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ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
桜の季節 1
2010-04-12-Mon  CATEGORY: 季節SS
愛した人間が一人だけいた。
一年に一度の花見、たった4度だけ一緒に桜を見た。
5度目はなかった。
貴方は与えられていた時間を全うして、身体を蝕まれて4度目の桜の季節を終えて俺の前から消えてしまったから…。

満開に咲き誇る大学の構内で初めて出会った時、桜の精かと思えてしまうほどに、あの時から儚く貴方は佇んでいた。
身体が弱いのだとは会ったその時に聞いた。
薄墨の桜の色は貴方の色だと何故か思ったよ。
年が巡るごとに、一緒に桜の花を愛でられることが俺にとって唯一の幸せのような気がした。
一緒に治療にも行ったよね。
先生は「安らかな時は精神的にも落ち着くからとてもいいんだよ」と俺たちの関係を問い詰めたりもしなかった。
ずっと続くものだと漠然と思っていた。
4度目に一緒に見た桜の花が散った時、初めて貴方と唇を合わせた。
それは貴方の最期の時だった。

ずっとこうしたかったのだとその時に初めて気付いた。
もっと温かい体に触れて、俺の魂までもっていってくれと叫びたかった。
隣にいた存在がなくなるということは、こんなにも辛いことだったんだ…。

桜の花びらが散る光景をみるたびに、散ってしまった貴方の命を思い出すよ。
無念だっただろう。
もっとやりたいことがあっただろう。
入退院を繰り返し、それでも大学に通い続け、世を去ったのは30歳になれる前だった。
俺よりもずっと若々しい容姿をしていたと思う。

8年の月日が流れて、やっと俺は貴方の年に並べたよ。
自分がこの歳にたどりついた時、どれだけ若くて未来を想像するのかと改めて思った。
だから余計に貴方の悔しさが胸を襲う。

桜の花を見るたびに「迎えに来て」と思う。
こんなことを思っていると知ったら怒られるんだろうな…。

春の花見は嫌いだったけど、職場の連中に付き合わされる行事には逆らいようがない。
酔う同僚の前にどうしてもいたくなくて、適当な理由をつけて去ろうとする。

池のふちに、小型犬を散歩させるかのように佇んでいた男がふと視界に入ってきた。
まるで引き寄せられるかのように視界の幅が狭まった。

「ここにいたんだ…」
振り返った男の声と表情が暗がりの中でもはっきりとわかるくらい…。
同じ顔、同じ声…。
目と耳を襲ってくる。

これは幻…?

8年という月日の中で一度として忘れることのなかった人間が、そこにいた。


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雨に濡れる桜を見ていたらなんだか突然思いつきました。
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桜の季節 2
2010-04-13-Tue  CATEGORY: 季節SS
貴方のあとを追いたいと何度思ったことだろう…。
残してくれたのは思い出だけで、写真の一枚も何かを書いたメモも手元にはなかった。
何度も振り返ることで貴方を忘れたくなかった。

「ここにいたんだ…」と声をかけられて、あの時できなかったことをしようと近付いた。
抱きしめたかった…。
肌の温もりを、貴方の温かさを感じたい…。

変わっていない。何一つ変わっているところなどないと思えた。
少しだけ目尻が下がって、どんな表情をしたって優しさしか見えないような顔といい、はにかんだように笑う時に右の口端が上がるところとか。
8年の時間があっという間に戻っていく。

「渚(なぎさ)さん…」
思わず呟いた名前に、子犬を連れた男の表情が僅かに曇った。

「やっぱり渚と間違えるんだね…」

一瞬の見間違いが晴れていくようでもあった。
触れかけた手がとまった。

違うのだ…と脳のどこかの部分が点滅した。
渚という男は目の前の男のように悲しそうな顔も辛そうな表情も見せたことなどなかった。
ただ儚かった…。

良く見れば確かに逝ってしまった時よりももっとはっきりとした存在のようだった。
自分が年をとったのと同じように、移り変わるものはある。
それでもあまりにも良く似過ぎていて…。
また消えられるのではないかと不安さえ過った。
散っていく桜の花びらに撒かれてしまうのではないかと…。
「あなたは…?」

「渚のおとうと…。っていっても、双子だけど…」

渚の最期はあっというまだった。
集中治療室に入ってたった4時間という時間でこの世を去ったと聞いた。
交わした会話の中で家族の話も耳にしたことがあった。
双子とは聞いていなかったけど、海外に住む弟がいると。
彼もまた身体が弱く、病院に入院していて、外を歩ける自分は幸せなのだと言っていた…。

「兄が残してくれた日記の中にあなたが居た…。あなたと見た桜のことがたくさん書いてあった。あまり出かけられなかったから、あなたが一緒に見てくれた桜の季節が一番好きだった…って…。毎日…、夏も秋も冬も、また見られるかもしれない桜が兄の夢だった。それは同時に僕の夢にもなった。僕も兄と同じように桜が見たかった…。兄が書いた日記の中に一枚だけあなたの写真があった。知らない世界の中、僕は兄があなたを愛したように恋をしていたんだ。8年もの間、毎日読んでいることが馬鹿みたいだったけど、兄の気持ちが良く分かったからあなたに会いたかった…」

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あと一回で終わるかなぁ…(;一_一)
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桜の季節 3
2010-04-14-Wed  CATEGORY: 季節SS
渚が日記を残していたことも意外だったが、『愛していた』という台詞のほうに驚愕した。
お互いに想いを伝えたことも囁いたこともなかったから…。
初めて口付けた時、渚に温かさはなかった。
魂はすでにこの世を去っていた。
最後まで渚は俺に伝えないようにと家族に頼んだ。
『顔を見たら泣いてしまうから』…と…。

「あなたに逢いたかった…」
もう一度呟かれて、人違いだと分かっていながら差し出した手の動きをとめられなかった。
ずっと触れたかった温もりがすぐそこにあるような気がした。

胸の中で嗚咽が聞こえる。
彼の肩を俺が零す涙で濡らした。
僅かに震える身体は、この世で人に預けたことなどない無垢なものをまとっていた。

「渚って呼んでいいから…。身代わりでも何でもいい。声を聞かせて…。日記の中に音はなかったんだ…」

どれほどの愛情が彼の中に渦巻いて生きていたのか漠然と知った。
世を見たことのない彼の世界で、夢見たものなのだろう…。
俺はこの愛情に堕ちてもいいのだろうか…。
彼を苦しめるだけにしかならないと思うのに、彼を愛してやりたかった。
かつて渚に何も伝えられなかった埋め合わせをするかのように…。

「あなたの名前は…?」
聞いた俺に俯いた顔が小さく戸惑う。

「…なぎさ…」
「うそ。渚さんはもういない…」
それはたとえ身代わりでもいいから愛してほしいと願う感情の表れだったのだろうか…。
目の前の人物がはっきりと渚とは違うのだと理解できる。

俺が覗き込んでみればまるで桜吹雪に消されてしまいそうな声がした。
「海(うみ)…」

「海…」
耳元で囁けば少しだけ頬を紅くした顔が見える。
恋する少年のようだ。
渚と同じ年だと聞けばずっと年上のはずなのに、腕の中の人は穢れの無い子供のようだった。
「海…」

…ごめん、こんな愛し方しかできなくて…。
心の中で二人の男に謝る。
渚を存分に愛せなかった償いかもしれないけど、海がそばにいてくれればいいと何故か思った。
渚が残した唯一のもののように感じた。
写真もメモも何もない。
この世に生を受ける前から人生を共にしていた兄弟を、俺はずっと忘れない…。

薄紅色の肌を見た時、たぶん、きっと、海も、桜の花のように儚く短く、残りわずかな人生を終えるのだと知った…。
その時は渚の時と同じように俺には知らされないのだろう。

『辛いとか悲しいとか、そんな顔、瑛佑くんには見せたくないから…』
気丈な渚の声が聞こえるようだった。

―完―

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かなり曖昧に話は終わっていますけど、残された人間はまだこの世に存在しています。ハイ、最近登場しました。結構キツイ人間になって…。
お分かりになった方はポチッて…。続きがどうなるのか私も"今"考えているところです。
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おりひめ様、ひこぼし様
2010-07-06-Tue  CATEGORY: 季節SS
もうすっかり、「シャッター通り」なんて言われる駅前の寂れた商店街。
駅の回りにはオフィスビルばかりが立ち並び、営業しているのは、チェーン店のドラッグストアと、食事処のいくつかの店舗。
「いらっしゃいませ~っ」
今日もランチタイムには元気な声が響く。
オフィスに置かれる機器のメンテナンスを担当するために、社に出社してもほとんど外回り業と一緒で、社屋近くの料理屋など知らないと言って良かった。
向き合ったテーブル席で、お互いの顔をじっくりと眺めた。
過去、嫌というほど見合わせた顔が、口を開く。
「久し振りだな、おまえとメシ、食うの」
「単独で動くどうしなんだから仕方ないっしょ」
「最後にメシ食ったの、いつだっけ」
「ちょうど一年前ですよ。七夕なのに、『織姫』に逢えない~っ!!ってないていたじゃないですか」
「…(恥)。お、…まえ、そういうこと、よく覚えてんね」
「記憶力は良いんです。顧客のトラブル日誌、かたっぱしから読み直すのも面倒だし」
「できる社員だよ…」
「で?今年は『織姫』に逢えるんですか?」
さり気なくその後の経過を尋ねてみれば、少しだけ顔を曇らせた。
…なんだか、マズイ…。聞いてはいけないことを聞いた気分…。

同じ社員とはいっても、なかなか顔を合わせる機会もないし、もちろんプライベートを曝け出すような雰囲気もあまりなかった。
聞くのは女子社員の噂話からで、情報量の多い彼女たちから、誰は既婚者だの、彼女がいるだの、先日どこの客とトラブルを起こしたとか…。
給湯室でコーヒーの一杯も淹れていれば、昨日までのアレコレが嫌でも耳に入ってくる始末だった。

目の前の男は自分の『教育者』と言っていい。
入社してからずっと面倒をみてきてくれた。
いろいろなトラブルの対処法とか、さりげない営業の仕方とか…。
一人立ちしてもう3年がたつ。
思えば、きちんとした『礼』もしていなかったな~と頭を過っていた日々。
なんとなく都合よく社で顔を合わせて、時間がとれるか?「昼食でも?」と誘ったのは自分だった。
でも、行き先を決められなかった…。
誘ったのか誘われたのか…。

「記憶力いいくせに、こういうとこ、一歩たんないよな~」
「普段いないんだから社の回りなんて知らないですよっ(照れ)」
むくれる自分とは対照的に余裕の笑みで返してきた『上司』からは、「おまえのサポート役にはいつだってなってやるよ」と力強い言葉が漏れる。
こんなところでも、まだ『一人立ちできていないのかな…?』とちょっと思う。落ち込む。

食事を待つ間、軽く発してしまった『織姫』事件を、さりげなくかわしてくれたことには、なんとなくほっとした。
振られる話題以外には突っ込んではいけないのかと、少し悟る。
なのに…。
「そういうおまえは、相手とかいないの?」
「へっ?!」
「『へ?!』じゃないよ。彼女はいないのかって話。浮いた噂一つ聞かないからさ。そろそろ『適齢期』だろ?」
周りでも結婚している人間は、月日を追うごとに増えていっているといい。
仕事が忙しいから…と言い訳を立てればそれまでだが、出会う場など、これまでなかったに等しい。
というよりも、なんだろう。
日頃の食事すら、女を誘う気分になれなかった。

「そういうあなたこそ…」といいかけたいのを、先程の『織姫』事件で口を噤む。
なにやら、別れた後なら酷な質問でしかない。

「こんな激務の間で、人にあっている時間があると思いますか~?トラブル発生したら、一秒でも早くメンテしなきゃいけないのに。時間外に呼び出されるオフィス、間違ったら徹夜ですよ」
「ククッ。確かにな。翌日の業務開始までになんとかしろって言われるし」
「そうですよ…。でもうちの機械で会社が動いているのかと思うと、ちょっと嬉しいですね」
目の前で、驚いたような、でもフッと頬を緩ませる姿がある。
「おまえの考え方には、驚かされるな。惹かれる…っていうか…」
「仕事に自信持て、って教えたの、あなたですからね」
「しばらくあっていなかったけど、こうやって本音、聞けるの、やっぱ、いいな…」
「たまには逢えたらいいですね」
「できることなら、毎日がいいんだけどな…」

一年振りの一緒に摂る食事の席で、かつての行動を共にした時を重ねては、「やっぱりまだ『半人前』?」と思ってがっくりときた。
『せめて織姫様がいて、彼を元気にしてくれればなぁ』とも思っていたりする。
「おまえ、今夜暇?」
特別トラブルが発生しなければ、今日は社屋を出る必要もない。定時でも上がれる。
頷けば、静かな笑みが見えた。
「一年振りの再会。何かしようか…」

久し振りに語れる『上司』との席もいいだろう…と、迷いもなく頷いた。

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全く意味のない七夕企画。
どっちが攻めタン?受けタン?名前もない…。
(今後?!…まさか二人の行方????)
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