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BLの丘
珍客の土産 2
2013-07-16-Tue  CATEGORY: 珍客
上階の部屋は予想した通りスィートルームだった。
角部屋のそこは、L字型にテラスが設けられていて、縦に長い部屋はどの位置からも屋外が一望できるようになっている。
さすがにまだ時間が早いせいか、夜景が望めるものではなかったが、見慣れた街並みも豪華な部屋から眺めると違ったものに見えることだろう。

「おかえり」
出迎えてくれた佳史は家にいる時と同様、胸元のボタンを三つほど開けた七分袖のシャツに麻のズボンという軽装だった。
「ただいま…」
その会話はいつもと変わらないのに、妙な気恥かしさが込み上がってくる。
場所が変われば二人が漂わせる雰囲気もどこかしら変わってくるのだろうか。
振り返れば二人で出かけた…などとは、この歳になりながら数えるほどしかない。
「今日も暑かっただろう?バスルーム使う?テラスに面したジャグジーだよ」
リビングルームに連れられながら、部屋の中を簡単に説明される。
ヨーロピアンモダンな客室には、窓の外が見られるように配置されたソファ、ダイニングテーブルにミニバー、一角にはワークデスクも置かれている。
6畳ほどの畳コーナーまであり、ゆったりとした時間が過ごせそうだ。
奥へと続く扉を指し示されては、バスルームはそちらだと言われているのも同然だった。
まずは汗を流してのんびりしようか…。
望はワークデスクに鞄を乗せると、奥へと身を滑らせた。

円形のジャグジーバスとシャワーブースは一見したら外から丸見えだろうと思われる、ガラスに覆われた世界だった。
端にある小さな説明書きのカードに『マジックミラー』であることが表記されていて、覗かれる心配はないらしい。
木製のデッキチェアまで完備されて、ここからでも景色を楽しむことができた。
汗をかいた一日が流されていく。
夕焼け空もまだ早い、明るい日差しが差し込んでくる。
一瞬時間と場所を忘れてしまいそうになる。
生活空間のすぐそばにありながら、全くの異空間は日常からかけ離れ過ぎていた。

ジャグジーに身を預けていると、カチャリとドアが開いて、服を着たままの佳史が歩み寄ってきた。
どうしたのかと見上げ、佳史は広い縁に手のひらをついて身をかがめてこめかみにキスを一つ落としてきた。
自分の体だけを晒しているような現状は、あまり喜べた環境ではないだろうと脳裏を過った。
普段から望が裸体を佳史に見せたがらないこともある。
年老いた肉体などみっともないだけだと思っていた。
同じベッドに入った時ですら、部屋の明かりを灯すことを嫌がってきた。
それが今、しっかりと太陽光の下に晒されているのだから落ち付かない。
佳史は世間話をする態度を変えなかった。
視線を合わせているから"見られている"意識は、少しだけ緩む。
「夕食だけど、ルームサービスでもいいかな」
改めて尋ねられることかと眉根が寄ってしまう。
夕食の時間まではまだあるが、レストランを利用するのであれば予約が必要となる。
部屋を出入りすることの面倒も加わるのだろうか。
佳史が望を求めてくれることに何ら不満は生まれない。
佳史の過ごしたいように過ごせばいいのにと思わず声が漏れてしまった。
「そんなの、どっちだって…。佳史に任せるよ」
「せっかくだから話題のレストランでも…と思ったんだけど、満席らしいんだ。まぁ、突然のことだから仕方ないんだけれどね」
残念そうな声は、本気で利用したかったのだろうかと思わせた。
別に望をないがしろにしているわけでもなく、単にもてなしたい佳史の精神が言わせているのだろうが、なんとなく二人の時間に水をさされた気分になってしまう。
それもこれも、『特別な空間』に招待された贅沢が望を我が儘にしているようだった。
「そう…。それなら、ねぇ…。じゃあ、またの機会にしようか」
佳史の提案を快く思っていないなどとは微塵も出さずに言葉を選んでかわした。
次、来ることなんてあるのだろうか…という僅かな疑問は頭の端に追いやった。
レストランを利用するだけならいつだって来られる距離なのに、だからこそ、足が遠のいている原因にもなっている。
望の社交辞令のようなセリフに、意味を理解する佳史も苦笑いだった。
「そうだな。何も混雑中に出かけていかなくてもいいか…。今のイベントが終われば一段落するだろうし」
「『イベント』?」
どうにも話の論点がかみ合わないことに、ようやく気付く。
一泊の宿泊をどういったいきさつでプレゼントされたかの話以外、まだ辿りついたばかりの望には聞かされていないのだから、状況の理解もいまひとつだ。
「あぁ。ちょうど新進気鋭画家の個展をバンケットホールで開催しているんだって。今週いっぱいだって言ってたし、集客を目的としているせいもあって、いろいろな人が寄っているんだろう」
ホテルを利用するのは、何も宿泊客だけではない。
コーヒーラウンジが普段とは違うにぎわいを見せていたのもそのせいか…と脳裏をかすめていった。
せっかくだから『デート気分』を味わいたかったのは、佳史もだったのかと、意向を伺えた気分だった。
きっと望の到着時間が早くなったことも関係しているのだろう。
ただ部屋に籠っていても、それはいつもの過ごし方と変わらないのだから。

一般客の入場は午後5時30分で打ち切られるのだという。ただ宿泊客は夜9時まで自由見学できるそうだ。
望は今のんびりとバスタブに浸かっていたが、この後身支度を整えれば、一般客のいなくなる時間帯に入る。
"ついで"と言ってレストランを利用する客がいかに多いかを、『満席』と言われた言葉で実感してしまった。
所詮、一つの建物の中だ…と望は思いなおした。
それに佳史が思考を巡らせるように、ふたりきりで出かけたことなど、数えるくらいしかないのだから、たまに与えられたチャンスと切り替えて有効活用するのは悪くない。

「佳史も入る?」
「俺は先に使わせてもらったよ。それに今コトに及んだら望が動けなくなるだろう。色々なものを少しずつ楽しませてもらうよ」
何気なく尋ねたことに、意味をもって返されたら言葉に詰まってしまう。
すぐさま情事を思い浮かべるその脳回路も、さらりと発される充実感満載のプランも感心してしまえる。
だけど全てが嫌でないのだからまた困ったものだ。
ニヤリと口角を上げては、片手を振って「ごゆっくり」と出ていった。

個展会場では何を語るわけでもなく、だが並んで表を歩くことがいかに少ないかを改めて実感させられてもいた。
だからこそ新鮮な感覚が全身に広がる。
たまにはこうして出かけてみたいと思わせてくれるもの。それは近場でもいいから、息抜きになるのだと教えてくれるものでもあった。
そして一回り見学をして戻り、ルームサービスのオーダーを時間指定で済ませてから、今度は二人でバスルームを利用した。
いつのまにやら太陽は傾き、今日最後の輝きを地上に放っている。
刻一刻と情景を変えていく様を二人並んで見られることが、酷く落ちついて心に響いてきた。
視線が合えば寄る肌がある。
重なる唇から熱い吐息が伝わる。
熱い一日はまだ終わる気配を見せないようだった。

夕焼け

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コメント

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ふふっ。
コメントちー | URL | 2013-07-16-Tue 21:38 [編集]
いやあ、望さんて可愛いよね。
38で、年寄り?はあ、ナメテンノカー!
SMAP何か、キムタク、中居はとうに40越えてるから。
でも、アイドルゆーてるがな(笑)
裸くらい見せてやれー←何か、違う

きえちん、夕日の写真スゴく綺麗。
言葉にならないくらい素敵です。
ありがとうm(__)m


ガラガラガラ コンコン
『はい』
「ルームサービスですっ」

カチャ。
ドアが開いたらミッション開始。

「んんっ。テーブルにセッティングしますので、少々お待ちください」
「?喉、どうかしましたか?診ましょうか?」
「ひっ。だ、だ、だい、大丈夫です」
「そう?じゃあ、お願いしますね」

『佳史~?誰か来た?』
『ルームサービスだよ。こっちで待ってよう』

師匠「危ない危ない。にったん、ちーに殺されるとこ
だったよ?」
ni 「本当ですよぅ、ヤバかった」

ちー『見えてるし、聞こえてるから・・・』
さえ『見てみてー。美味しそうでしょ』

さてさて、佳史さんと望さん。
静かで熱い夜は迎えられるのでしょうか。
Re: ふふっ。
コメントたつみきえ | URL | 2013-07-17-Wed 20:20 [編集]
ちーさま こんばんは。

> いやあ、望さんて可愛いよね。
> 38で、年寄り?はあ、ナメテンノカー!

まぁまぁヾ(- -;)怒らないで。
他の連中が若いのでひねくれてみただけです。きっと。
佐貫は成俊に獲られたし。
裸見せないのは照れ屋さんだからってことにしましょう(←)

> きえちん、夕日の写真スゴく綺麗。
> 言葉にならないくらい素敵です。
> ありがとうm(__)m

お褒めの言葉、ありがとーです♪
都会とは無縁の、何もないところで撮影したものでした。
(しかも車窓からなので結構ピンボケしている…)
荒涼とした地だったので、太陽だけを切り抜き(*^-')b

> さてさて、佳史さんと望さん。
> 静かで熱い夜は迎えられるのでしょうか。

どうなんでしょうね。
熱い夜はともかく、静かなのは無理なような…(だって自分の喘ぎ声で…(゚×゚))
あとは佳史センセにお任せしましょう。
コメントありがとうございました。
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