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BLの丘
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【バレンタインコラボ企画】 1
2010-02-08-Mon  CATEGORY: コラボレーション
いよいよ始まりました。妄想スパイラルSKY様とのコラボ。
一週間、お楽しみいただければと思います。
本編と重なっている部分もありますが、企画ものと言うことで気になさらずどうかスルーしてください。
突っ込まれた日には連載が止まります…。



立春とはいえど、まだ『春』とは感じられない。
英人のためにと神戸が用意してくれたギャラリーは花束に囲まれてとても華やかだった。
『榛名』の姓に変わったせいか、客も以前とは違うように感じる。
千城やその両親が盛大に招待状を送ってしまったのだから分かる気はするけど…。
テレビの中で見たことのある政治家などもいて、英人のほうが萎縮していた。

夕方になる頃、会社帰りと思われるサラリーマンの男が二人、招待状を持って現れた。
年の差はありそうだが仲がよさそうに話をしているのを見るとただならぬ関係が英人には見えてくる。そういった人間に自然と目が向いてしまうのは性なのだろうか。
背の高い男は千城よりも少し年上そうだが一見して千城と変わらない身分なのだと思う。
身に着けているものも価値があるものと分かったし、立ち振舞いは迷いもなく落ち着いている。端正な顔の作りも相まって気品が窺えた。
お揃いなのだと明らかに分かる腕時計とか指輪に視線が落ちれば疑問は確信に変わった。
もともと男相手の世界で生きてきた英人だ。見破るのは容易い。

一緒にいる男の子(“男の子”という言葉がぴったりだ)は英人とあまり年齢も背丈も変わらなそうだった。細い体形が余計にそう思わせるのか、背の高い男とは10歳くらいの年の差がありそうだ。
こんな場所に来るのは初めてのことなのか、どこかおどおどとしていた所がある。迷子にならないようにくっついて歩いている…という感じが可愛くも見える。
千城が年配の客を見送ったのと同時に、受付にいた高貴そうな男に近づいていった。
男が自分の連れていた子に千城を紹介している。
「こちらが榛名千城(はるなちしろ)さんだ。うちの会社でも物件を扱わせてもらっているからきみも名前くらいは知っているだろう?」
取引のある会社の人のようで、千城が社長だと聞いた途端に目を白黒させながら慌てて丁寧な挨拶をしていた。千城の人を見下ろすような見た目に驚いているところもあるようだが…。
彼は『谷嶋薫(やしまかおる)』と名乗っていた。
「結城さん、ようこそ。初日にお越しいただけるとは…」
「こちらこそ、お招きいただきましてありがとうございます。新鋭の作家さんですか?」
「私の連れの英人です。…不動産の管理をお任せしている方だ」
会話を進めようとした千城が英人にも紹介してくれる。
英人もゲストの扱いには慣れてきている。が、いきなりの紹介のされ方には”同類”でもやっぱり抵抗はあった。
そばにも離れたところにも人はたくさんいる。
「ち…っ!何言って…んのっ」
堂々と『連れ』と発言されたことに思わず顔を赤らめて睨み上げたのだが気にされた様子もない。
結城という男も気付いたように静かに微笑んだだけでそれ以上のことを問いはしなかった。年上の落ち着きなのだろう。

お互いを紹介した後で、千城と結城は何か積もる話でもあったようで、並んで奥の方に流れていってしまった。
残されたような『薫君』がじっくりと英人をみているのだから、訝しさに眉間が寄ってしまった。
「…俺の顔に何かついている…?」
「わあああ、ご、ごめんなさい!つ、つい見惚れちゃって……」
『見惚れちゃって』…っていう発言には噴き出してしまった。
自信過剰ではないが、英人もこれまでの過去に自分の見目の良さは多少認めている。だけど同じくらい『薫君』も綺麗だと思った。
きっと愛されている時があるから今の彼があるのだろう。
「君も、ね。千城たち、あっちに行っちゃったね…。仕事関係のお付き合いなんでしょ?今日はわざわざ来てくれてありがとう。ドリンクもあるから飲む?」
受付の隣にあったテーブルからソフトドリンクを取り上げ渡してあげると緊張した面持ちで手を出した。
かしこまった薫の態度にはまた笑みがこぼれてしまう。
年だって変わらないはずなのに、丁寧な口調の空気は英人には重いような気がした。
「そんな堅苦しくしないで、ね?……『榛名』っていう名前は、俺も少し重いと思っているんだから……」
過去を晒す気はないが気を許す気はある。
こんな雰囲気のままではあまりにも彼に気の毒な気がして、緊張も解かせたい英人はさりげない言葉を口にしたつもりだった。
「あ、あの、…ちょっと聞いていいですか?」
「うん?」
それに気付いたのか、薫から言いづらそうな質問が投げかけられる。首を傾げてみれば戸惑いながらも薫の口が聞いた。
「さっき榛名さんが言っていた『連れ』って…?」
あぁ、気にしたのはそんなことかと英人は思ってしまった。まぁ突然あんな紹介をされれば誰だって疑問符を付けてしまうものだ。
「その言葉通りだよ。薫君も結城さんの…でしょ?」
『お互い様じゃないの?』って言葉の中に含ませれば、納得したような照れたような表情が見えた。
確かに堂々と公表できる間じゃないのは分かるけど…。『榛名』って発表しているだけに隠すこともない。ましてや同類と分かってしまった相手に…。
真っ赤になった薫の顔を見て、英人は思ったことが間違いではなかったのだと確信した。

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【バレンタインコラボ企画】 2
2010-02-09-Tue  CATEGORY: コラボレーション
千城は結城を連れて奥の『関係者以外立入禁止』のドアを開けた。
個展に来てもらったのに先に絵を見せないのは失礼と承知しながらも、「話したいことがある」と前置いて断りを入れれば結城は笑顔で頷いてくれた。
英人と薫を残してきてしまったが、英人も人を相手にすることに慣れてきている。同い年くらいの子だったから何かと話題を見つけるだろうと期待した。
千城と結城が顔を合わせるのは4年ぶりのことだった。
もともとは実家同士での付き合いがあったが、榛名家でも結城の両親が他界してからは疎遠になっていた。
アメリカから戻って榛名の中で会社を立ち上げた頃に結城が千城の元を訪ねたのが再会の時だった。最初の取引こそ結城と顔を合わせて行ったが、それ以降は自社の社員に任せてしまった。これといって親しく付き合う趣味などもなかったから故意的に出会いの場を設けてはこなかった。何かあれば電話で用件が済んでしまうくらいだった。
ドアの先は事務所として使われていた。部屋の奥にパーティションで仕切られた応接セットがある。会場にもテーブル席は用意されているが人前で話したい内容ではない。

二人が並んで事務所に入っていけば、二人の風貌にほとんどの人間が一瞬の絶句する間を持った。
千城の姿は見慣れていたが『事務所』というビジネスの世界で普段の威圧感ある表情を崩すことはない。それが笑みを浮かべて会話をしながら入ってきたのだから驚かされる。加えて連れていた隣の男がこれまた目を見張る容姿をしていたからだ。
二人とも180センチを越す長身だったし、こうした会場に相応しいと思える仕立ての良いスーツを身にまとっている。結城にも装飾品に劣ることのない品格が滲み出ていた。事務所にいる人間には滅多に見ることのできない光景といって良かった。

千城は事務所の入り口付近にいた女性にコーヒーの用意を頼み結城を奥のソファへと促した。一瞬の遅れもないようにと動く女性の目は結城を追っていたが手は緊張に震えていた。
千城はソファに座ると、それまでしていた雑談を終わりにして「早速ですが…」と話を切り出した。
「一つは今度開発するタワービルの管理をお願いしたいと思っております。こちらにはテナントも数多く入ることになりますし、上層階には住居としての賃貸物件もあります。工事などのメンテナンスも一括して管理していただける結城さんの会社が一番だと思っていました」
「ありがとうございます。また新しく紹介していただけて光栄です」
結城は恭しく頭を下げてきたが、それだけの話であれば自分が呼ばれる必要性のないことに疑問を持ったようだった。
結城が表向き見せていない訝しさを感じ、本来自分が口を出す必要のないビジネスの話は前置きに過ぎないと千城が話を続けた。
「実は個人的に所有しているビルがあります。今は英人の名義になっていますが管理は全部私が行っておりました。英人のアトリエ用にと買い与えたものなのですが、実際には5階あるうちの1階部分しか使用しておりません。将来のために2階部分は空けておいていただいても3階から5階までを何か有効活用ができないかと思いまして…」
「貸し出しをされるということですか?」
「どちらでも。どうにも人の手が入らないと建物も傷みやすくなりますからね。それにやたらな人間は入れたくないというのがあります」
「分かります。英人さんが出入りする以上…ということですよね」
千城の言わんとすることを汲み取った結城が頷いてくる。できることなら必要以外の人間に英人をあまり会わせたくないのが千城の深層心理だ。
足らない会話の中でも次々と先を見越してくれる結城を、千城は頼りにしていた。
「ええ。賃貸として扱って頂いくのが一番良い手段かと考えていました。その場合にはほとんどの金額を結城さんの方で手にしていただいて結構です。私も無駄に経費をかけ続けるよりは多少でも利益を生み出した方がいい」
英人の為なら金に糸目をつけない千城だったが、利益が出る可能性がある以上、これまでに培った知識が頭を巡った。
本来ならば維持費しかかからないものを、結城の手に渡すことで英人を見守る意味での『人の下』に置ける。ビルに人間が居れば、たとえ英人に会わなくても何かしら空気というものは伝わるだろう。
心配する点は入る人間の身元と対処すべき時点での時間だ。
千城は頷くだけの結城に更に言葉をかけた。
「ビル管理については専門の業者の方が何かと対応に早いものです。そして個人的に頼みたいことは何よりも最優先にしていただきたいこと。特に退去を求める相手などには…。そのための迷惑料と取っていただいても構いません。きっと結城さんのことですから信用のある方を入れてくださると信じておりますが」
千城は少しだけ笑みを湛えながらもスッと眉の端を上げた。
結城がこの話を断れないことを千城は感じていた。結城が今の地位にいるのは過去に『榛名』から多額の金額が動く仕事を手に入れたからに等しい。
さらにまだ誰にも話をしていない物件があることも明かした。これが結城の口からもたらされればまた会社での扱いは変わるだろう。
別に脅しているわけではない。話の内容はあくまでも『依頼』だ。
一呼吸の間を置いてから結城は「畏まりました」と声を漏らした。渋々というようにも迷惑がっている雰囲気も感じられなかった。それどころか人を魅了するような微笑ましい空気を纏わせた。
「お気持ちは良く分かります。きっと私も千城さんの立場なら同じことを申し上げたでしょう」




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【バレンタインコラボ企画】 3
2010-02-10-Wed  CATEGORY: コラボレーション
英人は薫とはすっかり友達のようになった。一つ年下と聞いたが英人と違ってしっかりとした意志や意見を持っているところは感心させられると同時に、自分を守ってくれるようで安心する。英人が育ってきた生活感と似たところもあったから余計に親近感が湧いた。

ギャラリーを出られたのは遅い時間になってしまった。
いつもお世話になっているフランス料理店で食事をして帰ろうとねだった英人の言葉に嫌な顔一つ見せず千城は車を向かわせた。
帰り間際、挨拶に出た料理長の楯山と近況報告を交えた会話を終えた後で、英人は千城に「楯山さんに相談したいことがあるからあっちに行ってて」と願い出た。
以前にもこの店でクリスマスケーキを作ったことがあると聞いている千城だから、また何かを企んでいるのだろうと思われたらしく大人しく従ってくれる。
英人が手早く済ませようと、バレンタイン用のチョコケーキを作らせてもらえないかと頼んだら渋い顔をされてしまった。
「英人君の申し出は聞いて上げたいんだけどね。申し訳ないが今年は日曜日で昼間から予約客だけなんだよ」
そこで初めて今年のバレンタインデーが日曜日だったと知った英人は、薫と約束してしまったことに慌てた。最終的に店に行こうと頼んだのは英人の方だった。
「あ、…どうしよう…」
思わず呟いてしまった戸惑う言葉に楯山が何事かと話を聞いてくれて、薫とケーキを作る約束をしたと告げれば「それなら二人で作ったらいい」と提案してくれた。
「けど、ちゃんとした作り方なんて…」
「その前に来られないかい?うちで練習すれば…、そうだな、当日は一世の家で作らせてもらえるだろう。あそこにはそれなりの料理長たちも揃っているしね」
楯山は豪快に笑ってくれて、英人も頭をフル回転させた。

結局英人は、当日千城をなんとか言いくるめて昼間一人で待たせることにして、絶対に千城一人では立ち寄らないだろうと思われる榛名家本邸で薫との作戦を実行する計画を立てた。
きっと千城の母、百合子に頼めば厨房の一つくらいどうにかしてくれるだろう。彼女は千城同様、英人に非常に甘い部分がある。もちろん楯山には千城に内緒にしてもらうよう頼んだ。
すでに聞いてある薫のメールに変更点を伝えれば、週に一度は理由をつけて『練習室』に立ち寄れるという。これには楯山も頷いてくれた。

「随分と親しそうに話をしていたな」
千城のマンションに戻ってバスタブの中に浸かったところで、千城の聞きたそうだった話題がこぼれてくる。背中を千城の胸に預け、ようやく一日が終わったと安堵した。
「楯山さん?」
「違う。薫と言ったか?」
薫の名前が出た途端、ドキッとしつつもなんとか平静を保った。
「うん、…あの、結城さんっていう人と…って聞いたから、なんとなく、ね」
同じような境遇であれば話題だって色々生まれてくる。彼らの間柄は千城もすでに知っていたようだった。
「あの二人も一緒に住んでいるそうだな」
「え?そうなの?」
「軽井沢で結婚式も挙げたそうだ」
「結婚式?!」
仕事関係の人間としか思っていなかった英人は、プライベートの話までする仲なのかと驚いていた。千城はほとんどの誰にだって平気で英人との間柄を口に出すが、結城も同じタイプとは想像していなかった。
「ああ。まさか結城さんの口から惚気話が出てくるとはな…」
千城が結城との会話を思い出したかのように湿り気を帯びた英人の髪に唇を寄せた。この様子では相当込み入った話をしたのだろう。
薫が結城の隣に立っていた時、幸せそうに笑っていたのが頭に浮かんで、薫も今の英人と同じくらい愛されているのだろうと想像する。
薫と話していた時はバレンタインマル秘チョコケーキ作戦の話に盛り上がり過ぎてあまり踏み込んだ話は聞いていなかった。結城の立ち振舞いを思えば『榛名家』との繋がりもあるのだろうか。
尋ねてみれば過去のいきさつを説明してくれた。結城の両親が亡くなられていると聞けば胸が痛くなる。だから薫も結城にいろいろなことをしてあげたいのだろう。
結城に喜んでもらうためにも今回の作戦を成功させるのだと心に誓っていると千城の唇が英人の首筋を這った。
「それで楯山さんとは何の話をしていたんだ?」
ニヤリと笑った千城はすでに何かの企てがあることに気付いている…。英人は千城の手から逃れられなくなったとわかりながらも一応「ないしょ」と応戦してみたのだが無駄な努力で、結局店にディナーの予約を入れたことをばらすはめになった。
薫たちも同席することは黙り続けた。それがばれればケーキ作戦のことも連鎖的に気付かれると思ったからだ。一度会っただけの人間とバレンタインデーに共に食事をするなんて更なる計画があるのだと絶対に千城は感づいてしまう…。
「ね、ぇ…、もう、話したんだから……、あ…」
「ああ。じゃあ一人で決めてしまったことの仕置きとしよう」
どんな会話を交わそうが、英人の身体の方が先に千城に縋ってしまった。


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【バレンタインコラボ企画】 4
2010-02-11-Thu  CATEGORY: コラボレーション
千城の元に結城から電話が入ったのはそれから数日後のことだった。英人のビルについて依頼した件の話は、とりあえず警備会社の待機所としての利用が決まったという。結城が何やら交渉したらしいが、その点については結城に全面的に任せることにして千城は口を出すのをやめた。警備会社の人間であればそう心配することはないだろう。ビルのセキュリティ対策としても使えそうだ。
英人に事前に報告すればボディガードを付けられたようで気に入らないだろうから、全ての準備が整うまで黙っていればいいと思った。

結城からの連絡で千城が驚かされたのは、英人から聞かされていたバレンタインデーのディナーに結城と薫も同席するということだった。
結城は薫から「せっかくだから一緒にディナーでもどうか、と英人に誘われた」と聞いたという。
「お誘い頂きましてありがとうございます」というお礼の電話だった。
確かに結城とは「いつか4人で食事でも…」と声をかけたが全くの別件だとはすぐに判断がつく。
もちろんこんなことで取り乱すような千城ではなく、結城から知る範囲のことを相槌を入れながら事細かに詳細を聞いた。
結城の語る内容には、榛名と取引もある以上「話を受けてしまった」と薫が何らかの理由を述べたような雰囲気がある。そう捉えるように仕向けたのだろうとは想像できたが、何の疑問も持たずに礼だけを述べる結城の声に、一瞬にして訝しさが浮かんだ。
単に食事をするだけであれば英人が何もこそこそと楯山と何かを話す必要などない。どちらの二人組にも大事な夜だろう。
色々な要素を集めればきっとこれには薫も一枚噛んでいるし、まだ裏があるのだろうとは容易く想像できる。
薫には結城が御礼の言葉を入れたくらいでは千城が何も気付くことはないと危機意識もなかったのか…。
どうせ英人のことだ。薫が結城に話してしまうとも思っていなかっただろうし、まさか結城と千城がこんな話をしているとも予想していないはずだ。
まだ何かある…と踏んだ千城はフッと笑みを浮かべた。

結城は薫が誘われ断れなくなり引き受けてしまった…ただの食事だけ…と解釈しているようなので気付かせるのもどうかと思ったが、どうせなら結城と二人でサプライズを用意した方が結城も楽しめるだろう。
「本当に単に食事だけと思っていますか?」
『え?』
千城の問いかけには驚いたような結城の声が返ってきた。
千城は自分の聞いていたことや感じていることを結城に話してみると感の良い彼も「確かに…」と思いを巡らせているようだった。
結城は千城の提案に乗った。隠れて何かを企画することは結城も嫌いではなさそうだ。
「それでは彼らにはこのまま黙っておいて時を過ごしてもらいましょう。問い詰めるようなことをしない方が彼らのためでしょうし」
『そうですね。あの子たちに何をしてもらえるのか楽しみですよ』
自分たちが内緒の行動を起こしたところで、きっと結城も薫に事前に悟られるようなヘマはしないだろう。
どんなものを用意するか考える時間をもらって千城は受話器を置いた。
当日の夜が楽しみだ…と仕事中ながらも鋭いはずの目尻が下がっていることに本人も気付いていない。

本来の業務以外の仕事を押し付けられることは稀にあれど、ここまで馬鹿馬鹿しいものはなかった…と千城の秘書である野崎は溜め息を零した。
「2月14日の夜に飛行船でのクルーズを予約しておけ」と千城に言われたのは、当日まで1週間と間がない日のことで…。
千城が何か楽しそうに誰かと電話で会話をしているのは数度見かけた。てっきり相手は英人だと思っていたが聞き耳を立てれば取引先の役員だと分かる。
プライベートが似たような状況にあるのだとは話しぶりから想像できたが、一度だけ社に訪れた結城との会話を漏れ聞いた時、業務の話などそっちのけで、隠す意識がないのかお互いに惚気合っている姿には一つの言葉も出なかった。
「英人が喜んでくれればそれでいいんですよ」
「ええ、私も薫君が楽しんでくれれば…」

まさに似た者同士だ…。
先程まで社長室にあったピリピリした空気など蹴散らされ、飲み物を届けに来た女性秘書までが穏やかな笑顔を見せる千城に絶句していた。
バレンタインデーに何かを企てているらしいそれぞれの恋人に、千城たちからも何かを仕掛けてやろうと考えることを悪いこととは思わないが、千城が用意した『飛行船クルーズ』のパンフレットに二つ返事で答える結城もどうなのか…。
しかも千城が話をしたのは”この機体”ということだけで、クルーズ内容は全くのオリジナルだ。当然破格の値段である。
薫という人物はともかく、英人の性格を考えれば絵でも送るか何かを作るかだろうと野崎は予想していた。結局何をどうしたって千城の望むものを手に入れるためには、最終的には千城の金を使うしかない英人にとって物を買うとは思えないし、使用する金額など高が知れるものである。二人で計画中といえば後者だろう。それも程度の限られた作品…(←いいすぎだろ)。
恋人と張り合う規模が違いすぎる。
…馬鹿馬鹿しい…。野崎はもう一度心の中で呟いた。



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ひさしぶりに野崎も出演してみました。野崎にもHappyなバレンタインデーが訪れますように…(他人事)


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【バレンタインコラボ企画】 5
2010-02-12-Fri  CATEGORY: コラボレーション
バレンタインデー当日の昼前に、「ちょっと買い物に…」と千城に声をかけてみれば、「あぁ、行って来い」と何の質問もされずに家から出された。
いつもどこに行くのか何をするのか誰に会うのか…のしつこさから思えばあまりのあっけなさに少しの違和感を持ったがそのまま薫とケーキ作りを楽しむために本邸に向かった。
薫は本邸の門の前で挙動不審者のようにおろおろとしているところだった。屋敷の造りに驚いていたものの、製作には集中したようで、無事終了して、運転手に楯山の店に運んでもらった。
英人は一旦家に戻り千城と共にディナーに行く準備をした。
…まだ、薫と結城が一緒に来ることを千城には伝えていない…。
何を言われるかとビクビクしながらも、作ったケーキを見てしまえば怒ることはないだろうと思っている。もっとも千城が英人に怒ったことなどないに等しい。

店に着くとすでに結城と薫は到着していた。
ウェィティングルームで待っていてくれたらしい二人は英人たちを視野に入れるとすぐに立ち上がって挨拶をしてきた。
「本日はありがとうございます」
二人とも個展で見かけた時のようにきっちりとしたスーツで身を包んでいた。薫と会っていた間がひらひらのぴんくのエプロン姿だったからなんだかおかしさに笑みがこぼれる。
わざとらしくも聞こえる結城の言葉に、ちらりと千城を見上げれば、まるで全てを知っていたかのように笑顔を浮かべてテーブル席への案内を待った。
用意された席は楯山が気を使ってくれたのだろうと分かる一番奥の、他の客からも離れた場所だった。空間を仕切るように置かれた緑も視線を遮ってくれる。

席に着いてからも千城と結城のさりげないやりとりは止まらなかった。
「も、もしかして、千城ってば薫君たちが来ること、知ってたの?」
英人が千城の何のそつもなく応対する姿に思わず疑問の声を上げればフッと笑われた。いくらゲストに慣れているとはいったって…。二人きりで過ごすはずと思っていた場所に部外者が来れば機嫌も悪くなりそうなのに…。
「もちろん」
「なんでっ?楯山さんには内緒にしてってお願いしておいたのに…」
当然のように答えられれば楯山に対しての信用のなさが浮かんでくる。千城が問うのは覚悟の上だったが黙っていてくれると信じていたのだ。やけになって不貞腐れれば「それは違う」と諭された。
「楯山さんには聞いていない。結城さんと話をしていた時にたまたま、ね」
「だったらそう教えてくれればいいのにっ!」
尚更悪い…。いつだってなんだってこうやって隠しちゃうんだ…。黙っていたことが馬鹿みたい…。
勢いに任せて千城の腕を数度叩けば目の前にいた薫が目をパシパシと瞬かせていた。
英人と千城のやりとりに驚いているようでもあったが、隠していたつもりの自分がしっかりと見破られて、さらにうまく誤魔化されていたことを知る今の英人には薫にまで気を使ってやれる余裕はなかった。

ちょうど良いタイミングで食前酒が届けられ、英人の機嫌を直すように千城が膨れた英人の頬を指先でそっと撫でた。
すでに食事の席は始まっているのだと言いたいのだろう…。薫と結城を前にすればむくれているわけにもいかない。
結城も薫も接客業と変わらない世界にいるだけに会話の作り方が上手だった。
千城もいつもよりもずっと相好が崩れているようで、食事中ずっと穏やかな雰囲気が流れ続けた。
薫は時折見たこともないような形の料理に結城の手助けを受けていて、微笑ましい気分になる。
英人も面倒でやりたくないことは千城に頼んだ。お皿を交換してもらったというほうが正しい。
「ねぇ…」とそっと囁けば分かったように「ちょっと待っていろ」と料理の身を崩してくれる。親の前でこんなことはご法度だが人前で甘えられる空間は一層英人を我が儘にしそうだ。
一通りの食事を終え、届けられたデザートには千城も結城も一瞬言葉を失っていた。
どう見てもこれまで食していた整った料理とは明らかに違ういびつな物が出てきたからだった。
いや、うまくはいっている。形が崩れているとかそんなこともない。デコレーションもそれなりにされてはいるが、『素人作品』とはっきりと分かるものだけに、目の前に出たチョコレートケーキに黙ったのだ。
「もしかして、まさかこれ…」
先に口を開いたのは結城だった。結城はすぐに隣にいる薫を見て、恥ずかしそうに照れている姿を視界に収めれば、これまでにも見たことのない極上の笑みを湛えていた。薫がこの顔を見たかったのだとすぐに分かる。
そこに楯山が顔を出した。
「こんばんは。本日はようこそ」
決まり切った挨拶をしながらも、楯山からこのケーキが自分の店で教えながら作ったものでなく、二人が持ちこんだものだと聞けば、さすがの千城も驚きを隠せなかった。
その態度をみれば英人が楯山と何かをしようとしていたのだと想像していたようだが、人の手を借りずに作り上げたと耳にすれば感動はひとしおだったようで「最高だ」と千城からも声がこぼれた。
多少の脚色(本邸のコックに手伝ってもらっている)はあるにしても、心から喜んでくれたことに英人の心もとても暖かくなった。



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