ?と。
冗談と分かるやり取りに本気できつい声を上げたわけでもなく、高柳も続けて軽口をたたいた。
「じゃあ、俺となっちが行くって言えば、会場、いっぱいになっちゃうね」
「ほんとムカつく」
電話口で口端を上げながら内心、このクソッと悪態をつく。いつもこんなやりとりで今更怒る気分にもなれない。

それでも真面目な話、高柳は岩村同様、交友関係が広かったから、高柳が参加すると言えば集まる人数は相当数かもしれないと思い返した那智は、小さく息をついてから言葉を続けた。それにたぶん、高柳自身が行きたがっているような気がしたから。
「あー、ヒサにそこまで言われたら行かないわけにいかないじゃん。とりあえず、参加でいいよ。そのかわり、岩村からちゃんと随時経過報告もらっとけよ」
場合によってはキャンセルも考えるから、と付け足した。
「りょーかいっ!」
ある意味、年内最後の楽しみが増えたかな。と先の予定を思いながら、お互いに「おやすみ」と挨拶をして電話を切った。
今度こそ、風呂に入ってビールを飲んで眠れそうだ。
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策略はどこまでも 4
2009-07-01-Wed  CATEGORY: 策略はどこまでも
休み明けの月曜日は忙しかった。先週の売上やこれからの目標など、いろいろなことが報告される。
短い、会議ともいえないような打ち合わせのため小一時間ほどを会社内で過ごし、得意先回りに出掛けていた那智は、昼食を取ろうと通りかかった定食屋に足を踏み入れた。

営業なんていう仕事をしていると、一人で食事を取ることに慣れてくる。最初の頃は『淋しい』なんていう気持ちもあったが、気づけばすっかり慣れっこだった。
こうやって店に入ることもあれば、公園のベンチでコンビニの弁当をかきこむ時もある。昼食時間もマチマチで、ひどい時には何も食べられずに一日が終わった。

「いらっしゃいませーっ」
元気のいいおばちゃんの掛け声が聞こえて、一人だと言えばカウンター席を勧められた。
すでに自分と変わらない数人のサラリーマンが、いい匂いを漂わせた定食を頬張っていた。
空いた席に着くと今日の日替わりは何かと聞く。一人暮らしの自分では絶対に作らない煮魚と聞けば、迷いもなくそれを選んだ。
「今日のこれ、絶品ですよ」
隣に座ってすでに食していたサラリーマンが、何の気なしに話しかけてきた。一見して自分とは違う職種なのだろうと思われる。
少なくとも外回りで疲れ果てているようには見えない。
こうやって話しかけられるのも日常茶飯事のこと。
お互い淋しい身なのか、ちょっとした仕草にも反応をしめしてしまうこの頃だ。話しかけられて無下にする気もない。
営業っていう仕事に就いていれば、いろいろな角度から情報を得るものだと教えられたこともあるから、相手の気を悪くしないようにニッコリ笑顔で「楽しみです」と呟き返せば、何故か相手の男は那智を見詰めたまま、箸に乗せた煮魚をポロリと落とした。
落とされた先が左手に持ったごはん茶碗の上だったからよかったようなものの、スーツにシミを作るぞ、と那智は箸から魚が逃げたことを目で促す。
「あ、あぁ…あ…。すいません、…つい見とれて…」
語尾は小さく、賑やかな店内では聞き逃しそうな声。
もちろん、こんなそばで聞いていれば届いてしまった声に、那智は一瞬眉を顰める。

見とれるって…なにに?

相手の男は30代半ばだろうか。ピッチリと紺色のスーツを着こなして、からし色のネクタイは少々華やかさすら窺える。
だが、何をとっても彼を惹き立たせているのはその顔だと那智は気付いた。
彫りの深い、どこか西洋人を思わせる鼻の高さと色の白さ。短く刈りあげた髪は清潔感を漂わせているが、全身を纏う雰囲気は『サラリーマン』と呼ぶには失礼な気がした。

「いつもこの店には来るんですけどね。今日のは本当に美味しいです」
隣の男は那智のちょっとした眉の動きに反応したかのように、話を定食に戻した。
見るところ、煮魚となっては何の魚なのか、魚に詳しくない那智はその正体を見破れずにいたが、先ほどの女将が「たら」と言っていたのを思い出す。
「じゃあ、常連さんをうならせるほどのものに出会えた僕はラッキーですね」
那智も話を合わせた。
この界隈にくることはあっても食事時を逃しているので寄ったこともない。たまたま偶然寄った先で、常連客にも「美味」と言われるものであれば、当たりくじをひいた気分になれた。
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策略はどこまでも 5
2009-07-01-Wed  CATEGORY: 策略はどこまでも
「この辺りの会社の方ですか?」
隣の男が差し支えなさそうな質問をかけてくる。
「いえ。ちょうど通りかかっただけで。これでも外回りの途中なんです」
初対面でも誰彼となく話をできるようになったのも、この営業職に就いてからだった。昔の自分だったら、一人で店に入ることもなかっただろうし、話しかけられてもどんな反応を示したらいいのか悩んでいたはずだ。
「そうなんですか。お疲れ様です。ちなみにどんな業種なんですか?…、あ、すみません。立ち入ったことをお聞きしして」
ただ、食事に寄っただけの那智に、仕事柄までを尋ねてしまった無礼を詫びる男は、本当にすまなそうに頭を下げた。
「いえ…」
美味しいと言っていた定食がなかなか進まないでいるのも気になって、そっと先を促すのだが、「一緒に食べましょう」と意味の分からないことを口にされた。
自分の食事が届く頃には美味しいものも冷めてしまうだろうに…。

それでもランチタイムのせいか、ほどなくして盆に載せられた定食が那智の前に届くと、箸を止めていた隣の男が「どうぞ」と那智に料理を進めた。
那智が箸を持つのを待って、隣の男も食事を再開している。
煮魚を箸先で割った時に、那智の驚きが表れた。
骨がない。…いや、あるのだ。あるのだが、箸先でつまんだだけでパキッと砕けてしまうような柔らかさになっていた。たぶん、身と骨を同時に飲み込んだとしても、喉を傷つけることはないのだろう。
煮魚を一口食べてみれば、魚の味はもちろん美味しかったし、骨は口の中でとろけるほど柔らかだった。
パチッと那智の大きな瞳がさらに見開かれるのを見逃さなかった隣の男は、満足げに那智にニッコリと笑いかけた。
「美味しいでしょう?」
「はい、柔らかいですね。こんなの初めて」
素直な気持ちを言い表せば、隣の男は満足したように頷いて、さらに箸を進めた。
「いつ、来ても美味しいんですけどね。今日のは上のさらに上だと思いますよ。ここのお店はランチの日替わりメニューを常に変えていてね。あまり同じものに出会うこともないんです。だから逃すとなんとなく悔しい気持ちになっちゃってね」
ついつい通っちゃうんですよ、と男は続けた。
それが客を引き付ける魅力なのだろうか。満足気に話す男の言うことを聞いていた那智は納得したように箸をすすめ、あっという間に定食を平らげてしまう。

ほぼ同時に隣の男と食べ終わった那智は、食後に再度注がれた緑茶を味わっていた。
一息ついて、今日の午後はまた取引先との打ち合わせが待っているんだと思い返す。ただ、合わせた時間には移動を含めても1時間ほど早かったから、この後どこで時間を潰そうかと頭をひねった。
そういえば、隣の男はここにいつも通うくらいだから、このあたりに詳しいのだろう。美味しいコーヒーでも飲める喫茶店とか知らないかな?
クルっと首をまわして隣に視線を向ければ、自分を見ていた男の目と合った。
「あ…と、…え…と…」
まさか見られていたとは思わず、まっすぐに見つめられる視線に、那智は戸惑いを覚えた。
「あぁ、失礼。つい貴方に見入ってしまって。ジロジロ見られたら不快ですよね」
いたずらがばれた子供のように困った笑みを浮かべられる。年齢的にも外見からも相応しいとは思われない照れた表情に可愛さを見出した那智は咎めることすらできなかった。だが、ずっと見られていたと分かれば、どんな顔をしていたのか、気になる。
それにしたって、なんだって俺なんか見てるのさ…?
内心で呟くものの、声に出すことは躊躇われ、那智は本来の目的を聞くべく、喉を震わせた。
「いえ、そんな…。…あ、あの、このあたりでコーヒーとか飲めるところ、ご存知ではないですか?」
「コーヒー?」
「ええ。ちょっとこの後、時間が空いちゃって。一時間ほどあるものですから。次のところに移動してもいいんですが、ご飯を食べた後だし…」
暗に食後の休憩を意味して近所の喫茶店の有無を聞いたつもりだったのだが、那智に質問を投げかけられた男は、それなら私も、と席を立った。

突然のことに驚いている那智を促し、「いいところをご紹介しますよ」とさっさと会計用のレジの前に立っている。慌てて後を追おうと自分の伝票を探したが見当たらなかった。
レジで告げられている金額を耳にすると、彼が2人分を支払っているのがわかる。
「ちょっ、ちょっと待ってください。それ、別で」
「いいです。出会った記念におごらせてください」
レジ前に、慌てふためいて近づいた那智をものともせず、男は財布から万札を抜くと店員に支払っていた。
いくらなんだって初対面の男に、いきなり「おごります」と言われて、「はい、ありがとうございます」とは言えない。
それに、出会った記念ってなんだよ…。
「やめてください。俺、自分の分は…」
那智は財布を出し、札を抜き出そうとしたが、やんわりとした手がそれを阻止した。
見上げるほどに背の高かった彼の手が那智の手に触れ、「いいですから」とそれ以上の動きをさせない。
店員からお釣りをもらって、男は那智にニッコリと笑いかけた。
「さあ、行きましょう。美味しいコーヒーのあるお店」
那智はなんだかとんでもないことになってしまったような気分になった。
いったいこの男はなんなのだ…???
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