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BLの丘
新しい家族 23
2012-01-30-Mon  CATEGORY: 新しい家族
玄関を入ると早速和紀が待ち構えていた。悲愴な面持ちで無事を確認される。
「ひなっ」
ぎゅっと抱きしめられた瞬間、日生の中で耐えていた何かが弾けた。
布越しに感じる肌の温かさ。押さえつけられたものとは違う、包んでくれる優しさが和紀にはある。
この人を求めていたから尚更なのか…。
「わ…き…」
一度は止まった涙が再び溢れた。
温かさに触れるから余計に通ってきた恐怖を思い出す。あんなところにはもう行きたくない…。
「わ、き…く…、…和紀…」
声を抑えることもできず、日生は子供のように感情任せに泣き喚いた。
声を上げて泣くなどいつぶりか…。混み上がってくるものを吐き出すように泣くのは、たぶん初めての気がする。
周防には迷惑をかけていることが分かっていたから、あの店で顔を見てホッとできても、感情を表すことはできなかった。
ここにきて全身で日生を守ってくれる腕を感じて気が緩み切ったのだ。
和紀の首に縋りつき、腰を支えてくれる腕に身を預ける。
何か言いたいことがあるのだろうに、今は日生の思いを優先させてくれる。

周防は脇を通り抜けリビングへと向かっていく。
二人残された玄関ホールにはしばらくの間、日生の泣き声が響いていた。
「ひな、話、できるか?」
詳細を聞きたいのは和紀だけではない。
突然飛び込んできた周防だって、日生を救いだすことを最優先にしていて、状況など把握していなのはずだった。
どうにか涙だけの泣く姿に変えて、コクコクと頷くと和紀が徐に日生を横抱きにした。
さすがに周防がいる前でこんな恰好を見せるのもどうかと思うが、泣いて力の抜けた日生に抵抗する気も起きなかった。
リビングでは上着を脱ぎネクタイを緩めた周防が、いつものように缶ビールを持って寛いでいる。
しかし端々に怒りの影が潜んでいるのを和紀も日生も気付かないはずがない。それらが奈義に向けられているものだとも悟ることができたが、日生には半分は自分の責任だと負うものを感じた。
和紀は斜向かいのソファに日生を下ろし、日生を真ん中にして隣に座った。
「あの男、何か言い訳でも言ったの?」
「いや。というより、言わせなかった、ってほうか」
和紀の問いに周防は素っ気なく答える程度だった。
その答えで周防が奈義にどう振舞ったのか、ある程度想像ができる。これで二度と日生に手を出してくるようなことがなくなればいい。
「ご、…ごめんなさ…」
今になってようやく、日生は周防の手を煩わせたことを詫びた。
本郷と勉強をするという日は、時間の都合がつけば和紀か周防が迎えに来てくれたし、それでなければタクシーを使って帰宅していた。
公共機関の乗り物は人波に気圧されて日生一人での移動は難しいのを承知されている。
連絡も入れていない上に、奈義と関わるなという約束事まで破ったことをどれだけ責められるかと思った。
だが周防は日生自身を怒ったりしてこない。
「日生、どこで奈義に会った?」
「あ…、ハンバーガーショップで…。本郷さんと勉強していたら突然現れて…」
「店に?あいつ、あの格好で乗り込んだのか?」
「ひな、それって友達の人には何て言ったの?」
矢継ぎ早な質問が次々と飛んでくる。
ほとんど連れ去られる形だったこと、本郷とは話もできなかったこと。
日生が状況を伝えると二人とも激しく怒りを露わにした。公共の場で関連性を裏付けるように行動した奈義を罵倒する。
今現在本郷が持っているだろう、日生のイメージというものはこれまでと覆り、マイナスの方向に動いているなどと、二人には容易く想像できるものだった。
悪い噂ほど先行する。だからこそ、周防は和紀と日生には関わり合いを持たせないよう暮らしてきた。
奈義自身、理解のある人間だったから向こうから近付いてくることなど滅多にない、ほど良い距離感を保ってここまでやってくることができた。
それを、立場を忘れたように日生に関しては目の色を変える。
今回お灸を据えたつもりでいるが、気が抜けないのはこの先も同じだろう。
「奈義には日生に”社会科見学”させてもらった礼をまだまだしなきゃならなさそうだな」
「親父、何、呑気な事を言っているんだよっ」
「でも日生が自覚を持ったって言うのは進歩だろう。もうこれっぽっちも奈義の話を聞いてやろうなんていう考えは浮かばないだろ」
日生は俯いて反省の色を見せた。
借金の問題にしろ、資金繰りにしろ、日生一人でどうにかできる問題ではないと痛感させられる。
安易に考えていたことを暴かれた気分だ。
「日生が勉強ばかりでは飽きて働きたいというのであれば、支障が出ない程度に勤め口を用意するが。少しずつでも社会に馴染んでいくのは悪いことじゃない」
「親父っ!?」
周防からの提案は、突然、というより、周防の中ではすでに考えられていたことでもあったのかと思う。
今のことだけでなく将来まで見通す力は年長者の強みでもあるのか。さらに日生の中にある『借金』という燻ったものも同時に払拭してしまうよう、考え方を持って行かせる。
もちろん気休め程度にしかならない稼ぎなのだろうが、何もしないでいるよりは気分も違ってくる。
ずっと家にこもりがちな日生のことは色々な意味で心配の種でもあるのだろう。
通信教育という形でありながらも大学に進学し、交流の場を持てたことは二人にとって安堵できるものも含まれていた。
和紀は納得いかなそうであったが、日生は周防からの話には安心して耳を傾けることができる。生活のことも将来のことも、深く掘り下げて会話をしてきたのは周防のほうだった。
そう、その頃から丁度、和紀が日生を構わなくなったのもあった。
「はぁ…」
何か思うところがあるのか、和紀は大きな溜め息を一つつくと立ち上がってキッチンへと向かう。
その後姿を視線で追い掛けながら、今縮まったと思ったばかりの溝がまた広がったような錯覚を日生は覚えた。

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-01-30-Mon 16:39 [編集]
幼い頃に酷い生活を過ごした日生
可哀想で愛おしくて 無菌生活をさせたのが、今となって 宜しくない結果に!
まぁちょこちょこ間に 色々ありましたが(苦笑)

そろそろ 免疫をつけなくては、奈義のような奴が いつまた現れることやら~
周防パパ、和紀兄が安心できて 日生が しっかり社会勉強が出来る場所って?・・・
(。-`ω´-)ンー・・・∑(o・。・o)b あっ...byebye☆
ひなちゃん
コメントちー | URL | 2012-01-31-Tue 04:42 [編集]
そうそう!本郷の誤解を解かなくちゃ。
できるか、ひなちゃん?
パパやお兄ちゃんじゃないけど、ひなちゃんから目が離せません。

スッゴク可愛いんだろうなあ。
欲しい、ひなちゃん。

あ、親子に叱られる。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-01-31-Tue 11:37 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 幼い頃に酷い生活を過ごした日生
> 可哀想で愛おしくて 無菌生活をさせたのが、今となって 宜しくない結果に!
> まぁちょこちょこ間に 色々ありましたが(苦笑)

無菌生活!! ほんと三隅家に来てからはそんな感じで育ちましたね。
無知なのも困ったものだ…。
少しずつ教えていかなければならないことが山積み?!

> そろそろ 免疫をつけなくては、奈義のような奴が いつまた現れることやら~
> 周防パパ、和紀兄が安心できて 日生が しっかり社会勉強が出来る場所って?・・・
> (。-`ω´-)ンー・・・∑(o・。・o)b あっ...byebye☆

社会勉強ができる場所…。
あら、けいったん様何かひらめいたご様子。
みんなが安心できないとね。
心ここにあらずで仕事をするのは良くないですから~。
コメントありがとうございました。

Re: ひなちゃん
コメントたつみきえ | URL | 2012-01-31-Tue 11:46 [編集]
ちー様
こんにちは。

> そうそう!本郷の誤解を解かなくちゃ。
> できるか、ひなちゃん?
> パパやお兄ちゃんじゃないけど、ひなちゃんから目が離せません。

日生一人だとまだまだね…。
箱入り息子はそういう問題にすごく弱いんですよ~。
困ったことに…。

> スッゴク可愛いんだろうなあ。
> 欲しい、ひなちゃん。
>
> あ、親子に叱られる。

可愛いんですかね~。和紀にとっては目の中に入れても痛くない存在なんでしょうが。
それは周防パパも同じかな。
是非是非愛でてあげてください。(誰も怒りません。大丈夫です)
コメントありがとうございました。

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