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BLの丘
緑の中の吐息 7
2013-06-08-Sat  CATEGORY: 吐息
『東屋』を改築した…(と美琴は言う)建て物を回りこんで、そこから下っていく小道を進んだ。
改築、というほどのものではなく、単純に周囲をベニヤ板で打ちつけているだけのものだった。
最初のうちは岩や小石がゴロゴロとしていて、それらがうまく端に避けられて『道』を作りだしていたが、やがて両脇を草むらに覆われてくる。
地中に埋まった石を階段に見立てたのか、ところどころ曲がりくねっていた。
直滑降のルートでないところがまだ救われる。
今度は瑛佑が先を歩いていった。
滑らないように気を使いながら、また数メートル進んでは美琴の姿を確認するために振り返る。
さすがにここでは狭く、ふたり横に並んで歩くことはできない。
小道は雑木林の中へと続いていったが、終点は見えてこない。
このまま、遊歩道へと繋がってくれるのならいいのだが、雑木林の薄暗さに覆われて、方向すら見失った。

整備された道ではないだけに進みも遅かったのだが、どれくらい歩いただろう。
30分くらい経過してから、本来のコースであれば、中間地点まで降りたことを理解した。
それでもまだ途切れることのないけもの道が美琴たちを誘導するようだった。
美琴は通過時間を確認する意味も含めて、数枚の写真を収めながら歩き続けた。

斜面を横切る道に出ては、急勾配であることを教えられる。
一歩踏み外せば崖側への転落は免れそうにない。
また振り返った瑛佑が、手を差し伸べてきて、美琴の手首を掴んだ。
「ここまで来て何だけど…、このままこの道で下山する?」
「え?」
神妙な顔で問われて美琴は一瞬面食らった。
言い聞かせるように瑛佑の口が開いた。
「歩き進んで、公園周辺に出てくれるのならいい。だけどそれを通り過ぎた、もっと下のほうとか、全くの方向違いに出たら完全に俺たちは現在地が分からなくなるよ。どうやって車まで戻る?」
地理に詳しくない人間が、探求心だけで突き進むことの危険さを教えられる。
美琴は単純に、全ての道が『公園』に繋がっていると思いこんでいたが、瑛佑の言うとおり、最終的な着地点が分からないのだ。
自分の考えの浅はかさを思い知らされた。
ハッとさせられて、美琴も来た道を戻るのが無難だと思うことができた。
「そう…ですね。無駄足をさせてしまいました」
「俺はべつにいいけれどさ。また登りになるから、ゆっくり休みながら行こう」
笑顔で答えられて、多少のいたたまれなさを感じたが、瑛佑の性格ではこれくらいのことで怒ったりなどしないと承知している。
そのあたりも美琴を素直に甘えられるようにしてしまうマジックだろうか。

一度水分補給をしてから、視線だけで「戻ろう」と確認し合った。
降りることに慣れていたせいか、山道を登るのに腿の筋肉がプルプルしてくる。
背後についてくれた瑛佑も、美琴の歩幅が小さくなり、スピードが落ちていることを認識しているはずだ。
だけど慌てさせるようなこともしない。

その時、美琴は頬に当たる何かに気をとられた。
「え?」
「美琴さん?」
ふと見上げたあと、ポツポツと顔に落ちてくるものが肌を濡らした。
これには瑛佑も気付いたようだ。
「雨か…。本降りにならないうちに上がりきれればいいな…」
天気がくずれるかもしれない。それは予想していたことであったが、まさかこの状況で…とは思ってもいなかった。
その状況が、より美琴を焦らせてもいた。
冷静さを欠いたと言ってもいい。
「え…瑛佑、急ぎましょうっ」
走りださんばかりの勢いで踏み出した美琴を咄嗟に瑛佑は止めようとしたが、伸ばしたはずの手は空を切った。
ただでさえ、水分を含んでいた土は、足に力を込めたことで滑ったのだ。
「あ…」
前かがみに倒れただけなら膝をつくくらいで済んだだろう。
しかし美琴の体はバランスを失って、斜面側に転がってしまった。
「美琴さ、美琴っ!!」
瑛佑の声がこだまする。
頭をかばうように丸まった体は、ボールか岩のように滑り落ち、茂っていた草をなぎ倒して数メートル下って止まった。
重なるように倒れていた倒木がなかったら、もっと下まで落ちていたかもしれない。
考えただけで身ぶるいがした。
「美琴さんっ」
慎重に後を追いかけてきた瑛佑が、美琴の脇にしゃがみこんだ。
「大丈夫?怪我は?」
手を差しのべられて顎を上げさせられた美琴の髪には枯れ葉や草がからみついている。
青ざめた顔には、数か所の切り傷ができていた。

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コメント

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おはようございます
コメントきえ | URL | 2013-06-08-Sat 06:27 [編集]
全然レスまで回らなくてすみません。
私もずっと 何故美琴 が いつもアンケで独走態勢に入るのか理解できないでいた一人です(←)
読者様のご意見、聞きつつ、少しずつ納得してきたかなぁ。

拍手コメk様
> 紺色のイルカの美琴っちゃんパジャマ、見た~いな~、かわいいだろうなあ、見たいなあ~。

ここに食らいついてくれちゃったのか…と笑ってしまいました。
イラストが書けたら書くんですけれどね~。
でも私が書いたらイメージ壊しそうです。

> すごく気持ちよさそう。家に居ながらハイキング♡

ようやく探しあててきた、たった一枚の写真でした。
もっと他にあったはずなのに、どこにしまいこんでしまったのやら…。
暑い日には こんなところに行って涼みたいですね。

人生山あり谷あり で、山登りに来ちゃったふたりです。

相変わらずカメ並みの展開のない進めかたになっていますが、書ききれたらいいなぁ。
早いもので創立記念日(?)まであと2週間ですね。
皆様、いつもお付き合いありがとうございます。
きえちんが、言っちゃうの~~(( ´∀`))ゲラゲラ
コメントけいったん | URL | 2013-06-08-Sat 08:35 [編集]
作者のきえちんでさえ 「美琴人気」は (@ω@)へ? なんだねー(笑)

主役より 脇役に食い付く 私の様な読者も居るし!
読者の好みも 多種多様って事ですね♪


6月29日のブログ開設記念日まで 後2週間ですね!
読者の皆様の たくさんのお祝いコメを お待ちしております。┏○))ペコ
皆様と 一緒に 楽しく過ごしましょう♪

…あっ、感想コメを書くのを忘れてたわぁ~~(;-ω-)ゞ




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