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BLの丘
ただそこにいて 39
2011-10-02-Sun  CATEGORY: ただそこにいて
ソファに寝転がって本を読んでいた俊輔は、階下から響いてくる物音に体を起こした。
津和野が帰るのだろう。
先程は伊佐に「仕事の話はするな」と止められてしまったが、やっぱり職場に戻りたい気持ちはある。
二人の話しあいがどう決着したのか、伊佐からだけではなく津和野からも聞きたかった。
だけど反面で、寮に戻りたいかと聞かれたら…。
俊輔の頭からは、『通う』という選択肢がはがれおちていた。

「先生っ」
寝室を出た俊輔は廊下から階下に向かって先に声を上げた。
「あぁ、俊くん。今行こうと思っていたんだ」
慌てて階段を駆け下りれば、やはり廊下からこちらに向かおうとしていた津和野と伊佐の姿が見える。
二人に促されてリビングに戻った。先程と同じように、伊佐の隣に腰を下ろして向かいに津和野が座る。
先に話を切り出したのは津和野だった。
「返済のことも武雄から聞いたよ。弁護士たてて手筈を整えるって言うから、今までみたいに躍起になることもないでしょう。工場は人手不足ではあるから戻ってほしいのはあるけどね。どっかの誰かさんはすぐには働かせたくないようだし」
「働かせる、どうこうより、環境だろう。今の状況は俊輔にとっていいとは言えない」
「仁多くんのことか…」
小さな吐息と共に津和野から懐かしいと思える名前が出た。
借金返済については俊輔が想像もしていなかった方向ですでに話がついているようで慌てもするが、そのことはまた後で伊佐と話をすればいい。
津和野がいる今、聞きたいのは違う話だ。
「吉賀…。吉賀、あの後…」
襲われるように抱かれてから、俊輔は吉賀に会っていなかった。
自分は夢の中を彷徨うように幸せな時間を過ごしたが、吉賀はその後どうしたのだろう。
まだ自分のことを好きと言ってくれるのだろうか…。
伊佐を前にそんなことを思うのはお門違いであるのだが、長いこと抱いてきた気持ちがすぐに変わるものでもなかった。
「こってりお説教しておいたよ。…と言いたいところだけど。元は俺がからかったのが原因だしね」
肩をすくめながら津和野は口角を上げる。大したことは伝えていないのだろう。
吉賀を煽ったのは自分だと非を認める津和野に俊輔は少し驚かされた。
すでに吉賀の気持ちも俊輔の思うものも気付いていたといった態度だ。だけど俊輔は吉賀に対して素直にならなかった…。
そこに流れ込むまでの背景を作り、吉賀だけを責められない状況まで把握していたのか…。
伊佐の手が伸びてくる。頭上をポンポンと撫でられる。
「赦すかゆるさないかは俊輔次第だけどな。あぁ、だけど知名のことは目一杯恨んでいいぞ」
「はいはい。憎まれ役はいくらだってやってやりますよ。騙すこともなくね」
なんとなく伊佐と津和野の間で火花が散っているように見えたが、俊輔の内心はそれに構えるほど余裕はなかった。
吉賀は俊輔が再び近づいていくことを待っていてくれるのだろうか…。
伊佐の台詞は「赦す」ことで元に戻れると言っている気がする。
『本当に求めるもの』…。
目の前の毒リンゴに惑わされることなく心の向くままに…。
俊輔はまだ見極めることなんてできなかったけれど、伊佐のそばにいて『素直』になるという意味を知った気がする。
伊佐を求めたのは確かだし、居心地が良いことに甘えもした。そう。素直になれるから…。
何故伊佐相手にできることができたのか…。
大人だから?医者だから?包んでくれるから?
明確な答えは浮かんでこない。

ただ一つだけはっきりと分かったことがある。
吉賀に迷惑はかけられない…。
べつに伊佐なら良いという意味ではない。ただ、伊佐と吉賀は受け止め方が違いすぎていて…。
吉賀は俊輔と同じ年なのだ。自分と同じ苦労をこの歳で負わせたくはなかった。

本当に好きだから…。

擦り寄った掌が俊輔の全身を包んでくれる。
何もかもを知っている人…。
嘘を夢に変え、幻を現実にして希望を持たせる。
真実の意味に気付くまで手放されることはない。そこにあるのは『安堵』ばかり。
かぼちゃの馬車が、かぼちゃのままでいいと思えるにはどうしたらいいのだろうか。平凡はどこにいったのだろう。
一度見た夢の世界は、温か過ぎて離れることができない。

「俊輔は俺のそばにいればいい…」
決断できないでいる俊輔の耳元に振りおろされた伊佐の言葉。
津和野は、もう咎めることもなくその言葉を聞いていた。
決めるのは『俊輔』なのだというように…。
囁かれては流される。
かつて、意思もなく働いていた頃がふと、甦ってきた。
何のため…?自分のため…?
家族のため…と言い訳をつけて向かった先に見えていたもの。

…吉賀…。
いつか貴方と一緒に…。

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Gay Love ←もうどんくらいの勢いでハマっているんだか…っていうものです。あくまでも私の趣味です。生画像です。曲も流れます。別宅にも2度ほど貼りつけましたが、見る方、どうぞ自己責任で…。背後には注意してくださいね。これを見ながら日々妄想しております。
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コメント

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No title
コメント甲斐 | URL | 2011-10-02-Sun 12:44 [編集]
"本当に好きだから…。"なんですか
ん~
でも私は伊佐先生が好きです
大人で甘えさせてくれるし
すっごーく大事にしてくれそうじゃないですか
俊輔くんがいらないって言うなら私が欲しいー
だめ?

管理人のみ閲覧できます
コメント | | 2011-10-02-Sun 13:11 [編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-03-Mon 07:08 [編集]
甲斐様
おはようございます。

> "本当に好きだから…。"なんですか
> ん~
> でも私は伊佐先生が好きです
> 大人で甘えさせてくれるし
> すっごーく大事にしてくれそうじゃないですか
> 俊輔くんがいらないって言うなら私が欲しいー
> だめ?

俊輔にとって伊佐は大人過ぎちゃうんでしょうね。
だから身近な吉賀に傾くんだと思います。
なんてったって一回り以上違うので…。
お父さんに甘える子供…みたいな感じです。
息子を可愛がるお父さん。
俊輔、いらないって言うのかなぁ。
是非お持ち帰りしていっぱい妄想してください。
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2011-10-03-Mon 07:13 [編集]
K様
おはようございます。

Gay Love見てくださったのですね。
確かに自分で探して変なものに巡り合うとびっくりします。
リアルなものは…って遠慮する人もたくさんいますよね。
BLはファンタジーですから~。
色々見てて私は映像より写真の方が好きなんだな~と気付きました。
そしてやっぱり大人の人、みたいです。可愛いのも好きですが。
コメントありがとうございました。
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