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BLの丘
淋しい夜に泣く声 15
2009-09-16-Wed  CATEGORY: 淋しい夜
次の日の夕方、久し振りに現れた秘書の野崎に、「ドレスコードのあるお店なので…」と、着ていく服を選ばれた。
見たこともない濃紺色のタキシードの一式をクローゼットから出され着替えるよう無言で促された時、そんな場所に出かけていけるマナーも何も持ち合わせていないと焦る英人に、「社長がどうにでもしてくださいます」と簡単に言い放たれる。
ピッタリとした襟元に蝶ネクタイを合わせられ不安を持ちながら、着いた先は建物の間に潜みながらもイタリアンだかフレンチだか分からないような、一見して高級感を窺わせるレストランだった。
中に足を踏み入れれば、地中海を思わせる雰囲気造りが凝らされた明るい店だった。
一番奥の、特別に用意されたらしい個室に英人を案内すると、給仕と共に野崎も下がっていった。

個室の中にはすでに榛名と、向かい合わせには榛名とあまり年の差を感じさせない銀縁の眼鏡をかける知的な印象を持たせる男がいた。
否応なく榛名の隣に座らせられ、向かいの男はまじまじと英人を眺めていた。
「また随分と若い人を手に入れましたね」
丁寧な口調ではあったが、榛名に向かう素振りは敬意を表しているものではなかった。
わざとらしく言い放たれた言葉に榛名も薄笑みを浮かべた。
「おまえが捕まえるのとさほど変わりはないだろう?私が目を付けただけだ。今度のプロジェクトが始まる前に個展を開かせようと思っている」
全く予想していなかった言葉が榛名の口から飛び出せば、誰が構うことなく英人の真ん丸く開いた瞳は榛名を凝視していた。
「はぁっ!?」

個展と言えば、それなりに作品数も必要とされ、地位や名声、費用だってかかる。
それに、最終プレゼンにまで2カ月程度と切羽詰まった段階で、個展の準備などしていられないのは誰が見たところで明らかだった。
「まあ、千城が望むならいくらでも準備はできますが」
社長の名前を何のためらいもなく呼び捨てにし、ニヤリと笑った男は英人から視線を反らさなかった。
何かに睨まれた動物のように、縮こまる英人に、隣の榛名が冗談ともつかない言葉で相手の男を威嚇した。
「お前に頼みたいのは展示までだ。それ以上はなくていい。プロジェクトが開始されるまでに少しでもこいつの名前を出したいと前に話しただろう。うちの部門に名前が出るだけでいい」

二人の間ですでに細かなやり取りがされているのは一目瞭然だった。
これまでと同様、英人に何を拒否するなどという権限は与えられていない。用意された土俵に否応が無く立たされるだけだ。

榛名に紹介された男は、神戸長流(かんべ たける)といい、企業に勤める頃からその名前は聞いたことがあった。
フリーでCMプランナーとして数多くの作品を手掛け、業界では若手でも名の売れた人物だ。
斬新で意外性のある発想は各方面から一目を置かれていた。榛名との繋がりがどのようなものであるのかまで想像しきれなかったが、二人の会話を聞けば、深い繋がりがあるのは明白だった。
「傲慢なんだか謙虚なんだか分からない発言だね。はいはい。分かりましたよ。期間がないから個展は無理としても作品を展示することは可能です。先日頂いた作品も見応えがありましたから名前が売れるのは時間の問題でしょう」
いくつものギャラリーを持つこの男は、榛名の要求を断ることはなかった。
先日届けられたという作品が、英人が取り戻した某メーカーに送ったものだとはすぐに察することができる。その他にも適当に描いたはずのラフが手に渡っていると知れば驚きは重なるばかりだった。

「少なくてもあと数点は出してください」と言い忘れることなく、英人を見据えた。
人を探るような視線はどこか榛名に似ている。もっとも榛名のほうが神戸よりも鋭い眼光を放っているのできつさはなかったが…。
神戸が持つギャラリーに作品が並べられれば、嫌でも人目に触れることになる。
そこに結果を生み出そうとしている榛名の意図が見えて、英人は震えた。話だけが大きくなっていく見知らぬ世界に畏怖すら感じる。

榛名には、「プロジェクトのことは考えなくていいから作品を上げろ」と言われた。
どんな策略を巡らせているのか聞くのも怖かった英人はひたすら頷くしかない。
ほんの数日前までは想像もしていなかった夢がすぐそこに広がっていた。期待に胸が高まると同時に生まれる緊張感。
順序良く出されてくる料理の味など分からなかった。
二人が繰り広げる雑談を耳にしながら、硬くなる英人の心臓は壊れそうなほどバクバクとしていた。

帰る車に乗り込もうと店の外に出た時に、ふいに後ろから声をかけられた。
「英人? 英人だよな。うっわー、久し振り」
興奮するのを抑えられないかのように上がった声。
隣で英人をエスコートするように居た榛名が訝しげな視線を彼に向けた。

そこには、初めて英人を抱いた男、木村元樹が立っていた。

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やっと、やーっと元樹を出すことができた(◎o◎;)ゼーハー
超強引にここまで持ってきてしまった感じが…(冷汗
すでに『元樹って誰?』とお思いの方、一話をご覧ください。ここ
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コメント

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おはようございます
コメントメグミ | URL | 2009-09-16-Wed 09:43 [編集]
元樹くん出てきましたね~o(^-^)o

忘れてしまっていたので一話目を読み直してきました♪

栄人を知ってる人物に再会するとは…

何やら一悶着有りそうな雰囲気?

千城さんとのエチは読みながら萌えさせて頂きました(≧∇≦)
プロジェクトが進むに連れてまた2人の距離は縮まって行くことを期待しつつ、楽しみにしております♪
Re: おはようございます
コメントきえ | URL | 2009-09-16-Wed 18:38 [編集]
こんばんは。遅くなりました。
> 元樹くん出てきましたね~o(^-^)o
やっと、やっとですよ~。
当初の話の筋を忘れそうです(汗

> 忘れてしまっていたので一話目を読み直してきました♪
ありがとうございますっ!
展開なさすぎの我が家!!
申し訳ないですっ!!

> 何やら一悶着有りそうな雰囲気?
一つと言わずに二つも三つも起こりそうです(/_;)
どうするのよ、ひでちゃん…ってなふうに私が脅えています。

> 千城さんとのエチは読みながら萌えさせて頂きました(≧∇≦)
> プロジェクトが進むに連れてまた2人の距離は縮まって行くことを期待しつつ、楽しみにしております♪
縮まるんでしょうか…?!開くんでしょうか?!
ご期待いただきありがとうございますっ!!
うちのエチは書くと長くなるので避けたいくらいです。

ぜひまたコメください。(いつも読み逃げでこんなこと言える立場ではありませんが…)
ありがとうございましたっ!!
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